続けてもう一話!
鬼灯水月は雷遁が
鬼灯一族には肉体変化能力──『水化の術』という秘伝忍術があり、人から水へ、水から人へと変化することができるのだが、それ故か雷遁に非常に弱いのである。
だが、それも過去の話だ。
水月は水遁の性質変化の他に、雷遁の性質変化を有していたらしく、雷遁チャクラを己自身に当てるという荒療治を施し、それによって弱点を見事に克服してみせたのである。
しかも今となっては、弱点だった導電性を逆に利用してすらいる。雷遁チャクラを身に纏い、身体を活性化させる『雷遁チャクラモード』というものがあるが、水月は良すぎる導電性を逆に利用することで、体内に迸る雷が神経の伝達スピードを底上げする現象を従来の雷遁チャクラモードよりも遥かに優れたものへと昇華したのである。
水月が得意とする水遁は優劣関係上、土遁に弱いとされている。だが、土遁は雷遁に弱い。水月は弱点だった雷遁を克服し、尚且つ雷遁の使い手としてもかなりのレベルに達したことで、同時に二つの弱点を克服することに成功したのだ。
その上、水月は雷遁を克服したことで霧隠れの里に存在する特殊な能力を持った忍刀の一本──『雷刀・牙』の使い手にもなった。
「チッ!
よりにもよって、オイラが苦手な雷遁使いかよ!?」
「自分で弱点言っちゃうなんてバカなヤツだね」
そして水月は現在、二刀一対の雷刀・牙を手に大蛇丸関連の敵と戦っているところだ。正確には、戦わされているというべきだろうか…。
「オイラの芸術の凄さも理解できねェようなガキが図に乗ってんじゃねェよ!うん!!」
相手は、忍び五大国の一つ、土の国の忍びの隠れ里『岩隠れの里』の額当てをし、その額当てに横一文字の亀裂を入れ、黒地に赤い雲模様の入った外套を身に纏った金髪の煩い忍だ。
出身里の額当てに横一文字の亀裂を入れているということは、この敵は抜け忍。しかも抜け忍であるということを自ら進んで主張しているということは相当な手練れ。
「優劣関係があるとはいえ、簡単に不能になるガラクタに興味なんて持つはずないでしょ…。
アンタがS級犯罪者なんて嘘でしょ?」
もしくは、自身の力を過信しすぎている愚か者だろう。
どちらにせよ、大蛇丸に弟子入りしたことで雷遁と剣術のレベルが更に向上した水月にとって、油断をしなければ勝てる可能性が十分にある相手である。
「ブッ殺す!!」
「はいはい…あーまたガラクタ斬っちゃったなァ」
しかも、雷遁チャクラによる身体活性でスピードは圧倒的に水月が優勢。それに、雷刀・牙に雷遁チャクラを流すことで斬れ味を底上げし、敵が放ってくる爆発する奇形物を細切れにし、土遁の術で形成されたそれを弱点の雷遁で斬ることで不発にしている。
この勝負、優位に立っているのは見るからに水月だ。
「さて…アンタには『暁』についてじっくり話をしてもらおうかな?」
「くッ!」
雷刀・牙の切っ先を向け、水月は不敵な笑みを浮かべている。
大蛇丸に拉致され、弟子入りし、早いことで1年。水月は大蛇丸の期待どおりに……いや、期待以上に成長しているようだ。
実力だけではなく、意外にもそこそこ知謀に長け、得意の水遁忍術を用いることで隠密活動もできる水月は立派な懐刀である。
自身の力を過信しすぎている愚か者は、どうやら水月だったのかもしれない。
「戦いを優位に運んでいたにも拘わらず逃がすなんて…あなたもまだまだね」
「返す言葉もございません」
優劣関係上、土遁に対して優位にある雷遁で戦いを優位に運んでいた水月だったが、生け捕りにすることは叶わず、かといって殺すこともできず、優位に立っていたことで生まれてしまった余裕が弊害となってしまい、水月は大きな失態を犯してしまった。
敵を取り逃がしてしまったのである。
大蛇丸の命を狙う犯罪組織『暁』の情報を得る為の絶好の機会を水月は逃してしまったのだ。
「まあでも、私の後釜相手に戦いを優位に運んだことだけは誉めてあげる。ギリギリ及第点ってところね」
本来なら、水月の失態は罰則ものだ。
だが、相性の良さもあったとはいえ、S級犯罪者を相手に生きて戻ったことだけは誉められてもいいのかもしれない。
残忍な性格で恐れられている大蛇丸も、弟子が可愛いのだろう。
「水月…次はないわよ」
「酷くない?
大蛇丸が暁を抜けたりしなきゃ…あ、はい…肝に銘じておきます、師匠」
もっとも、同じ過ちを犯す愚か者は弟子失格。大蛇丸はろくろ首のように首を伸ばし、水月に最後通告を言い渡す。
もう失敗は許されない。
そもそも、相手は大蛇丸と同等の実力を持ったS級犯罪者。今回は相性が良かったのもあるが、次に戦う相手は逆に相性が悪いかもしれない。
水月からしたら、あまりにも無理難題すぎる。
「あなたなら大丈夫よ」
それでも、水月に無理難題を強いるのが大蛇丸だ。どんな無理難題でも何だかんだで頑張ってこなそうとする水月が見ていて飽きず、可愛いのだろう。ここまで飽きさせない弟子は、大蛇丸にとっても初めてのことのようだ。
何より、どんな形にもなれる変幻自在の水のように、どのような状況にも柔軟に対応する。
大蛇丸は弟子の成長を純粋に楽しんでいるのだ。
「大蛇丸の甘い言葉は怖すぎる…槍が降りそうだな」
「本当に降らせるわよ」
この師弟、意外にも仲が良い。