幻術なのか!?   作:スージーサーモン

7 / 8


この暑さの中で胃腸炎はヤバいよヤバいよ。辛かった。



幻術なのか!?強者

 

 

 最悪の師弟──水月と大蛇丸が、傍迷惑な自作自演の激闘を繰り広げるよりも少々時は遡り……第二の試験1日目──試験開始から1時間が経過した頃、水月と常に行動を共にしているはずの香燐は珍しく別行動を取っていた。

 

 しかも、水月とは別の相手と行動を共にである。

 

「水月と一緒じゃないだけでも憂鬱なのに、()()()()()()()()()()()アンタと2人1組(ツーマンセル)なんて人生最悪の日だな。どうしてウチが…あとで滅茶苦茶甘えさせてもらわないと割に合わねェ」

 

 それも、まさしく水と油の関係性な相手だ。

 

「あの河童(水月)を大切に想うお前と気が合うのは嫌だが奇遇だな。

 僕にとっても人生最悪の日…いや、違うな。僕にとっての人生最悪の日は、常にあの河童を瞳に捉え──ッ!?」

 

 片や、水月を心から大切に想い、常に身近で水月を支え、助けられる存在であろうとする香燐。

 

 片や、大蛇丸を心から心酔し、大蛇丸の為ならば己の命を犠牲にすることも厭わない君麻呂。

 

「ちッ…そんなに水月を見たくねェんなら、両目ともブッ壊してやろうと思ったのによォ」

 

 ただ、大切な者の為に強くあれる2人ではあるが、少々どころではなくかなり危険な思想を持っている。

 

 香燐は水月に危害を及ぼそうとする者、手を煩わせる者、色目を使う女を容赦なく叩き潰す(血祭りに上げる)

 

 対して君麻呂も同じくだ。自身にとって大切な者──その対象こそ違えど、大切な者の為ならば慈悲の欠片も一切ない。

 

 たとえそれが、同じ里の忍だろうとも…。

 

「香燐…貴様…

(今の術は何だ?

()()()()()()()()()()()()()()していた…)」

 

 水月に向けての文句は、香燐に向けての文句同然。

 

 香燐が君麻呂に向けて放った忍術は、水月が大蛇丸から教わり習得し、それを香燐が水月から教わり習得した超高等忍術で、大抵の相手であれば一撃昏倒どころか、当たり所次第では命を奪う威力を持つ危険な忍術だ。

 

 今の術を顔面に受けていたならば両目共失明どころか、君麻呂でも危なかっただろう。

 

「そういえば、アンタは水月に次ぐ実力者って言われてるんだったな…君麻呂」

 

 もっとも、香燐は本気だった。本気の殺意を持って君麻呂へ攻撃した。

 

 そして、今この瞬間も君麻呂の命を狙っている。

 

「いい機会だ。目的の巻物もすでに手に入れてるしな。

 今ここでアンタを半殺しにして、ウチが水月に次ぐ実力者になってやる」

 

 どうやら、狙っているのは命というよりも水月に次ぐ実力者という周囲からの認識であり、君麻呂の座だ。

 

 その上、殺すよりも質が悪いことに、半殺しにした後に医療忍術で回復させるという屈辱を与えるつもりでいる。

 

「貴様は危険だ。

 四人衆を超える実力を手にし…僕に迫りつつある。僕にとってもいい機会だ。出る杭は打たせてもらう」

 

 だが、水月に次ぐ実力者とされている君麻呂を相手に、香燐は有言実行を果たすことができるのか…。

 

 そもそも、今は第二の試験真っ只中。仲間内でこのような内輪揉めを起こしている状況ではないはずだが、2人を止められる者はここにいない。

 

「打てるもんなら打ってみな」

 

 完全に殺り合う気満々だ。

 

 いつの間にか、香燐はチャクラ刀を手にし、君麻呂は骨の刀を手にしており、2人から放たれる強い殺気(チャクラ)がこの空間を支配している。

 

 そして、誰の合図もなく2人は互いに斬りかかった。

 

 水月に次ぐ実力者と、それに匹敵するくノ一の戦いが今──幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強者は強者を呼び寄せる。

 

「おい…コイツって確か…」

 

「ああ…僕はあまり期待していないが、一応は()()()()()()()だ」

 

 第二の試験の真っ最中、水月不在をいいことに凄絶な仲間割れを展開し始めた香燐と君麻呂の前に突如襲いかかってきた砂の塊。その砂の塊の操り手は、大きな瓢箪を背負った砂隠れの里の下忍──我愛羅である。

 

「砂瀑の我愛羅だっけか?」

 

「くく…得体の知れない音の忍達…楽しめそうだ」

 

 ただ、話がまったく通じなさそうで、戦いに餓え強者を常に求める狂犬のようだ。我愛羅の場合、眼の周りの隈の酷さから例えるなら、狂犬よりも狂狸と言ったところだろうか…。

 

 つまり我愛羅は、強者にだけしか嗅ぎ取ることのできない匂いを嗅ぎ取ってしまい、ここにやって来てしまったということである。

 

「暴走しかけてねェか?」

 

「そのようだ」

 

 こうして、予期せぬ戦いがまたしても幕を開けることとなった。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 小規模ではあるが、人間数人程度なら簡単に呑み込んでしまうだろう砂の津波が香燐と君麻呂に迫り来るなか…。

 

「思ったよりも遅かったな…()()

 

 窮地に立たされていたにもかかわらず、眉一つ動かすことなく、動揺した様子すら見せなかった香燐が、にこやかな笑みを浮かべながら口を開き、その場に悠然と姿を現した大切な者の名を口にした。

 

 

 ━━ 水遁・激浪

 

 

 現れた者──水月は口から荒く激しい大量の水を吹き出し、押し寄せる砂の津波を押し止め、香燐へと振り返り申し訳なさそうに謝罪し、続けて疑問を口にする。

 

「アイツと戦ってたらちょっと熱くなってしまってね…ゴメンよ。

 それにしてもさ、何で香燐達が砂瀑の我愛羅と戦ってんの?」

 

「そんなのウチが聞きたいくらいだ!」

 

 水月が木ノ葉隠れの里の第7班──うちはサスケ等を襲撃し、目的を難なく遂行した後、チャクラを探り香燐のもとまでやって来たら……あらびっくりな状況だ。

 

「君麻呂が挑発…いや、僕以外に対してするはずないか」

 

()()()していない」

 

 香燐と共に行動している君麻呂は、そう答えつつも遠い目をしている。どうやら、思い当たる節があるのだろう。

 

 そもそも今は第二の試験の真っ只中。水月と香燐、そして君麻呂が、他の下忍達と遭遇し、戦いに発展する可能性は十分にあり、他の出場者達も戦いを繰り広げているはずだ。水月以上のチャクラ感知能力を持つ香燐ならば、無駄な戦いを避けて行動できるはずだが…。

 

「新しい獲物が来たか!

 オレをもっと楽しませてくれ!音の忍達!!」

 

 ただ、香燐と君麻呂はどういうわけか、とてつもなく厄介で面倒な相手を呼び寄せてしまったようだ。

 

 香燐は気付いていないが、恐らく香燐と君麻呂の強い殺気に我愛羅は引き寄せられてしまったのだろう。その証拠に、君麻呂は挑発はしていないと口にしたが、理由を察しているのか少し反省気味で、水月が現れたというのにいつものように絡んでいない。

 

 もっとも、香燐と君麻呂が戦っていたことを知るはずもない水月は、砂隠れの里の忍が2人に襲いかかってきたと解釈しているだろう。

 

 しかも、目があった相手は誰でも殺してしまうような質が悪い人物ときた。水月がそう解釈してしまうのは当然で必然のことで、襲いかかってきたのは事実だ。

 

「砂隠れの里の()()()()()()…我愛羅か。

 はあ…聞きはしてたけど、噂以上の情緒不安定さだな」

 

「くくく、貴様達音の忍は他とは違い、かつてないほどにオレを楽しませてくれそうだ!!」

 

 だが、香燐と君麻呂が戦っていなければこのような状況になっていなかったのは事実。大きな瓢箪を背負った砂隠れの里の下忍──我愛羅が目を血走らせ、狂気に満ちた表情で襲いかかってきた原因は香燐と君麻呂にある。

 

「はあ…じゃあ、楽しさよりも恐ろしさを与えてあげるよ」

 

 しかし、砂瀑の我愛羅という異名まで持つ隈が凄い彼も、水月が現れてしまうとは運がない。

 

「水月…程々にな。

 一応、()()()()にあるんだ」

 

「わかってるよ。

 けど、香燐に危害を加えようとしたんだからそれなりには…ね」

 

 香燐と君麻呂が己の大切な存在を想う心が強いあまりに仲間内であろうと殺り合ってしまっていたように、水月もまた同じく……己の大切な存在に危害を加えられそうになったのだから、怒りを見せるのは当然のこと。

 

 香燐と君麻呂と比べ、違うことがあるとするならば、それは……我愛羅がこれまで感じたことのない強大すぎる殺気(チャクラ)だろう。

 

「ッ!?」

 

 水月から向けられる殺気が重く乗しかかり、我愛羅の狂気満ちた笑みが驚愕へと変わると、警戒心を最大に高めたのか、砂を盾のように展開している。

 

「一瞬も気を緩めちゃダメだよ」

 

 雷遁チャクラを全身から迸らせる水月は右手に雷遁チャクラの槍らしきものを形成すると、不敵な笑みを浮かべ……我愛羅が気付いた時にはすでに目の前に…。

 

「!?」

 

 爆発的な砂埃が宙に舞う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬の出来事だった。

 

「ぐッ──はあ、はあ…うッ!」

 

 そして、砂埃が晴れた先では、我愛羅が肩に手を当て地面に膝を突き、手で押さえた肩から血を流していた。

 

「う…うそ…が、我愛羅が怪我をッ!?」

 

「す、砂の盾を破られたってのか!?」

 

 遅れてその場にやって来た我愛羅のチームメートであり、我愛羅の姉兄でもあるテマリとカンクロウは、怪我を負った彼を()()()()()()()()にし、驚きのあまり動けずにいる。

 

「砂で軌道を辛うじて反らされちゃったか…。

 君の意思とは別で動いてるみたいだし凄いね、その砂。そうでなかったら、君の首は今頃…僕の足許に転がってたよ」

 

 対して、我愛羅に傷を負わせた張本人である水月は冷めた笑みを浮かべながら我愛羅を見下ろしている。ほんの一瞬で、我愛羅の今現在の実力を理解してしまったのだろう。

 

「思ったよりも反応が速かったな。けど、今のが最高速みたいだね。それに、砂の盾って思った以上に脆いし…終わりだね。これ以上戦っても弱い者虐めになりそうだし…バイバイ」

 

 すると、水月は雷遁チャクラを解除して我愛羅に背を向け、手をヒラヒラと振りながら香燐のもとへとゆっくり歩いて向かう。

 

 水月のあまりにもの行動に、驚きすぎて言葉すら出ない我愛羅は、水月の後ろ姿をただ見ていることしかできずにいる。

 

 無防備に背中を晒し、香燐に怪我がないかを心配する水月。しかし、我愛羅は何一つ行動を起こすことができない。

 

 もしかしたら、強者を嗅ぎ取る強者故の感覚が嗅ぎ取ってしまったのかもしれない……己よりも強い存在を…。きっと、我愛羅にとっても人生で初めての経験だろう。

 

 これは、本能の逃避だ。

 

「怪我は?」

 

「まったく!それにしても相変わらず速ェな…『水月流()()()()』だっけ?あれでまだ一段階目なんだから半端なさすぎだっての。

(けど、まだ対応できる…今のウチなら何段階目まで対応できるんだろうな)」

 

 一方で、我愛羅になど最初から興味の欠片もなかっと香燐は、水月の今の攻撃に感嘆の声を上げながらも、強さへの貪欲さを見せている。香燐の眼は水月の動きを捉えており、ハッキリと見えていたのだ。

 

「水月、貴様…我愛羅に怪我を負わせるとは何を考えている。奴がどういった存在なのかを忘れたわけではあるまい」

 

 それともう1人……水月の行動を君麻呂は当然のように責め立てる。

 

 もちろん、水月からしたら自身の行動は何一つ間違ってはいない上に、殺してないのだから責め立てられる理由はないと思っている。

 

「別に…香燐に危害を加えようとしたから、その仕返し。それに、『()()()』ならあの程度の傷…すぐに治るでしょ。それよりも、お前の()()()()()()から次の指令だよ…」

 

「!」

 

 そもそも、水月が香燐達と合流した目的は我愛羅と戦う為ではなく、我愛羅との戦いは完全な予想外だ。

 

 端から興味もなく、今はこれ以上関わるつもりも一切ない。

 

「さっさと行くよ」

 

 真の強者は多くを語らず、ただその強さだけを相手に恐怖として植え付け、その場から悠然と立ち去っていく。

 

 






水月にありとあらゆる忍術を教える過程で、螺旋丸も教えていた大蛇丸。水月がそれを香燐に教えていた模様。

綱手曰く、習得できるのは四代目と自来也のみとのことだけど、大蛇丸からしたら、「自来也とミナトにできて、私にできないなんてことないのよ」と、影で頑張って習得した模様。ただ、戦闘スタイルが違うのもあり、大蛇丸は基本使わない。

けど、「私の弟子が真の螺旋丸に至ったら面白いわね」と思ったりしている。


━━ 水遁・激浪
口から荒く激しい大量の水を吹き出す。
鬼灯一族では、この水遁が扱えれば一人前の鬼灯一族として認められる。一族内での扱いは、うちはの豪火球と似たようなもの。ただ、水月のそれは膨大なチャクラ量もあって、本気を出せば鬼鮫の本気の爆水衝波に匹敵する。

術名は後々に出し惜しみしてる水月の雷遁チャクラモード。
大蛇丸との共同開発。木ノ葉流体術奥義『八門遁甲』を参考にしている模様。
違いを挙げると、身体から迸る雷遁チャクラを雷遁チャクラの武器…槍などに形態変化させて扱うこともできる二段構え。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。