あなたは傍観者   作:GM

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やっと試験が終わりました…。
おまたせしてすみません…。


一人目:ハプニング

「この干し肉を、そうだな…、10個くれ。」

「はいよ。」

 

俺は旅する商人、といっても商人になりたてでまだこれといった実績はない。

俺はガキの頃から英雄譚や冒険ものが好きで、いつか自分も旅をしてお宝を見つけたり英雄的活躍をすることを夢見てきた。

だが、年を重ねると、自分ごときには英雄なんぞなれないことはわかるもの。

だからいってあきらめきれなかったからこそ俺はこうして旅の商人としてあっちこっち放浪しているのだが。

 

そんな俺だが情報はかなり持っているのではないかと思う。

あの町は貴族が庶民派で過ごしやすいだの、盗賊が多い地域だの、旅をしているなら普通かもしれないが、ここら一帯のことなら結構詳しいつもりだ。

だが、自分の知らない新たな何かが出現するのも珍しくはなく、俺は自分の知らないことが噂されていると、無性に知りたくもなったりするため、町に着くと必ず酒場にいって酒を飲みながら周りの話に耳を傾けるのだ。

 

「あそこの受付嬢がよぉ…」「そこで俺はなんて言ったと思う?俺はな…」「あっちでは魔物のせいで食糧難とか。」「ヒマワリ村は一回行ってみる価値があるね、ありゃあ絶景よ。」

「なんでも謎の仮面野郎二人がいるらしい。」

 

謎の仮面二人?

…聞いたことないな…。よし、聞いてみるか。

 

「もし、そこのお方。エールおごるのでお話聞かせてもらえませんか?」

「おう、いいぞ。で、聞きたいのは仮面のことかい?」

 

曰く、一人は頑強な鎧を着ており、そこんじょそこらの魔物は一撃でぶちのめすらしい。

曰く、もう一人は女のようで、華奢な体躯をしているらしい。

曰く、女に手を出そうものなら鎧野郎にぶちのめされるらしい。

曰く、女は行く町々で世にも珍しい歌を歌うらしい。

 

「俺はあったことねぇが、どうやら気分が高揚するような、そんな歌らしい。本当なら歌なんぞに興味はねぇがいっぺん聴いてみたいね。」

「なるほど、仮面の二人組ねぇ…。悪い奴ではないのでしょう?」

「あぁ。なんでも人助けもするらしいぞ。ま、あくまで噂だけどな。」

 

世にも珍しい歌、か。

むむむ、これは金のにおいがする、かも?

目的も特にない旅だし、探してみるとするか。

 

さて、この商人は謎の仮面不審者二人組に会うことはできたのか、できなかったのか…。

 

◆◆◆

 

「♪~」

 

あちらこちらを旅しながら歌ってはや数か月。

どうやら噂になるくらい私たちは知れ渡っているらしく、あ、仮面の歌い手だ、とかなんとか言われることもしばしば。

この世界では異端ともいえる前世の歌が、受け入れてもらえたことにはほっとした記憶がある。

今では「珍しい歌」としてそこそこ聴いてくれる人がいるのもありがたいことだ。

だが、「珍しい歌」で有名になってもあんまり良い気分にはならないので、「素晴らしい」方面で有名になれるように頑張ろうと思う今日この頃。

 

ほっとしたといえば、数か月のこの旅で幾度かアクシデントに遭うこともあった。

私などでは到底かなわないような魔物に遭遇し、死を覚悟したとき(スーザンがボコボコにしました)や、女を見かけると見境なしに手を出すようなチンピラに遭遇したり(スーザンがボコボコにしました)、森の中で迷ってしまったり(スーザンが頑張って無事に抜け出した)、こいつ妹に頼ってばっかりだな。

その中でも、一番ヒヤッとしたのが、衛兵とスーザンがバチバチにやりあおうとしたときだ。

なんというか、仮面の二人組という怪しさ満載のやつらを衛兵が止めるのも当然なのだが、態度が悪い若い衛兵をスーザンがぶちのめした結果、お縄になりかけたのだ。

さすがに持ち物を調べるから服脱げなんて言われたときにはこいつ殴ってやろうかとも思ったけど、普通に断ろうとしたらいつのまにか宙に舞っている衛兵。

スカッとしたとかよりも、唖然としたね。もうポカーンって効果音が付くくらいポカーンしてたね。

まぁ、衛兵の偉い人がその場を収めてくれたおかげで事なきを得たけど、偉い人もそんなんだったらどうなってたことやら…。

私にはスーザンは全員ぶちのめして指名手配される未来しか見えないよ…。

 

で、そんなこんなで今日も歌っているのだが、この町はさっさと出ていきたい。

なぜ今すぐに出ていかないかというと、準備ができていないからだ。

特に食料が、なんでも近くの村から多くの食料、穀物や野菜を仕入れていたのだが、魔物の影響で仕入れが難しくなったらしく、値段も高ければ量も少ない。

かといってその魔物を退治しに行こうにもその道中のための食料がない、そんな状況。

あー、誰か早く倒してくれー。あ、また来た。

 

「おぅい、ぼくちんの妾になる準備できた?」

「失せろカス」(スーザン)

 

そう、なんかこの町の領主であるなんたらという貴族の次男に絡まれているのである。

それも、ほぼ毎日、まるでこちらが了承しているかの如く妾にしてこようとする、このボンボン、生理的に受け付けるの無理。

髪は油でギトギト、ニキビはぶつぶつ、おなかはぽよんぽよん、清潔感もなければ何もない、あるのは金と地位くらい、そんな糞貴族に私は毎日絡まれているのだ。

スーザンも貴族に手を出すわけにはいかず、というか私が止めていなければいまごろどうなっていることやら…。

でもまだ、無理やり連れて行こうとしていないのでましっちゃましではある。

多分、悪気はないんだろう、きっと、メイビー。

 

「えぇー、いつうちに来てくれるの?美味しい料理あるよ?」

「失せろゴミ」

 

それにこのボンボンの護衛、スーザンの暴言に苦笑いするだけで、特に罰したりしようとしていない。

スーザンが最初殴り飛ばそうとしたときにはボンボンを守ろうとしていたが、この無礼者!っていうよりか、このボンボンがごめんなさいって感じだった。

まぁ、本人が気にしてないからね、ご苦労様です。

 

この町を治める貴族は、いわゆる庶民派で、庶民にとってプラスになる政策などをしており、庶民に支持されている。

その長男も優秀で且つ思いやりがあるらしく、こちらもまた庶民に支持されている、のだがなんで同じ環境でこんなのが育つんだ?

と思ったことが顔に出ていたのか、護衛の人が教えてくれた。

どうやら長男は両親が、まぁ、頑張って教育して育てたらしいのだが、次男になると、長男を甘やかせなかった祖父母がもう、それはそれは甘やかした結果、こうなった、らしい。

一応、思いやりとか、一応、あるらしいが、ほしいものは基本祖父母が用意してくれたいたので自分が欲しいものはもらえる、と思っているらしい。

で、今回のその「欲しいもの」が「私」ということらしい。

さすがに祖父母も人をあげるわけにもいかず、私に孫をよろしく、と頼みこんできたのだが…。

 

なぜ?

APP高くないのに…、私のどこに魅力があるのだろうか?

もう最近では「好き!」とか、「愛してる!」とか、直球のプロポーズを受けても微塵も慌てたりすることなくスルーできるようにもなった。

そして、ほとんど毎日一緒にいさせられた(強制)せいか、まだ一定の嫌悪感はあれど、最初よりもましになってきて思うことがある。

 

私がプロデュースすればよくね?と。

多分、洗顔とか、食事とか、運動とか、色々やれば今よりましになるだろう。

前世が男であったことで、男に対する感情が友情方面に特化しているので、恋愛感情を抱くことはないが、ギトギトはやめてほしい切実に。

あわよくば貴族の友達ポジションにおさまり、一定の権力に対抗できるようになれたら、なんて下心もありつつ、私はこのぽっちゃりニキビくんをイケメンとまではいかずとも、普通くらいの男にはしてやることにした。

 

洗顔は、妹の薬師スキルがいかんなく発揮し、食事は妹の家事スキルがいかんなく(略)、運動は妹が(略)した結果、ギトギトじゃなくなり、ニキビもすっかり無くなり、健康的な肉体となった。

そんで気づいたんだけど…

なんだこのイケメン?(なんていうか、そうなる気はしてた)

 




ハッピーエンド厨な僕なりの精一杯のクズ貴族(天竜人風)でした。
だってこうしないとスーザンがヤりそうだったんだもん…。

アンケートで何訊いたらいいか分かんねぇ!

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