アクア団長やソヨゴちゃん達の前に現れる新たな敵とは……
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ここはウィンターローズのとある酒場。街の中心街にあるこの酒場は、夜になると仕事終わりの人々で賑わう。
特にお得意様は花騎士達だ。命懸けで害虫と戦う彼女らにとって、今夜ここでの一盛りは唯一心安らげる時なのだ。それに月給も良く、肉体労働職なのでとにかく良く食べ良く飲む。
この近辺で飲食店を営む者にとって、花騎士は大変ありがたい存在なのだった。
「よ~し、もう一本開けちゃお~!」
「もうお客さんったら、お強いんだから~!」
今夜も三人の花騎士達が店を訪れていた。ビールの空き瓶が何十本と散乱しているが、花騎士達のペースは全く落ちることがない。
そんな酒臭い店内に、一人の女が静かに足を踏み入れた。
「きゃはは! それにしてもこの前の害虫はヤバかったよね~!」
「あの蜂型の大型害虫ね。デカいのにとんでもなく速かったのよね」
「ま、あたしのこの拳で粉砕してやったけど!」
そう言って自慢の拳を固めて見せる。
「あらあら、私強い人は大好きよ」
(今日何回めよ、この話……)
酔っ払いとは何度も同じ話をする生き物で、嬢は既に飽き始めていたのだった。
と、そんな時。
「失礼。あんた達、ちょっとお顔を拝借させて頂きたいのですが」
長身に銀色の髪の女が花騎士達の肩を掴んでいた。言葉は丁寧だが、要するに喧嘩を売っているのだ。女の挑発的な態度からもそれは明らかだった。
「ちょっ! あなた、喧嘩を売るのは構わないけど、この人達が誰だか分かってるの!?」
「私はあなた達とヤリたいんですよ、花騎士さん達」
ニヤリと不敵に笑う銀髪の女。
「へぇ……」
それに対し花騎士も同じく笑みを返した。
「ちょっと外出ろや」
「ほ、本気でヤるわけじゃないわよね!」
心配して花騎士の胸に抱き付く嬢に対し、花騎士は柔らかな笑みを向けた。
「大丈夫、何も殺しはしないさ。ただ、こういう身の程知らずは多少痛い目を見た方が良いんだよ」
「たまにいるのよね~。自分は強いって勘違いして、花騎士に喧嘩売って来るお馬鹿さんが」
「で? お相手してくれるんですか、お三方?」
「素人に三人も必要ねぇよ。あたし一人で充分さ。さぁ表へ出な」
そう言って立ち上がった時だった。
「ぐぉっ!?」
女の足払いが花騎士に直撃。花騎士は床に頭を強く打ち付けてしまう。
「酒なんて飲むから足元がおぼつかなくなるんですよ」
女はそう言いながら、倒れた花騎士に寝技を仕掛ける。しかもそれはただの寝技ではなかった。
「ちょっ! どこに指入れて……!」
「ふふ、こういうことは初めてですか?」
「や、止め……んにゃぁぁぁ!」
「あひ……あひ……♡」
「ひ、ひどい……」
よだれや下の汁を出しながら喘ぎ声を漏らす花騎士に、店の嬢も他の花騎士もドン引きしていた。
「害虫相手に勇ましく戦う花騎士様が、随分可愛らしい声で喘いでいらっしゃいましたね」
「き、貴様……!」
花騎士の拳が女の背後から襲う。女はそれをひらりと避け、花騎士を羽交い締めにした。
「あと二人ですか。楽しませてあげましょう」
「「あひぃぃぃぃん♡」」
「つ、強い……花騎士が手も足も出ないなんて……」
「ふぅ~……」
困惑する従業員や客をよそに、女はビショ濡れの指を白いハンカチで拭き、大きなため息を漏らした。
「いつ敵に襲われるか分からない状況で酒に酔う。対人戦の知識も経験もない。セクハラに対する免疫もない……花騎士と言っても実戦では素人か……」
女がボソボソと呟く。そして最後にこう付け加えた。
「戦いたい……自分よりも強い者と……」
「あなたは一体……」
「私はグレー。セクハラーの頂点に立つ者。この件を調査しに来た方にそう伝えて下さい」
(セクハラーって何やねん……)
それだけを嬢に伝えると、グレーは夜の闇の中へ消えていった。その大きな背中がやけに寂しそうに見えたのは、果たして気のせいだろうか。
「1432……1433……」
所変わり、ここはウィンターローズ所属の騎士団、アクア騎士団のトレーニングルーム。アクア団長と花騎士達が日課のヒンドゥースクワットを行っていた。
「ぜぇ……ぜぇ……あの」
「はい?」
涼しい顔でスクワットをこなしていくアクアや花騎士達の中、既に汗まみれでバテバテの少女が二人。彼女らは研修に来ていた新米の騎士団長なのだった。
「これ、あとどのくらいやるんですか……?」
新米のうちの一人、黒髪の少女クロ団長がアクアに話しかけた。
「う~ん。今日はあなた方新人さんもいることですし、軽く3000回くらいで終わらせますか」
「3000!?」
(まだ半分も終わってなかったのか……)
「く、クロ……このくらいでバテてるようではまだまだですね……」
「お前だってバテてるじゃねぇか……」
もう一人の新米、白髪のシロ団長がクロとにらみ合う。そんな光景を、アクアはにまにまと見つめていた。
(いいですねぇ、ライバル関係って。そしてこの後、お互いへの思いがオーバーヒートして、情熱的な夜を……)
「うっひょ~~~!」
「「っ!?」」
突然の奇声に驚く新米達。それとは対照的に、ソヨゴ達花騎士は何食わぬ顔でトレーニングを続けていく。彼女らにとってはアクアの変態行動など日常茶飯事で、一々驚いていられないのだった。
「「ぜぇ……ぜぇ……」」
「ふぅ~、いい汗かきましたね。それじゃあ準備運動はこれくらいにして、本日の訓練を始めましょう」
((じ、準備運動……!?))
新米達が絶望した時、団内の緊急放送が鳴り響いた。
『アクア団長、アクア団長。至急執務室へお戻り下さい』
「何かあったんでしょうか? ちょっと行ってきますね」
「やぁ、元気そうだなアクア団長」
「オリビア大佐っ!?」
執務室で出迎えたのはオリビア。アクアの直属の上司だった。
「大佐が直々に私に会いにくるなんて……まさか!」
「……何か心当たりがあるのか?」
「いえいえ~! 何もありませ~ん!」
「貴様……まぁ、その件は追々聞くとして、今日来たのは別件だ。お前の耳に入れておきたい情報がある」
「花騎士が……襲われた!?」
「そうだ。犯人はグレーと名乗る銀髪の女。身の丈190cmを超える長身の女だ」
「グレー……」
「しかもその手口がだな、その……ひ、秘部に指を突っ込まれ、性的に絶頂させられたらしい」
赤面するオリビアを見て、アクアはニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべる。
「すみません大佐。良く聞き取れなかったのでもう一回説明して下さい」
「き、貴様ぁ!」
「こほん……と、兎に角! そのグレーという女、お前の関係者なんじゃないか?」
「……は?」
「お前の母、雪中の聖女。そしてその娘達は強力な性技を持つと聞く。屈強な花騎士を手玉に取れるなんて、聖女一族くらいだろう」
「グレーなんて人、私の姉妹にはいませんでしたね。と言っても、私も姉妹全員を把握してるわけじゃありませんが」
姉妹の名前が分からないなど普通はあり得ないが、アクアの家庭においてはそれも致し方無し。何たって姉妹が、分かっているだけで500人いるのだ。
雪中の聖女。春庭を裏から動かすハーレム女王。花騎士を襲ったグレーという女は、果たして彼女の一族なのか。
「……久しぶりに帰ってみますか、実家に」
「あら、良く来たわねアクア」
「お母様……」
聖女の城に神妙な面持ちでやって来たのは、アクア、オリビア、ソヨゴの三人。
「あなた達が訪ねてきた理由は分かっているわ。グレーのことね」
「っ!?」
聖女は窓の外を見下ろしながら話し始めた。
「グレー……確かに彼女は私の娘です。いや、娘だった」
「だった?」
「勘当したのよ。あまりにも危険な存在だったからね」
「しかし何か引っ掛かりますね。そんな危険な人が、何故今まで大人しくしていたんでしょう」
「いや、それより何でそんな危険人物を野に放ったんですか。お母様なら投獄なり何なり出来たでしょう」
「ふふ……」
アクアの猛反論に聖女は微笑む。
「何がおかしいんです!?」
「あの戦闘力の娘を何年も捕まえておけると思う?」
「そりゃあ……そうですけど……」
「それとグレーが大人しくしていた理由、それはアクアやソヨゴさん、あなた達にあるのよ」
「「?」」
「生まれつき人智を越える能力を有していた少女。その力によって何でも手に入れることが出来た。そんな彼女が唯一望んだもの、それは『闘争』!」
「「闘争?」」
「花騎士や騎士団長が自分達と戦うに値する存在となった。だからこそ彼女は……いえ、
「彼女……達!?」
「我が一族の最高戦力にして最大の汚点『セクハラ六人衆』! 闇の社会で暗躍していた彼女達が表の社会に姿を現した。遂に始まるのよ、花騎士とセクハラーの全面戦争がっ!!」
「な、何ですって~!」
「グレー以外の五人も各国で動き出したと報告を受けているわ」
聖女が報告書を捲り、各国家での事案を読み上げる。アクア達はその報告に戦慄を隠すことが出来なかった。
というわけで続き物です。
(セクハラ―って何だよ……)
こちらもあまりシリアスになり過ぎないように書いていければなと思います。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。