アンズと言ってもアプリコットとは関係ありません
移動型カジノ、パルファン・ノッテ。人間の欲が渦巻く煌びやかな空間に、一人の不審人物が佇んでいた。
「今のところ異常は無し……か」
ぶかぶかの黒いコートから金色の髪が覗く。
「この店の平和は、このスカシユリが守るのだ!」
スカシユリ。パルファン・ノッテの用心棒を務めている花騎士だ。
何故彼女がこんな不審な格好をしているかと言うと、話は一週間前に遡る。
「来なくなった常連客がいる?」
「そうなのよ……」
事務室にて、オーナーのヒヤシンスがため息混じりにそう漏らす。
「ギャンブルから足を洗っただけじゃないのか?」
「それならいいんだけど、ここ最近何人もそういう人がいて……心配だわ」
「……よし! それならこのスカシユリに任せるのだ!」
(……なんてことを言ったはいいが、ここ一週間特に異変は無いな……)
その時、一人の客が入ってきた。品の良さそうな中年女性。惜しみなくお金を使ってくれる貴族で、パルファン・ノッテにとってはお得意様だった。
「よし、あの人を監視してみるか」
女性はスロットマシンの前に座った。その後一時間程遊んでいたが、今日は運が悪いのか負け続けているらしい。
気分を紛らわすためか、席を立って飲み物を持ってくる。と、その時。
「ねぇねぇおばさん、アタシと良いことし・な・い♡」
杏色のショートツインテールの少女が貴族に話しかけた。肩出しのシャツにショートパンツと、何処か遊んでいそうな雰囲気がある。
(何だあの娘は……)
少し話した後、少女が女性の腕に絡み付き、そのまま店の外に誘導していった。
(明らかに怪しい……後を付けるのだ)
「こ、ここは!」
二人が入ったお城のような場所……それはラブホテルだった。
「ただの援助交際だったか! くそぅ……」
確かにカジノに来る富裕層は援交女子にとってはカモだ。だから少女がパルファン・ノッテに居たのも納得出来る。
「仕方ない……帰るか」
そう言ってスカシユリが背を向けた時だった。
「んほぉぉぉぉ!」
「っ!?」
獣のような咆哮が聞こえてきたのは。
「な、何だ今のは!?」
声の方へ急行するスカシユリ。扉を開けるとそこには、
「え~、おばさんもう終わりぃ? ざぁこ、ざぁこ♡」
しなしなに干からびた女性と、彼女に跨がる少女の姿があった。その腹、丁度子宮の辺りにはピンク色のハートマークが浮かび上がっている。
「なっ……何があったのだ!?」
「遅かったわね、花騎士」
少女は服を着てベッドから降りると、スカシユリに挑発的な視線を送った。
「君は一体……」
「アタシはアンズ。見ての通り援交女子よ」
「その女性に何をしたのだ!?」
「ただ精を吸い取っただけよ。まぁおばさんの雑魚ま◯こじゃ耐えられなかったみたいだけど♪」
「ゆ、許せん……お前のようなメスガキは、ヒーローのスカシユリが懲らしめてやる!」
「ヒーロー……ね」
その言葉を受け、アンズの表情には殺意が満ちていく。
「それならアタシを止めてみなさい! ヒーローとしてね!」
アンズの突然の叫びに驚きながらも、スカシユリは迎撃の体勢を取った。
「ふんっ!」
重心の低いタックルがスカシユリを襲う。何とか堪えるも、下半身をがっぷり掴まれ、身動きが取れなくなってしまう。
(この動き……アマチュアレスリングか。それに)
「ぐぅ……!」
少しでも気を緩めれば押し倒されてしまいそうになる。スカシユリの額には冷や汗が伝った。
(柔術か……この娘、ただのメスガキじゃないようだな……)
「どうしたのお姉さん? まさかこんなメスガキに力負けなんてするわけないよね? お姉さんはヒーローだもんね♡」
「く……そ……!」
しばらくの膠着状態。普通この状態では体重の重い方が有利なのだが、より消耗が激しいのはスカシユリの方だった。
「ふ~ん……花騎士って言ってもこんなもんか」
アンズはスカシユリの右足に自身の足を引っ掛け、
「ぐぉぉっ!」
地面にひっくり返した。
「お姉さんのざぁこ♡ それじゃあ堪能させて貰うね♡」
「や、止めろぉ!」
≪一時間後≫
「スカシユリは名器であった」
「も、もうお嫁に行けないのだ……」
「お姉さんとアタシ、相性最高じゃん♪ 気が向いたらまた相手してあげる♡」
「だ、誰がお前のようなメスガキにぃ……ふにゃあ♡」
首筋を撫でられただけで甘い声が出てしまう。それほどまでに敏感にさせられてしまったのだ。
「じゃ、またねお姉さん♡」
ぐったりと横たわるスカシユリを背に、アンズは満足そうにその場を去っていった。
「後で絶対にわからせてやるのだ~~~!」
その叫びはホテル中に鳴り響いたとか、いないとか。
「省略された部分を詳しく」
「ロータスレイクでの報告は以上よ」
「詳 し く」
「以 上 よ」
「って、ふざけてる場合じゃないわよ、アクア。彼女達の脅威はすぐそこまで迫っているのだから」
「えっ……それってどういう……?」
≪同時刻、アクア騎士団≫
「ここがアクアの騎士団……ふふ、待ってなさいよ、アクア♪」
メスガキわからせ編、お楽しみに
ここまで読んで頂き、ありがとうございました