怠惰の鬼   作:堕落の鬼

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強い力を便利だからで使う奴は使用用途が限定的

 

錫杖を抜いた僧侶は軽く振るうと己の目の前の地面へと突き刺した。

 

「では、先ずは小手調べと参ろう」

 

その言葉と共に、炭治郎達は自分の体に一瞬だけ痺れを覚えた。

 

(なんだ、何かされた…?)

 

「うわぁぁ!なんかピリって来た!ピリってぇ!」

 

その事に違和感を覚え、立ち止まった炭治郎と善逸をよそに伊之助は飛び上がって刀を振り上げる

 

「もらったぁ!」

 

「汝、その獣の如き動き、見事なり。しかし、知恵を持つ者とは狡猾なのだ。その身、その勇猛なる速さのまま地に落ちるだろう」

 

僧侶が呟くと共に、伊之助の両腕は勢いそのままに地面へ向けて高速で落下した。

 

「ぬがぁっ!?」

 

両腕が地面に深々と突き刺さった伊之助は、何とか引き抜こうともがくも両腕がピクリとも動かない。

 

幸い日輪刀は折れてはいないが地面に型取りされる形で埋まっており、抜き取るのは難しい。

 

「ふんぬぬぬぬぅ!」

 

伊之助が諦めずに力を込めて抜き出そうとするも、やはり動かない。

 

「汝は頭を鍛えよ。その力、獣のままに使うには惜しいものだ」

 

そう言って僧侶は錫杖で伊之助の頭を打ち抜いて気絶させる。

 

「ヒィッ!?」

 

その姿を見て腰が抜けた善逸はへたり込んだままシャカシャカと手足を動かして炭治郎の後ろに回り、足ににしがみつく

 

「降参しようよ!炭治郎!伊之助があんな簡単にやられてる時点で勝てっこないよぅ!」

 

そう言って足元で喚く善逸に対して、炭治郎は嫌な顔をしながらも僧侶を注意深く観察する。

 

「ふむ、やはりそこの奇抜な髪色の者は…強さ以前に心が脆い。そのような心持ちでは大切なモノを守れぬぞ」

 

「うるさいよぉ!そんな事分かってるよぉ!」

 

炭治郎の足にしがみついたまま、善逸は反論する。

 

「分かっているのならば、後は汝次第という事。我という恐怖に打ち勝って見せよ」

 

その言葉と同時に、善逸はふわりと浮き上がる。

 

「え"っ!?何!?身体が浮いてるんだけどぉぉ!?」

 

「我が元へ来い。その心の弱さに打ち勝つのだ」

 

そう言うと浮かんだ善逸は必死に炭治郎の腕を掴む

 

「い"や"だぁ!助けてくれよ炭治郎ぅ!」

 

「うわぁっ!?」

 

腕を掴まれた炭治郎は、善逸と共に僧侶の元へと引き込まれる。

勢いが強かったのか、炭治郎の腕を掴んでいた善逸は足が地面に突き刺さり、炭治郎は前のめりになって地面と顔をくっ付ける羽目になった。

 

「い"や"ぁぁぁぁぁ!死ぬ!死んじゃうぅぅぅ!」

 

地面に足が刺さったままの善逸は喚き散らし

 

「あ°っ」

 

変な声を上げて気絶する。

 

「ぬぅ…駄目か…」

 

そう言って突き刺さったままの善逸に近寄って引き抜こうとした僧侶の腕を善逸は刀を振り抜いて弾いた。

 

鉄が接触する甲高い音と共に、善逸は僧侶から距離を取る。

 

「雷の呼吸、壱ノ型 霹靂一閃」

 

その言葉が言い終わると共に、強い衝撃音が鳴ると同時に僧侶の背後へと瞬間移動したかのように善逸が現れる。

 

「一つの技を極めた力、見事なり。我が鎧にこれ程の切り傷を与えた者は、汝が初である」

 

そう言う通り、僧侶の腹部が大きく斬られていた。

 

そして、その中身を見た炭治郎は驚愕した。

 

しかし、中の者は怯える者を撫でながらそれを気にせずにそのまま語る。

 

「しかし、その速さと技。対応出来た者がない為の強さよ。速さと共に、瞬時の判断ができるようになれば、汝の強さはより高い所へ至ろう」

 

「ん…ぐっ…!?」

 

構えたままの善逸は、腹を抑えて倒れ込む。

 

「汝の腹に、少々手を入れた。痛みだけ故、臓腑が潰れて死ぬ事にはならぬ」

 

そう言って僧侶は斬られた部分を撫でる。たったそれだけでバックリと割れていた鎧は修復された。

 

「後は汝だけだ」

 

そう言って僧侶は錫杖を突き刺してじっと待つ。

 

「待ってください。貴方は、鬼…なんですよね?」

 

そう問われた僧侶は、腹をパカっと開いた。

 

「ひぇっ!?な、なんで開けたの!?」

 

中ではガタガタと震える少女と胡座をかいたまま欠伸を零す少年が居た。

 

「いや、2人入る設計じゃないから狭いんだよ。それに僧侶の真似をするの飽きたし」

 

そう言って少年は雑に少女を地面へと降ろし、鎧から出ると炭治郎と対面する。

 

腹が空いたという事に驚いて固まってる炭治郎を見ながら、少年は返答した。

 

「確かに僕は鬼だけど、だから何さ?僕はただ自由気ままな生活をしながら、面倒事を簡単に片付けられるように便利な力を得て、楽をして生きたいだけなんだよ。その為にここに居るし、君達がそのままなら確実に負けるだろうからこうやって諦めさせようとしてるんだけど?」

 

面倒だなと言うように欠伸をしながら、その鬼は炭治郎を見つめた。

 

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