どらごんれでぃいらばーず!!!~現代日本で竜娘にTSしたけど同じ超可愛い竜娘(問題児)と支え合ってハーレム生活を満喫します!~ 作:囚人番号虚数番
部屋に戻りながら俺は考えた。俺の一番の目的は人の姿に戻る事である。その為には何か必要なのか考えた結果、まず今の自身の体について把握すべき、つまり竜についての知識を知るべきだ。
廊下を歩いて自室に向かいつつそんなことを考える。しかし、どうしようか。また蕾さんにでも話を聞くべきだろうか? 二回目ともなるとなんか怖いし、協力はしてくれそうだけれど自分でも努力はすべきだよな。それにあの人も忙しいだろうからあんまり迷惑かけちゃいけないと思う。自室に着いて扉を開けた。
ガチャ
「…………」
「(うおっ!誰かいる?)」
部屋に着いて中に入ると中に黒髪のメイドがいた。
「…………まだ、みたいだね」
しかし彼女は仕事の道具だったりは一切持っていない。仕事をするでもなく俺のベッドに腰掛け窓の外を眺めている。俺はそのメイドに気取られないよう静かに近づいてすぐ後ろに立つ。その後ろ姿、黒い髪、背丈、全てに見覚えがある。深呼吸をして、俺はそいつの耳元で思いっきり叫んだ。
「ナツメえええええええええええええええええ!」
「うわっ!うるさいなぁ!急に耳元で叫ばないでよ!」
振り返り顔が見えるとメイドはやっぱりナツメだった。いや、何でここに?現在朝8時、来客の連絡も無いから本当にコイツがここにいる理由が分からない。しかもやっすいコスプレではなくちゃんとした天菜家のメイドの服だ。俺の部屋にいたのもそうだし、考えても彼がここにいるのはおかしい。
「お前なんでここにいんの?」
「お見舞い。この前駅にいるのは知ってたね。あの騒ぎで君の体が心配になったんだよ」
それにしても連絡も無しにこんな朝早くに来るのは常識外れだ。こっちにも心の準備ってものがあるだろうに。まあ今はそんな事を言ってる場合ではない。とにかく現状の確認だ。
「とりあえず聞きたいんだけど、どうやってここに入った?」
「鍵空いてたよ」
「アポは?」
「取ってないけど、君のメイドさんが入れてくれたよ」
成程、メイドが入れたなら仕方ないな。俺は納得して自分のベッドに座った。するとナツメが隣に座ってきた。そしてそのまま肩を寄せてくる。
「もー、あんまり疑い深いと僕意外だれもいなくなっちゃうよ」
そう言いながらナツメは俺の腕を抱き寄せてきた。
「あはは、すまんな。ちょっと今色々あって気が立ってるんだ。許してくれ」
俺はなるべく平静を保ちつつ腕を引き抜こうとするが、なかなか離そうとしない。それどころか更に強く抱きしめられる始末だ。柔らかい感触とかそういう問題じゃなくて単純に痛い。
「いやもういい加減離れてくれよ」
「ふふ、嫌だよ。友人が死にかけたんだしこれくらいいいじゃないか。君がいなくなったら僕も寂しいのさ」クンカクンカスーハースーハー
「じゃあこれを説明してくれるか?」
俺は抱きつかれていない方の手でスマホを操作しメールをナツメに見せた。そこには『たった今、あるメイドが不審な人物を敷地内で見かけた。彼は私達で処理するから君は接触は出来るだけ留めてくれ』とだけ書いてある。実はこのメールは部屋に入る直前に蕾さんから届いた物だ。ナツメ画面を見るなり硬直し俺から目線を逸らす。
「で、本当は?」
「……裏口の窓から」
やっぱりか。まあ、予想通りではあった。メールで友人の悪戯だと伝えておく。
「でもホントに君を心配してここまで来たんだよ。だから今日一日君と一緒に居させてくれないかな?この前の貸し借りは帳消しでいいし僕なんでもするからさ」
俺の胸板に顔を擦り付けながら上目遣いで見つめてくるナツメ。コイツ分かってやってんのか?男同士で俺の方が小さいから傍から見たらヤバい奴だぞ。しかし素直に帰ってくれるとも思えない。ナツメに何かしてもらうのは良いが一体何をさせるべきか。下手に頼んで変なことされても困るしなぁ。
「そうだな、ならちょっと手伝って欲しいことがあるんだ」
俺は本棚から前に借りた厚い書物を取り出す。これは以前竜を知る為にメイドさんから渡された物だ。俺はもう一度読もうと思う。
「でも問題はこれがそもそも読めたもんじゃないんだよ。せめて言語が特定できれば解決もしそうなんだが」
彼女に本を手渡しペラペラとページを捲ってもらう。彼女はページの膨大な文字数に若干困惑しながらも読んでくれた。が、しかしすぐに本を閉じてしまった。
「これは、うん。僕も力になれるか微妙だ」
申し訳なさそうな顔で謝ってくる彼女を見て少し罪悪感を覚える。しかし不可能は見越しての事だ。
「隣で一緒に読んでくれるだけでいいよ。頼むよナツメ」
ナツメの手を取り頭を下げると彼女は頬を赤めらせながら「分かったよ」と呟き再び読み始めた。
ー--
2人で机に向かい読み始めて30分が経過
以前と同じく未知の言語で内容は理解できそうにない。それでも二人で1ページずつ丁寧に読み込めば何か分かるかもしれない。無意味な期待を寄せつつ暫く本を読み進めて気が付く。
前にパラパラと読んだ時にもこの本には数式とグラフ等の図が使われていた。折れ線、縁、数表、どこにでもありふれた統計を現す図である。目を付けたのはそこに書かれた単位と数値と式だった。ここに書かれた数字と単位のみ何故か一般的な単位である。
「(ま、単位が分かってもグラフの内容は読めないから意味が無いんだけどな)」
一方ナツメは真剣な表情で俺の隣で黙々と未知の言語を目で追っている。俺とナツメは今同じものを見ている。しかし今の彼の様子はまるで別人の様だった。彼はその読めない文字列を見入っている。
その瞳は俺の知らない世界を捉えているようであった。俺がページをめくるより先に、俺が内容を理解できないうちにも彼女はどんどん先のページへと進んでいく。もしかして、ナツメはこの本について知ってる?
「ナツメ、この本について知ってるのか?」
「いいや、本は僕も初めて見た。けれど……」
ナツメはスマホを操作し自身のカメラの映像からの古い文献の画像を表示した。いつに書かれた物か分からないそれは今にも崩れそうで文字は断片的にしか判断できない。何とか拡大して一文字だけを解読すると確かにどこか見たことのある形状だ。書物と比べると見つけた字は確かに同じ字であった。
「古代鳴葉の字だよ。神社の資料で見た」
「……おい、マジかよ」
なんと、言語を特定できてしまった。説明曰く古代日本のローカルでドマイナーな古代の言語だそう。いや、この本書いたの誰だよ。そして何でこんな物があるんだこの家。あまりにも字形が違い過ぎてなのと雰囲気で洋書かと思ったわこれ。
ナツメにどうしてこんな資料があるのか問うとやはり彼の実家の神社関係だった。彼の家は鳴葉で一番の観光地、鳴葉稲荷神社及び鳴葉大社関連らしい。稲荷は江戸、大社の方は建造物自体は最近再建されたが信仰の本流は古代から続いている有所正しき神社だ。
「知り合いがちょっとこの手の研究してて…………うん、これが50音の対応表。ただ字の形が変わっただけだから読み替えすれば読める」
しかも解読まで進んでいるそう。試しにタイトルと序文だけ少し解読してみた。
タイトルは「神殺しと竜因果の覚書」、著者は「月輪皐月」、序文にて大きく書かれたのは『竜とは因果である。神とは概念であり竜はその進化、あるいは亜種である』と書かれていた。少し飛ばして本論の部分では数表の通りの良く分からない内容ばかりである。成程、解読したところで理解までの道のりは遠そうだ。
少なくとも竜についておとぎ話や伝説ではなく生体として詳細に研究を進める誰かが存在した、という事だ。
にしても……まさか日本にこんな古代文字が存在してたとは。他に古代文字といえば胡散臭い物ばかりが検索欄に出てきて心配になったけど本当に使っている人物がいるとはな。それに古代文字まで使いこの分厚い本を書き上げた月輪という著者は一体……
「ゴメン、ちょっとこれは僕の方が読みたい」
再び読み進めようと次のページに手をかける。が、そこでナツメが本を奪い取り自分の方へ引き寄せた。
「済まないけどここから先は僕が研究してもいいかな」
「え、どういうことだよ。ここまで来て読むなとか」
「簡単な話だよ。単にこの本に興味があるからと10話も使って今だ茶番しかできてない大問題があるから。タイトル詐欺もしてるし」
ナツメは清々しい笑顔でそう言った。当然俺は彼に抗議する。しかし、ナツメは頑なに譲ろうとしない。俺だってこの本は興味ある。竜について書いてあるなら俺も喉から手が出る程欲しい。というかそれは俺が借りた物だから又貸は不味いのだ。
「違う。僕はこの本の内容が知りたいんじゃなくて、どうしてこんな物が存在するのかだよ」
彼は机を離れ窓を開けて腰掛ける。窓からは森の優しく涼しい風が流れ込んできて心地よい。風に靡く髪をかき上げる横顔は女性的で、神秘的だった。
ナツメは本を開き、指でなぞりながら語り始める。
「おかしいとは思わない?鳴葉の言語で書かれた本が何の管理も無しに価値も分からない君に簡単に預けるだなんて」
言われてみれば確かにその通りである。そもそもこの古ぼけた本が何故ここに存在しているのかすら疑問なのだ。
「古ぼけた……ははは!」
ナツメは突然笑い出した。彼はスマホを俺に投げ、画面には先ほど見せられた古い資料を突き付けた。
「この字が使われたのは鳴葉の文明の黎明期、信仰すら存在するか危ういような時代の文字を使用して現代の文体で書かれた書物がただ古草いだけの無意味な本の訳がないだろう」
その本は確かに先程の本と同じ文字で書かれている。更に言えば写真のボロボロの資料と比べればこの本は状態がいい。余程丁寧に保存されていたか時代が経ってから書かれたのだろう。つまりこの本は酔狂な意図的に作られたものだ。
「翻訳は僕が、研究は君が、WINWINな関係ってそれでいいんじゃない?」
「WINWINかどうかは知らないが……(貴重な資料であるなら専門分野の方に任せてみた方がいいかもな)悪用禁止かつ1週間までなら、お互いにバレない様にならな」
「OK、交渉成立だ。話の分かるLadyだね♪」
ナツメは俺の手を取り握手する。俺も彼の手を強く握り返し約束を交わした。それからナツメは投げたスマホを回収して再び窓に向かう。ナツメはスマホを操作して何かを操作し始めた。
今度は何をするつもりなのか尋ねると彼は少し笑って答えてくれた。曰く、今やっと来客の連絡が送信されたそう。遅すぎるアポイントメントだと自傷気味に彼は笑う。
「じゃ、僕は帰ってゆっくり翻訳するから。さよならねー」
ナツメはそう言って空いた窓に足をかけ飛び降りる。慌てて下を見ると既に姿は無くなっていた。前から偶に知らないところから現れたり失踪したりするし今回も一体どうやって消えたんだ。まさかこいつも人外か?
………ま、気にしても仕方がないか。解読はナツメがしてくれるなら俺は俺で情報を知ろう。とは言っても、もっぱら彼女に頼る事になるのには変わらない。スマホのメールから蕾さんに竜について教えて欲しいと伝える。すぐに彼女から専門講師を呼ぶと連絡が来た。午後には来るそうで今から事前資料を持っていくとのこと。本当にあの人万能だな。
コンコンコン
「黎人君、頼みの物だ」
いや早すぎるだろ!
困惑しながらも扉を開けると蕾さんがいた。彼女は手にした資料の束を抱えていてそれをこちらに差し出す。受け取ったそれはかなり分厚く、かなりの重量があった。タイトルだけを見える範囲で読むとどれも科学的な資料ばかりである。彼女から受け取って読んでみてもぱっと見では大学の知識では太刀打ちできない。
「もう読み始めているのか」
「い、いえ。何というか予想外にちゃんとした資料で驚いています」
「そうか。まあ書面だけでは無理はない。講師と共にゆっくり学ぶべきだ」
「専門講師ってどんな方ですか」
「私の関係者の学者だ。君の意識が戻ったのを伝えたら早速来てくれた」
「一応聞きますけど種族は……」
「人だ」
よかった。流石にまた人間の皮を被った竜は勘弁して欲しい。そんな俺の考えを見透かした蕾さんは一言付け加える。
「顔を合わせもせずに安心するにはまだ早いんじゃないか」
「えっと、どういう意味でしょうか」
「竜に関わる者に正気なんてある筈がない。最悪の場合、おぞましい物を見るかの知れない、という事だ」
そう言うと彼女は部屋から出て行った。
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