どらごんれでぃいらばーず!!!~現代日本で竜娘にTSしたけど同じ超可愛い竜娘(問題児)と支え合ってハーレム生活を満喫します!~ 作:囚人番号虚数番
週末、天気は雨。ザーザーと降る雨の中大通りで車を降りて傘を差す。厚い雲に覆われた空が光の多くを遮り暗くする。
今日は隣には誰もいない。ニエはベッドで療養中、ひいろは珍しく水竜の本社に用事があるらしく外出、蕾さんは家で仕事をしている。ここへは俺だけで来ている。
久しぶりの鳴葉稲荷は試しに少し離れたところから歩いて向かうことにした。古い建物と新しい建物が入り混じり鈍色の空もこれまた趣深い雰囲気だ。人も普段より少ないからか静かな街に雨音だけが響く。何だかいつもとは違う所に来たみたいだ。
……本当に、違うところみたいだ。よくわからないけれど神聖さ、というのが普段とは違う。物の解釈というか発見力に関してより聡明になってきている。竜となってからも不思議な事は無数にあるもこれは前回の死亡から起きた現象だ。
ざああああ……
「…………」
だから今日が雨で心底良かったと思う。霧がかっているお陰で視界が悪い。角を傘で隠しながら神社前の大通りを上る。人が少ないとはいったものの少なからず人が訪れているらしい。お土産を買う人や雨が止むまでカフェで待つ人が見て取れる。その店の明かりが薄暗い通りを照らす。
途中、通行人とすれ違った。何てことはない、観光の日と雨天の被った観光客らだ。ビニールの傘とスマートフォンを持つ。稲荷で買ったお守りも付けていた。天気と反して騒ぐ彼らを避ける。
「………」
誰にも気づかれないよう彼らを目で追う。勿論彼らに何かがあるわけではない。ただ不思議と目で追っていた。どうしてだろうか、敵意を向けられたり何か異常な存在でもないのに今は彼らにえも言われぬ感覚を感じていた。
認知した現象を強いて言うのであれば、鼓動が少し早まった位だ。
「…………」
いけない、服が濡れてしまう。雨が強くなる前に神社に向かおう。大通りの突き当り、鳥居をくぐり川のように水が流れ落ちる石段を登る。凍えるような寒さに手が震える。濡れた尻尾も湿度が高いせいか膨らみ重い。対照的に頭の角は軽い。あまり意味は無いが。
階段を登り切り境内に着く。ここには今は人がいない。今朝の観光客が最後だったらしい。まだ昼間なのに、不思議な事もある物だ。しかし唯一明るい授与所には俺の見知った顔がいた。
「やっほー」
「ナツメ、久しぶりだな」
巫女服の彼は俺に向かって手を振る。
「ようこそ鳴葉稲荷へ。どんな用?」
「あー……知り合いとここで待ち合わせだ」
「へー、雨の日なのにご苦労様」
知り合い、嘘はついていない。命の恩人の神様というのが実際の真実である。自身が竜であると知っているなら言ってもいいかしれないもが……まあ、余計な事は言わない方がいいだろう。
彼には以前神殺しと竜因果の覚書を貸していた。今の件とはあまり関係はしないけれど少し気になって聞いてみた。それに月輪先生にも研究を頼まなければいけない。
「あーあれね。結構面白い事書いてあったよ」
「例えば?」
「竜の生態とか竜の住む次元について。だけどあまりあてにしない方がいいかもね。だってあの本は文字通り『覚書』でしかないからね」
「覚書……つまり意味通りただのメモなのか?あんな分厚い本がか?」
「うん、内容的に別の研究資料を書き写した物みたい。書き出しから数ページの部分だけは本を丸写しだから固い文章だったけど30ページくらい先からは大分文体が変化してる」
つまりあの本は粗製の二次的な資料だというのか?そう思うと急にあの本の重要性が俺の中で薄れてくる。が、すぐにナツメの言葉の真意に気が付き思い直す。あの本は書き写した物、つまり何か元なる文書が存在するという事だ。
「Yes♪ だからまだまだ希望はあるね。ああ、少し話しすぎた。今は待ってる人がいるんだっけ、彼らが何か知ってればいいね」
「……ああ、だな(情報を持つとすれば水竜、あるいは今から出会うであろう狐の神様だ。知っている確率は無くはない)」
俺は振り返り社を見る。雨は更に強く、雷も鳴り響く。彼女らは会いたければここに来いとは言っていたが果たして今日は来るのだろうか。神様ならこの悪天候すら跳ね除けて颯爽とやってくる、その幻想は現実になるだろうか……いや、夢は夢であるべきだ。竜ですら徒歩で来たのだ。神だって現実の存在だろう。
「ナツメ、やっぱり今日は帰……」
また振り返ると彼はいつの間にか居なくなっていた。電気も消え、授与所も閉まっている。声をかけても何も返ってこない。そもそも開店時間は今から1時間後だ。まさにそこには初めからそこには誰もいない状態であった。
「……ナツメ?」
まさかと思い携帯に手を伸ばす。するといつの間にかナツメからの着信が2件あった。1つは「もしかしたらこっちの方が御利益があるかも」と添えられた鳴葉大社までの地図、そしてもう1つは丁度今日やっている女児向けのアニメを見ながらそのアニメのキャラクターのコスプレをしながらセルフ緊縛をする彼の姿であった。因みに後に知ることになったが放送時間的に絶対にありえない写真である。
もう何が何だか分からない。彼はギャグ時空の住人なのだろう。
困惑しながらも俺は授与所を離れるそして神社の敷地内を適当に回る。年末年始以外に神社など来ないから改めて観察すると中々趣深い物がある。意外な事に稲荷という名が付いているのに狐の姿が一向にない所は今日初めての発見だ。あといつの間にか萌え絵の絵馬が導入されている。
「狐の絵馬だなんて、あの子達そっくりだな」
「ああ、悪趣味な偶像だ。こんな低俗な絵になど描かれとうなかった」
ふと、上から声がした。そこを見ると狐耳と白い髪の義足の少女、鳴葉だ。彼女は神社の建物の上に座り、僅かな屋根で雨をしのいでいる。
「お主あの時の竜であるか。我ら神に何を頼りに訪れた」
彼女は俺を見下ろして高圧的に問う。
「あなたにお礼をしに来ました」
「礼?はっはっは!供物も無しに礼か!流石竜だ、身の程知らずは変わりないな」
彼女は笑いながら俺を貶す。だが別に悪意のある感じではない、寧ろ冗談のようであり彼女なりのコミュニケーションなのだと思う。
「まあいい、今は物乞いに堕ちる程我は困っとらん。人並に『信仰』」はあるそうだし今は許そう」
そして彼女は一人納得して俺は許された。しかし神社に来て一つやっていないこともあるしお礼と言える物はもっているから少し彼女に献上しよう。雨の当たらないお賽銭箱に移動する。財布を出し適当にお小遣いを抜いて、箱に入れず鳴葉を呼ぶ。
「んお?どうした、我など呼んで」
「お賽銭として渡すより直接手渡ししたほうがいいと思いまして。はい、5万円です。少ないですけどお礼としてお納めください」
常識としては高額だがひいろからのお小遣いはまだかなり残っている。命のお礼として燐火という黒い狐と分合って使って欲しい、彼女に伝えて手渡しした。鳴葉は手渡されたそのお札を見ると何度かお札の枚数を一枚一枚丁寧に数え、頭での理解が追いつくと興奮で手を震わせていた。
「な、なんて愚かな真似をしよる!こんな大金、いっちゃ悪いがこんなところで浪費せず考えて使うべきであろうに!」
「いいえ、命の対価としては安すぎるくらいですよ」
「そ、そうか。ならありがたく受け取っておこう」
彼女はニヤけながらお金を懐にしまう。その間ずっと信者からの供物なら仕方がない、とブツブツ呟いていた。もしかして神様って意外と俗っぽいのだろうか。見た目は本当に小さな少女なのに大金でだらしない顔になるなんてちょっと引く。
「む、何故そのように我を見る」
彼女は俺に詰め寄って頬を膨らませる。身長が足りていないせいで微妙に上目遣いでプンプンという効果音が似合う。雰囲気的に少しニエと似ている。
「あ、いえ。ちょっと……思ってた神様より「強そうか!宜しい、中々嬉しいことを言う奴だな」
「(前言撤回、ニエよりチョロい!絶対こいつ扱いがニエよりチョロくて扱いやすい!)」
他人かつ自分より遥かに強いと知ってもこの子の将来が心配だ。多分こういう純粋そうな子が黒姫みたいなのが真っ先に食いついきそうだ、確信に近い予想をした。
ーーー
「ふーむ、お主はあの後赤き竜に殺された、と。大口叩いた割に呆気ないのだな」
「はい、そうなんです……お恥ずかしながら」
雨の神社を歩きながらを二人で歩きながらを話す。時間的にちらほらと人が増えてきた中雨音が俺達を隔離する。異質な二人だが、まるでそこに存在しないかのように見向きされない。
俺もそれに気がつくと不思議に思う。彼女と話しながら一人不自然な光景にあたりを見渡した。
「人、先から我らは見えておらぬ」
彼女にはお見通しのようだ。もしかして神様特有の特別な力があるのだろうか。
「左様。まさか気づいていなかったのか?お主は人は元より、竜よりも我ら、それ以上に神に近き存在だ。気配くらいなら簡単に消せよう」
「はぁ……え?」
神に近い、竜ではないまた別の上位存在だろう。しかし……謎が謎を呼ぶ、竜ですらやっと触れたばかりなのに。
「俺は……俺は誰で何なんだ……?」
自然と本音が漏れた。
「なら彼らを紹介しておこう。あれは冒涜的な奴等で神の扱いには滅法強い」
すると彼女は俺の手を掴み突如雑木林に突っ込む。流石に想定外であり何度も泥濘んだ地面に足を取られた。豪雨に視界を遮られ……
「……あれ?」
現在位置 XXXXXX LADY
足元の石と草に気を付けながら目の前の木々を掻き分けて進む。すぐに川が見えた。木の壁を挟んだスペースにしては広い空間、その中に一本の川が流れている。
光景こそどこにでもある山の中の川だ。しかしこの辺りには川など無く、先程の雨が嘘のように森の開けた所から青空が広がる。先程とは全く別の場所に来たかのようだ。
神社の雰囲気とはまるで違う神聖な空気感に俺は呆然とする。美しい、ただ概念的に美しい。どこかで見覚えがあるような知らない光景。この感覚は今までの何からも感じられない……いや、何故だろう。あの夜のニエの狂乱に似た美しさを想起した。
「ここは?」
「神域。神と竜が生まれる空間、その入口だ。ここであれば概念には昇華しない。たまに人が訪れることもあるだろう」
彼女は俺をそこに連れたのを見届けるとすぐにさっき入ってきた道に戻る。帰り道はあるみたいだ。俺は河原を歩み川を覗く。綺麗な水が深くの水底の闇を写す。
静かな川を少し下る。水音と木々の揺れる音が響くここは心地がいい。いつまでもここで座っていたくなる。しかしつい先程誰か来たのか所々が濡れていて赤い液体も散っている。怪我か、或いは……
そして遂に誰かを見つけた。遠くの岩場に誰かがいる。自然の中にぽつんと一人、今の自分と一人なのは同じようだが彼女には存在感がある。
「…………もしかして新人の職員さんですか」
「ひいろ!?どうして体から血が……!」
「ああ、黎人さんでしたか。遂にここに辿り着いたのですね。少々助けていただけませんか。またしくじってしまいました」
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Q:タイトルに見覚えがある
Aもしかして→つゔぁいごっどねす!ふぉっくすふぁいあ!!!