どらごんれでぃいらばーず!!!~現代日本で竜娘にTSしたけど同じ超可愛い竜娘(問題児)と支え合ってハーレム生活を満喫します!~ 作:囚人番号虚数番
座りながら彼女の血をハンカチで拭く。彼女は全身を水で濡らしていた。入り口が同じだとして、通り道には俺以外通った跡は存在しないから川の水で濡れたことが分かる。天気予報は早朝と夜は晴れ、だから彼女は傘を持っていなかった。
彼女の傷は全身に広く分布する。複雑な傷口で何が原因でこうなったのか想像がつかない。不自然な箇所で四肢が曲がり少し体を動かすだけでも痛みに顔を歪ませていた。
「モバイルバッテリーはありますか……電池がまだ残ってるの……」
不意に彼女が聞いてきた。持ってはいるが今そんなものが必要なのか知らない。しかし、ひいろなりの考えがあってのことだろう。迷うことなく彼女に手渡す。
「ありがとうございます……じゃあ、少し離れていてください……」
「わ、分かった!」
「もっと、10mくらい……はい、そこ……」
走りながら後ろを見るとパキッと砕ける音とともに俺のモバイルバッテリーが発火した。彼女はその火を使い無理やり傷を塞ぎ出血を止める。
「はぁ……はぁ……」
「ひいろ!何してんだお前!」
「内蔵を……治したいので……ゲホッゴホッ……止血しました……」
「全身燃やして何が止血だ!消火しないと死ぬぞ!」
俺は炎を顧みずバッテリーを腕ごと木材で川に飛ばした。そしてすぐに彼女を持ち上げて川に体を沈める。鼻と口は浸からないように気をつけて消火した。
「うぅ……ぐっ!」
バッテリーを持つ手は爛れたが彼女は腕ごと折って再生をした。それを最後に彼女は黒焦げのママ動きを止めた。俺は彼女を水から離して再び岩場で寝かせる。息は微かにあるから一応は生きているようだ。しかしそれ以外の兆候がないまま彼女は全く動かず気の休まらない時間となる。
「頼む…………生きててくれよ……」
再生能力を持つ彼女に誰がここまで傷を負わせたのだろう。首を飛ばされても尚再生した彼女がここまでになるなんて。彼女は不死性を持ち並の事では復活する。
それから10分後、彼女の指先が僅かに動いた。関節の曲がる度黒焦げた肌が割れ落ち傷のない肌が顕になる。彼女は体に付着する炭を払い、ゆっくりと時間をかけて立ち上がった。服が焼け殆ど全裸だがそれより今は彼女が無事に生きていた事に安堵する。
「ひいろ!大丈夫か、その体!」
「ええ、心配させてごめんなさい。止血と外傷は治りましたし後は内蔵をほんの20分治癒するだけです」
「そ、そうか……」
ーーー
彼女の傷が完全に完治する20分間、俺は今抱いている謎について少し話すことにした。
「私がここに来た理由ですか?実は水竜の本社で身体検査に呼ばれまして」
今日は彼女の定期健診らしく本社に訪れていた。とは言っても彼女の身体についての文字道理の調査、即ち不死性の測定としての側面が強い。今日はたまたま内臓を多く調べられ帰り道に貧血気味になり休んでいたらしい。
「一人でここまで歩いてきたのか?歩ける体じゃないだろ」
「ええ、しかも無麻酔手術だったから今もくらくらします。麻酔があっても結構痛いですけどね」
いつものように笑ってはいるが作り笑顔なのは明白だ。彼女には無理をして欲しくはない、けれど……受け入れた所で、体が持つとは限らない。
曰く自身の身体に関しては幾度にも類似した実験が行われたらしい。しかし成功例は未だなく重なる予算を抑える為に実験に不必要な作業以外は最低限の処理までに抑えられている。全ては竜と自身の処分の為だ。度し難い、字いくら何でも外道である。
ここがどこなのか彼女に問うと神域の玄関口らしい。人の住む世界と竜と神の世界、まだ尋常な法則の働く空間である。水竜の本社はここから更に別の空間に位置する。
神域はこの先の川を登れば登程より深部に向かい、下れば混沌が広がり何が起こるか分からない。混沌とはつまり異世界でありあらゆる法則の挙動が異なる世界があるらしい。だが少なくともここの近辺から迎える場所は本社の場所だけらしい。
「(竜は色々奥が深いとは感じていたが……何なんだコレ)」
「ところであなたは何をしているんです?」
不意に質問された。俺はニエの騒動の時のお礼参りと伝える。彼女はしばらく遠くを見ていた。ふと俺は彼女はこの先どうするつもりなのだろうと疑問を抱く。
「私はここで待っています。私にはまだ最後の実験がありますから」
彼女は自嘲気味に笑った。確かに彼女にとってここは居心地の良い場所では無いかもしれない。しかし、彼女はここに残る事を選んだのだ。俺にはそれが理解できなかった。
「なんでだよ……お前ならどこでもやっていけそうだろ……こんな所にいる必要ないじゃないか……」
彼女は少し考え込むような仕草をして俺の方を見る。
「いいえ、実験は辛く危険な物です。それでも、私は彼らには逆らう理由は無いのです」
彼女は俺の目を真剣に見つめて言う。説明はせずとも強い覚悟の上で自分から修羅を選んだのは明白だった。どうして彼女は態々命を賭してまで実験をするのだろう。俺の中にはそれに繋がる情報が1つある。
「『処分』されてもいいってことなのか?ニエを置いて、お前は一人で拷問されて……あんなにニエにぞっこんで友達も多いのにお前が本気で言ってるとは思えない」
少し発言にハッタリを込めた。むしろ俺が間違えであってほしいという願望を込めあえて含んだ。しかし彼女は悲しそうな顔をするだけだ。ふと、彼女は立ち上がる。そして足首までが沈むまで川の水に歩を進めた。
彼女はそのまま俺の顔を合わせずに明るい声で意外な事を言った。
「私は死にません。だから今なお処分の方法が実験により検討されています」
沈黙、空気感を無視した場違いに優しい水の音だけが辺りを包む。彼女の表情を伺うことはできないが声音からは悲しみしか伝わってこない。
彼女は不死性の実験の為に何度も死んでいると言う。首を切られ、心臓を潰され、腹を裂かれ、全身を焼かれ、四肢を切断され、薬剤投与、これらの苦痛を味わっても尚彼女は生きているらしい。不死性とは文字通りの意味で、彼女の不死性は彼女の生命活動が停止しても尚生き続ける。肉体の万能さはあるものの当人からしたら生き地獄そのものだろう。
「お前は、本当に死にたいのか?」
「ええ、私の死を望む彼らとは理由は違いますけれど同じ目的の為に協力しています。私は生まれついて死を望まれていました。自分でもあんな汚物があるとするならば当然だと納得しています」
汚物、意味は分からないが普段の彼女からはかけ離れた発言。日常の裏で彼女は何かを抱え続けていたのだろう。
「でも最近水竜の会社経営のお手伝いは良い暇つぶしにはなっています。お小遣いも増えできる事も増えたので少し有意義ではありましたけれどね」
「(会社経営が暇つぶしなのも色々おかしいけどな)」
「しかし辛い物ですね。自身の死亡を実現する、生きる意味が死とは……」
再び俺達は沈黙した。
「黎人さん、少しこちらへ。できれば手を取ってもらえませんか」
彼女は後ろに手を少し向ける。俺は彼女の手を握り隣に立った。川は真冬の湖の様に酷く冷え切っている。対照的に彼女の腕は優しく暖かだった。そして彼女が少し強く手を握った。
「いつ、私は終わるのでしょうか」
囁くように彼女は呟く。声は不気味な位落ち着いていた。
「ひいろ、お前は……」
「私の事は気にしないで下さい」
彼女はそう言いながら俺の手を引いて川から上がる。俺は彼女に何か言わなければと思ったが何も思い浮かばなかった。ただ、彼女の手を握る力が強まるばかりだった。まるで俺を逃がすまいとするかのように。
しかしそんな感触はすぐに消えた。彼女は唐突に腕を離した。俺はバランスを崩しその場に尻餅をつく。すると彼女の姿は消えていた。俺は慌てて立ち上がり周囲を見渡す。
が、次の瞬間森の中から物音がした。2人の足音で明らかにひいろではない雰囲気だ。そして防護服に身を包んだ者と爬虫類と人の女性を混ぜたような存在、竜が現れた。どちらも顔は確認できない。
彼らは俺を見ると顔を合わせて何かを話して近づいてきた。声は籠って聞こえづらいがかろうじて聞き取れた。
「!? おい、どういうことだこれ……姉さん、分かるか?」
「さぁ、私にもわかりかねます。神が同席していたかと思えば竜だとは。報告も受けていませんし彼女が備考に書かれた緋刃でしょうか」
「写真資料では赤い竜か女性だったから誰なんだあの子。まあ彼女には帰ってもらって処分方法を試そうか……実験とはいえ、辛いな」
「ええ、ですね」
そして彼らは俺に接近する。俺は十分警戒して身構えて同じだけ近づいた分を距離を離して彼らに聞く。
「お前らが水竜の奴らか?」
すると彼らは静止しお互いに視線を向け口を開いた。
「そうだ。水竜コーポレーション特殊機動部隊所属特殊戦闘兵『凍竜【氷弩】』俺はその補佐だ」
特殊機動部隊、蕾さんと月輪先生の所属と同じだ。防護服の男は気配は人間で背丈は170㎝程。口調やもう一人との会話から何故かかつての俺と似た雰囲気がある。竜の女性の方は水色と白のゴスロリ風の鎧であり顔は兜で隠れている。スカートの穴からは長く氷に覆われた尻尾が生え、手足は一見防具のようだが正体は自身の甲殻と爪であった。
「……っ!」
「お前はどこから迷い込んだ。水竜が目的なら俺らは相手しない。さっさと帰れ」
男が冷淡に俺に言う。俺が無関係そうだと察すると俺を無視して去っていく。向かう先は川の上流方面だ。既に女の方はいない。もしかして彼女は上流に……
だが、それがいけなかった。
まず感じた以上は凍り付くような冷気。生物が到底生存できる領域から遥かに低い極寒。川は凍り付き河原の石には霜が下りて、幾多の氷の柱が生えていた。空気すら氷白く染まる世界の暖色は赤い血で氷の柱の僅かな合間から漏れ出し凍り付いていた。
氷の柱には血以外にも凍り付き剥がれた肌と擦り潰されたどこかの肉がべったりと付いている。視線を更に上に向けると柱の合間から指の欠けた腕が生えていた。そこから人体構造を予測し近くを見回すと……ひいろと目が合った。全身が幾多の氷の柱に貫かれ辛うじて残る頭は確かにひいろであった。
「ひぃッ……ひいろ!」
息が白くなるような低温と残虐な光景に本能的な恐怖を覚える。怯えながら彼女の名前を叫ぶも返事はない。代わりに空気以上に冷淡に氷の竜の女、氷弩が一言
「第一工程、終了しました」
たったそれだけを男に伝えた。
「……よくやった。実験開始だな」