どらごんれでぃいらばーず!!!~現代日本で竜娘にTSしたけど同じ超可愛い竜娘(問題児)と支え合ってハーレム生活を満喫します!~   作:囚人番号虚数番

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25 Dragon lady

「第二段階、苗床の拘束及び輸送を開始します」

 

青い竜は氷の柱から刃物を使って器用にひいろを切り取る。氷の柱に巻き込まれなかった比較的大きな塊を切り出すと金属製の容器に入れた。彼女は男に容器を渡す。

 

「全く、脱走なんてするから余計な事させるんだぞ」

 

彼は容器の中のひいろに愚痴を言う。口調からは明らかに苛立ちと呆れが感じられた。竜と男は俺には目もくれずどこかに去ろうとする。

 

ドッ!

 

「うおっ!」

 

脚は自然と動いていた。足元が悪い中で精一杯加速し後ろから男に突進する。女の肉体だとパワーが足りないのは承知、しかし不意打ちが出来たのなら上出来だ。そのまま彼から容器を奪い取り中身を出す。既にひいろの体の再生は始まっていて血の付いた腕の付け根の肉がうねうねとうごめいている。

 

「逃げるぞ!」

 

聞こえもしない叫びをし、彼女の腕を持って一目散に彼らから逃げる。せめて河原の入口に走り知っている場所へ、蕾さんにも頼る時間が無い以上今は俺の自力で解決しないと。後ろを振り返ると相手はまだ追いかけてきていない。再び前に向きなおし木々をかき分け前へ進む。

 

 

 

「あのガキ、私達をコケにして逃げやがって……早く追いかけましょう」

 

「いいけど苗床以外の殺害許可は出てないから癇癪おこして殺すなよ。姉さん」

 

 

ー--

 

「はぁ……はぁ……どこだここは」

 

木々をかき分け出た先は鳴葉稲荷とは全く似ても似つかない廃墟の裏であった。一応倒れた鳥居と社であるとは示しているも何十年と放置されたような荒れ具合だ。

 

どうやら戻る場所を間違えていたらしく見知らぬ場所に来てしまったらしい。ここは鳴葉稲荷の位置から物理的に存在しえない場所であり少し不気味に感じた。

 

それより今はどこかに逃げないと苔むした石段を駆け足で下る。木々で見えなかった街の部分が露になっていく。ここはどうやら田舎街らしい。緑豊かな里山と田畑が広がる。家もここから見ても数件がポツポツ点在するだけであり俺の実家より状況は酷い。

 

しかし遠くには高いビルが無数に立っているのが見えた。田舎の街には少々場違いに思えるも今はどうでもいい。一先ずあそこまで逃げれば電車でも何でも逃亡や船腹には困らない。ひいろの再生が済んだら一度あそこに逃げる事も考えないと。

 

知らない場所の知らない道を走る。重い片腕を抱え未舗装の道路を走るのは中々に疲れる。しかし彼女があれだけ恐怖しているのなら俺だって命張って何かしないといけない、前に殺されたのに相変わらず俺も学習しないな、自傷気味に思った。

 

それから10分程走り続けて足を止める。人の気配の無い森の中、まだ距離的には安心はできないが俺も疲れた。少女の体で足場も悪いならこれでもいい方だろう。

 

茸の生えた切り株に座る。彼女の腕を観察すると肩までは再生していた。体力が尽きたのは段々と再生と共に重量が上がるというのもあるだろう。前回の全身再生も考えるとこのまま逃げ続けるのは不可能だ。どこかで数時間匿ってもらいひいろの再生を待たないといけない。

 

だが頭を抱える暇も相手は与えてくれないようだ。俺の後方から只ならぬ冷気がし、振り返ると青い竜が立っていた。

 

「早く苗床を返しなさい」

 

彼女は冷酷に彼女を求める。誰がお前らに渡す物か。俺はひいろの腕を強く握りしめながら彼女を睨みつけた。

 

「そうですか、では力ずくで返してもらうまでです」

 

竜は氷柱を作りだしこちらに向けて発射する。慌てて立ち上がり避けようとするも右腕の重さのせいでバランスを崩し転んでしまった。それでも何とか横に転がる事で回避に成功する。

 

竜は更に氷の槍を作り出し今度は俺に向かって投げつけてくる。流石にこれは避けられないのでやむを得ず左腕を犠牲にする。グサッ! 鈍い音が響くと同時に激痛と熱さが襲ってくる。

 

左腕を見ると肘から先が氷によって貫かれていた。痛みに耐えながら必死に手を引き抜くと腕が地面に落ちる。断面からは血が流れ落ち、その光景に吐き気を覚える。

 

 

「ぎあ”あ”っ!」

 

ただもう一度体験した事だ。ひいろを救えなければどちらにせよ死ぬしかないだから俺は何でもしなければ。どうにか正気を保ちつつ再び立ち上がると彼女の腕を拾い上げ急いでその場から離れる。

 

待て!と言う声が聞こえるも無視する。

 

向かった先は森のより奥深く。ここなら多少は安全だと信じたい。が、しかしそんな希望的観測はすぐに打ち砕かれる事になる。突然背後から衝撃を受け吹っ飛ばされる。

 

 

「うわぁ!」

 

背中から木に衝突し肺の中の空気が全て吐き出される。そのまま地面を転がり仰向けになる。何が起こったのか分からない。混乱しながらも起き上がろうとすると腹部に強い圧迫感を覚えた。

 

「ぐふぅ……おぇ……」

 

胃液が逆流し口から出てくる。苦しさから視線を下にやると青い竜が俺の腹を踏みつけていた。

 

「逃がしませんよ」

 

彼女は冷たい目をしながら足に力を入れる。ミシミシと骨が軋む音を立て、内臓が潰れていく感覚が分かる。

 

「苗床を渡せば楽に殺し……見なかった事にしてあげます」

 

「嫌だ……絶対に」

 

「ならば仕方ありませんね」

 

竜は足に力を込めより強く踏みつける。あまりの苦痛に悲鳴を上げた。視界がチカチカと点滅し意識が飛びそうになる。ただここで気絶すれば待っているのは死のみだ。歯を食い縛り耐える。

 

しかしこのままではジリ貧だ。何か手は……

 

「渡したく無いのであれば大人しくして下さい。抵抗するだけ無駄ですよ?」

 

竜は足をどけると俺の髪を掴んで無理やり顔を上げさせてきた。

 

「(きたっ!今だッ!)」

 

彼女が俺の顔を覗きこんだ瞬間俺は片手で自身の角を潰す。白い液体がまき散らされ竜の顔にかかる。角の液体は相当な量だ、のぞき穴のような小さな隙間でもかなりの液体が目にふりかかる。そして計算通り不意打ちに成功し彼女は急に手を離したので手を横に引っ張り彼女を転がす。

 

「目つぶしなんて搦め手っ!こんのくそがァ!!」

 

彼女は怒り狂いながら立ち上がってくる。しかし俺は既に行動に移っていた。すぐに起き上がり俺はまたどこかに逃げる。後ろを振り返る余裕は無い。今はとにかく逃げろ、そう思いながらひたすら走り続ける。

 

 

 

しばらく走り続け、もう追ってこないと思い足を止める。

 

どうなった? 恐る恐る振り返り確認するとそこには誰もいなかった。

 

「(は、ははは。やった、やったぞ)」

 

しかしまだ安心はできない。ひいろの再生は終わっていないし俺自身もかなり消耗している。あたりを見回して現在位置を確かめるとどうやらここはあの神社の廃墟の近くだった。森を無我夢中ではしっている内に綺麗に一周してしまったようだ。遠くに逃げていたつもりなのにコレでは森の中を隠れて進むのは現実的ではない。

 

かといって道に沿って進むのも困難だ。片腕は無く血だらけ、かつひいろの腕を持っている現在の状況は第三者から見れば通報されかねない。つい最近も似たことをしてはいるけれど難易度は段違いだ。

 

それでも俺は前に進む。とにかくここから離れなければ二人まとめて捕まる。ならばせめて彼女だけでもどうにかしないと。ひいろの腕は再生してきているがまだ時間がかかるだろう。それまではなんとか隠さなければならない。

 

ところで携帯の電波は……無い。ならば神社の廃墟に向かう事にする。敵がこちらを狙って神社から離れた以上竜はいない。元の世界に戻り蕾さんに救難を……いや彼女も水竜だ、仕方がないがナツメに救難信号を送ろう。

 

貧血と痛覚で何度も意識を堕としかけながら道を進み石段を上がる。

 

しかし数段登ってから流石に俺の体力は限界でついに足が止まる。息を整えていると視界がグラついてきた。ああ、これは不味い。初めてのタイプの死の感覚だ。続けて足の力が抜ける。

 

「クソッ……こんな所で……こんな所で死ぬのかよ……!」

 

必死に腕を伸ばすが石段に届かない。そして俺は意識を手放す。

 

 

 

 

 

しかしその時奇跡が起きたのだ。

 

「…………い!……な所で………!」

 

誰かの声が聞こえる。

 

「しっかりしろ!おい!」

 

頬に衝撃を感じ目が開く。目の前には……誰だろう。どこか男の俺に似た雰囲気の中年の男がそこにいた。

 

「大丈夫か!?」

 

その男は俺を抱き上げると肩を貸してくれた。

 

「……ぅ…………」

 

俺は男に支えられつつ立ち上がる。どうやらこの人は助けてくれようとしているらしい。それから彼はしきりに俺について聞いてきたけれど今の俺にそれに応えるだけの力はない。そして俺が相当な重症だと判断したのか彼は俺を背負うと歩き始めた。

 

しかし何故だろう。この光景が妙に懐かしい。小さい時の立った数回だけ確かにこんな道を誰かと歩いた気がする。同じ田舎だから実家と混同しているのだろうか。そんな事を考えながら俺は彼に身を任せるのであった。

 

 

ー--

 

「……ぅ……ん……」

 

次に目覚めた時最初に見えたのは見知らぬ天井だった。起き上がろうとすると身体中が痛む。よく見ると左腕はちゃんと再生していた。

 

隣にはひいろが寝ている。見た目だけは全身再生しているようだ。時計を確認するとあれから1時間程度、恐らく内臓はまだ再生していないだろう。

 

そしてここはどこだろうか。見回すとここは普通の家の一部屋だ。窓から外を見るとどうやら神社の近くらしい。内装的にはこの部屋は普段はあまり使っていない様に物が無い。探索の過程で置手紙を見つけ、読んでみると『起きたら一階に来てくれ』との事が書かれていた。

 

俺はひとまずひいろを起こすことにする。しかし揺すっても叩いても全く起きる気配がない。仕方なく俺は一人で下に降りる事にした。階段を降りて玄関に行くと部屋の中から誰かの話声が聞こえた。俺は耳を澄まして中の様子を探る。

 

「で、竜の女の子を連れて来たんだ」

 

「ああ。もしかして怒ってるのか」

 

「そんなわけないよ。拓海が困ってる人を助けたいなら私も協力するよ」

 

「良かった。一応子供らも呼ぶか?今ならあいつらの方が扱いは詳しいだろう」

 

「そうだね。私も賛成する」

 

「じゃあ様子見てくる。多分すぐ来ると思うけどお前らはここで待っていてくれ」

 

「わかったよ。気をつけてね。その子かなり衰弱してるみたいだし何かあったらすぐに知らせてね?」

 

「わかってるよ。んじゃ行ってくる」

 

……どうやらあ二人は若い夫婦の様だ。会話の内容的にあの人が俺を助けてくれたのかもしれない。そして会話の通り男の方が出てきた。

 

「お、やっと起きたか。具合はどうだい?まぁあんまり良くはなさそうだけどな。とりあえず中で座ってろ。飲み物持ってきてやるから」

 

「ありがとうございます。えっと……貴方は一体……」

 

「そうだな。俺は滝沢拓海だ。君は?」

 

「洋野黎人、大学生です」

 

俺の答えを聞くと男は目を見開いた。

 

「……洋野、黎人?彼女、あの見ためで彼なのか?」

 

男は独り言の様に呟く。内容は何がなんだかさっぱりわからない。そして彼は俺をリビングの中に通しソファーに座らせる。俺と彼ら夫婦と対面する形になった。

 

「もう一度確認だが君は洋野黎人、大学生でいいのか?それと名前的に君は男性だよな」

それは合っている。だが彼らは妻と思わしき水色の髪の女性と顔を合わせる。

 

「ふーん、ナルホドナルホド。確かに大学生にしては小柄でしかも女の子みたいだね」

 

彼女はこちらをジロジロと見てくる。

 

「? どうしたの黎人君?ちゃん?」

 

「あ、出来れば『さん』で。あとできれば敬語とか無しにしてもらえますか。なんか違和感があって……」

 

俺は少し恥ずかしくなりながら答える。すると女性はクスリと笑った後

 

「うん、わかった。私は滝沢ドラコ。よろしくね」

 

と元気に言った。

 

 

 

……なんか変な名前の人だ。




滝沢ドラコとは→どらごんれでぃい!!!(旧作参照)

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