どらごんれでぃいらばーず!!!~現代日本で竜娘にTSしたけど同じ超可愛い竜娘(問題児)と支え合ってハーレム生活を満喫します!~ 作:囚人番号虚数番
現在位置 鳴葉駅前神社
現在時刻 鳴葉稲荷神社から3日後
つい数年前に出来た小さな規模の神社。以前に起きた大陥没の慰霊も含め建てられたこの神社は中心地の駅からのアクセスが良く、待ち合わせ場所として有名だ。自身もその例に習い赤い鳥居の前で人を待つ。
「……遅い」
スマートフォンで検索すると電車が人身事故で遅延中だ。とはいえあと10分程度でその電車も到着する。ならばどこかの喫茶店でも入って時間を潰そうか。と、遅延情報を消し近くの店を調べようとした時、
「待たせたね、黎人君」
駅の方からナツメの呼ぶ声が聞こえ振り返る。当然、黒姫がそこにいた。いつもより気合の入った可愛らしい服で、メイクまで決まっている。
「……お前、その、男って知られてもその恰好なんだな」
「もっちろん♪それはそれ、これはこれ。黎人君もせっかくなら女の子の方良いでしょ。それに君こそ女の子だってやっと自覚してくれたらしいしね」
「(改めてきっしょいな、この変態)」
しかし恰好については人の事は言えない。今の自身の服装も黒姫と同じく女性らしい服装であるからだ。
黎人は今朝方、起床した直後に自分の部屋にあった服を引っ張り出して着ていたのだ。昨日の帰り際にこの変態がプレゼントしてくれた物だが、まさか今日使う事になるとは思わなかった。
因みに下着だけは男物を履いている。流石にそこまで女装するのは無理だった。
「それで、せっかくだから遊ばない?久しぶりの二人っきりでの『デート』なんだから遊ばなきゃ損だよね!」
遊ぶ気しかないのかコイツ。やっぱりこんな場所に呼び出さず用だけ済ませたらナツメは置いて行こうか。
「おお、ジト目もそそるけどそろそろ真面目にならないと……」
ナツメはこちらの不満に気が付いたのか急に態度を改める。だが冷静になれば要件もあるが彼と話したくて来たのだ。以前に頼んだ「神殺しと竜因果の覚書」の翻訳データと原本の引き渡しを今日行う。
だがデータだけなら態々街に訪れる必要はない。だが予想以上に自身を取り巻く状態があまりにも危険だと判断し彼には口封じも含め事前に何かしらの返礼を相談していた。が……しかし彼の指定した肝心のお礼という物が何故か「デート」なのだ。代金こちら持ちで。
……ここ数日での精神状態で遊ぶ余裕があるのか、とは自分でも思う。母親は今だ正気を取り戻さずニエもまだ治療中だ。しかし、だからこそ正常に逃げなければやっていけない。
「(ナツメが単に遊びに付き合えって言わないあたり裏がありそうだな)」
「デートプラン的にそろそろ出発しないと。遅れちゃった分早歩きで行くからね、ついてこれる?」
彼はまるで握れとばかりに手を伸ばす。彼は挑戦的な笑顔で
「なめんな。これでも一応元男の竜だぞ」
仕方がないと伸ばした手を取ると二人で街に繰り出した。
ー--
現在位置 ボーリング場
神社から少し歩いた場所にあるボーリング場。休日の昼間、若者から大人まで様々な人が集まるこの場所に二人え訪れた。
「ボーリングは久々だー。最後に彼氏と来てから振り。黎人君とは初めてどね」
「……原本」
「どうした?受付ならちゃんと子供料金で通したけど……子ども扱いは嫌だった?」
「……少々不本意。でも支払いは私だから別に」
いや、まあ、うん。あくまでデートだからね。こういう遊ぶ場所は想定していたよ。だけどまさか思ったよりしっかり用意しているあたり遊ぶ気しかねえなって。受付を済ませレーンを前にして振り返り、少し呆れただけだ。
だがせっかくここまで来たのなら楽しまないと損である。空気が悪くなっても悪いし先に玉だけもって来る事にした。一列に並べられたボーリングの球の穴に指を入れて重さを確かめる。小さくなった自身の手には普通には会わない、というか球自体が相対的に重く感じる。仕方なく子供用の球の中から選ぶ事にした。
ふと声につられ横を向くと隣で年下の女の子が当然のように大人用を持っていた。つまり、今の力関係は一般人よりも無力ということか。一応だけど本当に自身が竜であるのか疑わしい。
はぁ……非力だ。前までは普通の体で普通の重さの球を扱えたのに。段々と、段々と自身が竜、いや一人の女性と変容する様を段々と感じさせられる。今も、ついこの間も。日常に潜む人間性が感性から男を削いでいく。
一歩で人でなしの道もすぐ隣にあるのだ。神とか竜とか未知の領域が自身を取り囲んでいるのは嫌でも知っている。だから私も段々と竜になっていくのだろうか。そうなれば僕にはどんな人外へと変容するのだろう。
選ぶ球を一つ小さく、狭く暗い穴をそっと覗く。正三角形に配置された穴はまるで悟った顔の様。そっと触れ、滑らかに面をなぞる。うん、手に馴染む。ボーリング弾を両手で抱えレーンに戻る。
ってナツメが向こうで誰かと話してる?
「女の子だけで遊んでるの?せっかくだし僕らと一緒にやりませんか?」
「僕だけならありがたいけれど今日は生憎一緒に来てる人がいるから。お断りしまーす」
ナツメは数人のチャラそうな男に囲まれている。多分ナンパだ。男と分かる前なら俺が適当に声をかければ退散するのだがこちらは少女の体だ。というかアイツも男だから普通にすれば簡単に蹴散らせるだろうに。
「ナツメ、待たせた。こいつらはナンパ?」
「うん。先投げてていいよ。アレは……そう、妹ちゃん。今中一でー……つまり、まだ君達と遊ばせるのは僕が怖いかな」
「ナツメ!お前の妹になった覚え無いからな変態!」
危うく勝手に妹にされかけた。男女の問題についてこのまま黒姫を放置するとやっぱり碌な事が起きない気がする。申し訳ないがこちらから彼らに断りを入れよう。
「あのなーお前ら、マジでコイツだけは止めておけ。コイツはおと……うぐっ」
喋り出しかけた途端ナツメに口をふさがれた。悪い笑みを浮かべ、結構な期間アイツと関わっているがあんな黒姫は中々見ない。きっと何かろくでもない事を考えてるな……と警戒していると。
「ワンゲームだけ。もし君たちの中で一人でも僕達2人の合計より点が高かった方が午後の予定を決める。それでいい?」
すると彼らは納得してしまったらしくノリノリで自身の玉を取りに行ってしまった。口をふさがれたまま黒姫の顔をキッと睨みつける。
「何だか面白くなってきたね。もしから僕ら……キャー♪」
「んん”-ん”-!」
わざとらしい悲鳴を挙げている当たりマジでやりやがったよ。口の封が解かれたと同時に鳩尾に一発入れてやった。だが涼しい顔で止められてこの上なく腹が立つ。
「お前!ふっざけんな!?約束は約束だけど俺との最初の約束あっただろ!本、アレをさっさと返せ!」
「まーまー、ステイ。僕だって小さなレディーを危険に晒す訳ないじゃん。僕、自分から仕掛けた勝負じゃ負けた事ないんだよね♪」
「ふざけてやがる……このクソったれ!」
思わずその場で地団太を踏むもコイツの愉悦と変態的な笑顔の前では無意味だ。彼は数人の足音が背後に聞こえると自身の分のボーリング球を持ちレーンを前にする。
「ふふふっ♪君もそろそろ昂ってきたんじゃない?絶体絶命の状況って、案外普段使わない感性が刺激されるんだ」
「っつっても……私も負けたら駄目になったじゃねか……」
でも何だろう。確かに恐怖とはまた違った類の不思議と心地の良い湧き上がる高ぶりを感じてはいる。
そしてゲームは始まった。高校か大学生くらいの3人組の間に挟まるように座るのは少し不快だ。
ゲームはまず初投、男らの一人が投げた。そこそこの経験者なのかレーンを綺麗に直進する。球は一番手前のピンに衝突し何本か巻き込み倒し突き抜け、初手から8本を倒した。だがあくまでそれだけで2回目は幸運にも軌道が逸れて本数は増えない。
画面に「れいちゃん」と自身の名前が表示され自身の番に。ボーリング玉を片手に数人に見守られながらレーンの前に立つ。後方から黒姫を口説こうと必死な男とそれをいなす黒姫の談笑、それと男2人がこちらに何をするか会議をする声が聞こえる。私はそれらを含め全ての音を集中力でシャットアウトした。
集中、集中、集中
真っすぐにピンの中心を見据え重心を動かす。
物理学に任せ腕を振り、だが一切のブレを起こさずに指から離れる。
複雑に回転する玉はレーンを駆けて進み吸い込まれるように……
「G」
「なんでだよおおおおおおおおお!」
2回もガーターを作り出した。投げた勢いに任せそのまま膝から崩れ落ちた。
「あっはっはっはっはっは!」
「ナツメェ!笑うな!こっちだって必死だったんだぞ!」
「いーっひっひ……う、動きだけは一級品だよ。コントロール最悪で真っ先にガーターになったけどね」
「コントロールが……少女の体のコントロールが出来ない!」
あああああ今まで日常動作が慣れてきて油断してた、精密動作って殆ど練習してないんだ。ここにきて全ての余波がやってくるとは思わない。力仕事アドレナリンさえ出てれば火事場でどうにかなるとはここ最近体感したけれど。
「がんばれー、れいちゃんの活躍で二人のお尻の穴が賭かってるんだぞー」
「気楽だなお前!あと次れいちゃん呼びしたら今すぐ帰るからな!」
男らの番となり2人が投げる。彼らも中々の手練れらしくどちらも7本と8本を倒しピンチとなる。そしていよいよ問題のナツメの番に。お気楽でいた分期待していいのか不安だ。
ナツメは腕を捲りボーリング球を持つ。
「ガーターは出すなよ」
「はいはーい、どこかの誰かの為にもストライク出さないと負けちゃうし頑張るよ!えい!」
掛け声と共にボールを投げる多少曲がった軌道を描きながら転がり宣言通りのストライクを出した。彼はスキップしながら席に戻る。そして買ったドリンクを飲みながら余裕の笑みを見せてきた。
「ね、言ったでしょ?」
そして彼の無双が始まった。彼の投げる球は全てがピンの群の中心を貫きストライクとスペアを量産する。男達も彼女に驚きつつも数多のピンを倒すがナツメと自身のスコアの合計には決して届く事はないまま10投目を迎えた。
「ふふーん。よかったね、れいちゃん。もう勝ち確定のスコアだよー」
「(ま、マジか。本当にほぼストライク出しやがった)」
「驚きすぎて声も出ない?じゃ、投げてくるから感想は勝った後で聞くからね」
そう言いつつ彼はまた投げる。ストライク、ダブル、ターキー、最早自身とかけ離れた神業に目がくらみ感動を覚えた。勿論結果は明白、ほとんどがナツメのスコアだけで3人の誰よりも圧勝した。
「やりやがった……」
「じゃあ、午後の予定はれいちゃんに決めてもらうよ」
ー-ー
現在位置 鳴葉歴史資料館
ここは望月さんが館長をしている街の歴史館だ。鳴葉神社を中心に発展した街の歴史について記されている。また神社に関連した展示物も多く公開されている。自身も何度か訪れているもののプライベートではあまり訪れた事はない。しかし運動で温まった心身を落ち着けるのには適している。
自動ドアが開き二人で中に入る。一定の気温と湿度に保たれた少し肌寒い空気が僕らを出迎えた。オフシーズンで他の客はおらず、半ば貸し切りのような状態なのは幸運である。
「うーん、ここはあの時から変わらないね」
「ナツメ、お前来た事あるのか?」
「定期的に。ここの職員さんに僕の彼女がいるから」
「彼女もいたのかお前」
「うん、去年知り合って累計3人目、彼氏も合わせたら8人目?」
「随分と人気で……」
ボーリング場で選んだのは男と別れナツメとのデートを続行する事。真の目的すらまだ終わっていないのに他の男を連れている暇はない。
だがしかし驚いた。ボーリング場から一体どこに行くか不安だったのに態々ここに案内された。彼の選択としては意外な渋いセンスじゃないか?いや、彼に限ってただここに案内した訳ではないだろう。多分彼からあの本が鳴葉に関係する物品だとは聞いている。恐怖と期待が半々だ。
大人1枚、子供1枚のチケットを買い中に入る。ガラスの向こうに展示された数々の古い物品の数々はどれも歴史を感じさせる。しかしどれも修学旅行先で見るようなただ古ぼけた品々の数に過ぎない。つまらない、きっとそれが普通の感想だ。
しかし、それがただ物品だけを見ればの話だ。神学と竜について学んだ後で何か知らない物が分かるかもしれない。古びた、だが多くのの説明がされている一枚の小さな展示物の説明を読む。
「
鳴葉の禍護符
円に下へ1本、上に放射状の5本線が伸びる記号が描かれた鳴葉大社の古い護符。葉脈を形どった模様の護符は持つ者から害を持つものから遠ざける。
鳴葉はいわゆる吹き溜まりであり、追放された罪人は古今東西の災いに打ちひしがれ最後にこの地の中心にたどり着く。そこは木が揺れ葉が擦れる音の響く静寂に満ちそこで生き延びた。まともな者ならば禍の中へと出向くことはない。だから多くの者は二度と出て来ぬ罪人を指しこう笑ったそうだ。
森へと入れば狐に包まれる
『提供 黒姫 解説 月輪』」
……読んで少し後悔している。何でこうも中二臭い言い回しで解説がされているのだろうか。って、解説先生なの!?あの物静かで知的なあの人がこんな中学生みたいなのを大真面目に書いてるの!?
他の説明は流石に抑えられているものの、解説に先生の名前があるとどこか癖のある文体となっている。えぇ……あの人って意外にはっちゃけるタイプなんだ。鳴葉と竜の関係者ってどうしてこうも変な人しかいないのだろうか。
歴史館を先に進むと古代から時間が経過し江戸時代、鳴葉稲荷神社が建設された時の資料が並び始める。ここからは竜や神という神学みが薄れ真っ当な歴史資料が展示され、解説は癖のない普通の文である。先生の解説も少なく当たり障りのない解説だ。
「この辺りの神社の資料はないんだな」
「うん。神社的にもこの辺りは再建のせいで宗教色が薄れて商業特化になったらしい。僕も実物を見たことあるけど……ま、あの子の末期近くだから面白いと言えば面白いんだけど……」
「? 何か知ってるのか」
「うーん、あの子と竜はあんまり関係ないからなー。公的記録は大体偽史だし丁度いい資料が無い」
言葉は物騒だがどうやら竜とは関係のない話らしい。現実問題竜と鳴葉はあまり関係のない話だと考えてもいいかもしれない。竜と神の関係性の調査は館長の月輪先生がしていた筈。しかしその効果自体は趣味か副産物と考えると不思議と納得できる。原理的に同じでも、やはり常識的に竜とは空想上の生物に過ぎないのか。
故も知らない古い資料を眺めつつ考察をするも有益な情報はない。すると背後から誰かが近づく足音がした。
「洋野さん、いらしていたんですね。ご来館誠にありがとうございます」
優しく落ち着いたら声に振り向くと月輪先生がいた。いつもと違いスーツで現れていたところから勤務中らしい。もしかしたらオフシーズンは暇なのかな。
「先生、こんにちは」
「こんにちは。今はお一人ですか。私に用事があるのであれば連絡をしていただければ伺いますよ」
「いえ、実は友人と来ていまして……」
「皐月ちゃーん僕もいるよー」
展示物の影からナツメも反応した。博物館の中で大声出すなよ。
「とまあ、私の友人を連れられて遊びに来たんです。ですので今日は竜とかのお話を……」
「黒姫さんがここに?」
先生がナツメに興味を示している?もしかして彼らは知り合いだったのだろうか。だがそれにしても様子がおかしい。
「今朝のニュースは見ていらしていないでしょうか……でもあの声は確かに……」
仕方ない、ちょっと本人呼ぶか。展示物の向こうまでナツメを呼びに向かう。
「ナツメ、先生困ってるし顔出……せ?」
展示物の影、誰からも映ることのない死角。そしてあとから知った、数少ない人の目とあらゆる監視システムの中で僅かにできた奇跡の穴がまさに声の音源だった。
たった今までナツメがいたであろう物陰には誰もいなかった。
それどころかそこは展示品が置かれ、声どころか立ち入ることすらできないのだ。
唯一彼がいた事を証明するのは展示品の下に置かれた今日の日付の書かれたチケットのみ。
「な、ナツメ!?どこ行ったあの野郎!?」
「……洋野さん。これを」
先生にスマホを手渡される。表示されるのはニュースサイトで見出しに大きく今朝の電車の人身事故について書かれていた。
同時に見てその場で座り込む。だってそんな、まさかそんな話がありえるのか?
「黒姫さんは今朝、踏切で……」
「……どうして」
黒姫ナツメは今朝に合流するまでの踏切で事故死していた。