どらごんれでぃいらばーず!!!~現代日本で竜娘にTSしたけど同じ超可愛い竜娘(問題児)と支え合ってハーレム生活を満喫します!~ 作:囚人番号虚数番
「物理的な痕跡はない。特殊な動作も見られない。あくまでその場で消え去った……不思議です。超常現象にはもう驚かないと考えておりましたが……彼は、一体……」
月輪先生と私の二人は消えたナツメの不在を確かめるために簡単に調査をする。だが先生の漏らした言葉の通りなにの証拠もないのだ。消失マジックなら仕掛けがどこかにあるが展示品や壁に囲まれたどこにも細工は見られない。
ナツメは過去何度もふらっとどこかに行っては突然いなくなった。しかしその度に謎の技術としてこれはこれで困惑していた。しかし今ならはっきり言える、彼は消えるように、ではない。正に魔法のように消えていたのだ。
「(それよりも『原本』を返してもらってない……)」
竜因果と神殺しの覚書には確かに多くの竜についての情報が描かれている。しかしそれはあくまでまだ神学や竜についてを求める物が酷く渇望するのであってどちらにも関係のない自身には必要のないものだった。返せなくなったのは仕方がないが元から管理していなかったからもしかしたら許されるかもしれない。
一方ナツメに関しては不気味さを酷く感じている。今朝に出会い遊んでいた人物がまさか死人だった、とは不気味で仕方がない。先生にも一応朝からの流れをざっくりと教える。
「ナツメに翻訳を任せていたんです。それを返してもらうのに朝から彼と一緒に行動していました」
返事はない。先生はナツメのいた場所を真剣な目で眺めている。それだけ集中しているかまだ考えるのに情報が足らないのだろう。もう少し何か彼女にも関心の得られる情報は……
「えっと……実は頼んだ本というのがあの神殺しと竜因果の覚書でして。以前先生にお話したあの本ですよ」
すると先生は何かを思い出したらしく発言から数秒遅れてこちらを見る。
「黎明って竜でしたっけ。僕の考えだともしかしたら黎明について何か知れるんじゃないか期待していたんです」
「黎明……桐生さんが話されたのですね」
すると先生は唸りながらぐるぐるとその場を周る。
「解読方法について何か黒姫さんからは聞きましたか?」
「古代の鳴葉の言語だとか。いや、私はさっぱりですけど確かに自分でも少し読めました」
携帯で鳴葉の言語のWikiのページを開いて先生に渡す。先生はまじまじと画面をスクロールし表を眺める。
そして画面を閉じてスマホを返すと一度バックヤードに帰った。再び出てきた時タブレットを片手に神殺しと竜殺しの原板の画像と対応表を交互に見比べていた。その様相は今までのどこか余裕のある雰囲気とは違い明らかに焦りが見える。
「納得が……納得が出来ないっ……!」
「あ、あの……先生?」
「どうして、何故気が付かなかったのでしょう。こんな身近にあったのに重要な資料をすぐに読み解けなかったのか、過去に一度閲覧したはずであるのに。どうしてでしょうかね、ほんと」
何だか一人だけで突っ走って納得している。情報が来ない分は蕾さんから保管するとしてこの人の学者肌な傾向に任せていれば情報は得られそうだ。
「黎明が何故……鳴葉とは……彼は……彼が、黎明?いやまさか……」
うわ言のように独り言をつぶやきその場でぐるぐる回る彼女は完全に一人の世界に入り浸っている。こちらから話しかけても反応は返ってこないからもう帰ってしまおうか。
「待ってください」
順路道理に進もうと踏み出すと後ろから呼び止められた。
「現在黎明の生息するであろう場所への道は苗床の体に塞がれています。恐らくこの情報を機龍が知れば苗床を殺し、竜秘宝で黎明への道を広げるでしょう」
語る言葉には既に確かだ。迷いなく確信に近い言い回しだ。
「先生、解読を始めたのは……」
「解読しました」
簡潔に説明されたそれは理論では可能であるが、それでも並では、まして所見からではあり得ないであろう早さだ。資料がよく纏まっていたのと彼女自身の才能から成される神業なのだろう。
「あなたも人を殺すお覚悟をお忘れなく。叡智とは一度知れば引き返せない、逃れられない責任をお忘れなく」
引き込んだのはあなた達じゃないか。先生も竜と神の叡智の最先端だというのに。彼女はそれだけを言うとスタッフルームへ戻る。
「先生は……もしかしてあるんですか?」
ついらしくも無い意地の悪い質問をしてしまった。扉に手を駆けたまま止まった先生に気が付きはっと今の発言を訂正する。
「あ、ご、ごめんなさい。失礼しました」
何だか気まずい雰囲気となってしまった。先生は優しい顔だけど逆に裏に抱える物が怖い。私は順路の方向へと逃げるられるように体が疼く。
「ふふっ、確かにあなたばかりに責任を背負わせるのも悪かったです」
そんな悪い予感に反し先生は笑った。
「私はまだありません。けれど私はきっと殺してしまうとは思いますよ。抑え難いもの衝動は、意外と簡単に吹き飛んでしまいますから」
先生はまるで冗談のように疑問に答える。一応怒ってはいないようだ。この妙に振り回される感覚はナツメと似て心臓に悪い。彼女は「この資料を基に色々と調べさせてただきます」と今度こそスタッフルームに戻った。
先生と別れた後、近現代の歴史資料を見て回った。先生との出会いで意図せず止まったもののまだ展示は続いている。近現代となると展示品もこの街のありきたりな成立までの流れがまとめられているだけで特筆すべきものはない。特に面白い物も無くいよいよ出口の前に辿り着く。あとの残りは企画展示だけだ。
企画内容は「鳴葉駅前の歴史」創立当時から大陥没の前後までが詳細にまとまっている。あの時、私は実家にいて被害は受けなかった。しかし被害の程は克明に覚えている。
一年前の夕方、日が落ちてからの出来事だった。ドン、と鈍い振動と共に停電が起きた。直観で異常事態と判断した私はすぐにスマホで情報を仕入れると鳴葉駅の周辺一帯の地盤が大規模に陥没したと知った。
その日の夜は祭りだった。節電モードとモバイルバッテリーで一夜をつなぎ止めるとその次の日に現地に出向いた。バスに乗り、野次馬根性で大穴に出向いて下を覗いた。深く暗い穴はどこまでも深い。
今思えばとんだバカだった。しかし……
『……ああ、そうでした。足も治してもらったんでした。この足はその神様から譲り受けた物です』
今思えば今自分が手を出しているもので最悪何が起きるのかよく知る事が出来るいい機会だったかもしれない。事実ニエは災害ともいえるような事件を起こした。あれからもう一週間以上経過していると考えると私も……あれ?
「『私』……おかしい、つい前までは……『俺』って……」
瞬間、背筋が凍った。いつの間に変化した?分からない。確実に変化した瞬間を知っている、だがそれでもまだ日常的に使用するまでではなかった。拍動が激しく呼吸も荒れる。
「落ち着け……落ち着け……」
冷える壁に頭を当て深呼吸して落ち着かせる。ふきでる脂汗と自我崩壊の四字をシャットアウトしながら俺は俺だ、ただそれだけを念じる。自我を保て、心を落ち着かせろ……
「フーッ……フーッ……ハアハア……はぁ……はぁ……」
数分経ってようやく落ち着いた。もう大丈夫、俺は俺だ。正気に戻った俺はそのまま順路に逆らい歴史館から去った。外に出た頃にはもう夕暮れだ。電車に乗り、帰宅ラッシュで段々と増える乗客を席から眺め帰路につく。
本当に不思議な一日だった。今までの日常が一気に崩れ去り、そしてまた新しい日常が始まった。今日という日をどう振り返っても非現実感が拭えない。
「あー、疲れた……」
電車を降り、駅を出るといつもの鳴葉の見慣れた風景が目に入る。先ほどまでの体験は夢幻であったかのように思えるくらいに普段通りの光景だ。
「さて、帰るか」