どらごんれでぃいらばーず!!!~現代日本で竜娘にTSしたけど同じ超可愛い竜娘(問題児)と支え合ってハーレム生活を満喫します!~   作:囚人番号虚数番

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神域

「こんばんは、皆さん。いよいよ作戦結構ですね」

 

「え……つ、月輪……本当に君なのか?」

 

絶句、私達は作戦すら忘れ目の前の地獄と化した神社で狂う彼女をただ呆然と眺めるしかなかった。彼女の姿は余りにも異様過ぎたのだ。

 

「馬鹿じゃない……」

 

ニエも珍しく動揺を隠せない様子だ。だが、何度も顔を合わせていたニエ以外は豹変に理解が追い付いていない。私達を見ているようで何処か違う場所に居るような彼女の視線は蕾さんを捉えるとこう言った。

 

「確か沈んでから3年、いや、実時間に直すと3年でしたっけ、体だけ大人になっちゃって。きっと驚きますよ。私、まだ9歳なんです。10年以上心身の齟齬で……終わりのない怨嗟をまたやっと終わりにできました」

 

「月輪……一体君は何を言っているんだ?」

 

返事はない、彼女は最後にそれを言い残すと力無く地面に倒れ込んだ。もうピクリとも動かない。私は彼女に近づき頬に触れた。

 

「っまだ脈あります!」

 

「黎人君でかした、今すぐ治療すれば治るかもしれない。神域の今、緊急で救急隊を呼……」

 

だが彼女はそこで言葉を止めた。私の顔と月輪先生を交互に視線を変え、まるでその選択をしてはいけないかのように迷っている。

 

「機密性と作戦予定時間を鑑みて救出に割かれた人員は作戦の離脱を余儀なくされるだろう。少なくとも一人、応急処置と救助の手続きの為に残る必要がある」

 

「……へ?」

 

「私達はこのまま神域に直行する。黎人君、頼んだ」

 

そう言うと彼女は端末を私に渡す。私は彼女達の行動が意味する事を理解してしまった。この場で役割を持たないのは私しかいない。だから月輪先生を私が保護するのは当然な流れだ。

 

しかし通信機に手を伸ばそうとしかけたところで、横から蕾さんの手をニエが叩いた。

 

「レイトは私と約束があるの。奪わないでくれるかしら」

 

困惑している私の手を掴むと、ニエは神社の奥へと引っ張っていく。

 

「餐龍!私の命令に背く気か!?」

 

左手の仕込銃で頭を狙いつつ蕾は叫ぶ。しかし、そんな事を気にしていないのか彼女は不敵に微笑むと逆に刃を蕾に向けた。私に。

 

「うっさい、ぶち殺すのは私よ!私が連れてくって言ったら連れてくの!」

 

そう言ってニエは強引に神社の奥へと私を連れて行った。私も抵抗してみたものの、結局振り払う事ができなかった。

 

 

 

「仕方がない。乗り気な彼らには悪いが管轄内で死者を出す訳にはいかないのだ」

 

今日の作戦決行は中止だ、彼女はそう考えた。地面に落ちた通信機を拾い上げ蕾さんは舌打ちをする。明らかに想定外での負傷者と命令無視、2つの想定外に焦燥を隠しきれない。

 

「あの、蕾……激雷さん」

 

「ああ、苗床か。私としたことが済まない。今作戦の中断を本部に伝える」

 

「いいえ、そうではなく私からも彼の同行を希望します」

 

「ニエはともかく、彼は別に君に必要ないだろう」

 

淡々と苗床の意見を切り捨て作戦中止の指令と各所への謝罪文を準備する。蕾は処分対象の苗床には全く気を留めていなかった。勿論話を聞くつもりはない。

 

もし苗床に止められるなら殴ってでも止めるだろう。しかし戦う術を持たない竜には蕾に返り討ちにされるだけだ。それを理解している苗床はただ黙って横でただ見ているしかなかった。

 

「……」

 

これも願いが無下にされるなど彼女にはもう慣れたこと。それでもいつもより少しだけ彼女にも堪えた。

 

だからこそ、救いの神はいるものだ。社の奥、静寂の闇の先にさくさくと落ち葉を踏む音が彼らへと近づく。

 

「その者は我に任せてみないか」

 

声の主は彼らの協力者の狐の神、鳴葉であった。

 

「狐か、神域の仕事はどうしたんだ!?」

 

「既に調節は済ませておいた。社の後ろの林を抜ければ神域に辿り着ける。帰りも同じクラス出た場から入り直せ」

 

鳴葉はそれだけを言うと満身創痍の月輪を担ぎ上げる。だが鳴葉と蕾の間での契約はあくまで神域の制御のみである。契約外の行為には蕾は何かしら対処が日露だ、蕾は仕込銃を突きつけた。

 

「救助行為は契約の範囲外の筈だろう。何故だ」

 

「神として困ってる者は見過ごせん。ただまあ、ちーとばかし賽銭を恵んでくれればやらなくもないぞ。お主らともうぃんうぃんじゃろ?」

 

月輪を担いでいない方の手で人差し指と親指でお金の形を作り蕾に交渉を持ちかける。こんな状況ではあるが鳴葉のお茶目な姿に蕾は冷たい視線を送る。

 

「この拝金主義者め……」

 

同時にひいろは神域の奥へと一心不乱に走り出した。蕾の静止を振り切り、静止の命令も無視して神域の中へニエと黎人を追った。

 

「あぁ!?また命令無視か!」

 

「はっはっは!こりゃもう交渉成立じゃな!」

 

「交渉!?ああもういい、金でも何でも賽銭箱に振り込んでおく!月輪は頼んだぞ、白狐!」

 

悪態をつきつつも結局月輪を鳴葉に任せ蕾もすぐに全員の後を追う。一人取り残された鳴葉は二人の背中を見送ると月輪を担ぐ手に力を入れる。

 

「誉れある人の子よ、よく成し遂げた。かの邪神をよくぞ還してくれた」

 

鳴葉は月輪を抱え直すと、その勢いのまま神社の境内から姿を消した。

 

 

ーーー

 

神社の奥の森を二人で駆け抜ける。深夜の森の見えない不安定な足元に何度も転びそうになった。

 

「レイト、見て。あっちの光へ走るよ」

 

「ま、待って!まだひいろ置いてってるから!」

 

振り回され、だが一歩踏み込むたびに鼓動と歩幅がニエに近づいていく。次第に彼女の隣で手を繋いて走っていた。ふと、後ろを振り返れば社は最早遠く、深い闇の沼に沈んでいる。

 

光の中へ走り続け枯れ葉を踏む感覚も少しずつ硬い石の感覚に変わる。微かな光を頼りに見上げれば朝焼け前の薄暗い赤と巨石の影の黒の色彩で鮮やかだった。

 

「あと少しで神域なのか?」

 

「うん、出るよ!」

 

私達は掛け声とともに跳ねるように闇から光へと飛び出した。暗い岩の間を抜けると暖かな日差しが私達を照らした。

 

 

 

「ここが……本物の『神域』」

 

 

 

ようこそ、神域へ。竜の生まれ故郷へ、そう呼ばれた気がした。

 

 

 

神域は「壮観」、その一言に尽きる。

 

神域の出た先は高い崖の上、眼下にはどこまでも続く雄大な自然。大地を飲む森林、天を穿つ岩山、生命のうねり絶えぬ大河、人工物の一つもないありのままの大地は本能を駆り立てる強大な美しさを私に与えた。

 

現実味のない絵画のような光景に言葉も出ない。崖際で止まったその場所で神域に見惚れていた。ニエも私の隣で静かに崖の下を眺めている。彼女の視線の先には眼下の空を悠々と群れて泳ぐように飛ぶ竜であった。いつの間にか剣を抜いてじっと竜を観察していた。

 

「神域もすっかり戻ったわね。ここにいない間にも何年経過したかしら」

 

「年は大げさじゃない?知り合う前を加味しても2ヶ月くらいでしょ」

 

「いいえ、あの崖下丸々苗床の体の下だった筈なのよ。体が地形にめり込んだ形に似てる」

 

「そんなことって……」

 

ニエの言葉を聞きながら私はゆっくりと周囲を見渡す。そして気づく、この世界はどこかおかしい。断崖絶壁の続く先を辿ると霞で不明瞭ながら地平線の向こう側まで続く。ここはどう見ても地球上の何処かではない、いやそもそも此処は本当に私の知る世界だろうか。

 

私の疑問を感じ取ったのか、ニエが先に口を開いた。

 

「ま、色々考える前にちゃっちゃとぶっ殺すわ!」

 

そう言うと彼女は右手に持った剣を頭上に掲げる。年相応の無邪気で幸せな笑顔が出来るのならきっと何があっても余裕だな。根拠の無い彼女の頭の中は私には眩しく輝く物が詰まっているのだろう。その代わり、私の頭には白く不思議な物が充填されている。手綱の管理は私がしないと。

 

「ひいろの本体って相当な巨体だったけどここから見えないのか」

 

「今探してる。うーん、見えないわねぇ。3日くらい離れれば姿を思い出せる気がする」

 

「3日……」

 

補給は無い作戦なのに数日かかるの!?つまるところ現地で補給は済ませろと……突貫の作戦とはいえ蕾さんも無茶だ。適当な石に腰を掛けると足を投げ出して休んだ。春のような陽気と優しい風、目の前に広がる雄大な景色に心まで洗われるようだ。

 

「あーニエ、ここらの地形って詳しいのか?」

 

「全く、結構変わってるからダメダメ」

 

「ならさーいいカメラ買ってきてここを散歩するのも楽しそうだけど」

 

「それ、名案かも」

 

「じゃあ帰ったら皆で旅行行こうぜ!俺も写真撮るの好きだしさ」

 

「うん、楽しみにしてる」

 

二人で笑い合ってからまたしばらく沈黙が続く。穏やかな時間が流れると、ニエが私の隣に座って肩を寄せた。

 

「皆様、お待たせしました」

 

「済まない黎人君!月輪は狐を頼った!」

 

声のした方へ振り向けばそこにはひいろと蕾さんが走り私達の元へ合流していた。私達は互いの安否を確認し合い、ひとまず全員揃ったところでこれからの事を話し合った。

 

「ひいろの肉体が見当たらない、と。君の指摘の通り補給の無い今、この作戦を成功させる以前に命に係わる。早急に発見をしたい所だ。苗床、肉体は?」

 

「私の肉体は「あ!?そういう事なの!?」……ど、どうした?」

 

突然のニエの大声に驚いたのか蕾さんがビクッとする。

 

「レイトぉ!ここ苗床の頭の上だよ!!」

 

「はぁっ!?」

 

ニエの言葉に驚き立ち上がると辺りを見渡してみた。確かに私の足元は断崖絶壁、だが遥か彼方より地鳴りが響くと眼下から空へ竜の群れが飛び立ち黒く埋め尽くす。つまりこの高台そのものが彼女の体の上だったのだ。

 

「白狐が相当上手くしてくれたらしいな」

 

「はい、本当に、本当に有難い限りです」

 

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