どらごんれでぃいらばーず!!!~現代日本で竜娘にTSしたけど同じ超可愛い竜娘(問題児)と支え合ってハーレム生活を満喫します!~ 作:囚人番号虚数番
屍竜【苗床】
水竜コーポレーションの実験により生み出された神域最大の竜。触れた物を肉体に取り込み、また自身の強力な再生能力により延々と肥大化を続ける不死の体を持つ。結果、数多の何かを取り込み続け地球の大陸程に巨体となった。
そんな彼女の肉体のある神域は当然ながら彼女の挙動に甚大な影響を及ぼす。爪先の1つが台地に、角は高山に、幾年の月日により堆積した老廃物が土砂隣体を保護し比喩ではなく彼女は正に自然の一つである。
ーーー
全員が合流後、ひいろは竜の肉体の整理状態の最終確認をするのに遠くを眺めながら静かに石に座っている。時々眺める方角を変えるとその方向から地響きがここまでやって来るから何をしているからすぐに分かる。
蕾さんも彼女の隣で端末の地図を片手にひいろの調節の相談をしていた。
「__次に本体の露出部に薬剤を散布し連鎖的な作用を発生させ肉体を人工的に腐敗させる」
「消滅後の生態系の配慮は出来ていますか」
「肉体の影響が広範囲過ぎる、流石に水竜にも不可能だ。埋没した部分の崩落による生態系の変化には最新の注意を払い調整してほしい」
成程、これだけ大きな体の生物だと生きているだけで環境の一つとして扱えそうだ。それを影響の出ないように色々配慮しているんだ、盗み聞きしながら一人感心した。
一方で私は準備運動を見てほしいとニエが剣を振るう所をぼーっと眺めている。血の両刃剣を器用に素振り風を切る音を響かせながら美しく舞っている。私にも一芸があればもうちょっと面白い事できたのに。
「私の剣なんて見てて面白い?」
「うん、結構面白い。二つも刃があると頭がこんがらがりそう」
「そう?でも私は普通に使えるわ。今度特別にレイトにも教えてあげようか?」
笑いながら冗談っぽく言う彼女に苦笑しつつ私はニエの振るう剣の軌跡を遅れながらに目線をずらしていく。その動きは洗練されていて無駄がなく速い。そして、ニエの手の動きに合わせて動く二枚の刃。まるで本当に踊っているようだった。どこで剣技を教わったのか、竜に文明はあるそうだが彼女ははみ出者だった。となると親か独学か。どちらにせよ、素直に凄いと思った。
「激雷からも同じ事言われたわね。私って人にシュー何とか?した竜で頭がいいらしいの。私は知ってたわよ、知ってたけどあえて言われたの」
「……ふ~ん」
蕾さんはきっと収斂と言ったのだろう。
異なる種や亜種間で形態・生態などが類似した現象を指す言葉である生物種が別の動物種へ「似た姿かたちになる」という性質を示す場合に使われることが多い。
そして、その収斂進化の成れ果てがニエか。彼女の剣捌きは何処で学んだものでもない、おそらく本能的に身に着けたものなのだろう。それはそれで凄いな。
だけど、もし本能だとしたら彼女の親とは誰なのだろうか。人の源流は猿であるなら人の竜である彼女は同じ竜が祖先だろうか。あるいは人より上位とされる__
「(神……様?)」
「___よしっ!これで準備万端!」
ひいろが大きな声を上げて立ち上がった。それに反応して私達も立ち上がる。
「苗床、どこ切ったらいい?」
「落ち着け、まずここから450m地下に苗床の本当の急所が存在する。露出した肉体には触れず、そのまま地下まで穿け。合計1000mを頼む」
しれっと1000mと指示しているが軽い山一つより高いじゃないですか。ひいろだって流石に無茶だと言うだろうに。と、いつの間にか隣で僕の腕をひいろは抱いていた。彼女の柔らかい体に腕が埋まり柔らかい感覚が腕を包む。
「このまま落下して私の体に当たると黎人さんも私になっちゃいますから。私の体であれば吸収されないので、一応私といっしょに落ちましょう」
「あー、やっぱり本当に出来るの?」
「あったりまえよ!レイト、ちゃんと見ててね!」
素振りをしながら割り込んでニエが答えた。自慢げな返事に離れた蕾さんの目線もここのなしか柔らかいような。そのまま蕾さんはニエを呼び出して場所を指示し始めた。蕾さんの高圧的な態度と傍若無人なニエとではやっぱり話は拗れ気味。だけど芯のノリは近いらしい、割とあっさり話が済んだようで今度はひいろと私に話があるらしい。
「待たせた、只今より作戦開始をしたい。しかし最後に一つ私からの個人的な頼みをさせてもらう」
すると彼女は私を一度目を向けた後ひいろを見つめた。
「ひいろ、黎人君の角を絶対に潰すな」
蕾さんにしてはおかしな忠告だ。私の角は何度も割れては再生するのに、もっと腕とか気を付けるべきところはあるだろうに。無理して付いてきたから心配なのだろう。だけどそれにしては警戒をしているような。ひいろも普段との違和感を感じたのか少し怪しんでいる様子。
「怖気づくとは珍しいですね。私と関わり続けなお正気なあなたがここまでするのだからそれなりの理由があるのでしょうが」
「……まぁ、そうだ。悔しいが私も見えた気がしたんだ。脳の焼ける景色という物が」
それを聞いてひいろは何か察したらしい。
「ありがとうございます、私の事を最後にあなたにも理解してくれて嬉しいです」
二人は目を合わせて微笑み合った。この二人にどんな関係があったか私は知らない、しかしその悲しい笑顔を見て「手遅れ」、虚しいがそんな言葉が頭に浮かんでしまった。
「皆ー!早くしてー!」
遠くで手を振るニエの呼び声で我に返った。もうこんな状況なのに感傷に浸っている場合ではない。
「___さて、行こう」
そう言うと蕾さんらとニエの元に向かう。
「じゃーあと10秒で切り始めていい?」
「なるべく真下に切り続け、薬剤の入りの球を投げつけろ」
「緊張してきました……」
各々が思い思いに口走る中、私は一人不安だった。
これからどうなるのか、どうなってしまうのか。
その問いが浮かぶ度、だが不安と希望の混じった不思議な高揚感が湧き上がる。それはまるで初めての土地に行く時の様な期待感に似ている。そして同時に私はきっとこう思うのだ。
「(きっと、私達はまた会える)」
祈りに近い確信だった。根拠も何も無いけど、何故か私はその時が来れば分かると確信していた。
「……5、4、3、2、1___!!」
ニエのカウントダウンの後、天から一閃が走った。
瞬間、体が重力から解き放たれる感覚。
重力加速に投げ出され眼下に続く一気に吸い込まれる感覚がして思わず声が出そうになった。
すぐに視界にはニエと蕾さん、ひいろの姿が見える。彼女達も一緒に落ちていて、恐らく同じく計算外だったのだろう。蕾さんは今だ自らの状態を理解しきれいていないのか困惑と冷静さとが大事故を起こした見たことが無い表情だ。ニエは更にその先の穴の最も深い場所をより深くしながら落ちている。
私達三人は必死に体勢を保とうとしたが蕾さんは多分どうにかなるだろう。
それよりこの状況どうする!
「うわああああああああああ!?」「きゃああああああああああ!?」「私までえええええええええ!!」
落下中奇跡的に蕾さんの服を掴むひいろと私だったが、勢い余って二人とも投げ出されてしまった。支えの無い完全な自由落下が始まる。
「レイトさん!」
ひいろの腕が私に伸びる。それを掴もうと肩の関節限界まで手を伸ばし指先が触れ合う。もう少し、あと関節一つだけ何か切っ掛けがあれば届く。何か切っ掛けさえあれば手を取れる。
私かひいろに特別な力が使えれば……
「苗床!黎人君を肉で包め!今だけは『増殖』しろおおおお!」
今までにない必死の蕾さんの声だった。
「はいっ!」
同時に彼女の指示通り私に何かが覆われる感覚がした。半液体状で温かい血肉の羊水は私の肌を包み込み体の隅々までを覆いつくすように私を包む。温かく、生きとし生ける物である柔らかなそれは今まで感じた事のない力に溢れていくのを感じる。まるで母の胎内にいるような安心感に包まれて、落下の恐怖など何処かに消えてしまった。
「(大切な人が私の胎内にいるなんて。ああ、夢みたいです)」
腹の中で拍動と共に声が響く。頭の中に静かに染み入る声は言葉は穏やかで、だが一時の幸福を噛みしめるようなありのままの言葉。
「(今まで色々な子を孕み、産み、死にを繰り返しそのどれもより満たされます。柔らかな初めての優しさです)」
私も肉に埋もれる感覚には既視感を覚えている。しかし後少しという所で何かが引っかかり思い出せずにいる。不思議と嫌な予感はしない。まるでゲームを記憶を消して遊びたいからわざと自ら記憶に蓋をしているような既視感だ。
「(もし私がこんな醜い体でなければ彼とは真っ当に何も知らずにずっといたい、たとえ記憶がなくなっても私は同じ答えに辿り着くでしょう)」
わずかに早まるひいろの鼓動、より強い包容を体液越しに感じた。熱い液と冷たい液が複雑の対流が更に勢いを増す。
「(おかしいですね。私が泣くだなんて。何も遺してきてはいけないのに、どうしてでしょうか)」
ひいろは泣いている。どこか退廃的な彼女も心の内は辛かったのは当たり前だ。生まれた事が罪と殺され続け誰にも愛されなかった。しかし人としてのひいろはどこを切り取っても魅力的で愛された人物であった。短い間だが確かに側にいれた私はその一部を見てきた。
だから私は彼女に叫んだ。
__全てを遺さなくていいんだ
生は呪いではない、愛は呪詛ではない、等しく尊くあるべきなのだ。泡沫に消えた肺の空気に乗せてぼこぼこと綴られた言葉。聞こえているか定かではない、それでも届いて欲しい。ただ心の内で祈った。
しかし時間とは無慈悲な物である。
「おらおらおらおら!激雷、あとどんくらい!?」
「50mだ!」
落下から約10秒、肉を切り裂き続け遂に目の前に苗床の巨体が日に照らされた。土に汚れた緑の肉体は古く朽ちた肉は酷く悪臭を放ち思わず顔をしかめる。この時空での苗床は悠久な時を経て地に埋もれ腐り果てていた。
「緋刃、投げろ!」
「オッケー!せい!」
蕾の声に合わせニエは眼の前の肉塊に球を投げつける。
瞬間、薬剤により肉体は急速に化学変化が発生。また生成物が連鎖反応を起こし肉体の急速な分解が発生する。龍とて肉体は生物と似た作りをしている。分解して最後に残るのは土と「ガス」だ。
「うっ……臭っ!?」
「酷い臭いもそうだがこれからだ、爆発に耐えろ!」
連鎖反応で発生したガスはその巨体の体積の何倍にも膨張する。狭い穴の中で逃げ場を失ったガスは当然彼女らの落ちてきた穴に向う。しかし、それでもなお間に合わないガスは穴の外壁を壊し広げ爆発する。
苗床も同じく爆風を受け内部にも衝撃を感じる。衝撃で肉壁に頭が当たり柔らかく包み込んだ。しかしいつの間にか何倍にも肥大化頭の角は水風船のように破裂した。
「……ぁ」
ああ、目の前が白く染まっていく。自分の中の奥の奥、その全てにまで頭の中身が染み込んでいく。
脳が焼け、頭の中に美しい模様、因果律、神域の宇宙、全てが流れ込む。人知を超えた未定義の抽象概念が細分化され見える世界の解像度が指数を超えて澄んでいく。
「……あ、ああ」
神秘に触れた頭はその叡智を理解するより瞬間、黎人の全てが弾け飛んだ。
楽しかったですね、お遊びはもういいでしょう。
黎明が今始まる。
その日、神域はキノコ形の雲と世界を跨ぐ巨大な竜の最後を見た。