どらごんれでぃいらばーず!!!~現代日本で竜娘にTSしたけど同じ超可愛い竜娘(問題児)と支え合ってハーレム生活を満喫します!~   作:囚人番号虚数番

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生贄の竜の緋刃

昔レイトと遊んだゲームがある。ボスの体力が半分を下回ると見た目と行動が変わるボスが何体もいる。とても一晩ではクリア出来ない難しいゲームだった。

 

特に強い敵ほど倒れて「やっと倒した」と徒労と歓喜を一度に感じ油断した時に限り立ち上がり、挙げ句強くなって帰ってくる。その度に私は心折られた。

 

目の前の白く燃える化け物もきっとその類なんだろう。一度切った戦闘の感覚は瞬時には戻らない。約0.数秒、数字だけなら極短時間の瞬きすらままならない僅かな空白。私は長らく野生から離れたせいか生態系の超上位帯の戦闘を忘れていた。

 

武器を構えたと同時に体から重さを忘れる。向こうには私の下半身が力なく膝を折りつつあった。そして顔に衝撃が加わるのに遅れすぐ横で鉄屑が飛散した。

 

「っぁ!」

 

数発の跳弾と共に飛ぶ折れた刃。攻撃すら目で追えない、声すら間に合わないその一瞬。だが、それでも何が起きたか嫌でも知った。

 

殺せ、考えるな、動け。

 

幸い怪我で血は出ている。冷静に、心拍が上がり血流が乱れる前に体の一部を服と同じ感覚で補修する。骨、筋繊維、神経、肌と臓器は無くていい。その3つだけの簡素な足を多量の出血から作り出す。頭痛と意識が不味いがどうせどうにかなる。

 

無理やり血のワイヤで横に飛ぶ。白痴はまだ激雷の追撃をするつもりだ。駄目だ、その前にまた一撃を入れて間に合わせろ。無駄でも、まだあと一歩だけ、奇跡さえ起きればいいのだ。

 

「激雷逃げて!」

 

 

 

閃光、白い神秘の朝焼けが月の夜空へと瞬く。声も虚しく夜を切り裂く汚え火柱が空に飛んでいった。でも敵ながら悔しいが、糞ほど綺麗に散らせやがる。激雷の鉄の体があそこまで見事に消えてやがる。

 

「激雷いいっ!くっそあのや……ろ……」

 

月と星空、白く燃える景色。一面に輝く星空に舞う白い竜はかつての自らであるのに今までの何よりも心奪われた。初めての人との関わり、夜の街の光、神社での神秘の景色、それらを下地を剥いで塗り替えられる、割り込むような美しさ。頭が割れそうで反吐が出る。同時に苗床が私に狂ったのにも理解出来た。

 

ああ、綺麗だよ畜生。どいつもこいつもこんな汚い物に狂わされてやがったのか。白い炎の海の中で心揺さぶる景色を見上げてそう思う。同じ時をして私の体を突き動かした怒気も絶望も、そして殺意もスーッと熱が引いた。こんな不思議な感覚は初めてだ。

 

「(苗床もレイトも、多分激雷も、皆これが好きだったのね)」

 

私と苗床の初めての出会いは朧気だ。それでも苗床との初めての出会いには確かに白いそれがあった。目をつけられて訳の分からないうちにレイトと出会っても、最後には白が溢れた。激雷も一度私が殺した。

 

最初から最後まで私はこの得体の知れない物に縛られていた気がする。永久にも、短くも感じる間で見出した結論は珍しくある一つの疑問を生じさせた。

 

殺戮、排除、放浪。根幹を成していた全て。私の人生を狂わせ、レイトや苗床との出会いの切っ掛けだったもの。それら行動原理の殆どが敵である白痴が担っていた。

 

ならば今残された、絞り粕のみ残る私には何があったのだろう。その意味が今は誰かに教えてほしかった。

 

「(情けないなぁ)」

 

全身から力が抜ける。剣を手放し金属音が地面に響き血液として蒸発して消えた。敵の前であるにも関わらず、どういうわけか棒立ちのまま何も出来ないままだ。

 

臭い。レイトが焼ける匂いがする。白い泥全部からレイトと同じ肉の香りが漂う。最後に話して何分経っただろう。彼を殺して何日だろう。戦いの最中だというのにレイトを殺した感覚が離れない。

 

「戦わないの?」

 

隣では銃を突きつけ首を傾げる白痴がそこにいた。この間合いなら互角に戦えそうなのに今一剣を振る気にならない。銃を降ろし剣の間合いに入られても、顔に触れられても尚私の心は動かない。

 

「笑って」

 

初めて顔に触れられた。伸ばせば手が届くのに退けることすら無く無抵抗にされるがままであった。血染めの指で頬の肉を押され曲げられ白痴により歪な笑顔に固定された。

 

「ごめんね。私もちょっとやり過ぎちゃった」

 

「なん、なの?」

 

気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。

 

得も言われぬ不快感が全身を這いずり回る。

 

こいつの殺意は未だ絶えない。ここから少しでも殴ったり攻撃に出れば多分また殺し合いに戻る。なのにどうして、どうしてコイツは不気味な位に笑っている。

 

混乱の渦中、白痴は私の肩に手を置こうとする。だが私は反射的に払い除け、同時にまたふつふつと感情が湧いて出てきた。

 

「どうして、何で殺さないの?」

 

頭の中がグチャグチャのまま口から出た言葉は疑問だった。グチャグチャのままだから涙も出てきた。怒りの余りに泣いているのか、悲しいから泣いているのか自分でも全く分からない。

 

白痴もおかしいと気がついて同情の視線を向ける。しかしすぐに結論が出たようで答えを言った。

 

「ママが私に殺されるかも知れないから頼まれたの」

 

ゆっくりと頭で言葉を噛み砕く。あの白糞を活かしたいから私を殺す、と。単純だけど私にも良く分かる感覚だ。私も大切な人の為に戦う時はきっと同じことをすると思う。でも、それでも、どうしても、許せないことはある。

 

「青い人が死んじゃったけど悲しい?」

 

「激雷はあんまり、気が合うだけ」

 

彼女前回殺した時もなんか生き返っている。飛び散った死体も金属片でふつうの体ではないのは明白になった。ああ言うのは大抵そのうち生き返る。

 

意外とレイトも殺さずとも頭を一発ぶん殴ればレイトに戻ったりしないかしら。なんて、少しだけ思ったがやっぱり駄目だ。

 

……否、たった今駄目じゃなくなった。

 

「……はぁ」

 

最悪だ。中途半端に混乱した中で奇跡とも思える「駄目じゃなかった」方法を思いついた。

 

そーだったそーだった。あんたも私も似たようなのだったわね。どこまでもアホだった私は馬鹿で弱いんだろう、でも同じ位に白痴も同じだけ馬鹿で、そして強い。でも、それでも私は私の願いを叶えたい。

 

「白痴、勝負しない?」

 

だから私は賭けをする。勝ち目のない、どうしようもないくらいに不確定な勝負を挑む。涙を拭き、数歩距離を取って剣を構える。

 

「今から命がけで殺し合って私が勝ったらレイトを返せ」

 

白痴は一瞬キョトンとしたが、直ぐに理解してくれたようだ。そして、子供のように無邪気な笑顔を見せてくれた。本当に憎い位に可愛らしい笑顔だ。私達と似てて、私達の正反対。

 

「いいわ。私が勝ったらママを助けてあげるんだから!」

 

本能で走って来たのなら徹頭徹尾、単純なままに押し通せ。少なくとも死体は残るはずだ。

 

緋色の刃よ、私を弔え。今の私は黎明を迎える。

 

先に動いたのは私、白痴に向けた銃から放たれた弾を大きく横に避ける。弾丸の軌道上には白い泥が尾を引き放射状に燃え上がる。範囲攻撃になりそうで使われすぎれば動き大きくが制限されそうだ。

 

しかし、それまでだ。剣を大振りして炎を切り裂く。一瞬だけ炎の海に一筋の道を拓き最高速で突っ込む。

 

「通れ!」

 

銃口から急所まで僅か2センチ、撃たれた着火前の弾丸が体を貫通し、だが私も通った。接近のリーチ差では私が勝っている、そのまま片腕の銃を切断した。

 

流れるように逆の刃で追撃をする。白痴の右手の剣の振りが届く前に胸を一突きして離脱する。

 

「っしゃあ!一撃!」

 

しかし油断してはいけない、切られた腕からあふれる白濁が出血と比べて少ない。思考を進め切る前に切れた腕を私に向けて液を射出した。銃から口径が広がり威力だけを維持しながら放射状に広がる。

 

被害が拡大した分銃弾の小ささに隠れていた地形の削りが大きい。視界の隅に写り込むはずの無い側面まで破壊が及んでいる。当れば即死が更に近づく。足を止めてしまえば的になるだけだ。止まらず走り抜けろ。

 

「(見極めろ、冷静に)」

 

「むーっ!逃げてばかりじゃ勝負じゃないじゃん!」

 

白痴が声を上げて走る。時間経過で流れ落ちた白い泥の塊を蹴り飛ばし、時には私と同じように剣として振るいながら距離を詰めてくる。崖が崩れて地上に貯まる白い液が流れ込むのも時間の問題だ。

 

「(こっちだってまだ負けられないんだよッ!)」

 

さて、彼女の言う通り逃げてばかりでは勝負じゃない。高出力と高速な技の数々は流石の私にも対処が難しい。しかし私と比べて明らかに劣る点が一つある。

 

両刃剣で棒高跳びで飛び白痴の右腕の突きを踏みつける。攻め続けて防がせない、だから搦手は意外かしら?初めてお前が怯えた顔を引き出せた。

 

「はえっ!?え、なにそれ!?」

 

「戦闘バカには知らないでしょうね。受けてから殺す、ゲームじゃ常套手段よ!」

 

銃は間に合わない、剣も使えない、距離も完璧。あと一撃、あるいは致命傷だけでも残してやる。

 

「(殺れ、殺れ、殺れ!刺せ、あと一撃を!)」

 

それでも、運命は嘲笑った。

 

防がれる勢いのまま胴体に一閃を入ようとしたその時、白痴の体が爆発した。厳密には暴発だ。幸か不幸か、銃の機構が破壊されてなお遠距離を続けた白痴の左腕はついに体内で起爆して重症を負わせた。

 

しかし私にとってはチャンスではない、寧ろ致命的だ。爆煙で前が見えないのだ。ただでさえ息苦しい上に体に付いた甲殻の破片が皮膚に食い込んで痛い。

 

「がっ……ゲホッ」

 

咳き込みながらも状況を確認する為に目を凝らす。耳も爆発で何も聞こえない、鼻も余裕はない、その上で白痴の姿が見えない。自爆で動けなければいいのに、と思ったがそんなことは有り得ない。私はそんな事をする程弱くないだろう。

 

「(ど、どこに……っえ!」

 

索敵より反応するよりも早く私は地面に叩きつけられた。

 

「(何が起きた!?)」

 

背中を強く打ち呼吸が出来ない。それでも無理矢理肺から空気を押し出す。口の中に入った砂を吐き出すと同時に、私の腹に強烈な衝撃が入る。

 

「げほっ……ざっけんなおま……」

 

「大丈夫?」

 

心配しつつも今度は顔面を蹴られた。一切躊躇してないな、一気に口の中に血が入り、鉄臭い味が広がる。

 

「舐めるなあああああ!」

 

怒りに任せて剣を振る。白痴は剣で受け止めるがその隙を突いてもう一撃入れるがそれも同じく剣で受けられた。

 

剣と剣がぶつかり合い、鍔迫り合いの状態となる。押し返そうと力を入れるがびくともしない。白痴の顔がすぐそばにあり、白痴の瞳がこちらを覗いている。

 

剣と剣がぶつかり合い、鍔迫り合いの状態となる。押し返そうと力を入れるがびくともしない。白痴の顔がすぐそばにあり、白痴の瞳がこちらを覗いている。

 

「私の勝利ぃっ!」

 

白痴が叫び遂に私の剣を弾き飛ばす。そのまま私に刃を振り下ろす。

 

振り下ろされた刃が肩に直撃し、鮮血が噴き出る。肉が裂け骨が砕ける感触が伝わってきた。痛みで意識を失いそうになるが、歯を噛み締めて堪える。ここで気を失えば確実に殺される。命さえあれば……逆転の一手を使ってでもこいつだけは殺してやる。

 

剣が引き抜かれると、私はその場に倒れ込んだ。起き上がれ、立ち上がって戦え。そう言い聞かせても体は動かない。

 

白痴が剣を構え近寄ってくる。彼女は私がまだ辛うじて意識を保ってる事に気付いたのか動きを止めてくれた。

 

「血、あるでしょ?立ちなよ」

 

「……無茶…………言う……な……」

 

「剣を早く握りなさい、じゃないと本当に殺すわ」

 

白痴が私を見下ろしながら話しかけてくる。

 

「もう……私の血だけじゃ……カハッ……ゲホっ……足んないな……」

 

私が話している間も口から吐瀉物が零れ落ちる。いつの間にか流れ込んでいた大量の白く燃える泥の中に倒れ込んだ。怪我のダメージが先か、丸焼きか、はたまた泥のせいで溺れ死ぬ、素直にぶち殺される。どちらにせよクソみたいに死ぬだろう。

 

 

 

「…………『私の』?私みたいに血を操れるんじゃないの?」

 

「…………」

 

あぁ、クッソ、冗談じゃなくこれは死ぬかも。白痴が言っている事ももう聞こえない。その明らかに弱ってしまった体に今更になって恐怖心が湧いて出てきた。いつかは一人で死ぬとは考えてたけど……思ってたより辛いな。

 

「贄」の竜としてただ一度も本気を出していないだなんて私は悔しくてたまらない。

 

私は血肉を捧げ、剣を持ち舞う者。

 

だが孤独であるが故に私の血を私に捧げ、武器を作る以外は無い。何も持たない私には私を差し出すしか無かった。

 

 

 

だからレイト、ごめんね。あなたの残した体、全部私に使わせて。

 

私が手遅れになる前に約束守るから。

 

 

 

「たす……け……て……レイ……ト」

 

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