どらごんれでぃいらばーず!!!~現代日本で竜娘にTSしたけど同じ超可愛い竜娘(問題児)と支え合ってハーレム生活を満喫します!~ 作:囚人番号虚数番
指先を切り血を出す感覚を能力に乗せる。力が抜ける感覚とその失った力が道具となる。捨て身に戦えば戦う程に攻撃的になれるように自分の一部を捨てれば捨てる程私は強くなれた。
けれど野生ではそれが限界だった。竜のはみ出し者で群れることなく白痴を中に飼っていた私には私以外に差し出せる物は無かった。あの竜の体も人の体も武器も何もかも作れたから確かに便利であった。ま、戦闘の主導権はどういう訳かアイツに持っていかれて技量が折半されてたけれど。
そんな戦闘の陰で一番活躍していた力も実は血を操る位にしか考えていなかったのも事実だ。
でもレイトと出会ってからだろうか、最近は苗床もそうだ。何故か本能が疼くのだ。というよりより強く惹かれていたのかもしれない。気が付かないように逃げていたのだ。レイト達もまた私の血と同様に扱えてしまうんじゃないかって。
そしてたった今初めてレイトの体を捨てられるのに賭けた。
白い泥、レイトの中にある液体は地上へと続いている。私は溺れながら自らの血を捨てる感覚でレイトに能力を使った。
ー--
「終わりましたね」
黎明の呟きと共に音が鳴り止み夜の闇に静寂が支配する。黎明は膝を抱えて座っていた。
「ところで、どうして竜が興奮するか知っていますか?」
苗床は答えず沈黙を続ける。黎明が彼女の反応を待ちきれず彼女へと視線を向けた。
苗床は祈っていた。手を組み、闇の先にまだ熱く確かな物を彼女に向けていた。
「あのー、苗床さん?」
「彼女はまだ戦います」
「は?」
「だって、私の緋刃さんです。いくら醜くあっても、私を初めて殺してくれた彼女が全て虚構だとは思いません。たとえ望み薄であっても、あの闇の奥から姿が見えない限りここで祈りたいのです」
今一会話が嚙み合わない。最もどちらも最初から合わせる気は無いから当然だが白痴は流石に頭がおかしいと思い始めた。元よりこの場でまともな感性を持つ生物など既に存在しない。
「……因みに私の問題の答えは全ての竜は私の子供だから、私が信仰を得て生きるように神秘により神としての本能を刺激される、故に昂ぶるのです」
「煩い。黙れ外道」
「うわいきなりの暴言。釣れませんねぇ……」
さて、暴言を吐かれながらも黎明は既に彼女はいよいよ彼ら2人の戦闘が終わり帰る気でいる。体を伸ばして欠伸をし、ゆっくりと体を起こす。
グッ
「……?」
グッ グッ
「…………あれ?」
離れない。白痴は手足が地面から離れない。
彼女には戦闘という概念はない。自身の生物学的な虚弱さを自身の能力で補い続けた結果、当然のことながら攻撃に対する警戒も相応に無い。それこそ竜はおろか一人間よりも劣る警戒心の無さである。
脳がこれが攻撃と理解するまで30秒が経過。もしこれが黎明以外であれば既に動けていた。だからこそ彼女は初めて恐怖した。
明確な「死」に狂いつつあった。
「だ、誰……何で離れないの!?」
青ざめ地を蹴り、引っ張り、だが無意味に手足は地面から離れない。手足に重い枷を嵌められたように、そう形容する前に考えを否定した。
「(苗……床……)」
「動けませんか?」
混乱のさなか苗床が黎明に話す。
「結局緋刃さんでも私を殺すのは不可能でしたね。腐敗した瞬間のあの爆発で幸か不幸か腐敗前の肉体も同時に周囲に吹き飛び同一個体として結合しました」
「私に何をした!?」
「私の肉体にあなたを繋げました」
苗床は白い神秘の液体の湖に残る小島の地下に爆発で四散した竜の肉体を伸ばしていた。そっと、黎明に感づかれないように相手を縛るのだ。そしてその思惑通り、細く繋がる肉体は肉眼での視認は困難であり網状に張り巡らされたそれを黎明は気づかず餌食となった。
苗床の竜の体に触れた者は苗床と一つになる。長い年月の中で竜の中でも理不尽な性質を知らないものはいない。彼女も例外でなく手遅れだというのに暴れ始めた。
「も、戻って!白痴、馬鹿やってないで私を助けなさい!ねえ!」
離れない手足に焦り、涙目になりながら必死に足掻く。だが苗床と癒着してしまった後では切除以外では離れる事は出来ない。無駄に藻掻き情けなく助けを求めて暗闇の穴に叫ぶ姿は哀れとしか言いようがない。そして、そんな彼女の声に応えるものはいない。
「放して、このままだとっ、私また、殺される!!」
黎明は白痴に助けを呼ぶが返事は無い。能力の全てを譲渡した人と変わらない状態で吸収されてしまえば消滅する。今までもずっと孤独だったけれど、今度は違う。もう二度と会えないかもしれない。
「苗床っ!白痴さえ戻ればどうってことないんですよ!こんな無駄な事しても意味が無いですよ!!早く離せ!」
青ざめ震えながら、それでも苗床へ怒りをぶつけ続ける。プライドも何もをかなぐり捨てて、ただひたすらに懇願する。
「私はあなたと共に殺されるつもりです」
無常にも彼女は黎明は一蹴する。苗床はもう黎明など眼中にない。彼女の視線は彼女の愛する彼女に向けられていた。
白い沼が波立つ。彼女らの立つ小島の水量が増していく。次第に2人の周りを覆いつくし、苗床と黎明は静かにその中へ飛び込んだ。
「(やめろおおおおおおおおおおおおお!)」
緋人さん、私はここで罪を背負い続けます。あなたにした愚行も、街も、到底許される時は来ないでしょう。
でも、最後まで私の我儘をお願いします。
ほんの恨まれても、破片でもいいです。ほんの少しだけ、私もあなたと一緒に連れて行ってください。
あんたも来るのね、苗床。
いいわ、受け取ってやるよ。このまま私が全部背負ってやる。
「レ……イ、ト……」
大切な人を能力の為の代価として消費する。生まれたままの感性で流れ出る血を剣に変える感覚で2人から逆転の一手を作り出す。命を燃やし、魂を削るように、喪失感すら糧にして全身全霊で力を振り絞った。
能力が発動すると体の傷が塞がる。苗床の持つうっとおしい位の再生力がここまで頼もしいのは初めてだ。欠損した下半身がみるみるうちに復元していく。足りない血液も取り戻し体調は平時より活性化している。
「ッ動け!」
能力は次に体を成長させた。子供の小さな体は瞬時に人間の成人のそれへと変わり果てる。体の節々には鱗や甲殻が鎧として急所を隠すように生え始め、手足の先は鋭く鋭利な爪となっている。背中には大きな翼が生え、全体の様相はまさに竜の女、そうと形容できた。
身体能力の向上も凄まじく白痴との強弱は完全に逆転している。頭から漏れる白い液が延焼しテールランプのように後方に回り込んだ。
「早っ!?」
油断も含め反応に遅れた。振り返り剣を構えるよりも早く接近されぎりぎりで頭を下げて回避する。
「ちぃ!」
舌打ちしながら後隙への攻撃の前に体勢を立て直す。攻撃を回避したとはいえまだ危機的状況に変わりはない。
「何々!?いきなり強くなりすぎだって!」
私の動きはさっきまでとはまるで別人の動きだ。攻撃も防御も速度も全てが桁違いに上がっている。白痴には何が何だか分からないという感じでまだ受け入れられていないらしい。だけど今の緋刃は強いという事は理解出来たかな。あんたならこの勝負、すぐに互角に戻せるでしょ?
白痴は私の読み通り攻撃後を狙ってきた。でも遅い。
振り下ろされる剣を紙一重で避け、そのまま白痴の腕を掴み、捻じり上げる。腕に激痛が走り苦痛に顔を歪める。掴んだまま引き寄せ、空いた手で顔面に拳を叩きこんだ。
「かっ……!」
「謝らないわ……だってまだ最後が残ってるからね!」
そう吐き捨てて怯む白痴を蹴り上げた。彼女でも流石に顔面に攻撃が当たれば反応も出来ない。空中に打ち上げられれば猶更だ。
「これが私達の力だああああああ!」
大きく振りかぶり心臓目掛けて剣を投擲した。流石は強化された肉体だ。白痴の体は私の目で追えるギリギリの速度で飛び、剣はそれをさらに超えて投げた直後に彼女の体を置いて空の星に紛れて見えなくなった。剣の引き起こした凄まじい衝撃波は遥か離れた私にも肌で感じ、彼女の上半身の一部が弾ける姿が月に写る。
白痴の受け身すら取れなかったのか土埃で汚れながら地面を転がる。そろそろ運よく心臓が刺さって死なないかなと期待していいかな。と、剣を構えていたらまた立ち上った。
剣が当たった位置が良かったのか白痴の上半身の右側、右肩から先が無い。出血らしき白液の出も尋常ではなく、だがいよいよ死にかけなのか思ったよりは量は無い。というか私も同じ状態になったら立てていないであろう怪我でまだ立ち上がるコイツがおかしい。
「気持ち悪い……」
思わず本音が漏れた。白痴は肩口を押さえながら苦し気に息を荒げている。その顔は苦悶に満ち、痛みに耐えながらも笑っていた。
「きしっ……ぁ……」
だけど勝ったみたい。彼女の下半身は膝を突き、やがて前のめりに倒れ込む。下半身は白い液体となって崩れ落ちた。
「は、はは……ママ……ごめん……」
クソほど殺意を向けていた相手だが死ぬ時はあっけない。体が下半身を皮切りに胴体、腕、胸と溶けゆく程に白痴の目から光が終えていく。馬鹿な私でももう彼女に何も残っていないと直感で理解した。
「……ねえ、あんたと私ってどこから同じだったのかしら」
「私も……し……ら…………ぁ……」
最後の言葉すら満足に言い切る前に彼女は息絶えた。念の為未だ燻る間際の火を液体まで誘導し彼女の跡を燃やす。そこを剣で刺しても白痴が泥を使って蘇る、なんて展開は無かった。
そしていよいよ深呼吸して一言。
「……終わった。終わ……ちゃ………た……」
彼女の最期を見届けると、私はその場に座り込んだ。終わったのだ。緊張の糸が切れ、一気に疲労感と眠気が襲ってきた。戦闘が終わって眠るのは珍しい。普通はまた新たな敵を探しにふらっと放浪するのに。
けれど今日はもう疲れた。意識が落ちる感覚に身を任せ燃える白泥に囲まれながら眠る。
お兄ちゃん、ママってまた帰ってくると思う?
多分帰ってこないよ。少し呆気なさ過ぎて今更蘇っても……ま、僕の反面教師にはさせてもらうかな。じゃ、最後に。母さんのバーカ。
夢の中、誰かの声が聞こえた気がしけれどきっと気のせいだろう。