「くやしー!なんなのあの女!自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって!ああもう!」
ここ、トリステイン魔法学院の廊下に、一人の少女の地団駄を踏むような声が響く。
「いいじゃねえかよ。召喚なんかなんだって」
その声の主を諌めるように、今度は少年の声が聞こえてくる。
しかし、少女はそれでは収まらず、更にヒステリックな叫び声を上げている。
少女の名はルイズ。この魔法学院の二年生で、ヴァリエール家という貴族の三女だ。
少年の方は平賀才人。昨日の使い魔召喚でルイズに召喚された、運がいいのか悪いのかわからない高校二年生。
ルイズはこの学院で学ぶメイジという魔法使いの見習いであり、一年からニ年への進級時に使い魔召喚の儀がある。そのときに彼を召喚したわけだ。
他の出来事や経緯に関しては、もう大体の読者は知っているものとして省かせてもらう。詳しく知りたければ他の作者のを読むか、原作を読んでくれ。
そんなこんなで口論しつつも、二人はある場所を目指して学院の廊下を進んでいた。
そして暫くして、豪華な装飾が施された食堂へと到着した。
そう、今は朝。二人は朝食を摂るため、この『アルヴィーズの食堂』を目指していたのだ。
才人がその光景に驚いていると、ルイズが得意げな様子で言った。
「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」
「はぁ」
「メイジはほぼ全員が貴族なの。『貴族は魔法をもってしてその精神となす』のモットーのもと、貴族たるべき教育を、存分に受けるのよ。だから食堂も、貴族の食卓にふさわしいものでなければならないのよ」
「はぁ」
分かっているのか分かっていないのか、才人は気の抜けた用な返事しか返せないでいた。
不意にルイズから椅子をひいてと言われたので、彼女のために椅子をひき、自分も椅子に座る。
「すげえ料理だな!」
そして、朝から無駄に豪華な料理に目を輝かせていると、ルイズが床を指差した。そこには貧相なスープと硬そうなパンが乗っている皿が置かれていた。
「あのね?ほんとは使い魔は、外。あんたはわたしの特別な計らいで、床」
どうやら彼の食卓は、テーブルではなく床らしい。
テーブルの上の豪華な料理と見比べて、切ない気持ちになっていると、一人の給仕と思われる青年がサイトの近くへとやってきた。
「もしかして、君が噂の少年か?そんなんじゃ足りんだろう、俺の朝飯で良かったら食うか?」
「マジっすか!?是非お願いします!」
願ってもない言葉に床にぶつかりそうな勢いで才人は頭を下げるが、それに冷水をかけるようにルイズが青年へと言い放った。
「ちょっと勝手なことしないで。そんなことして、癖になったらどうするのよ」
僅かに怒気を孕んだ言葉に、才人は思わず背筋が震えたが、青年はまるで効いてないかのようににこやかに笑いながら返した。
「まぁまぁ、そう硬いこと言わずに。こいつくらいの歳は、しっかり食べなきゃカラダが持たねえからな。気にしなくても、そんな高い食材は使わねえからよ」
「そういうことを言ってるんじゃないわよ!」
「んじゃ、ちょっくら用意してくるから、少し待ってな」
そう言うと、青年は厨房の方へと戻っていった。残されたルイズはというと、失礼な物言いをする青年に腹を立てているのか、プルプルと震えていた。
「何なのよあいつは!」
その後、才人のもとに塩で味付けした焼き魚と目玉焼きを乗せたトーストが青年により運ばれてきて、それを才人は涙を流して喜んだという。
ちなみにルイズは食事中であり、青年に物申したかったがぐっと堪えていた。
◇
朝食を終えると授業が待っているため、二人は教室へと移動した。そこでちょっとした事件があったのだが、ここでは割愛させていただく。
その後は昼食の時間なのだが、先の授業のときにルイズの異名『ゼロ』の由来を知った才人がいらんことをしたせいで、彼は昼食を抜きにされてしまった。
途方に暮れていると、一人のメイドが才人へと話しかけてきた。
「どうなさいました?」
彼女の名前はシエスタ。黒髪とそばかすと一部分が魅力的なメイドの少女である。
「あなた、もしかしてミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう……」
「知ってるの?」
「ええ。なんでも、召喚の魔法で平民を呼んでしまったって。噂になってますわ」
ニッコリと屈託のない笑顔で笑う彼女に、才人は「君も魔法使い?」と問いかけるが、シエスタは首を横に振って、自分は平民でこの学院でご奉仕をさせてもらっていると答えた。
とその時、才人の腹の虫が鳴き声を上げ、それを聞いたシエスタは才人をある場所へと連れて行った。
連れて行かれた先は、食堂の裏にある厨房で、昼時の為かコックやメイド達が忙しく働いている。
「ちょっと待っていてくださいね。シンジさーん!」
シエスタが呼び掛けると、奥から呼ばれた人物と思われる青年が小走りで駆け寄ってきた。
その姿を見て、才人は「あっ」と声を漏らした。
「どうしたんだシエスタさん?あれ、君は……」
「あ、あなたは朝の!」
その青年は、朝才人に食事を持ってきた青年であった。格好から見るに、給仕ではなく料理人だったようだ。
「あら、もう既にお知り合いだったんですか?」
「ああ。朝食の時にちょっとな。それよりシエスタさん、彼をここに連れてきたってことは」
「はい。サイトさんに何か食事を出してもらえないかと」
「そういうことなら任せとけ。ちょっと待ってな」
そう言うと彼は厨房の奥に行くと、料理の入った皿を持って戻ってきた。
皿は二つあり、それぞれにシチューと肉料理が乗せてあり、才人の鼻孔を匂いがくすぐる。
「お待たせ、余りもんで作ったシチューと鶏肉のてりやき風だ」
「いいんですか?」
「賄いだからな。気にせず食べな」
その言葉に才人はありがたくいただくことにし、スプーンで料理を口に運ぶと、その美味さに涙がこみ上げてきた。
「美味いっすよ、これ!」
「そりゃよかった。そういえば、君の名前を聞いてなかったな」
「俺ですか?俺は平賀才人っていいます」
才人のは彼に向けて自分の名前を答えるが、それを聞いた青年は怪訝そうな顔をして首をひねった。
「その名前……もしかして君は」
とそこまで言ったところで、厨房から彼を呼ぶ声が聞こえてきた。
「おいシンジ!いつまでも油売ってないでさっさと戻ってデザートの準備手伝え!」
「はい!わるいな、仕事に戻らねえと。何かあったら、シエスタさんに言ってくれ。じゃあな」
そう言って、彼は厨房の奥へと戻っていった。
残された才人は料理を平らげると、シエスタの手伝いをしたいと言い、デザートを運ぶのを手伝うことになった。
しかしそれにより、ある騒動に巻き込まれることになった。
シエスタの手伝いでデザートを配っている途中、ある生徒のポケットから落ちた小壜を拾ったのだが、それがいけなかった。
どうやらその生徒、ギーシュは二股をかけており、奇しくも才人の親切によりそれが露見してしまった。
二股をかけていた少女達に制裁を受けたギーシュは半ば八つ当たり気味に才人に決闘を申し込み、才人もそれを受けてしまった。
それを見ていたシエスタは青い顔をして走って逃げてしまい、事情を知ったルイズに止められても才人は聞く耳を持たず、決闘へと向かってしまった。
「諸君!決闘だ!」
噂を聞きつけた生徒達で溢れかえるヴェストリの広場で、ギーシュが薔薇の造花を掲げながら宣言した。ギーシュの反対側には、才人の姿がある。
「とりあえず、逃げずに来たことは、誉めてやろうじゃないか」
「誰が逃げるか」
「さてと、では始めるか」
ついに決闘が始まった。ギーシュは青銅製のゴーレム『ワルキューレ』を生成し、才人へとけしかける。素手である才人は、なすすべもなくやられていくが、どれだけボロボロになっても、ルイズが止めても「参った」だけは言わなかった。
そしてギーシュが情けで投げ寄越した剣を手にした瞬間、形成は逆転した。
才人がゴーレムを斬り伏せると、ギーシュは更に六体のゴーレムを生成し、才人へとけしかける。
しかしそれも尽く斬り伏せられると、ついにギーシュが降参の言葉を口にした。
勝利の余韻を感じるまもなく、重度の疲労感により才人は地面へと倒れる。
それを見てルイズが駆け寄ろうとした。
しかし!異変はその時起こった!
ドオォーンッ!!
「きゃああっ!?」
突如として起こった爆発に、決闘の興奮に湧いていた広場は一転して悲鳴が響き渡った。
「な、何が……?」
どうにか状況を確認しようとした時、爆風の中から多数の人影が姿を表した。
「キーッ!」
「キキーッ!」
「な、何よこいつら!?」
いつの間にか、まるでサソリのような模様が施されたタイツと白い模様の覆面をした人間達が広場の生徒達の前に大勢現れていた。。
「あ、あいつら、まさか……」
「あんた、あいつらを知っているの?」
ルイズが才人れと問い掛けるが、その時不気味な笑い声が聞こえてきた。
驚いている生徒達の前に、両手が刃物になっている化け物が前に出てきた。
「ひっ!?」
「亜人?でもあんなの見たことないぞ!」
「なんで学院に!?」
恐怖に震える生徒達をよそに、その化け物は生徒達へと向かって言い放った。
「シザァーズ!俺は新生デストロンの怪人、ハサミジャガー様だ。貴様らを誘拐し、怪人へと改造してやる」
「な、何を訳のわからないことを言ってるんだ!」
「や、やめろ……」
才人の静止する声は届かず、一人の生徒がその化け物、怪人ハサミジャガーに食って掛かる。
しかしハサミジャガーはその生徒に近づくと、右腕の刃物で生徒を突き刺した。
突然のことに他の生徒達は言葉を失うが、その後の光景には悲鳴を上げて、腰を抜かす生徒達も出てきた。
ハサミジャガーに刺された生徒は、跡形もなく溶けて消えてしまったのだ!
「これで分かっただろう。さあ、大人しく来るんだ」
「ひっ!?ふぁ、『ファイアー・ボール』!」
「『エア・カッター』!」
複数の生徒が抵抗しようと魔法を放つ。それにより戦闘員が吹き飛ぶが、ハサミジャガーには効果がないのか平然としていた。
「シザァーズ、これで抵抗は無駄だと分かっただろう」
この状況に耐えきれず、生徒達は悲鳴上げて逃げ惑うが、ハサミジャガーの指示を受けた戦闘員が生徒達へと襲いかかる。
『フライ』の魔法で逃げようとした生徒がいたが、飛び上がった瞬間謎の爆発により命を落とした。
「ズゥーカァー!逃げようとしても無駄だ。飛び上がった瞬間、俺のバズーカ砲の餌食だ」
「カメバズーカ、あまり殺すなよ」
「分かっている。今のは警告だ」
新しい怪人の出現に、生徒達は逃げ惑うことしかできない。
「な、何なのよあいつらは……!?」
ルイズは未だ疲労とダメージで動けない才人に肩を貸しながら、なんとか広場から逃げようとするが、思うように動けない。
「くそ……こんな時に……がいてくれれば」
「きゃあっ!?」
「キーッ!」
しかし、その時戦闘員の一人がルイズへと襲いかかってきた。絶対絶命のその時、一人の人影が飛び込んできた。
「トウッやあっ!」
「キーッ!?」
飛び込んできた青年は、その戦闘員に肉薄すると、次々と戦闘員を倒していった。
「あ、あんたは……」
「さあ、今のうちに!」
そう言ってその青年は他の戦闘員へと攻撃し、次々と生徒達を助けていく。
「あ、あの人は……!」
才人はその人物に見覚えがあった。ルイズも同じく見覚えはあった。エプロンをつけた料理人の姿の彼は、才人へと料理を振る舞ってくれたあの料理人だった。危険だ、逃げろと伝えたかったが、彼はもうすでに二人から離れており、二人はこの場から逃げることしかできなかった。
「トウッ!クソ、キリがない!」
「キャーッ!?」
「っ!?させるか!!」
悲鳴がした方向に向かうと、一人の女子生徒がハサミジャガーに捕まっていた。
「手こずらせやがって」
「クッ!放しなさいよ!」
「威勢のいい女だ……ウオッ!?」
青年がハサミジャガーの背中に飛び蹴りを食らわすと、ハサミジャガーは体勢を崩し、女子生徒はその腕から逃れることができた。
「君、大丈夫か!?」
「え、ええ……」
「っ!?危ない!」
青年が彼女を抱えて飛び退くと、今さっきまで彼らがいた場所が爆発した。
青年が視線を向けると、そこには蹴り飛ばしたハサミジャガーに加え、カメバズーカが立っていた。
「威勢のいい人間がいたものだな」
ハサミジャガーが青年へと声をかける。
「デストロン!貴様らは壊滅したはずだ!」
「確かに我々はV3の手により壊滅した。しかしショッカー復活に伴い、我々はこの異世界侵略部隊として再誕したのだ!」
「そうはさせん、貴様らの野望はこの俺が阻止して見せる!」
「威勢だけはいいな、だがそれもここまでだ!」
カメバズーカがそう叫ぶと、戦闘員が彼らの周囲を取り囲んだ。
「くっ……仕方がない。君!」
「は、はい?」
「これから見ることは、秘密にしててくれ」
「え、ええ」
少女の返答を聞くと、青年は怪人達へと向き直る。
「まさかこの世界で変身することになるとはな」
「何だと……?」
青年がエプロンを脱ぎ捨てると、彼の腰にとあるものがついていることが確認できた。
それを見た怪人達は驚き、青年へと問い掛けた。
「そ、そのベルトは!?貴様、何者だ!?」
「教えてやろう。俺は朝火シンジ、そしてこのベルトは、俺が先代から受け継いだものだ!いくぞ!!」
怪人の問い掛けに答えた青年、シンジは両腕を右に伸ばすと、半円を描くように左に回し、右腕を引くと入れ替えるように左腕を引きながら右腕を勢いよく突き出した。
「変……身!V3ヤァァッ!!トウッ!!」
そう叫んで飛び上がると、ベルトの風車が回転し、シンジの身体が風に飲まれていく。
そして風が止み、着地したシンジの姿は先程までとは変わっていた。
「き、貴様はまさか……!」
「なぜこの世界にいる!?」
その姿を見たハサミジャガーとカメバズーカは狼狽えはじめた。
その人物は、緑色のボディに白いマフラーをたなびかせ、赤い仮面を付けた姿をしていた。
「あなたは、一体……」
不意に、女子生徒の口から漏れた言葉に、シンジは振り向かずに答える。
「俺は、V3……仮面ライダー、V3っ!!デストロン、貴様らの企みは、俺が阻止して見せる!!」
ここハルケギニアで、仮面ライダーV3と悪の組織デストロンとの戦いが、今まさに始まろうとしていた。
戦え、V3!この世界を、デストロンから守るために!
平和な魔法学院に突如現れた悪の組織、デストロン。
その怪人であるカメバズーカとハサミジャガーに、V3が立ち向かう。
ライダーV3とデストロンの戦いの火蓋が、この異世界で切って落とされた。
戦えV3!ハルケギニアの平和は、君の手にかかっている!
次回、「決意の握り拳」ご期待ください。