ゼロの使い魔〜赤い仮面と命のベルト〜   作:D-ケンタ

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第二話 決意の握り拳

突如現れた悪の組織、新生デストロン。

立ち塞がる怪人に魔法も効かず、逃げ惑う魔法学院の生徒達だったが、そこに正義の味方、ライダーV3が現れたのだ!

 

「ライダーV3、なぜこの世界にいる?!」

「生憎だったな。一ヶ月前、俺はショッカーの怪人が発動した時空転移に巻き込まれてこの世界に来たんだ!」

「おのれぇ……いけ、戦闘員!」

 

ハサミジャガーの指示により、デストロン戦闘員がV3へと襲いかかる。

 

「いくぞ!とおッ!」

 

掛け声とともに、V3は戦闘員達と交戦を開始。次々と襲い掛かる戦闘員を蹴りやパンチ、投げ技で倒していく。

 

「とおっ!やあっ!」

「キキーッ!」

 

倒された戦闘員は爆発し姿を消していく。その光景に、先程V3に助けられた女子生徒は呆然としていた。

 

「ふんっ!さあ、君も早く逃げるんだ!」

「は、はい!」

 

V3に言われたことで、女子生徒も漸く避難していった。流石に彼女を守りながらでは、V3も怪人二人を相手にするのは厳しいと判断した。

 

「クソッ、戦闘員では歯が立たんか……」

「やむを得ん。カメバズーカ、お前は先にアジトに戻り、首領へと報告しろ」

「分かった。ここは任せるぞ」

 

ハサミジャガーの提案に乗ったカメバズーカは、戦闘員を盾にしつつこの場から逃走した。それを見逃すV3ではないが、戦闘員に阻まれ、逃走を許してしまった。

 

「貴様の相手は俺だ、ライダーV3!」

「覚悟しろ、ハサミジャガー!」

 

V3はハサミジャガーへと肉薄すると連続して打撃を浴びせるが、ハサミジャガーも負けてはいない。両腕の刃物を振り回し、V3を切りつけていく。

 

「シザァーズ!」

「クッ!どぉあっ!」

 

ハサミジャガーの切りつけを回避すると、V3はハサミジャガーへと組付き、そのまま跳躍。近くの屋根へと着地すると、そのまま左右のパンチ連打を食らわす。

 

「おのれぇっ!」

「グッ!」

 

しかしハサミジャガーもやられっぱなしではない。V3のパンチを躱すと腕の刃物を叩きつける。

 

「これでも喰らえ!シザァーズ!」

「うおっ!?」

 

そしてなんと、ハサミジャガーは両腕の刃物を重ねた巨大なハサミでV3を追い込んでいく。

 

「そらそらそらっ!」

「ぐうっ!」

 

なんとか躱していくV3だが、ついに屋根の端へと追い詰められてしまった。

 

「止めだ!」

「させるか!トオッ!」

 

ハサミジャガーがV3の首を狙って切り落とそうとしたところ、既のところでV3は跳躍して回避し、ハサミジャガーの振り向きざまにそのハサミを根本から蹴り上げた。

 

「セイッ!」

「グアァ!?」

 

蹴り上げられバランスを崩したハサミジャガーは、そのまま屋根から転げ落ち、下の地面へと墜落した。

 

「グウウ……」

「止めだ!トウッ!」

 

それを好機とみるや、V3は屋根から跳躍し、ハサミジャガーへと回転しながら飛び蹴りを喰らわす。

 

「グアッ!?」

 

しかしそれでは終わらず、V3は蹴った反動で再び跳び上がると、再度ハサミジャガーへと飛び蹴りを放った!

 

「V3回転ダブルキーック!!」

「ギャアァッ!?」

 

蹴り飛ばされたハサミジャガーは大きく吹っ飛ばされ、地面へと強かに体を打ち付けられる。

そして、よろよろと立ち上がると、V3を指して言い放った。

 

「ラ、ライダーV3……貴様がいたのは誤算だった……。だがすぐに、新たなデストロンの怪人が貴様を狙うだろう……それまで首を洗って、待っているんだな……!シ、シザァーズ……!」

 

そう言い残し、ハサミジャガーは地面に倒れ、その身体は爆発四散していった。

 

「……望むところだ、デストロン。この世界は、俺が守ってみせる」

 

決意を胸に、これからの戦いに向け覚悟を決めていると、校舎の方から教師と思われる人達の姿が確認できた。

 

「捕まっては面倒だな……ハリケーンッ!」

 

V3がそう叫ぶと、何処からともなくバイクが現れ、V3はそれに飛び乗るとそのまま何処かへと走り去っていった。

後には爆発した痕跡のみが残されていた。

 

 

『何だと?ライダーV3が現れただと!?』

 

およそハルケギニアには似つかわしくない、電子音が鳴り響く部屋の中。複数人の人影が声の主へと視線を向けている。

しかしそこには誰もおらず、サソリを象ったエンブレムが飾ってあるだけだ。

 

「はい。まさか学院に潜伏していたとは……」

 

魔法学院を襲撃した怪人の一人、カメバズーカがエンブレムへ向かって話す。

 

『うぅむ。奴がいる以上、今後の作戦にも支障が出るやもしれん。カメバズーカよ、至急ライダーV3を抹殺するのだ!』

「ズゥーカァー!」

 

再びデストロンの魔の手が迫ろうとしていた。

 

 

デストロン襲撃の翌日。学院は蜂の巣をつついたような騒ぎになり、すべての授業を休講にし、学生達は自室での待機を命じられることになった。

学院の裏庭の井戸で、一人の青年が水を浴びていた。

 

「――ぷはぁっ!」

 

青年―朝火シンジは水で濡れた体をタオルで拭くと、近くにかけていた着替えに袖を通す。

 

「しかし、まさか学院長に見られていたとは……」

 

そう呟くと、シンジは朝の出来事を思い出していた。

 

――――――

 

朝、いつも通り朝食の用意をしていたところに、教員であるコルベールがやってきて、そのまま学院長室へと連行された。

そして、学院長室の扉をくぐった先では、当然のごとくこのトリスティン魔法学院学院長の、オールド・オスマンが待っていた。

 

―――秘書の女性に、踏みつけられている姿で。

 

「……何してるんですか」

 

心底呆れたという風にコルベールがため息を吐く。

事情を訊けば、いつも通り、オスマンが秘書の女性―ロングビルにセクハラしたのが原因だという。

……もう何も言えない。

漸く足蹴から開放されたオスマンは、咳払いをするとロングビルを部屋から退出させ、椅子に座るとシンジへと視線を向けた。

 

「さて……単刀直入に訊くが、君は何者だね?」

 

その言葉にシンジは僅かに警戒を強めた。

それもその筈。この質問をしてくるということは、あのとき起きていたことを見られていた可能性があるが、周囲から誰かに見られている気配はなかった。昨日の今日であの女生徒から漏れたというのも考えにくい。

しかし、そのシンジの心を見透かしてか、オスマンは軽く笑ってから言った。

 

「ホッホッホ、そう警戒せんともよい。お主が奴らの仲間ではないということは理解している。ただ単純に、お主の事を知りたいだけじゃ」

 

次いでオスマンは、実はあの時遠見の鏡にてシンジが変身するのを目撃したと話した。それと同時に、デストロン襲撃の際駆けつけられなかったことをコルベールとともに謝罪した。

 

「オスマン学院長、それにコルベール先生。謝ることはありません。むしろ非難されるのは俺の方です。俺が怪人の気配に気づいていれば、犠牲者を出さずにすんだのに……。お話しします、デストロンの事。そして、俺の事も」

 

それからシンジは、二人にすべてを話した。話を最後まで聞いたオスマンとコルベールは怪人という妖魔とも違う存在、そしてそれを操る悪の組織の脅威を、シンジの話により再認識した。

 

「……ありがとう、話してくれて。デストロンの件は至急王宮へと報告し、対策を練るとしよう」

「それは難しいでしょう」

「何故じゃ?」

「デストロンは残忍で狡猾だが、それ以上に慎重だ。滅多なことじゃ、奴らの行いは表に出ることはない」

 

事実、過去にデストロンが暗躍していた時期は、その存在は一般人には全くといっていいほど知られていなかった。そのせいで犠牲者が出た事件もある。

 

「それでも、何もしない訳にはいかんじゃろう。儂らにはこの学院の生徒達を守る義務がある。なぁに、連中の痛いスネを突けば、何とかなるじゃろうて」

「……分かりました。ですが、気をつけてください。デストロンの魔の手は、どこに潜んでいるのかわからないのですから」

 

それを最後に、シンジは学院長室をあとにした。残されたオスマンとコルベールは、彼が出ていった扉に視線を向けながら、先の話の内容を胸に刻みこんだ。

 

「悪の組織デストロンに、それにより生み出された怪人。そして、それらと戦う仮面ライダー……のう、ミスタコルベール」

「はい」

「これからこの国は……いや、この世界は大変なことになるじゃろうて……」

 

そう語りながら窓の外を向いたオスマンの眼は、遠く天を見つめていた。

 

――――――

 

学院長室をあとにしたシンジは、一旦厨房に戻るも、当然というか仕事は全部終わっており、事情が事情のためお咎めはなかった。そして休憩時間になると、考えたいこともあったため外に出て水を浴びることにしたという訳だ。

 

(デストロン……先代から聞いていたが、奴らがこのまま大人しくしているとは思えない。障害となる俺を消すため、すぐに行動してくる筈だ)

 

近くの芝生に腰を下ろし、今後のデストロンの動向について考えを巡らす。

このままでは学院の、厨房の皆にも迷惑が掛かるだろう。

ここから去った方がいいのだろうか……。そんな考えが頭をよぎる。

 

「あら、何か考え事?」

 

不意に声を掛けられ、反射的に振り向いた先には、一人の女子生徒がいた。 

 

「君は……」

「隣、いいかしら」

「あ、ああ」

 

そうシンジが答えるやすぐに、女子生徒はシンジの隣に腰を下ろした。

 

「……俺に、何か用か?」

 

そう問い掛けるシンジに、彼女ははクスリと笑った。

 

「ふふっ、そうね……まずは昨日のお礼を言いたくて、ね」

「気にしないでくれ。当然のことをしただけだ」

「あら、謙虚なのね。でもその当然ができる人間はなかなかいないものよ。だからちゃんとお礼を言わせて頂戴……助けてくれて、ありがとう」

 

そのセリフには流石のシンジも照れくさかったのか、彼女から視線を外して頬を掻いた。

 

「なんだかむず痒いな……でも、本題はそれじゃないんだろう?」

「……ええ、そうね」

 

二人の間に、暫しの沈黙が流れる。

 

「お礼を言いに来たってのも、嘘じゃないわ。でも本当は、あなたのことを訊きに来たの」

「……やめておけ。聞いてて、気持ちのいい話ではない」

 

そう言い放つと、シンジは話は終わりと言わんばかりに腰を上げてこの場を去ろうとした。

だが立ち上がろうとした瞬間、腕を引かれる感覚に視線を向けると、彼女がシンジの腕を掴んでいた。

シンジはその腕を振り払おうとはせず、片膝をついて彼女の肩に手を乗せて諭すように話した。

 

「いいか。奴らは、デストロンは目的の為なら手段を選ばない。これ以上踏み込めば、昨日以上の危険に晒される。悪いことは言わない、もう関わるんじゃない」

「優しいのね。でも、あたし聞いてしまったの。断片的だけど、あなたと学院長が話しているのを……」

「……盗み聞きとは、いい趣味とは言えないな」

「あなたの姿を見かけてつい、ね。……教えて、あなたは何者なの?」

 

再び、二人の間に沈黙が流れる。ふと、シンジは彼女の眼を見た。その瞳からは、恐怖の色が見えたが、それと同じくらいの確固たる覚悟が感じられた。

 

「……分かった。だが、聞けばもう後戻りはできない。いいんだな?」

「……ええ」

 

シンジは観念したように、彼女の隣に再び腰を下ろした。

 

「では改めて話そう。俺の事を。その前に、君の名前を聞いてもいいかい?」

「キュルケ。二つ名は『微熱』よ」

「俺は朝火シンジ。朝火がファミリーネームで、シンジが名前だ」

「アサヒ・シンジ……変わっているけど、素敵な名前ね」

 

彼女――キュルケにお世辞だろうが名前を褒められたことで、シンジの頬が僅かに緩んだ。

 

「ありがとう。……キュルケ、初めに言っておこう。俺は……改造人間だ」

「改造、人間……?」

「ああ。俺の身体は、もう生身の人間の身体じゃないんだ」

 

それを聞いたキュルケは、ついシンジの身体を触った。その感触は、確かに生身のような柔らかさや温かさはなく、無機質な印象を与えていた。

 

「嘘……じゃああなたは、人間じゃないの……?」

「いや、人間だよ。少なくとも、心は人間だ。この身体も、生まれたときからこうだった訳じゃない」

 

どこか悲しげな表情で、シンジは更に続けた。

 

「俺は城南大学に通いながら、町の食堂で働いていた。料理人を目指しながらな」

「何故、料理人に?」

「妹との約束でな。俺には、6つ下の妹がいた。だがある日、ショッカーに拐われた妹を助ける為、俺はショッカーの基地に忍び込んだが、そこで瀕死の重傷を負ってしまった。このままでは死ぬのを待つだけだったが、そこにあの人達が現れた」

「あの人達?」

「ああ。仮面ライダー1号、2号、それに先代の仮面ライダーV3だ」

 

その発言に、キュルケは驚きの余り身を乗り出しつつシンジに尋ねた。

 

「先代って、あなたみたいなのが他にもいたの?」

「ああ。瀕死だった俺は、先代ライダー達に助けられ、ショッカーと戦うための力……改造人間、仮面ライダーとしての力を手に入れた。大変だったな……初めは力の制御ができず、日常生活を送るのにも苦労していた」

 

苦笑しつつ、懐かしむように話すシンジの様子を、キュルケは黙って見つめていた。

 

「それまでの生活に加え、ショッカーとの戦いの日々。だが俺は仲間に恵まれた。先代ライダー達に、俺と同じ二代目の1号、2号……大和座先輩に力動先輩のおかげで、俺はこの力を、自分の物にすることができた」

「そう……」

 

あまりに想定を超えた話に、キュルケは言葉が出なかった。

 

「そして、ショッカーと戦い続けていたある日、俺はとある怪人を追っていた。だが、その怪人を倒したとき、ヤツの持っていた時空転送装置に巻き込まれ、俺はこの世界に飛ばされた」

「この世界?まるで別の世界から来たかのような言い方ね」

 

シンジの言い方に違和感を覚えたキュルケは、なんのけなしにそう呟いた。しかし返ってきたのは、またも予想外の答えだった。

 

「ああ。俺はこことは違う世界からやってきた」

「冗談でしょう?流石にそれは信じられないわよ」

「信じなくてもいい。だが、事実だ」

 

そう答えたシンジの眼は真剣そのものであった。じっと見つめられたキュルケはつい顔をそらしながら、続けて尋ねる。

 

「あなたが別の世界から来たとして、どうして学院で働いているのよ?」

「ああ。この世界に転移した直後、戦闘のダメージで倒れていた俺は、ここの料理長のマルトーさんとメイドのシエスタさんに助けられた。帰る宛もなく、ここで働いていたところに昨日の事件だ。この世界で、復活したデストロンが悪事を企むなら、俺は奴らと戦う。この世界を、守る為にな」

 

拳を握りしめながら、シンジはこれからの戦いに向けた覚悟を口に出した。

不意に、キュルケがシンジとの距離を詰め、彼の肩に頭を乗せた

 

「立派ね。ここのカッコつけた男子達とは大違い……」

「そんな大層なもんじゃない。彼らはまだ子供だ、俺は彼らより、少しだけ色々経験しているというだけだ」

 

何気なくそう言ってのけるが、その経験が人並外れているということは彼自身自覚しているつもりではある。

するとキュルケはシンジの手に自分の手を重ねながら、更に続けて言った。

 

「けど、だからといってあなたが戦う必要あるの?そのデストロンだって、軍隊に任せておけばいいのに」

「無理だ。この世界の軍がどのくらい強いは知らんが、デストロンの力はその悉くを凌ぐだろう」

「それが本当だとしたら、尚更あなたが全部背負う必要はないじゃない。デストロンって、昨日みたいな化け物が他にもいるんでしょ?」

「いや、俺がやらなければならないんだ。この命に変えても……それが、仮面ライダーの使命だからな」

 

そう言って、シンジは彼女を軽く押し退けるとそのまま立ち上がり、今度こそこの場を去るために歩き出した。

 

「あぁっ、ちょっとぉ」

「これで俺の話は終わりだ。君も早く部屋に戻りな」

 

振り返らずにキュルケに向かって手を振り、そのままシンジはこの場から歩き去った。

残されたキュルケは、彼の去った方向を見ながら、何かを考えるように立ち尽くしていた。

 

(何故かしら……彼に助けられてから、今までとは違う『熱』を感じるわ。もしかしてあたし……)

 

キュルケの頬は、ほんのりと赤みを帯びていた。




デストロンによる襲撃の混乱も落ち着き、シンジはマルトーより街へ行けと言われ、虚無の曜日に街へと遠出する。そこで料理人として、この世界の料理を知ろうとしたが、予期せぬ問題に差し掛かる。しかしそこに思いもよらぬ助け船が!

次回、「街に潜む影」ご期待ください。
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