ゼロの使い魔〜赤い仮面と命のベルト〜   作:D-ケンタ

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第三話 街に潜む影

「う……」

 

朝の光に照らされた部屋で、才人は目を覚ました。

身体を起こして確認すると、自分はベッドで寝ており、更に身体には治療の跡があることに気がついた。

一体誰が……。そう思っていると、ルイズが机に突っ伏して寝ているのが目に入った。まさか……と思っていとドアが開き、シエスタが入ってきた。その手に持ったトレーには、パンと水がのっていた。

 

「お目覚めですか?サイトさん」

「俺は……!そうだ、あいつらはっ!?……いっつつ」

「あ、無理してはだめですよ!あれだけの大怪我では、『治癒』の呪文でも完璧には治せません!ちゃんと寝てなきゃ!」

 

才人は再びベッドに寝転ぶと、シエスタからルイズが才人の為に手を尽くしてくれたこと、看病してくれたことを聞き、彼女のことを内心少し見直したのだった。

 

「俺、どのくらい寝てたの?」

「三日三晩、ずっと寝続けてました。目が覚めないんじゃないかって、皆で心配してました」

「皆って?っていうか三日!?」

 

シエスタから告げられた日数に才人は驚き、再びベッドから跳ね起きた。

 

「で、ですから寝てないと!」

「あいつらは、怪人達はどうしたんだ!?」

 

才人はシエスタの肩を掴み、あの時に襲撃してきた怪人達がどうなったかについて尋ねる。

その表情は鬼気迫っており、気圧されたシエスタはついビクッと肩を震わせた。

 

「わ、私もよく分からないのですが、聞いた話では新たな亜人が現れ、初めに現れた亜人の軍勢を撃退したそうです」

「仲間割れ……?そいつの姿は分かるか?」

「すみません、そこまでは……」

 

申し訳無さそうに顔を伏せるシエスタに、才人は彼女の肩から手を離した。

 

「ごめん、つい……」

「い、いえ。私なら大丈夫です」

 

気まずい空気が流れるが、その空気を破るように大きなあくびが聞こえてきた。

 

「ふぁああああああああ……あら、起きたの。あんた」

「う、うん」

 

目を覚ましたルイズは立ち上がると才人に近寄る。才人は内心ドキドキしてたが、ルイズからかけられたのは心配の言葉でもお叱りの言葉でもなかった。

 

「ねえあんた。あの亜人達のこと知っているの?」

「……ああ」

「そう。なら、話してもらえるかしら」

 

正直三日間寝込んでいた人間に訊くことではないが、彼女の鳶色の目は真剣そのもので、興味本位などではないことを物語っていた。

だからだろうか。才人は変な反抗心を持たずに、自分の知っていることを話すことにした。

シエスタは気を使って退出しようとしたが、才人がそれを引き止めた。彼女にも、奴らの危険性を認識してほしかったからだ。

それから才人は、二人に奴らについて知っている限り話した。

才人の話を聞いた二人は信じられないといった表情をしたものの、それも無理はないと才人は思っていた。

 

「けど、そんなの軍隊が動けばすぐに制圧されるんじゃないの?」

「いや、魔法がどれくらい強いかはわからないけど、奴らのことだ。それも計算に入れて作戦を立てている筈だ。そうでなくとも普通の人間じゃ奴らには敵わない」

「そんなの……!」

 

分からない。と言いかけたルイズだが、先の襲撃の際に生徒が放ったものとはいえ受けた魔法を全く意に介さない怪人達のことを思い出し、言葉を詰まらせた。

 

「そんな……じゃあどうすれば」

 

シエスタは悲観したように震えた声で呟いた。

ルイズも声には出さないが、怪人達によって国や家族が蹂躙される光景を想像してしまったのか、よく見れば手が震えていた。

 

「ちょっと待てよ。もしかして……」

「どうしたのよ?」

「なあルイズ、お前知らないか?あいつらを撃退した奴の姿を」

 

サイトに訊かれたルイズはその質問の意図が分からなかったが、少しうーんと首をひねると、思い出したかのように口を開いた。

 

「それだったら、生徒達の間でも噂になっているわ。私は直接見てないけど、なんでも虫みたいな見た目だったとか」

 

その話を聞いた才人は驚きのあまり目を見開き、そして喜びのあまり体を震わせた。

 

「サイト?」

「サイトさん?」

 

二人は不思議に思って声をかけるが、才人は先程までの悲壮感のある表情から一変、笑顔で二人に答えた。

 

「ルイズ、シエスタ!なんとかなるかもしれないぞ!」

「ど、どうしたのよ一体?」

「仮面ライダーだよ!仮面ライダーが来てくれてたんだ!」

 

降って出た希望に、才人は喜びベッドから飛び起きるが、二人は何のことか分からない。

 

「ちょ、ちょっと!何一人で喜んでるのよ!?その、かめんらいだー?ってなんなのよ?!」

 

ルイズの声に落ち着きを戻した才人は、二人に仮面ライダーのことについて説明した。

悪と戦う正義の味方、仮面ライダー。闇あるところに、仮面ライダーは現れる……例えそれが異世界だろうと。

 

 

襲撃から暫く経ち、生徒達の自室待機も解除され、同時に授業も再開されたことで、学院にはいつもどおりの景色が戻ってきた。

そして、それは厨房でも同じ。大勢の生徒達の食事を作るため、今日も厨房は大忙し。その中にはシンジの姿もあった。

そして昼食の時間が終わった頃、一息ついているシンジにマルトーが話し掛けてきた。

 

「虚無の曜日、ですか?」

「ああ。この一ヶ月で、お前も仕事に慣れただろう。ここらで一つ、街にでも行って羽根を伸ばしてきな。給料も出たことだしよ」

「ですが……」

「いいから行って来い!それに、街にもうまい店は沢山ある。舌を鍛えるのも仕事だぞ」

 

そう言ってマルトーは他の料理人のところへと向かった。残されたシンジは近くの椅子に腰掛けて、マルトーに言われたことについて考え込む。

 

(確かに、給料が出たら街に出て色々食べ歩きたいとは思っていた。それに、もしかしたらデストロンに関してなにか情報が見つかるかもしれない。お言葉に甘えて、今度街に行ってみるか)

 

そうしてシンジは、次の休日に向けて、頭の中で予定を立て始めたのだった。

 

 

ついに訪れた休日、虚無の曜日。

この日は生徒達も授業が休講になるため、シンジ達奉公人の仕事も普段よりは楽になる。そのためシンジも休暇を貰い、街へ行くことができるというわけだ。

 

「さて行くか。ハイよっ!」

 

借りた馬の手綱を握り、街のある王都へと走らせる。ハリケーンで向かったほうが早いのだが、あまり目立つことはしないほうがいいと考えたため、馬を借りることにしたのだ。

慣れない馬ではあるが、そこは仮面ライダーの力でなんとか抑え込むことで乗りこなしていた。

シンジは内心楽しみにしていた。学院の賄いとは違う、この世界の料理を味わえると考えると、料理人志望として興味がわかないわけがなかった。

そして馬に乗ること3時間、シンジは漸く王都へと辿り着いた。

 

「これが……話には聞いていたが、すごいな」

 

シンジの目の前にはまるで中世ヨーロッパのような街並みが広がっており、元いた世界とはまた違った感想を抱いた。

暫く街を散策していると、成程王都というだけはあり、人々に活気がある。

そんな時、ぷぅんといい匂いがシンジの鼻孔をくすぐった。視線を向けるとそこは食堂らしく、中を覗けば食事をしている人達で溢れていた。

 

「丁度いい。よし、一軒目はここにするか」

 

そうしてシンジは食堂に入ると、店員に案内された席に座り、メニュー表に目を通す。

しかし、ここで思わぬ問題が発覚した。

 

「うーむ、断片的にしか読めん」

 

この世界に来て一月。もちろんその間文字の勉強をしなかったわけではない。むしろ簡単な文章くらいなら書けれるようにはなった。

しかし、料理のメニューといったものはまだ完璧に読むことはできず、普段の仕事もマルトーの指示に従ってなんとかこなせてるといった状況だ。

 

「適当に頼むか?いや、それで変なのが来ても困るな……うーん」

「お困りみたいね」

 

不意に声をかけられ、その方向に視線を向けると、シンジが座ったテーブルの近くに何故かキュルケが立っていた。

 

「ここ、空いてるでしょ?座らせてもらうわね」

 

シンジの返答を待たず、キュルケはシンジの向かいの椅子に腰掛けると、未だ驚いているシンジの手からメニューをひったくる。

 

「あ、おい!」

「へぇ、色々あるわね。ねぇタバサ、あなたは何がいい?」

「これ」

 

気付けばいつの間にいたのか、青髪にメガネをかけた少女がキュルケの隣に座って一緒にメニューを除いていた。

 

「え、誰?」

「タバサ。あなたは?」

「あ、うん。俺は朝火シンジ」

「すいませーん。注文いいかしら?」

 

何だか分からないうちにシンジがタバサと自己紹介している間、キュルケは店員の女性を呼び注文を伝えていく。

ちなみにシンジの意見は聞いていない。

 

「って、何勝手に注文してるんだ!?」

「いいじゃない。それにあなた、メニューが読めなくて困っていたんでしょ?」

「うっ。それを言われると……」

 

返す言葉もなく、シンジは大人しく彼女が注文したものを食すことにした。

少し待つと、彼らのテーブルに料理が運ばれてきた。

眼の前に置かれた皿の上にはパスタが乗っており、具材もシンプルで、いかにも街食堂の料理といった印象だ。

手を合わせてからパスタを口に運ぶ。

 

「お、美味いな」

「本当ね。このソースが決め手かしら」

「ズゾゾゾゾ」

 

見た目以上の美味しさにシンジとキュルケは舌鼓をうち、タバサはその物静かな雰囲気からは想像もできない勢いでパスタを飲み込んでいった。

 

「ほのかな酸味を感じるが、トマトではないな。何かベリーのようなものか……」

 

シンジはソースを口に含んで材料を推測し、ポケットから取り出したメモ帳に記入していく。

キュルケはそんな様子を温かい目で見ながらパスタを口に運んでいった。

その二人をよそに、タバサは勝手におかわりを頼み、二人が食べ終える頃には、その身体のどこに消えてるのかわからない量を平らげていた。

会計時の金額を見て、シンジの目が飛び出しかけたのは、また別の話。

 

 

「ん~、結構美味しかったわね。次はどうしましょうか?」

「……本屋」

 

腹ごなしも済み、ここブルドンネ街の大通りを歩きながら、次の予定を話し合っているキュルケとタバサ。

シンジはその一歩後ろで、自身の財布とにらめっこしてる。

 

「うぅ……量の割には安かったが、それでも結構な出費に……」

「うふふ、ご馳走様」

「ったく。ところで、なんで君達まで街にいるんだ?」

 

シンジの質問にキュルケはフフンと胸を張った。

 

「ふと窓の外を見たら、馬に乗って出かけるあなたを見かけたの。それで追いかけてきたってわけ」

「その友達も一緒にか?」

「そ。ここまでタバサの使い魔に乗せてもらったのよ」

 

キュルケの言葉にタバサは小さく頷いて肯定の意を示す。

 

「有無を言わさぬ勢いだった」

「……あまり友達に迷惑かけるなよ?」

 

二人のジトっとした視線にさすがのキュルケもたじたじになる。

 

「わ、分かってるわよ。それで、次はどうするの?」

「ついてくるつもりか?」

「当たり前じゃない。あなただって、私達がついていたほうが安心でしょ?」

 

キュルケの言うとおり、また書いてあることを完璧に読めないシンジにとって彼女達の存在は心強い。

 

「はぁ、分かったよ。だけど、俺は今日ここに料理の勉強のために来たんだ」

「要するに食べ歩きでしょ。美味しいお店なら知ってるから、任せて頂戴」

 

胸を張って答えるキュルケ。仕方なくシンジは彼女達と一緒に行動することになった。

それから彼女達の案内で街を巡り、時々服屋や宝石店、本屋などにも寄りながらこの世界の料理を堪能した。

 

「おかげで給料はすっからかんだけどな……」

「何か言った?」

「何でもないよ。……ん?」

 

その時ふと、シンジは視界の端に違和感を感じて視線を向ける。

視線の先には人混みしかなかったが、シンジは改造人間の強化された視力でソレを捉えることができた。

 

「あれは……!」

 

捉えたのはまだ日中というのにローブを着た人物が路地へと消える光景。だがそれだけではない。その人物が来ていたローブの背中にはあるマークが描かれていた。

サソリを象ったマーク……それが示すものは一つしかない。

 

「デストロン……!すまん二人共!」

「え?ちょっと!?」

 

すぐにシンジは走り出し、ローブの人物を追う。路地は入り組んでおり、強化された身体能力を以てしても追いつけない。

 

「くっ!見失ったか……」

 

相手はこの路地を知り尽くしているのか、何番目かの角を曲がったときには姿が綺麗サッパリ見えなくなっていた。

 

「一体、どうしたのよ……?」

 

追いかけてきたのだろうか。息を切らしたキュルケがシンジに尋ねた。その傍には対象的に涼しい顔をしたタバサの姿もある

 

「いや、気にしないでくれ。ただの見間違いかもしれん」

「見間違いって……一体何を見たのよ?」

「それは言えんが、一先ず大通りに戻ろう」

 

不満を残しながらも、キュルケ達はシンジの言葉に従い、もと来た道を戻って大通りへと向かう。その途中、意外な人物に出会った。

 

「あら?ルイズじゃない。こんなところで何してるの?」

「キュルケ!?あんた達こそなんでいるのよ?」

 

偶然にも買い物に来ていたらしいルイズと才人に遭遇した。

話を聞けば、こないだのデストロンの一件で、護身用に剣を買いに来たとのこと。

 

「あ、あの」

「ん、どうした?」

「この間は、ありがとうございました」

「ああ。礼なんていいよ、気にするな」

 

恐らくデストロン襲撃の際に助けたことについてであろう、才人がシンジにお礼を言った。

 

「いやそういうわけにはいかないっすよ。あいつらに立ち向かえるなんて……えっと、お名前なんでしたっけ?」

「そういえば、俺だけまだ名乗ってなかったな。俺は朝火シンジ。改めてよろしくな、才人君」

「あ、はい!こちらこそ、よろしくお願いします」

 

そう言ってシンジが差し出した手を、才人は握り返した。

 

「ところでその名前、もしかしてシンジさんって」

「ああ。俺も思っていたが、どうやら君と俺は『同郷』らしいな」

 

その言葉に才人は驚いたような、喜んだような、安心したような表情を浮かべ、両手で強くシンジの手を握った。

 

「よかった〜俺一人じゃなくて……ということは、シンジさんも誰かに召喚されて?」

「いや、俺はちょっと訳ありでな」

 

流石に事情を正直に話す訳にはいかず、はぐらかして答える。

それから成り行きで一緒に大通りへと戻った5人はそのまま一緒に行動することに。

キュルケとルイズは因縁があるのか口喧嘩(と言っても、ルイズが突っかかっているだけだが)がそこそこの頻度で起こったが、シンジは微笑ましいものを見る目で見ていた。

そして学院に戻る時になり、キュルケに一緒にタバサの使い魔に乗って帰ろうと誘われたが、何故か警戒された為、結局待ちに来たときと同じ、馬で戻ることにした。

その姿を見つめる、怪しい影に気づかないまま。

 

 

「成程。やはりV3はあの学院に戻っていったか」

 

戦闘員からの報告を聞き、カメバズーカは別の戦闘員へと指示を飛ばす。

 

「よし、作戦決行は今夜だ。学院に到着したら、V3に見つかる前にあの女を確保するのだ!」

「キキーッ!」

「フッフッフ。ライダーV3、今夜が貴様の最期だ。ズゥーカァー!」

 

カメバズーカの笑い声が怪しく木霊する。

デストロンの魔の手が、再び学園に迫ろうとしていた。




教員も学生も寝静まった深夜、V3を倒すため、カメバズーカが魔法学院へと襲撃してきた。立ち向かうV3、そこにキュルケ達も現れるが、恐るべき事実がカメバズーカより伝えられる。危うし、V3!その時、才人が閃いた作戦とは!

次回、「闇夜の襲撃 危うしV3!」ご期待ください
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