ゼロの使い魔〜赤い仮面と命のベルト〜   作:D-ケンタ

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第五話 奪われた秘宝

ある日、森の中の道路を、学院に向けて複数の馬車が走っていた。それらの荷台には様々な物資が載せられており、そのすべてが学院に卸す品だという。

 

「あともう少しで学院か。流石に疲れてきたな」

 

御者の男は手綱を握りながら、欠伸を漏らす。しかし突然、馬が嘶き動きを止めた。

何事か。そう思ったとき近くの木々の間から複数の黒い集団が現れ、馬車へと襲いかかった。

 

「「「キキーッ!」」」

「な、何だぁ!?」

 

現れた集団――デストロン戦闘員は御者達を馬車から引きずり下ろすと、そのまま逃げ出さないように拘束する。

すると木の陰から新たな怪人が現れた。

 

「ば、化け物!?」

「フラーイ。貴様を利用させて貰うぞ」

 

その怪人、テレビバエは一人の御者へと近づく。御者も抵抗しようとするが、戦闘員に拘束されて逃げることもできない。

 

「フラーイ」

「う、うわああああ!?」

 

森の中に、御者の悲鳴が誰にも届くことなく木霊する。悲鳴が収まったあと、そこには御者の姿をしたテレビバエがいた。

 

「フッフッフッ。ライダーV3、今度こそ貴様はこのテレビバエ様が葬ってくれる」

 

新たなデストロンの魔の手が、学院へと迫ろうとしていた。

 

 

「ふぅーむ。まさか後も立て続けにデストロンが襲ってくるとは」

 

学院長室の窓から戦闘の痕跡残る中庭を見つめながら、オールド・オスマンは言った。

 

「はい。しかしこの間とは違い、デストロンの目的は生徒達ではなく、仮面ライダーV3だったのが、彼には悪いですが不幸中の幸いです」

「うむ。しかしデストロン、恐るべき組織じゃのう」

「全くです。今回の件で、王宮も動いてくれるといいのですが」

 

コルベールがそう言うと、オスマンは渋い表情になった。

 

「ああ、全くじゃ。最初の襲撃の件で向かった時は、証拠がないのを理由に断られてしまったからのう」

「生徒に犠牲者が出ているというのに……!」

 

無意識にコルベールの手に力が入る。彼は生徒や他の教員から変わり者として扱われているが、生徒達を思う心は誰にも負けない。それ故に王宮の対応の遅さ、認識の甘さに腹を立てているのだ。

 

「王宮の連中は、目先の戦争事に目を奪われておる。おまけに彼が言った通りデストロンは大きな力を保つ割にかなり慎重に動いておるようじゃしのう」

「確かに二度の襲撃の後も、デストロンと分かる痕跡は何も残っていませんでした。私達も遠見の鏡で見てなければ、そして彼から聞いていなければ、到底信じられなかったでしょう」

「本当、厄介な連中じゃわい。デストロンとかいうのは……」

 

オスマンとコルベールは、共に窓の外の景色に視線を向ける。爆破の跡といったものはあっても、怪人や戦闘員の亡骸は影も形もない。デストロンの怪人は敗北するとその身体は爆発してしまうが、にしても欠片も残らないというのは、徹底した秘密主義故のものだろう。

 

「そういえば、彼は今どうしておる?」

「彼でしたら、本日も厨房の仕事で大忙しかと」

 

彼――朝火シンジの様子を聞いたオスマンはその立派な髭を撫でながら頷いた。

 

「ふむ。デストロンと戦いながらも、仕事は疎かにしない……教員達に見習わせたいもんじゃわい」

 

 

学院の廊下を歩きながら、ロングビルは先日の出来事について考えていた。

 

(あの化け物、あれが最近学院で噂になっているデストロンか……二度も学院を襲撃するなんて、こりゃとっととお宝を盗ってずらかったほうがいいかもねぇ)

 

その表情はいつもの秘書としての顔ではなく、土くれのフーケとしてのものになっていた。しかし彼女には一つ懸念すべきことがあった。

 

(それにあの仮面ライダーとかいう亜人。正義の味方とか言ってたけど、それが本当なら、あたしのやってることを許しはしないだろう。可能なら今夜のうちに……)

 

そこまで思考したとき、廊下の先から向かってくる人物に気付くと、ハッとした様子でその人物に話しかけた。

 

「シンジさん、無事だったんですか!?」

 

その人物とは先日デストロンに襲われたときに一緒にいた青年、朝火シンジだった。

 

「やあ、ロングビルさん。この通りピンピンしてますよ」

「本当ですか?確かに目立った怪我はないようですが……」

「V3のおかげですよ。ロングビルさんこそ、無事で良かった」

 

そう言ってはにかんだシンジにつられ、ロングビルの口元にも自然に笑みが浮かぶ。

 

「しかしあの化け物、デストロンでしたっけ?何とか倒せましたけど、あんなに恐ろしい存在だとは……」

「デストロンは残忍かつ狡猾な組織です。今後も何かしら悪事を企むでしょう」

 

またあのような化け物が現れるのか。それを想像してロングビルは自身の体が震えるのを感じた。

 

「お詳しいのですね」

「故郷の先輩から聞いた話ですがね。奴らとは浅からぬ因縁があるんですよ」

「因縁、ですか?」

「はい。……ところでロングビルさん、お仕事中だったのでは?」

「え、ええ。これから学院に納品される資材のチェックに」

「そうでしたか、引き止めて申し訳ない。では、僕はこれで失礼します」

「あ……!」

 

ロングビルの静止も間に合わず、シンジはそそくさと走り去っていった。

明らかに様子が変わったことにロングビルは訝しんだが、その本人は既にいないため、ひとまず仕事を済ますことにした。

倉庫に着くと、既に数台の馬車が到着しており、その傍らには御者が立っており、彼女の姿を確認すると頭を下げて一礼した。

 

「ご苦労さまです。荷台に積んであるで全てですか?」

「はい。急なご注文でしたが、なんとか揃えさせていただきました。ご確認お願いします」

 

言われてロングビルは荷台を覗き込むと、中には発注した物資がしっかりと収められているのが確認できた。

 

「確かに。では荷降ろしをお願いします」

 

そう言ってロングビルは御者へと振り返る。しかしその瞬間、突如黒ずくめの集団が他の馬車の荷台から現れた。

 

「な、何!?きゃああ!?」

 

抵抗する間もなく、ロングビルは拘束されてしまう。

 

「その格好、まさかデストロンの!?」

 

現れた黒ずくめの集団は、デストロンの戦闘員だったのだ。そして御者の男は不敵に笑うと、ロングビルの前に立った。

 

「フッフッフッ。まさかこうもうまく潜入できるとはな」

「あなた、もしかして……!」

「フッフッフッ。見ろ!」

 

その次の瞬間、御者の男はその姿を異形の姿へと変身させた。

まるでアンテナが生えたブラウン管を二つ繋げたような目だが、全体的に虫のような印象を与えるその姿は、明らかに人ではない。

 

「俺はデストロンの怪人、テレビバエ様だ。憎きライダーV3を消すため、貴様に協力してもらうぞ」

「だ、誰があんた達に協力なんてっ!?」

 

テレビバエの言葉にロングビルは強く拒絶するが、それも予想範囲だと言いたげにテレビバエは笑った。

 

「フラーイ。お前は嫌でも我々に協力することになる。学院長秘書ロングビル。いや、土くれのフーケよ」

「何だと?」

「俺の目をよーく見ろ」

 

咄嗟にロングビルは視線を逸すが、戦闘員に抑えられ、強制的にテレビバエの目を見てしまった。

 

「う、ああ……」

「そうだ。よーく見るのだ」

 

テレビバエの目から発せられる催眠光線を受けてしまい、ロングビルはどこか虚ろな表情になり、抵抗するための力も抜けていった。

 

「成功だ。待っていろ朝火シンジ、もうすぐ貴様の最期だ。フラーイ!」

 

テレビバエの笑い声が、倉庫の中に木霊する。

 

 

「よっと。これで全部かな」

 

シンジは貯蔵庫から今夜の料理で使う材料などを荷車へと積み込んでいた。

 

「しかしいつもより量が多いな。舞踏会があるとか言ってたけど、そのせいかな?とりあえず運ぶか」

 

荷車にはいつも使う材料の倍近い量が積まれている。普通の人間であれば荷車を引くのに苦労しそうだが、そこは改造人間の力で楽に引いていく。

その途中で、見知った顔を見つけ、シンジは一旦荷車を止めた。

向こうも気づいたようで、シンジへと声をかけてきた。

 

「あ、シンジさん!」

「やあ、才人君。こんな所でどうしたんだい?」

「ルイズが授業で暇なんで、素振りでもやろうと思って」

 

そう言った才人の手には、一振りの片刃の剣が握られていた。

彼の体格に対して少々大きいと思ったが、意外に扱えているようで、構えた姿は様になっている。

 

「ほう、関心だな。剣道でもやっていたのか?」

「あ、いえ。特に何もやってないんですけど、何故か握った瞬間、どう使えばいいかとかが頭の中に浮かんでくるんです」

「頭の中に?」

 

どういうことだ。シンジが頭を捻っていると、どこからともなく二人のものとは違う声が聞こえてきた。

 

「そりゃおめえ、こいつが『使い手』だからだよ!」

「っ!?誰だ!!」

 

シンジは身構えてあたりを見回すが、声の主の姿は見えず、更に警戒心を強める。

もしかしてデストロンか。そう思ったとき、警戒するシンジとは対象的に脱力して溜息を吐いた才人が自分の持っている剣へと話しかけた。

 

「おいデルフ。いきなり喋んなよ、シンジさん驚いてんじゃねえか」

「わりいわりい!考え込んでる姿が面白くてよ、つい」

「まさか……その剣が喋っているのか?」

 

恐る恐るといった感じで尋ねると、才人は首肯し、手に持った剣を掲げた。

 

「こいつはインテリジェンスソードつって、剣なのに喋ることができるんですよ」

「デルフリンガーさまだ。よろしくな兄ちゃん!」

「あ、ああ。よろしく」

 

普通であればありえないことに開いた口が塞がらないが、ここは異世界。何があっても不思議ではないと、シンジは自分を納得させた。

 

「しかし喋る剣か……持ってみてもいいかい?」

「いいですよ。どうぞ」

 

差し出された剣の柄を握る。シンジは剣を持ったことはなかったが、握った感触はどこもおかしいところはないように感じる。

手首を動かして、色んな角度から観察するが、喋れること以外に変わったところは見つからなかった。

 

「……おめ、人間か?」

「っ!」

 

つい柄を握る手に力が入る。あまりの力にデルフが悲鳴をあげ、それに気付いたシンジは握る手を緩めるが、その視線は鋭いままだ。

 

「おーいてぇ。気ぃつけろいバカヤロウ!」

「すまんな。だが、先程の言葉はどういう意味だ?」

「おめの体から、変な力を感じんだよ。それも一つじゃねえ、二つだ」

 

恐らくダブルタイフーンのことであろう。力と技、二つの風車に込められた能力を、この喋る剣は感じ取ったのだ。

 

「もう一度訊くぜ。おめ、何もんだ?」

「……ただの料理人だ。『人間』の、な」

「そうかよ。俺も野暮じゃねえ、これ以上は訊かねえよ」

 

そう言ってデルフは口を閉ざした。シンジは才人へとデルフを返すと、彼は申し訳無さそうに頭を掻いた。

 

「なんかすいません。こいつが失礼なこと言ってしまったみたいで」

「いや、気にしなくていい。なかなか面白い経験をさせてもらったよ」

 

先程までの鋭い視線はどこへやら。いつもの明るい表情に戻ったシンジに、才人もつられて笑みを浮かべる。

そこに遠くから才人を呼ぶ声が聞こえ、その方向を見るとルイズが大股で近づいてきているのが見えた。

 

「あんたどこ行ってんのよ!次の授業は使い魔同伴なんだから、フラフラとどっか行ってんじゃないわよ!」

「わ、悪かった!だからその鞭をしまってくれよ。な?」

 

凄い剣幕で詰め寄るルイズを宥めようとするが、それで止まる彼女ではない。

いつもの光景と言えるやり取りに、シンジが苦笑いしてると、彼の後ろから誰かが目を塞いできた。

 

「だーれだ?」

「その声はキュルケか?」

 

手を外して振り向くと、そこには予想通りキュルケと彼女の友人であるタバサが立っていた。

 

「きみたちも、自分の使い魔を探しに来たのか?」

「まさか。うちのフレイムはお利口さんで待ってるわ」

「変な所には行かないよう、言ってある」

「じゃあなんでここに?」

「それは勿論、ダーリンに会いに来たに決まってるじゃない!」

 

そう言った直後、キュルケはシンジへと飛びついた。

いきなりでよろけこそしたもののしっかりと受け止めたシンジは、そのまま降ろそうとするがガッチリとホールドされてて引き剥がせない。

手加減しているとはいえ、改造人間の腕力に抵抗できるとは、どこにそんな力があるのか。女は見た目によらないとはこのことだろう。

 

「こらキュルケ、引っ付かないで降りろ!」

「でも無理やり降ろさないってことは、満更でもないんじゃない?」

「馬鹿言うな。怪我したらどうするんだ。いいから降りなさい」

「は~い」

 

さっきまでの態度とは打って変わってするりと素直にシンジから降りたキュルケ。まるでこのやり取り自体も楽しんでいるかのように口元に笑みを受けべている。

 

「全く。いたずらも程々にしないか」

「そんなこと言って、顔が赤いわよ?意外と初なのね」

 

何を言うか。半分呆れた様子でシンジがそう言おうとした時、突如地響きが彼らを襲った。

 

「な、何っ!?」

「地震か!?」

「っ!?あれを見ろっ!」

 

才人の叫びに反応し、彼が指した方向を見ると、巨大なゴーレムが学院の宝物庫へ向かって歩いていた。

 

「何よあのゴーレムっ!?いつの間に学院の敷地に!?」

「やばい……みんな逃げろ!」

 

シンジが叫んだ直後、ゴーレムは学院の塔の一つに接近すると、その巨腕を思いっきり叩きつけた。

 

「宝物庫を殴りつけた?そのくらいじゃビクとも……!?」

 

しかし、ルイズの言葉とは裏腹に、殴られた箇所の外壁は音を立てて崩れ、あたりに瓦礫が降り注いだ。

それは当然シンジ達の周りにも落下してきており、才人とシンジは反射的に動いた。

 

「「危ないっ!?」」

「「キャアアアッ!?」」

 

才人がルイズを、シンジがキュルケとタバサを庇うように抱えて飛び退き、瓦礫から回避する。

間一髪躱したが、また次の瓦礫が五人へと襲いかかってきた。

その時、タバサが口笛を吹くと、空から青い風が吹き通り、気付けば彼女達は何かの背に乗り空を飛んでいた。

 

「助かったわタバサ!」

「間に合った」

 

彼女達を乗せているのは一匹のドラゴン。タバサの使い魔であるシルフィードだった。

タバサがシルフィードの背を撫でると、きゅーいとやや苦しそうな鳴き声を上げた。

 

「……重いって言ってる」

「流石に定員オーバーじゃねえの?」

「風竜なんだから大丈夫でしょ」

 

とは言うが、やはり人五人乗せて飛ぶのはやはり厳しいのだろう。しかしここは頑張ってもらわねばならない。

何とか瓦礫も収まり、ゴーレムの斜め上辺りに位置取ると、一同はゴーレムと宝物庫に視線を向ける。

 

「なんてこと……宝物庫の外壁に穴が!?」

「見てあれ!ゴーレムの肩に人が!」

 

キュルケの言った通り、ゴーレムの肩にはローブを深く被って顔を隠した人物が立っていた。

その人物はゴーレムの腕を伝い、宝物庫に入っていった。

 

「まさか、あれが最近噂の土くれのフーケ?!」

「学院を襲うなんて、いい度胸してるじゃない!タバサ、宝物庫に寄せて。私がとっちめてやるわ!」

 

威勢のいい言葉を言うルイズだが、タバサは首を横に振った。

それと同時にシンジも嗜めるようにルイズへと忠告する。

 

「落ち着くんだ。あのサイズじゃ、魔法を放っても効果は薄い。今は様子を見るんだ」

「そんな悠長なこと言って、逃げられたらどうすんのよ!平民のあんたは黙ってなさい!」

 

しかし火に油を注いだだけのようで、ルイズの口撃が更に激しくなる。

それでも才人と二人がかりでなんとか抑えていると、いつの間にかゴーレムの肩にフーケが戻ってきており、それを確認した直後にゴーレムは崩れ落ち、大量の土煙が舞った。

完全に視界がなくなり、フーケの動向を確認できなくなってしまう。

暫くして土煙は収まったが、そこにフーケの姿はなかった。

そしてブーケが侵入した宝物庫から一つの道具が消え去り、それが置いてあった場所には一枚のカードが残されていた。

そのカードの表には普段通りのフーケの言葉が書いてあったが、裏側にはとある国の言葉でこう書かれていた。

 

『朝火シンジ、この女は人質だ。助けたければ我々の指示に従え。 デストロン』

 

 




学院を襲った怪盗フーケ。そのアジトが発見され、シンジ達は秘宝の奪還へと向かう。しかしそこに待ち受けていたのはデストロンの怪人、テレビバエ。
ロングビルを人質にとられ、思うように戦えないV3。そんな時、才人が盗まれた秘宝『捕縛の義手』を手に取った!起死回生の一打となるのか!?

次回、「発動ロープアーム!」ご期待ください。
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