真・ 恋姫†無双~覇王の意志を継ぎし者~   作:ラクニン

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あまりにも久々に手を加えました。読みづらくなっているかもしれません。



第一章 北郷軍
覇王の意思


あるとき少女は少年に向かって言った言葉がある。

いい度胸してる。共に頂を目指さない・・・と。

その言葉は非力な少年を勇敢な戦士へと変化させるには十分な言葉であった。

少年がその言葉を受けて、五年の歳月が経ち、今や立派な青年となったその者はなかなか帰ってこない二人の姉妹を探すために近くの森へと訪れていた。

 

「はぁ、まったくどこまで遠くに」

 

青年はぶつくさと独り言を言いながらも飛び出してしまった姉妹を探すため、心当たりがあるのか深く木々が生い茂る森を迷い無く探索していた。

やがて青年はまるでおとぎ噺に出てくるような光が降り注ぎ、その光を綺麗に反射させる泉にたどり着いた。

 

「やっぱりここだったか」

 

その幻想的な雰囲気を醸し出す泉のそばには明らかに人の手によって施された豪華な装飾が鎌が突き刺さっており、その場所には青い髪をした娘がただ静かに座っており、どうやら近くには来た青年には気づいておらず、なかなか気づかれない青年は声をかけていた。

 

「よぉ秋蘭。春蘭はどこに行ったか分かるか?」

 

不意に声をかけられた秋蘭と呼ばれた娘は一瞬驚いた様子で肩を震わせたが、すぐに青年の問いかけに答えてくれた。

 

「あぁ、一刀か、姉者ならまだ塞ぎ込んでるよ。やはりまだ現実を受け入れてくれないらしくてな」

 

沈んだ声で一刀と呼ばれる青年に返事をしたが、一切一刀のほうを全く見ずに背を向けたままだった。

 

「やっぱりか、まだ時間を置いたほうがいいみたいだな」

 

一方の一刀の方はただ無気力に返事しかしない秋蘭に寂しさを感じていた。

 

「すまん一刀、お前には苦労ばかりかけさせてしまって。こんなザマでは華琳様に到底顔向けできるはずも無いのにな・・・」

 

たとえこちらを向かず長年とも過ごしてきた秋蘭の声だけで彼女が何を思っているか一刀は分かってしまった。

 

「それで華琳の所に居づらくなりこの泉まで来たわけか?」

 

「何度も行こうとはしたが、やはり現実を認めたく自分が心のどこかにいるようでな。ふらふらと歩いているうちにここにまで来てしまってたよ」

 

お互いの気持ちが分かってしまう。それは秋蘭とて同じだった。

一刀が今の自分の姿を見てどう考えているかなんて言葉を交わさなくても分かってしまう。だからこそ自分の後ろで余計なことは言わず優しい雰囲気で見守ってくれる一刀に対して秋蘭はゆっくりと涙を流す顔を向けて返事をした。

 

「秋蘭、お前・・・」

 

「我ながら情けないと思うさ。だがな、どうしてもとまってくれないのでな」

 

明らかに無理をしている声色だった。秋蘭と共に過ごして来た一刀だったが、こんなにも弱弱しい姿の彼女を見るのは初めてのことだった。

 

「いいんだ秋蘭。お前は自分を閉じ込め過ぎだよ。もう5年以上も一緒に生きてきたんだからもっと今みたいに感情を出してくれたらうれしいんだけどな」

 

だが、そんな彼女見て一刀はゆっくりと秋蘭を抱きしめ我慢なんてしなくていい、と優しく頭をなでながら言った。

 

「っ、一刀ぉ、私はもうあの方との約束を果たせる自信が無いんだ」

 

突然の抱擁に戸惑いつつも妙な居心地によさを感じながら、秋蘭は徐々に自分の中にある感情を吐露し始めた。

 

「大丈夫だよ秋蘭。まだお前には俺や春蘭がそばに居るんだ。そりゃ俺は華琳よりは頼もしくないかも知れないけどさ、それでも秋蘭を一人にさせないことはできるさ」

 

「・・・」

 

今みたいにな、と付け加えて明るい声で自分を励ましてくれる一刀の言葉に今まで姉にも見せてこなかった悲しみの感情を一気にだしてしまった。

 

「ぅぅぅ、一刀、一刀ぉ・・・」

 

ようやく自分の胸で偽りの無い純粋な姿をさらけ出した秋蘭を見て、一刀は自分の未熟さとふがいなさを実感しながらも目の前ただ泣きじゃくる彼女に向けてある決心をしていた。

 

(秋蘭もそうとう華琳のことを・・・当然だよな全部俺のせいだ。だから二人にそして華琳に償うためにも俺が出来ることはただ一つしかない)

 

秋蘭は己が今まで無理をしていた自覚はあった、だが他人に甘える気などはなかった。

自分では理解してた、他人が思う以上に自分の心は弱く脆い。

一度甘えてしまったらまた甘えてしまう。だからこそ部下にはもちろん、信頼する姉や愛情も感じている一刀にすら絶対に弱音は見せたくなかった。

 

だが、彼女のぼろぼろで隙間だらけの心は一刀の行為と言葉によって、全て埋め尽くされていた。

 

(本当にお前は私の隠してた思いを簡単に見破ってくれるな、普段とは大違いだ。だがあんなことをお前に言われたら私は甘えてしまうじゃないか)

 

何もかも静かな森の中でしばらくの間、秋蘭は存分に声を荒げて泣き続けた。

 

「頼りない俺なんかが華琳の代わりになるか分かんねぇけどな」

 

先ほどまでとは打って変わって、不安そうに言う一刀だが、秋蘭の胸は逆にそれが安心したらしくあせっている一刀を尻目にだんだんと泣き顔から笑顔へと変わっていた。

 

(そんな事はないさ一刀。お前は十分頼りがいがあるぞ。ほんの数年前まではそこらの一般兵程度の武しか持たなかった奴が今では姉者に匹敵するぐらい逞しくなったものだからな)

 

「ふふっ」

 

「な、なに笑ってんだよ?」

 

「いや、こうしてお前に抱きしめられるのも悪くないとおもってしまってな」

 

「しまってなってなんだよ・・・まぁいいけどな」

 

「ああ、それでいいんだ」

 

理想とする人物にように頼ってもらえてないことが一刀にとっては少し不満だったようだが、それでも目の前の悲しみであふれていた彼女の笑顔を見ることができたことには満足したようだ。

 

(まだ華琳様には及ばないが、それでもお前は私にとっては本当に愛しい奴だよ)

 

すっかり夜風で冷えてしまってた自分の体を温めてくれる一刀の胸に居心地の良さを感じてそろそろ帰るか、と一刀が言うまで長い間をじっくりと堪能した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

(昼過ぎから探していたのにすっかり夜になっちゃったなぁ。まぁ久しぶりに素直な秋蘭を見れたからいいか)

 

場所は移り変わりここは一刀達が治めている陳留という町。

それほど大きい町ではないが、先代から続く統治のおかげで活気付いた町となっており、時間も夕食時とあって大通りからは食欲をそそる香りが立ち込めている。

 

「一刀顔がニヤついているぞ、どうかしたのか?」

 

「いや、何でもないよ。それより早く帰んないと、春蘭がうるさいだろうなぁって思ってただけだよ」

 

「うむ、そうだな姉者が怒ると大変だからな」

 

(もう秋蘭は大丈夫みたいだな。後は春蘭さえ受け入れてくれればようやく前に進めれそうだな)

 

「秋蘭、城に戻ったら少しの間、春蘭を借りてもいいよな?」

 

「ああ、もちろんだ。手間は私以上にかかると思うが、一刀なら何とかしてくれるんだろう?」

 

すっかり本調子に戻った様子の秋蘭は一刀が言わんとすることを理解してくれたようで、にっこりとした笑顔で答えた。

 

「当然やるだけのことはやるさ。出ないと華琳の意志を継げないもんな」

 

「華琳様の意志とは「かぁじゅぅうとぉぉぉ」・・・いや、いい」

 

”華琳の意志”そう発した一刀の言葉に秋蘭は何か引っかかりのようなものを抱き、詳しいことを聞くために疑問を投げ歌謡としたが、突如、イノシシ・・・もとい、先ほどから話題に出ていた猛将春蘭が剣を振りかざして一刀に襲いかかってきた。

 

「しゅ、春蘭!?」

 

「かじゅとか?おまえ、しゅうらんをつれてまわしてにゃにをしてたぁ?」

 

ブンッと一刀と秋蘭の間を剣による割らせたのは彼女が持つ愛刀による斬撃だった。

 

(うっ、近くからだと酒の匂いが酷すぎる)

 

「おい姉者、一刀は私達を思って」

 

「にゃにをいってるのかしゅうらん、じちゅのあねよりこのおとこをえらぶのかぁぁ!?」

 

さすがに危ないとおもい秋蘭が誤解を解くために姉の説得を試みたが、酔うと普段の倍以上は人の話を聞かなくなる厄介な状態に入っている為、そもそも言葉が成立していなかった。

 

「一刀、すまない。私にはこれ以上無理だ」

 

基本的に春蘭の暴走を止めれるのは妹である秋蘭以外にはいないのだが、先ほどの件が絡んでおり、姉がこのような状態になったもの理解はできしまうため、珍しく止める術を見出せなかった。

 

(まぁついさっきなんとかするって言ったばかり出しな)

 

「春蘭!」

 

「なぁんだ~かじゅと~?かくごはついたのかぁ」

 

相変わらず呂律は回らず体もふらつきながら剣を町中で振り回しているためにあれだけ活気付いてた町人は一刀たちから離れ、いまやこの場にいるのは三人のみとなってしまっていた。

 

「なぁ春蘭。華琳が居なくなってそうしたい気持ちも分かるが、周りに八つ当たりしても意味ないだろう?」

 

「うるひゃい。こんなひはさけでものまんときがはれんのだ!!」

 

(聞く耳もたずだな。かと言ってこの場所で時間をかけて説得するにも町民に悪いし、まずは城に搬送するか)

 

「悪いな、春蘭」

 

「ふへ?ぐふっ!?ぅぅ・・・」

 

とりあえず町には迷惑をかけない。

一刀は結論付け、自身が出せる最高の速度で人体が気を失いつつもそれほど害の無い急所に当て身をし、気絶させた・・・かに見えた。

 

「ぅ・・・オロロロロロロロロ」

 

「ぐあぁぁあぁ!!」

 

「姉者ーーー!?」

 

大量に酒を飲む・・・つまり人にもよるだろうが食事もするわけでそんな状態で急所に当身なんかされてしまっては、人はほぼ吐いてしまうだろう。

その結果、町に盛大にばらまかれた春蘭のソレは真正面から放たれたもので当然、当て身した一刀にはもれなくソレを盛大にかぶってしまった。

そして姉を溺愛している秋蘭はおもわず一刀を押しのけて、どこから持ってきたのか水と布巾で春蘭を介抱し始めた。

 

「あの秋蘭、俺は?」

 

「まったく、姉者はやはり手がかかるなぁ・・・あ、す、すまない一刀!?」

 

やはりというべきは秋蘭には一刀をとっさのことで張り倒した一刀は見えていなかったようでようやく彼の声かけで秋蘭は気づき、あせり、そして謝った。

そんな一刀を不憫に思ったのか町人の一人が水と布巾を持ってきて、これ良かったら使ってください、と気を使ってくれたようだ。

しかし一刀と秋蘭の間にできた少し気まずい空気は拭き取れず、二人は黙ったまま気絶した春蘭を担いで自分達の城へと戻っていった。

 

(でも俺の存在って一体、なんだろうなぁ)

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

「ぃっっ・・・ここは?」

 

「起きたか、姉者?」

 

「おぅ秋蘭か、ここはどこだ?私は確か街の店で酒を飲んでいたはずだが」

 

あれから少しばかりの後、一刀と分かれた秋蘭はすっかり汚れてしまった春蘭を着替えさせ、部屋で寝かせていた。

そして春蘭は眼を覚ましたのだが、まだ酒が残っているせいか、頭が痛むようで右手で抑えていた。

 

「ここは私達の部屋だ。姉者はそのまま酔って暴れ回っていたのを一刀が無理やり止めて此処まで運んだのさ」

 

「何、一刀の癖に生意気な。おい、秋蘭あいつはどこに居る!?今度こそ叩きってやる!!」

 

この言葉に対して秋蘭は相変わらず、一刀にのみ素直になりきれないと判断し、自然とため息をついていた。

 

(はぁー、まったく素直じゃないな。まぁそこが姉者の可愛い所だかな)

 

「落ち着け姉者、今はもう真夜中だし周りの者達にも迷惑になる。それに一刀が止めたのは姉者が襲いかかってきたからだぞ?」

 

「うるさい。そんな権利はあいつにはない!あいつは華琳様を・・・」

 

「あ、姉者!?」

 

ただし、今回は違った。

二人の姉妹は何年も共に過ごした一刀のこと好ましく思っている。

そんな春蘭がその一刀に対して素直になれない。それはいつもどおりのことのはずだったが、一瞬にして秋蘭はゾッとした。

素直になれなくて暴力を振るうではなく、本気の殺意を抱いていたからだ。

 

「奴が華琳様を殺したんだぞ!!それなのに秋蘭はあいかわらずあいつと一緒にへらへらとしているだけではないか!秋蘭は華琳様の事などどうでもいいというのか!?」

 

「姉者、さっきのはさすがに聞き逃せないぞ。私は華琳様のことはどうでもいいなんておもっておらんし、一刀に対してもへらへらとしているわけではない!」

 

いくら溺愛している姉の言葉でも譲れないものもある。

比較的に無駄な争いごとはしない秋蘭だが、その言葉には我慢できず、姉に対して一気に怒りがこみ上げてきた。

 

「なら、なんだと言うのだ。華琳様が居なくなってしまって翌日には貴様もあいつも通常通り仕事し始めていたではないか!!」

 

「それは当たり前だろう!華琳様が居なくなってしまったということはこの町を統治するものが居なくなったと言う事だ!姉者が引き困っている間にも私や一刀がどんな気持ちでその仕事をしていたのか、姉者には分かるまい!」

 

「なんだと!?」

 

「当然のことを言ったまでだ」

 

もはや売り言葉に買い言葉。二人のお互いを傷つける言葉とどまることを知らず、しばらくの間、口論を続けて末に春蘭は一つの答えを思い込んでしまった。

 

「よく分かったぞ秋蘭。お前は華琳様を忘れて一刀に鞍替えするということだな?」

 

「なんだと?」

 

春蘭の出した答えは妹が敬愛してた主君ではなく余所者である一刀に鞍替えをしたというとんでもない間違いな答えだった。

 

「お前がそこまであいつを思っていたとは思わなかったが、あいつなんぞ華琳様どころかお前の足元に及ばん。結局あいつなど所詮は余所者だ!!」

 

(一刀は余所者。どうして姉者はそう思っていたのか)

 

秋蘭はつい手を出しそうになった。

なぜあれほど共に楽しく過ごしていた一刀にそんなことを言えるのかと、疑問を確信に変えるため、秋蘭はつぶやいた。

 

「姉者、さっきの言葉は本気で言ってるのか?」

 

「当然だ、私はいつだって本気だぞ!!」

 

パァン!!と激しい打撃音が城内に響いた。

 

「そうか。そんなにふざけた事を抜かすなら容赦はせんぞ姉者?」

 

もはや我慢など秋蘭にはできるはずも無かった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「な、なんだこれは!?」

 

一刀がこれからのことを考えている時にすっかり息を荒げた城の召使に呼び出された場所へと向かった。

そしてその場所には一刀が今までに見たことの無い光景が広がっていた。

 

「ぐぐぐ、いい加減にしろ!秋蘭!」

 

「意味が分からないといった・・・顔だな・・・もう一度、自分の言葉を思い返して見ろ!!」

 

普段はどちらか一方的な口論にはなるものの決して殴り合いの喧嘩など一切する気配の無いほど仲が良かったの姉妹が武人ならではのとてつもなく危険で激しい殴り合いの喧嘩を繰り広げていた。

 

「なんでこんなこと二人はしてんだ!?」

 

「わ、わかりません」

 

この状況を遠くから見えていた従者の一人に聞いてみた一刀だったが、どうやら騒ぎになったのはこんなことになった後だったようだ。

 

(まだ春蘭が酔ってるのか?いや秋蘭がそんな誘いに乗るはずが・・・やっぱり華琳絡みか)

 

「落ち着け二人とも、何でそんなぼろぼろで喧嘩してるんだ?」

 

「は、知るか!いきなり秋蘭が殴ってきたのだからな!」

 

「なんだと?姉者は一刀や華琳様の気持ちを踏みにじっておいてまだとぼける気か!」

 

お互いに殴りあいながらお互いの主張を叫んでいる為、一刀にはよく聞こえていないようだったが、さっさと止めないと周りに被害が拡大する、そう決心した一刀は意を決して姉妹喧嘩を止めに行った。

 

「なぁ二人ともそろそろ止めてくれないか!?」

 

「ぁあ!うるさい!!今は貴様などどうでもいい邪魔だから消えろ!!」

 

「!?一刀、すまないがこの馬鹿でふざけた姉者に言い聞かせないといけないから邪魔しないでくれないか!」

 

「いや、でも一応、深夜だしな。城の人達にも迷惑だから、な?」

 

一刀の制止すらも無視し、むしろそれをきっかけにいっそう激しさを増す姉妹喧嘩。

 

「悪いが今回ばかりは退くわけにはいかない。姉者が言ってはならんことを言ったのでなぁっ!!」

 

「くっ、さっきからごちゃごちゃと訳の分からんことを言いおって・・・いいだろう、2人してかかってこい!!」

 

(このままじゃ拉致があかない。本来の抑え役の秋蘭が春蘭化して暴走してるし、見た感じは秋蘭が春蘭対して怒ってるようだけど)

 

しかしほっとくわけにもいかないので、従者には部屋に戻るように指示した後、一刀は二人を力づくで押さえつける覚悟決めた。

 

「春蘭、秋蘭」

 

「「なんだ!?」」

 

「いい加減しろ!!」

 

「なっ!?」

 

「か、一刀!?」

 

暴れ続ける二人の首元を一刀がつかみ、そのままの勢いでドゴォッ、と壁にたたきつけ、鋭い眼光で睨み付けていた。

一瞬にして呆気に取られる二人を見て、一刀はゆっくりと二人を解放した。

 

(正直、こんな脅しみたいな真似はしたくなかったけど)

 

「やっと落ち着いたか、何やったんだよ春蘭。秋蘭があそこまで怒るなんて見たこと無いぞ?」

 

「あ、えっと、そのよく分からんのだ?」

 

「わからんだと「秋蘭?」うっ姉者が一刀のことを・・・」

 

春蘭が理解していない返事をしたため、たまらず手を出そうした秋蘭の前に立ち、そのままなだめるようにこぶしを下ろさせた。

 

「え、華琳のことじゃなく俺のことだったのか?どういうことだ、春蘭?」

 

「・・・」

 

「春蘭、大丈夫か?どこか具合でも悪いのか。顔が赤いぞ?」

 

「さ、触るなぁ!この余所者!!」

 

さっきのこともあったのだろう。警戒していた春蘭には気づかず、熱を測ろうとした一刀の手はぱん、という音を立てて払いのけられていた。

 

「姉者!!」

 

「よ、余所者?」

 

「姉者!!」

 

秋蘭は初めてのことだった。

自分が怒りに任せて姉を押し倒し、今まではどんなことしても愛しい感情しか沸かなかった姉に対してこんなにも憎いと思ったのは。

 

「わ、私は・・・」

 

しかしそこまでの距離をとってようやく秋蘭は理解できた。

姉の眼に迷いがあることを。

 

(!?そうか、まだ姉者は気持ちが整理できてないのか。だから、あんな事を言ったのか。これでは私が・・・)

 

「秋蘭、春蘭からどいてくれないか?少し話したいんだ」

 

「一刀。その、姉者を余り責めないでくれないか。私も熱くなりすぎたようだ・・・」

 

秋蘭は押し倒してしまった姉から離れて、近くでその様子を見ていた一刀は笑って私の頭に手を置いた。

 

「大丈夫、俺は全然気にしてないよ。それに実際に春蘭の言ったことは本当だしな」

 

「ち、違うのだ一刀、そうじゃなくてだな」

 

「それにさ、右も左も分からず、この世界で生きるためを術を一番最初に支えてくれた春蘭の優しさは知ってるからそれが本心じゃないって分かってるよ」

 

「ぅぅ」

 

思いがけない一刀からの感謝の言葉に対して春蘭は顔を真っ赤にして照れてしまい、また秋蘭はただ素直に関心していた。

 

(すごいな一刀。私がさっきまで気がつけなかったことにあっさりと気づいてしまったからな。それにあの覇気・・・やはり一刀は華琳様と同じ部類の)

 

「で、喧嘩した原因はなんだったんだ?」

 

(前言撤回、華琳様はこんなに鈍くない)

 

「一刀、つまりだな。姉者がさっき言ったとおりもう何年も共に過ごしたお前のことを余所者扱いしたのでな。つい頭に血が上ってしまったんだ」

 

「なんだ、そんなことか。さっきも言ってたけど気にしてないし」

 

「いや、それに私が華琳様から一刀に鞍替えしたと言ったのがそもそもの原因であったしな」

 

「鞍替えって、今日もあの泉まで向かって泣いていた秋蘭を見てよくそんな言葉でるな?」

 

「!?」

 

「お、おい、それは言わない約束じゃなかったのか」

 

「えっと、そうだっけ?」

 

誤解を解くための会話を黙って聞いていた春蘭だったが、あの泉で泣いていた、という一刀の言葉に気丈に振舞っていた秋蘭が実は自分と同じように泣いていたことを知ると突然、涙を流し始めた。

 

「ぅぅそうだったのか、すまなかった一刀、秋蘭。私は華琳様が居なくなって自分のことしか見えてなかったようだぁ~」

 

その姿をみて、なんだ私も姉者も同じだったんだな、と思う秋蘭と有無を言わさずぎゅっと一刀は春蘭を抱きしめた。

 

「な、なんだ一刀!?いきなり抱きつくな」///

 

(むぅ、一刀が姉者を抱きしめているな。少し羨ましいな)

 

「大丈夫だよ春蘭。さっき秋蘭にも言ったけど、俺じゃ華琳の代わりにならないかも知れないけど。少しでも二人を支えられるように強くなるからさ」

 

「か、かじゅとぉーぅぅ、すまなかったーーーー」

 

一刀に抱き締められたまま、春蘭は秋蘭と同じように泣き始め、そして泣き止むまでこのままの状態で過ごした。

しかし不安になって戻ってきた従者にこの姿を見られた春蘭が、別の意味で顔を真っ赤にさせ、暴れるのはしょうがないことだった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

それから一ヶ月ほどの時間が過ぎた。

一刀は先代の華琳が治めていた町がよく見渡せる丘に座って心地いい風を感じながらゆったりと眺めていた。

 

「ようやく春蘭も現実を受け入れてくれたよ。これでやっと華琳の約束を目指せそうだよ」

 

その丘には大木が一本だけ聳え立っており、その木に腰をかけ、一刀は独り言のように呟いていた。

このまま寝てしまおう、そう思っていた一刀の前には今で通りの関係に仲直りした二人の姉妹が俺の前に立っていた。

 

「一刀、近辺の村に賊が出たそうだ。しかも今までとは規模が違い、千人は居るようだ」

 

「まぁそんな数など問題ないがな!今までのようにこの夏候惇が打ち払ってくれるわ!!」

 

「姉者、それでは他の兵たちがついていけずに犠牲になってしまう。今回こそはこちらの作戦通りに動いてもらうぞ?」

 

いつもの通りに春蘭の勇敢でもあり無謀とも取れる発言に困った顔をしながら止める秋蘭。

 

「ははっ、まぁその方が春蘭らしいけどな」

 

「だからといって、はぁーまぁいい、それよりそろそろ行かんと手遅れになるぞ」

 

「ああ、分かってるよ。華琳が目指す覇道、この想いを必ず果たさなくっちゃな」

 

「ふん、そんな事、貴様に言われんでも我が魂に刻み込まれてるわ。先に戻ってるぞ」

 

「一刀、姉者の言うとおりだ。既に華琳様の意志は我等の魂に深く刻まれている。いつでも行軍できるようにしてある、お前もすぐに来いよ」

 

「ああ、もうちょっとしたらすぐ戻るさ」

 

強い意志と刻まれた誓いを再確認し、春蘭と秋蘭は来た道を戻っていった。

そして一刀は立ち上がり大木のそばにある人の手によって施された一刀が作られせた構造物に目を向けた。

 

「お前の意志は俺が継ぐよ。お前が果たしたかった事を成し遂げてみせると約束はお前の言った事を信じて進もうと思う。それがあいつの為にもなるしな」

 

目の前で安からに眠っているであろう人物ともう一人の大切な友も思いながら一刀は姉妹が待つ場所へ歩き出した。

 

「また来るよ。華琳」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

(お、ようやく戻ってきたか)

 

「一刀、遅いぞ。何やってたんだ?」

 

一刀がたどりついた頃には行軍の準備もしっかりと終わり、待ちくたびれた春蘭が一刀に対して不満を言っていた。

 

「ごめんな春蘭、ちょっと気合いを入れ直すのに時間がかかっただけだよ」

 

「一刀、兵の皆に言うことがあるんじゃないか?」

 

「ああ、そうだな」

 

士気を向上させるために一刀は軍に顔を向け、その背中を見た春蘭と秋蘭は驚いた。

 

「おい、秋蘭。これは・・・」

 

「ああ、思い出してしまうな」

 

「俺達が目指すは乱世のない大陸の統一。そのためにもこれは必要な一歩だ。だから皆の力を貸してくれ!!」

 

「「「「「ウォォォーーー!!」」」」」

 

二人が見た背中は先代の華琳と共に旗揚げをした頃を彷彿とさせるもので、おそらく偶然だろうが、ほとんど同じことを言っていた。

その姿を見た春蘭は眼を輝かせ、秋蘭は間違いなく先代の意志をもっとも受け継いでいるのは一刀だと確信した。

 

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