ーー山の麓の村ーー
side:一刀
俺達が野営地を出てから半日ぐらいたった頃、義勇軍が駐屯してるという村に着いたが、そこで俺達が目にしたのは想像以上に最悪な光景だった
あれは村の入り口は防壁だろうか?いや防壁だったんだろう。無残に破壊され、近くには綺麗に並べられて横たわってる
そこには血だらけの死体が寝ていた。簡易的な鎧や剣を身に着けていることから、義勇軍の兵士みたいだが
(しかし、並べられてるということは生存者がいるのか?まぁたしかに賊がこんな事をするとは思えないしな)
「皆、村や村周辺を手分けして調べてくれ、生存者が居るはずだ!!」
『御意!』
「ギャアァァアァァァ……」
兵の皆が探索を始めようとした瞬間、村の中心辺りから多数の悲鳴と、とてつもなく大きな爆発音が同時に響き渡った
「あそこか!?」
「ほ、北郷様!?」
「お前等は村周辺を探索していろ!音がしたところには俺が行く!それとお前は軍の所へ戻り、桂花にこの事を報せろ!」
「分かりました!」
兵達が動揺する前に指示を出し、俺は焦るように悲鳴と爆発音が聞こえる村の中心部へと足を走らせた
(周りの家も壊されたり、焼き尽くされている。あれは……まさか子供……く……)
だが、近づくにつれ、徐々に爆発音は聞こえなくなり、変わりに笑い声が聞こえるようになってきた
そうして俺の目に写ったのは素手で賊を次々に返り討ちにしてる女が居た
(体のあちこちに傷は浅いが切り傷が多い。まずい、追い詰められてる。桂花との約束があるけど仕方ないし、助太刀に行くか。あの程度の数なら簡単に殺れる)
「はぁ……はぁ……くそっ……」
「よくも仲間を殺してくれたな。その礼はお前でじっくりはらって「お前が死ね」え…………?」
悲鳴を与えることも許さず、俺は賊と傷だらけの女の子の間に入り、話しかけてた賊の顔を横一線に切り裂いた
「え、あ、あの?」
「話はコイツ等をしとめてからだ、な?」
「は、はい!!」
「ふん、まだまだ仲間は居るんだぜ?お前等たった二人で勝てるわけないだろうがぁ!!」
「ふ、安い物言いだな。かかってこいよ……クズ共!」
そこからは早かった。俺が賊共を一気に斬り倒すと周りは怖じ気づき、弓を持ち始めた時、俺は討たせる前に仕留め、あの娘を見たら、信じられない光景が見えた
あの女の子の手からエネルギー弾みたいなものが放出し、それが賊に当たった瞬間、派手に爆発した一瞬、俺はあっけにとられたが、即座に集中し、何時も調子で賊を仕留めた
(あれがさっきの爆発音の正体か。凄いなこの娘は)
結局、あれだけ豪語していた賊の頭は数が減ったのを知ると一目散に逃げ去り、それに釣られて周りの賊も逃げ出した
「先ほどの助太刀、感謝します。私は楽進と申します。あなたは?」
「俺の名は北郷一刀。陳留の刺史をやってる者だよ」
「陳留……北郷……!もしかして貴方があの有名になっている北郷殿ですか!?」
「あ、ああ、まぁ一応、そうかな」
「やっぱり、先程の剣の腕前からしてただ者じゃないと思ってましたから」
なぜだか楽進からは俺に憧れ念を抱いているように感じた俺は少し恥ずかしくなり、話題を変えた
「それより、一つだけ聞くが、他の義勇兵はどうした? 恐らく君が率いてたと思うんだけど?」
「そ、それは」
「やっぱり君が率いていたみたいだな」
「は、はい、確かに私と後二人との三人で率いてたのですが……私が食糧の手配のために数人の兵と共に、村を出て行った間に……く……村の人や……私の親友たちまで……ぅぅ……」
(悔しいんだろうな。民を賊から護るはずなのに自分がいない間に全て殺されてのが)
もう既に真夜中だが、楽進の顔が月明かりに照らされて涙を流してるのがわかる
「それで頭に血がのぼって、あの数の賊に挑んだのか?」
「敵を……親友二人のかたきを取りたかった。自分が馬鹿な事をしたと分かってはいます……けど!?」
楽進が怒りで震えるその姿はまるであの時のあいつに似ていたので思わず楽進を抱き締め、背中をさすりながら、落ち着かせようとした
「それは辛いよな。大切な人達が死ぬのは」
「ええ、すごく……」
「けどな、そんな事やってお前が怪我でもしたりしたらその親友は悲しむ筈だ。違うか?」
(そんな事、かつての自分にも言えた義理じゃないのにな)
そう思いながら、ある程度落ち着いた様子の楽進を放してみたが
「くっですが……どうしようもなかった!!自分が自分じゃないみたいにそんなこともわからない貴方なんかに分かってたまるかぁっ!!」
怒りで不安定な楽進が逆上して突然、攻撃をし始めた
俺に力任せに振ってくる拳を避けようとはせず、まともに腹で受けた
「う、ぐ……な、なかなか……いい拳だな。」
「え、ど、どうして避けないんですか!!?あなたなら簡単に避けれるはずなのに……どうして!?」
「今のを避けたらお前はかつての俺のようになるかもしれない。大切な者が傷つきに、感情を抑えることが出来ずに周りの全てが憎く見え、手当たり次第に憎しみをぶつけてしまう。信念がない力がどれほど危険か……俺が身を持って体験した。そのせいで俺は自分も傷付け、大切な人も自らの手で殺してしまった」
「!?」
「ま、まぁ最後にそいつのお陰で自分の過ちに気付いたけどな。だが俺以外の奴にはそんな世界に堕ちて欲しくない。だから、泣きたい時には泣け、そうやって感情を閉じ込めてしまうのが一番よくない」
「あ……ああ……うう……」
それを皮切りに楽進はタンを切ったかのように俺の胸で泣き叫んだ。そんな楽進を見て俺はその背をただ撫でるだけしかできなかった
(楽進も俺と同じだな。もし俺がここに来なかったら楽進は)
「ぅぅ……私は……まだ……やり直せるでしょうか?」
「ああ、お前が俺のように堕ちてないしな。これから心を強く持てばきっと大丈夫だ」
「はい、ありがとう……ございま……す」
(眠ったか、あんなことがあった後出し、しょうがないよな)
このままこんな場所に寝かせるのも悪い気がしたので馬を繋いで置いた場所まで行こうとして楽進を背負って、拠点に向かおうとしたとき
「おい、一刀、無事か……!むぅ誰だ、その女は?」
秋蘭が、慌てた様子で駆けつけてきた
「ああ、こいつは義勇軍の生き残りだよ。今は疲れて眠っているから俺たちの陣まで運ばせる。だから秋蘭にはここの義勇軍の墓を頼みたいと思ってるんだけど」
「うむ……それは構わないが」
しぶしぶといった感じの秋蘭と別れ、スヤスヤと寝ている楽進を俺の前に乗せたあと、そのまま村を後にした
(まったく、こんな事を言うつもりも思い出すつもりもなかったんだけどな。結局、なんだかんだ言って一番弱いのは俺か)
ふと、空を見上げるとあの日と同じのような満月だった
そういう満月を見るとあの時の馬鹿で甘すぎたあの時の自分を何時までも戒めたくなる……本当に我ながら女々しいな