ーー山間地ーー
side:一刀
辺りが暗闇に包まれ、風が木々を揺らす音が静かにさわぐ夜
俺達は賊が居座る砦に夜襲をかけようとしていた。楽進を駐屯地に連れ、手当てをした後に桂花がこの作戦を俺に提示した
あまり時間を余りかけても被害が拡大する可能性が有るため、今夜でケリをつけるつもりだ。最初に春蘭と張飛による奇襲部隊の攻撃で敵を混乱させ、その後、砦から炙り出すために秋蘭の部隊による火計……最後に俺と愛紗の本体による殲滅作戦
まぁ、成功するだろう……が俺の隣にいる楽進の様子がどうも変だ
「楽進、まだ体が痛むなら無理をするな」
「いえ、心配無用です」
(あくまで隠し通すつもりか。復讐の機会を狙っていることを)
隠しきれてない楽進の怒気が何よりの証拠なのだが、今は余計なことを行ってこの場を乱す気などはなかった
遠くで哀れな悲鳴が響き渡った
どうやら奇襲部隊の突撃によって、続けて火計の成功のようだ
残すは俺達の攻撃だけとなり思考を止め、突撃の準備を兵の皆にさせる
「楽進、死ぬなよ?」
「そんなつもりはありません」
「……そうか」
復讐心を抱いたままの楽進。そして愛紗が戦闘の準備が出来たと告げてきた
「一刀殿、そろそろ行きましょう」
「ああ。皆、あそこにいる賊共は俺達の同志となる筈だった者、罪のない大勢の民から全てを奪っていった獣共だ……情けを一切かけるな。その甘さはいずれ自分を苦しめることになる」
『はっ!!!!』
「よし、全軍突撃!!」
~~~~
side:楽進
気が付いたら私は自分の義勇軍が居た村が襲撃されている悪夢を……
そこには容赦のない賊の笑い声と義勇軍と民の悲痛な悲鳴を聞いても私は何も出来ないまま、賊の進行は止まらず村の中心部へと進み村を蹂躙していったが、そこに村人を逃げさせるために少し疲弊している私の親友二人が立ちふさがった
『へぇぇ~上物が居るじゃねぇか』
『ち、まだ村人全員が逃げ切っておらんのに……しゃあないな沙和、凪と他の義勇軍が来るまで何としても耐え抜くで』
『りょ、了解なの』
賊は余裕な笑みを見せ、二人を取り囲んで攻撃を仕掛けていったが、流石に疲労していても一国の将同等の力を持ってる二人は襲い掛かる賊を払い除け、善戦していた
だが、賊の増援によってまた群がり始め、その中から偉そうな男が出て来た。恐らくこの賊の頭だろう。二人は直ぐに攻撃を仕掛けたが……
ギィィンーー
『振りが鈍ってるぞ!』
『キャッ!?』
『ハァハァ……く、くそぉ……』
その男は強かった。二人の攻撃を受け止め、弾き返す
そして周りには賊がいる。私の知る限り二人に勝ち目はない……そのまま疲弊していき、体中に幾つもの切り傷をつけながらも二人は戦いつづけたが親友の一人があの男によって肩を裂かれ、隙ができてしまい、周りの賊に捕らえられ、もう一人は男に脅され抵抗することが出来ずに捕らえられ、身動きが出来ないように縛られた
(貴様らぁっ!!真桜と沙和を離せ!!)
なぜか私は声すらもあげることが出来ず、ただ、呆然と観てることしかできない
『ハァハァ……お前ら、こんな事して楽しいんかっ!?』
『フフフ、そりゃ楽しいからに決まっているだろう?オラァッ!』
男が当然のように言葉を返すと縛れている真桜の腹を蹴り飛ばした
『ぐがっ!?』
『真桜ちゃん!?』
しばれても必死に真桜に寄り添う沙和の髪を男が乱暴に掴み
『くく……だからお前らみたいな奴らを見ると余計にヤりたくなるんだよ!!』
その叫びが合図かのように周りにいた賊共が二人を囲んだ
「止めろーーーー……!?」
「うおっ!?どうした楽進?」
「え……ハァハァ……ここは?……」
「大丈夫か、なんか悪夢でも見たか?」
気が付くとそこには刺史でもあるにも関わらず、見ず知らずの私を助けてくれた北郷殿が居た
「な、何故分かるんですか?」
「まぁ大分、うなされていたからな。それより体の方はどうだ?一応、手当てをしたんだけど」
「は、はい、大丈夫です。すみません、ご迷惑をかけてしまって」
「一刀様、賊共に対する策のことで会議を今から開きます」キッ
そこまで私が言うと、天幕が開き、猫耳みたいな頭巾を被った人が入ってきて軍議を開くと北郷殿に話しかけてきた
(ど、どうして睨まれるんだ!?)
「ああ、分かった……楽進、お前はどうする?」
北郷殿が私を見て確認を取るかのような感じで話してくる
(そうか、北郷殿は私に……)
「勿論、行きます。いや、行かせて下さい!!」
「ああそういうと思ったよ……」
「一刀様!? 駄目です。こんな得体の知れない者を軍議に参加させることなど!!」
この人が言うのも当然だと思う。私の説明を北郷殿はどうしたのか分からないが、得体が知れないのは間違いない
「桂花。こいつはあの義勇軍の生き残りだ。それじゃ駄目かな?」
「う……だ、駄目です。こいつが賊の生き残りかも知れないじゃないですか!!」
「なぁ桂花。ちょっと耳を貸してくれ」
北郷殿はあの猫耳の人に耳打ちした途端に猫耳の人が顔を真っ赤にさせ、すぐに外に出て行った
「さて、桂花に許可を貰ったし行こうか楽進?」
「は、はい」
その後すぐに会議が開かれ、作戦を結構するために私は北郷殿と共に賊の殲滅に向かった
ーー夜、賊の砦付近ーー
『ぎゃあぁぁあぁ……』
既に砦は火の海になっており、炙り出された賊は次々と北郷・劉備両軍に襲われ、あちこちで賊の悲鳴が木霊する
(私の友を殺した罪、地獄に堕ちて償え)
この砦の賊の殺しているときに私は気付いた。あの時、夢で親友二人の殺戮に参加した奴の顔がある
それなら、その原因を作り出した頭が必ず居るはずと思い、私は周りの賊を吹き飛ばしながら探したが思いのほか見つからずに焦りを感じていた
(ひとりで殺すため単身で行動をした……こんな姿誰にも見られたくない。特に北郷殿には……)
体中血まみれになって無我夢中で探し続け、どのくらい時間が立っただろうか。ようやくその男に私は遭遇した
「ち、使えねぇ奴らだな。しょうがねぇな。さっさと逃げるとするか」
「まて……」
「!?く、くそ軍の人間か!?そこを「黙れ」グハッ!!!?」
その男が話している最中に私は我慢できずに男を氣弾で吹き飛ばした
「ぐぁあぁ……て、てめぇ……いきなり…何しやがる。ぶ、武人なら「何が武人だ!」……ぎゃあぁぁあぁ……や、やめろって言ってんだろうがぁぁぁ!!」
ごちゃごちゃとものを言う男に私は男の片方の足をへし折った。もう歩けないはずだ
だがそれでもまだ立ち上がって逃げようとしたのでそのままもう片方の足もグシャリという音ともに潰れた……いや、潰した
(そう簡単には死なせない……このまま、なぶり殺しに……)
「お前はそうやって言った者達を何人殺したんだ?」
「ぎがが……知るかぁぁ!」
五月蠅いので、真桜の腹を蹴り飛ばしたように男の腹を蹴り飛ばし、そのまま……
ズシュ
「あ……が……」
「楽進、もうこの戦は終わりだ。これ以上、意味のない争いで自分を見失っては駄目だ」
北郷殿があの男をあっさりと殺し、私は何とも言えない虚無感を感じて、気が付けば北郷殿の胸倉を掴んで責めていた
「どうしてあの男を殺したんですかっ!?どうして私に復讐をさせてくれない!?」
「……」
無言のまま答えようとしない北郷殿に私は自然と殺意が沸いた
「あなたが……あなた達がもっと早く、援軍を送ってくれればこんな事にはならなかった。全部、あなた達のせいだぁっ!!」
「それが楽進の本音か?それが本音ならお前は何をしたい?」
「っ……それを言ったところで、あなたが私に何をしてくれる!?……何をする!?……所詮そんな事も出来ないのに、私のこの感情をどこにぶつければいいんだぁっ!!?」
「それなら来いよ。力の限り俺にぶつけて、それでお前の気が済むならな」
「な!?……ぐ……あぁぁぁぁぁ!!」
北郷殿から凄まじい氣を感じ、一瞬、私は怖じ気付いたが、叫び声で自分をごまかし、身体中の氣を右手に全て集め、北郷殿の言うとおり、力の限り襲いかかった
「ハァハァ……!?……私は何を……北郷殿?」
私は身体中の氣を殆ど出し切ったせいかようやく、頭の中が軽くなったと同時に自分の行いに気付き、北郷殿の安否を心配し探したが
「よぅ楽進、もう気は済んだか?」
そこには私の氣弾で地面が吹っ飛んだ奥でボロボロになりながら手を振る北郷殿を見つけて震える足に鞭を打ち、すぐさま駆け付けた
「……ぅう……く……すみません……北郷殿……私は馬鹿です。あなたがこんな事にならないように言ってくれたのに」
(ああ……もう駄目だ……私は堕ちたんだ……)
そんな自暴自棄になってうつむいている私にずっと無言だった不意に北郷殿が痛むであろう右手で私をまた抱き締めてくれた
「ははっ大丈夫だ。まだ楽進は堕ちてないよ。自分自身で気付くことが出来た。誰の手を借りずにここまで戻って来れたじゃないか……そのまま堕ち続けた俺とは違うよ。だから、後は俺がお前を引っ張ってやるよ」
「……はい、はい!」
私は涙を流しながら、少し恥ずかしかったが北郷殿の温もりを素直に感じ、ようやく曇りがかった私の心は晴れた気がした
ーー数日後ーー
「もういいのか?」
「はい、もう大丈夫です」
私と北郷殿は、夏候淵将軍達が造ってくれた義勇軍の墓がある森に来ていていた。風もあまり強くは吹かず木々のざわめきしか聞こえい静かな森
そこの陽が当たる開けた場所に私の親友二人は眠っていた
「なぁ楽進。君はこれからどうするんだ?」
「いえ、正直まだ決めてません。私は、私達は何時も三人で一緒に過ごして二人が私を導いてくれてましたから……だからよく分からないんです」
楽しかった三人で過ごした日々を思い出し、感傷に更けて笑っていると、座っていた北郷殿が立ち上がり私のほうを向いて、言った
「だったらさ、俺の所に来ないか?」
「え、北郷殿の所にですか?」
「ああ、楽進の力ならもっと大陸の皆の為になると思うし、その力は十分に役に立つよ。まぁまだ拳を振るう気持ちがあるならな」
少し不安そうな北郷殿の声……多分、私の様子からして断るかも知れないと思っているのだろう
確かに答えなんて決まってる私も立ち上がり北郷殿に返事をした
「ふふ」
「え、なんで笑うんだよ?」
「いえ、私でよければいくらでも使って下さい」
「それってつまり来てくれるのか?」
「はい、それから私の真名は凪と言います。真名を捧げると共に北郷様に忠誠を誓います」
「ああ、ありがとな。じゃあ俺の事も北郷じゃなく一刀って呼んでくれ」
「了解です。一刀様」
「これから宜しくな、凪」
「いえ、此方こそよろしくお願いします」
「じゃあ、そろそろ戻ろうか?」
「そうですね」
主となってくれた一刀様が森の出口へ歩き始め、それに続くようについていった
(真桜、沙和。お前達に会うのはもう少し先になりそうだ。私には新たな目標が出来たからそれを信じて今度は一人で進もうと思う……いつここに来れるかは分からないけど……必ずまた会いに来る。だから安心して見守っていてくれ……それと今までありがとう)
ーーオマケーー
「全く、あれほどムチャをするなと言っておったのにこんなな怪我をしてよく、大したことないと言えたものだな。一刀?」
昨日の夜、戦の終わりに凪に肩を支えて貰いながら軍に戻ったとき、秋蘭と桂花が血相を変えて俺に詰め寄り、手当てを受けた後、直ぐに秋蘭の天幕に連れ去られ、二人の説教が始まって半刻が過ぎていた
「秋蘭の言うとおりですよ。一刀様が前線に出るだけで私がどれほど心配するか……分かっているんですか?」
「ああ、もう反省しているからそろそろ、許して下さい」
「駄目だ。今日の間はずっとこうさせて貰うからな?」
「いや、でもそれだったら秋蘭が大変だろ?」
「いえ、その時の為に私がいるんです」
(まぁ、確かに秋蘭の膝枕は気持ちいいけど)
結局、この日は秋蘭と桂花の交代でずっと付きっきり俺の看病をしてくれた
まぁその分、説教も延々と聞かされてしまったけど
ちなみに別れの挨拶に来た劉備達にこの様子を目撃されたのは言うまでもない