ーー陳留城内ーー
Side:一刀
「それでこの兵糧の資料見て思ったけど、どうしてこんなにも量が少ないんだ?」
「は、はい……まず、この軍の錬度や行軍を見てきましたが、量を減らすことで遠征への進行速度が上がり、当初の予定よりも早く帰還することが出来ます……」
さっきまでのピリピリとした空気は一切なくなり、とても静かな空間の中で荀彧の意見を聞いていた
(……急におとなしくなったな。顔が若干青ざめているが、倒れたりしないよな?)
「しかし、いくら行軍速度が上がったとしても黄巾党の数自体は此方より上だ。かなり手間取ると思うが?」
「今までのやり方だと時間はかかりますが、策を用いれば相手は所詮は獣、簡単に崩すことが可能です……」
(このタイミングで策の提案をしてきたということは……)
「それなら荀彧はその策を提案する事が出来るか?」
「はい……元よりそれが目的だったんです」
恐らく落胆しているのだろう。憧れていた者が実は嫌いな男だったことが……荀彧の過去に何があったかは知らないが……
(やっぱりか……まぁ普通のやつはこんな事はまずはしない。王佐の才か……)
「そこまで言うのなら、この件に関しては最後まで責任はとってもらうよ。その後は君の自由でかまわない、じゃあ今日は下がっていいぞ」
「わ、分かりました……」
(まぁ、一日休めば大丈夫だろう……あの罵声は勘弁だけど……)
結局、落ち込んだ様子のまま出て行った荀彧を見送った後、破壊された無残な扉が嫌にでも目に入ったので春蘭に請求する事にした
「で、春蘭。お前はあの入り口を見て何か言うことはないか?」
「ハァ~///……はっ!な、何だ一刀!?」
(いや、お前は何をトリップしてんだよ……)
「とにかくお前の給金から引いておくからな」
「な、何故だ……も、もしかして一刀は私の事などが嫌いになったのか?私なんてもういらないと言うことか!?」
そう俺が言うと何を勘違いしたのか、俺の襟元を掴んでブンブンと揺さぶり始めた
(く、首を締めるな……マジできつい……)
「だ……れおまえのこ……嫌いにむ…しろ……だよ……」
「おいおい姉者、そんなに一刀の首を絞めては本当に嫌われるぞ?取り敢えず放してやったらどうだ」
秋蘭の静止でようやく解放された俺だが……
「ゴホッゴホッ……春蘭、お前はもう少し人の話を聞けって」
(あぁ駄目だ……また、意識が……まぁ寝れるからいいの……か?)
解放されたが、日頃の疲れや春蘭の暴走も相まって俺の意識は再びブラックアウトした
ーーーーーーーーーーー
Side:荀彧
こんな筈じゃなかった……私は小さい頃から私は天才と呼ばれてこんな失敗なんてしなかったけど地方での仕事が完璧すぎて周りから蔑まれ、南皮の袁紹ならきっと私を認めてくれて思ってたけど
(……あの金髪くるくる馬鹿は一文官の私の献策など地味すぎて派手にしないと必要ないですって!?……あぁもう、あの笑い声を思い出すだけでムカつくわね……そして最近、この地で治めている北郷という美女が善政を行っているというから何もかも捨ててここままで来たって言うのに、汚らわしい男だとは思わなかったわ……けど、あの瞬間から何故か…逆らえなくなって思わず敬語を使ってしまったじゃない……何なのよあいつは男のくせに)
結局、私は夜もまともに眠ることができず北郷との出来事について悩みつづけ、気分は最悪だった
「はぁ~もう朝ね……あの男のせいでホント最悪だわ……」
「大丈夫か荀彧?顔が真っ青だぞ、そんなことで大丈夫なのか?」
ぼぉっとしているといつの間にか部屋に入っていた夏侯淵が私の顔を覗き込んでいた
「……問題なんて……ないわよ……」
「そうか、なら一刀からの命で今日から遠征終了時まで軍師同等として扱えとのことだ」
「は、はぁ!?なんでよ。あれだけ罵声したのになんでそんな優遇された扱いになってんのよ!?」
実を言うと私がここに来たときの本当の部屋は共同部屋立ったのだが、部屋で悩んでた私を夏候淵がこの空いた一人部屋で休めと言われ、今に至る
(有り得ない……普通、軍師というのは結果を確実に示す者で主君に対し、絶対的な忠誠を誓える人物ではないとなれないはず……)
「あくまで候補だが、一刀はすでにお前の才を見抜き、期待してるようだ……そういうわけで取り敢えず行軍中は軍事として一刀の隣に居てもらうぞ?」
「はぁ?何で私が穢らわしい男の隣にいなきゃいけないのよ!?そんな「それ以上一刀を侮辱するつもりなら頸と胴ががわかれるが……いいのか?」うっ……」
気がついたら私は夏候淵に壁際に押さえ込まれ、首元には短刀を当てられていた
(なんで、あの夏候姉妹がなんであんな男に入れ込んでんのよ……そんなにあの男が力をもってるとは思えない、昨日のは油断してだけよ、私が男なんかに気があるわけないわ……)
若干のわだかまりと首に残る冷たい感触が消えぬまま遠征が始まった
ーー遠征、初日ーー
Side:一刀
「なぁ秋蘭、春蘭はどうしたんだ、あの落ち込みようは?」
荒野を行軍中、いつもは俺の隣にいる春蘭が今回は後ろにいて、どうしてか理由を秋蘭に聞いていた
(なんか春蘭から負のオーラが出まくってるけど、何とかしないと士気に関わるなありゃ)
「なぁに少し昨日のことを引きずってるだけだよ。まぁ一刀が慰めてやればいいんじゃないか?」
秋蘭がそういうと馬を近付けて、耳打ちをしてきた
「え……ふぅ、わかったよ。……ほら春蘭、昨日のことなら気にしてないからさ元気だせよ、な?」
そういって春蘭の頭を撫でてやった。一年ぐらい前に秋蘭から「お前がそうしたやったら大概、姉者は機嫌直すよ」と言ったとおりにしたら本当に直るから……単純なやつだなぁと思ったのは内緒だ
「えへへ~かじゅと~///」
「…………あんなんで本当に大丈夫なの?」
崩れた顔をした春蘭を見て、荀彧は呆れているようだった
(春蘭その顔は止めろ。荀彧が引いてるぞ……)
「戦になればちゃんと働くからお前の心配は杞憂だよ」
「……」
ーー遠征、五日目ーー
「ようやく着いたな、取り敢えず秋蘭、近くの役人に取り合っといてくれないか?」
「うむ、了解した」
目的地へと着いた俺達はまず、この村の況を確認するため秋蘭と数名の兵が村の中へと入っていった
(……しかし、村とその周辺が酷いな。荒れているというレベルじゃないぞ……あの黄色の布は黄巾党か……!?鉄球を持った女の子が1人で黄巾党に突っ込んでいった。まずい!!)
「春蘭、部隊の一部を連れてあの子を助けに行け!!」
「おう、任せておけ!!」
春蘭にも見えていたのだろう。俺が指令を出す頃にはもう飛び出していった
「荀彧!お前は秋蘭が戻るまでここに居ろ、その後の判断はおまえに任せる」
「……分かったわ」
「村人には被害がでないように注意をしろ」
(よし、これで大丈夫だろう、後は春蘭を援護しにいくか)
俺も愛用の剣を手に取ると、直ぐに動ける部隊と共に援護へと向かった
ーーーー
「そこの娘、大丈夫か?この私が来たからにはもう大丈夫だ!!」
「え、うん、僕は平気だよ、お姉ちゃんはだれ?」
「わ、私か?私は夏候……「春蘭、敵に集中しろ!!……とそうだったな、賊共覚悟しろ!!ウォォォォォ!!」
さすがは春蘭と言ったところか、気合いと共に迫り来る賊を次々と斬り伏せていった
「あのお姉ちゃん凄いなぁ~よし、僕も負けないぞ!」
それに便乗した女の子が鉄球をいきなり振り回し、周りにいた賊を無惨に吹き飛ばしていった
(凄いなあの子、あんな小さいの体のどこにあの馬鹿でかい鉄球を振り回すパワーがあるんだ?……)
「もしかしたら単純なパワーは春蘭以上じゃないのか?」
「おい、そこのお前お「邪魔だ」……ぐぁぁ……」
(まったく、こんな奴らを纏めてる張角はどんなクズ野郎なんだろうな……)
「おい、賊共この北郷に血を与えてくれる奴は遠慮なくかかってこい……奇麗に殺してやるよ」
張角の人物像を想像しながら、近づいた賊を斬り殺し、挑発をした
「舐めんなよ?この人数相手にたった1人で勝てるわけねぇだろ!!」
ーー半刻後ーー
「たかが百程度の雑魚が俺に勝てるわけないだろう?……春蘭、終わったか?」
「ふん、こんな奴らに遅れを取る私ではないわ!」
「そうだな。それで……えっと君は大丈夫なのか?どうして一人で?」
春蘭の後に続いて近付いてきた女の子に俺は話しかけてみた
「うん、さっきの賊の奴らが村から食糧を奪っていったから許せなくてつい一人で……後、ボクの名前は許緒だよ」
(!この子があの許緒……荀彧といい華琳といい有能なやつはなんかちっさいなやつばかりだな……)
それは失礼と思い、口には出さなかったが……
「だとしても無謀じゃないのか?いくら君が強くても一人じゃ限界がある「北郷」……荀彧か?」
「か、夏候淵を連れてきたわよ……それがさっきの娘?」
「!北郷……夏候淵……ねぇ兄ちゃん達ってもしかして官軍?」
「あぁ、そうだけ「出ていけ!!」……っなんだいきなり!?」
返事を返した瞬間に叫び声とともにあの鉄球が左から迫り、かろうじて避けることが出来た
「一刀!貴様、我らの主に何をする!?」
「秋蘭!!武器を下げろ」
それを合図に春蘭と秋蘭が臨戦態勢に入り、俺はそれを制した
「官軍なんかいなくても僕達で村を守るんだ!!おまえ達の助けなんていらない!!」
許緒の力任せの攻撃を俺はまともに受け止めた……そしてそのまま……
「く……確かまだここは俺の管理が行き届いてなかったからな……いや言い訳はよそう……すまなかった」
頭を下げ、謝った……
「え、管理下じゃないって兄ちゃんたちは前の官軍の代わりに来たんじゃない……の?」
「いや俺達は陳留から来たんだ、この辺一帯まだ来てなかったからな。そうだろ秋蘭?」
「ああ、そうだな、まだこの辺は確かにまだだ」
秋蘭がそこまで言うとしばらく沈黙が続いたが、やがて自分の勘違いに気付いた許緒がいかなり謝りだした。
「ご、ごめんなさい!てっきりこの村を捨てた奴らの仲間と思って攻撃しちゃって……」
(う~ん、そう深々と謝られてもなぁ……あ、そうだ…)
「それならさ、君さえ良ければ俺の軍に力を貸してくれないかな?」
「え……?」
「春蘭にも勝る怪力に俺がさっき攻撃を受けて確信したんだ。君なら武将としても十分やっていけるよ……どうかな?」
「僕なんかの力で良ければ、いくらでも…」
自分の力が役に立つと思ったのだろう。許緒はみるみる、元気を取り戻していった
「そうかなら、俺は性は北郷、名は一刀で字と真名はないんだが、まぁ一刀が君達でいう真名だからな、宜しくな」
「うん、僕の真名は季衣っていうんだよろしくね、一刀様!」
こうして、他に春蘭達と真名を交換(荀彧はまだ仮なので許してない)し、今回の遠征に心強い味方が出来た
(さて黄巾党を殲滅に行くか、荀彧の知謀も見たいしな)