ーー遠征、十一日目ーー
Side:一刀
賊討伐は荀彧の策により当初の予定より速く片付けることができたが……
(……まずいな。軍全体の士気が落ちている……今の状態で黄巾党なんか出てきたら一溜まりもないな……)
「なぁ、荀彧。どうして勝利した我が軍の士気が落ちてると思う?」
「…………食糧がなくなったことかと……」
「だよなぁ……まぁ今日まで我慢すれば城に戻れるから……皆、すまないがもう半日は我慢してくれ」
「「「はい……分かりました」」」
「ぅぅ……」
遠征十一日目の現在、食糧なし!……そう荀彧が作成した糧食の案は見事に外れ、昨日時点で糧食は殆どなくなり、俺達も含め、兵の皆も朝から何も食べていない、もちろん本来なら足りる筈だった……だがそれは新戦力、季衣を計算に入れてなかった場合の話。結果、人の何倍も食べる季衣によって糧食は不足し、現在の状況をできてしまった……
(まぁ戦の策自体は完璧だったんだがな。季衣があんなに大食漢だとは誰も思わなかったな……)
「えぇい、貴様ら!!腹が減ったくらいで(ぐぅぅ~)……///……」
「「「………………」」」
「……一刀、姉者を頼む……」
(……駄目だこりゃ……今、本当に賊が来たら俺らは全滅するんじゃないのか?)
「どうしたの、一刀様?」
「季衣か、どこに行ってたんだ?姿が見えなかったから………は?」
「「「!?ーーーー」」」
俺達が気休め程度に休憩を取って、愚痴を言ってる間、どこかへ行ってた季衣がなんか毛深い物(?)を背負って戻ってきた
「なぁ、季衣、それって……熊?」
「はい!鍋とかにしたらとても旨いんですよ。だってお腹が空いてるでしょ?」
その瞬間、春蘭が全力で季衣に突進し、抱きしめて喜びを体全体で表現していた
「季衣、お前は今日から私の義妹だ!!」
「ちょ、ちょっと痛いですよ~春蘭様~」
「ほら、春蘭放してやれ……で季衣まだ何匹くらいいたか?せめて後、もう一匹は欲しいんだが?」
(流石に一匹じゃ軍全体に行き届かないからな)
「はい、多分いると思いますよ、狩ってきましょうか?」
「そうだな、取り敢えず、春蘭は季衣について行ってくれ、その間俺たちは調理をしておくから」
「おぅ、任せておけ!!行くぞ、季衣!!」
「はい、春蘭様!!」
ドドドドドーー
まるで本当の姉妹のように息ぴったりで駆けだしていった二人を見て、皆の沈んだ気持ちは解消されたように思えた
「あぁ~やはり元気な姉者は可愛いなぁ~」
「ふぅ~なんとか一息つきそうね……」
「はは、まぁ取り敢えず、よかったのかな?」
この日の夜、俺達の軍は本当の意味で一つになれたと俺は思う……
ーー翌日、王座の間ーー
Side:荀彧
(はぁ~どうしよう……昨日、城に到着しとき、北郷に「改めて明日、今回の件について話があるから、朝、王座の間に来いよ」と言われた。恐らく昨日の失態の処遇といったところだろう……そりゃ許緒の大食漢は誤算だったわよ。けど軍師はどんな予期せぬ事態が起きても対処できる能力が問われる役職だ、そんなのは言い訳にしかならない……)
そんな意味のない事を考えてるうちに北郷が来た
「お、早いな荀彧……大丈夫か、そんな疲れ切った顔をして?」
「あんたのせいでしょ!次の日に処罰を与えられる事が確定してる人の立場になってみなさいよ!!」
(あぁ、もう何を言ってるのよ私は!?仮にも一国の主であるあいつにこんな暴言を吐いたらより酷くなるって分かっているのに~)
頭では理解しているのだが、どうしても過去のことが災いし、条件反射が出てしまう
「う~ん、確かに気分は最悪になる上にゆっくり眠れはしないな」
けど、この男がおかしい。遠征中も何度かこれ以上の暴言を吐いた私に怒るわけでも気分を悪くするわけでもなく、今みたいに笑い飛ばし、普通に接してくれた
(最初はただ気持ち悪いだけと思ったけど、だんだん話してるうちにそれが北郷の本来の気質だと感じるように………は!?//…)
「で、早く処罰を言いなさいよ!!」
「いや、もともと……!そうだな、じゃあ荀彧、お前への処罰は……」
(な、何で途中、ニヤリとしたのよ……は!まさか私を犯す気!?孕ませる気!?…やっぱり男なんて信用す……)
「俺の専属軍師になってもらおうかな?」
「え……?」
「いや、だからの俺の軍師にならないかって言ったけど?」
「ハ、ハァーーーーーー!?」
「お、お前は声が高いんだから耳元で大声で叫ぶのは止めてくれないか?」
「正気なの!?あんた、昨日の遠征で頭、可笑しくなったままなの!?」
「いや、別に、単純に、お前の、知略を、見て、欲しいと、ていうか放してくれ……」
私は意味不明な事(私的に)を言われ動揺しまくって普通なら自分から触らないはずの北郷の肩を掴み、首をブンブンと振っていた
「と、とにかく、私はあんな失態を犯したのよ!そんな私が軍師に相応しいわけないわよ!!」
それに気付いた私は勢いよく北郷から離れた
「ぅぅ……いや、あんなの失敗にならないし、そんな小さな事でせっかく見つけた有能な軍師を手放すわけないだろ?」
(私が有能……?そんなこと……いままで親類以外誰にも……)
「分かったわ。一日だけ時間を頂戴……考える時間が欲しいから……」
「ああ、分かったよ。また明日ここで待ってるからな……後、今日は秋蘭の仕事を手伝ってやってくれ、人手不足で悪いな」
(……どうして、北郷は私を認めてくれるんだろう……男なんか穢らわしいだけだと思っていたのに……北郷だけは他の男と違う気がする……)
申し訳なさそうに笑う北郷が出ていった後、私は初めての感情に戸惑い、虚しく開いたままの扉を見てただ立ち尽くしていた
ーー翌日、王座の間ーー
Side:一刀
(はぁ~やっぱり無理かな、昨日の荀彧の様子をみる限り……軍師は忙しい今の状況で欲しかったけどなぁ~)
そんな諦めムードで王座の間に入っていったら……
「おはよう御座います、北郷様!!」
「……………」
バタン……
扉を開けたらおかしかったのでとりあえず閉めなおした
「あれ?まだ寝ぼけてるのかな?」
(あの光景はちがう、あの荀彧が罵声は言っても北郷様なんて言うのは有り得ない!錯覚なんだ……きっとそうに違いない)
俺は目で起きた有り得ない光景を否定し、再び扉を開けた……
「おはよう御座います、北郷様!!」
「ハァァァァーーーー!?」
幻じゃなかったことで俺は昨日の荀彧とまったく同じ反応をしてしまった
「どうした!?荀彧?大丈夫か?どこか怪我してないか……」
(ハッ!?ま、まずい、荀彧につい触れてしまった!?今までの経験上「な、なにすんのよ!?この変態下劣全身精液まみれ男!!」なんてボディブローと罵声のセットが飛んでく……る?……あれ?)
「あ、あの北郷様。心配してくれのは嬉しいのですが、桂花って呼んでくれると私は尚、嬉しいです///」
(デ……デレたぁぁーーーー!?あのどう考えてもツン成分100%の荀彧が!?昨日の内に一体なにが!?)
連続する超展開についていけず、もうすでに俺の精神は衝撃で崩壊していた……
「えっと……それって荀彧の真名?」
「はい、私の真名は桂花と申します//」
「そ、そうか、じゃあ俺のことも一刀と読んでいいぞ……」
「はい、ありがとう御座います。一刀様///」
罠か?とも思ったが目の前で心底、嬉しそうな顔で俺の名を呼ぶ、荀彧……桂花の笑顔を見て、それはないと確信した
「真名を許してくれたなら、軍師の件も?」
「勿論です!私は一生、一刀様の軍師として共に生きて逝きます!!」
(なんか字が微妙に違う気がしたが……秋蘭だ!!秋蘭なら昨日なにがあったか知ってるかも知れない……)
「桂花、最初の命令だ。秋蘭をここに連れてきてくれないか?」
「……御意」
秋蘭を呼ぶように言うと若干、嫉妬した時の春蘭に似た顔をし、出て行き、俺はなんだか頭が痛くなってきた