ーー陳留城内ーー
side:秋蘭
一刀が呼んでると豹変した荀彧から報告を受けたので王座の間に来た……恐らく昨日の事だろうと昨日の有り様を思い返しながら扉を開いたら
「よう秋蘭……来てくれたか」
やはり予想通り、目の前には疲れ果てた一刀が座っていた
「一刀様、夏候淵を連れてきました!」
「そうか、ありがとな桂花。そしたら後日、改めて皆に紹介するから今日もう下がっていいよ」
「ぁ……はい……分かりました」
先程までの荀彧の笑顔はみるみる引いていき、お預けをされた犬を彷彿させるような顔になって部屋を出て行った
(姉者と同じぐらいに表情で分かるな、どうしてこうまで一刀の事を……)
「で秋蘭、なんで桂花もとい荀彧はああなったんだ?」
「あぁ、詳しくはわからんのだが多分、昨日、私のところに仕事をしに来たときに……」
~~~~~~
『ハァ~どうしたらいいのかしら?……』
『……さっきからどうした荀彧?溜息ばかりついて全然はかどっていないじゃないか……お前らしくもない』
『……ねぇ夏候淵。あなたも私に期待してるの?』
『ああ勿論期待してるさ。先の遠征では見事な采配だったぞ』
『……』
『つまり私がそう思うのだから一刀もきっと期待してるさ』
『あいつが期待してくれてるっていうのはさっき聞いたわよ!……は!?……』
『ほぅ、さっきとはもしかして軍師の事か?』
『え、どうしてそれを!?』
『なぁに、一刀が遠征中にいつも『荀彧は絶対に軍師として欲しいなぁ』とか言ってたからな』
『そう……』
『そのようすだとまだ決めかねているということか……何をそんなに悩む?』
『わかんないのよ……こんな気持ち初めてで……どうすればいいか……それに』
『ああ、そう言えばお前は極度の男嫌いだったな?……だが一刀を他の男と同じにされては私は納得いかないな』
『そういう意味じゃないわよ。ただ、私は……いつも誰かに疎ましく思われ、居場所を奪われ、挙げ句の果てに前に仕官していた所ではつまらない、地味という理由だけで献策も捨てられたから……』
『(なるほどな。要するに人を信じきれないわけか)荀彧、ちょっとついて来い……お前の知らない本当の一刀を見せてやろう。一刀には内緒だがな』
『え、あ、ちょっと……』
私は荀彧の腕を掴み、街へと連れ出した
~~陳留市街~~
『いらっしゃい北郷様。今良いところにちょうど肉まんが蒸し上がってます。よっかたらどうぞ』
『お、じゃあ一つ貰おうかな』
『北郷様、この桃なんていかがですか?』
『春蘭や季衣にあげたら喜びそうだな……よし、じゃあ三十買うよ』
『あ、いえ、お代は結構です。そんな北郷様に……』
『いや、俺だけ特別扱いとはいかないからさ。まぁ取っといてくれ』
『北郷様、この間頼まれた例の服が出来上がりましたよ!良かったら見ていって下さい』
『マジで!!じゃあ、さっそく見せてくれ』
『ああやって暇さえあれば民と触れ合いながら、同時に街の警邏までやっている……昔から一刀はいつもあんなだ。忙しいくせにな』
『………………』
『どうだ荀彧、これでも一刀を信用できないか?』
『…………そうよ……でも……』
『……荀彧?』
『あ……そ、そうね、大丈夫よね……?』
『そうか、ならもういいな。さっさと城に戻って今日の分を片付けるとしよう』
『………………ええ』
~~城内~~
『…………………』
『………ふぅ…今日はこのくらいで終わりにしよう。おい、さっきから黙ってばかりだが大丈夫か荀彧?』
『そうだったのよ!!』
『なっ!……?いきなり大声を出してどうした?』
『そうだったのよ、今まで失念してたわ!どうしたこんな簡単な事に気付かなかったのかしら!』
『気付かなかった?……どういう意味だ?』
『夏候淵、礼を言うわ。あなたがさっき、いつもの"北郷様"を見せてくれなかったら気が付かなかったわ!!』
『そうかそれはよか……は?……おい、今お前……北郷様って言わなかったか?』
『私……私達の主だから様を付けて敬うのは当然に決まってるでしょう!!?』
『いや、だから意味が分からんぞ?男嫌いのお前が北郷様などい『ばっかじゃないの!!!』な……馬鹿……だと?』
『当然じゃない!この世には三種類の人間が居るわ。男と女と北郷様よ!!……あぁ北郷様、愚かな桂花を許して下さい。私は、私はーーー』
バタン……ドドドドドーーーーーーーー
~~回想終了~~
「…………はは」
(話が終わった後、一刀も疲れてはいたが、どこか嬉しそうだった……因みに市街のことは上手くはぐらかした)
「と、まぁこんな感じだ。それに走り去った方向からして目的地は多分ここだな」
「あいつもしかしてずっと一晩ここで待っていたんじゃないだろうな?」
あながち有りそうな事だと私も思った
「恐らくな待っていただろうな……というわけで私も疲れてるんだ」
「秋蘭……」
一刀が私の名を呼ぶと、抱き締めてくれた
(久しぶりだな。一刀が抱いてくれたのは……)
「ふふっ、どうした一刀?いきなり抱きしめて……」
ここ最近は本当に忙しく、一刀にこうして貰うのは本当に久しい……だから私は少し意地悪になってみようと思った
「あれ?……いや、秋蘭が構って欲しそうな目をしていたからつい……違ったか?」
「いや、違わんよ。ただ少しな……」
「まったく……冗談がうまいな秋蘭は」
そういうと一刀はさっきの仕返しと言わんばかりに耳にそっと口付けをした。
「ん///……一刀、釣った魚に餌をやらないのは酷いぞ?」
「それは前にも華琳に言われたよ……そうだな、じゃあ明日の朝までは秋蘭に付き合ってやるよ」
「……仕事はしなくていいのか?姉者は呼ばなくていいのか?」
私が不安そうな声で確認すると、囁くように……
「安心しろ、今日は秋蘭だけだよ」
(///……荀彧には感謝しておくか。きっかけをつくってくれた礼を……しかし、これでは姉者にも同じ事は言えないな。すまんな姉者)
私は心の中で姉者に謝り、本当に久々に今日は一日中、一刀と共に過ごすことができた
ーー数日後、王座の間ーー
side:一刀
新しく我が軍に加わることになった荀彧こと桂花と季衣の大まかな紹介を終えた後、親睦を深めるために重臣だけで宴会をやっていたのだが……
「おい桂花!何故、貴様が一刀の名を口にしてるのだ!?」
「はぁ?そんなの一刀様にお許しを得たからに決まってるでしょう?そんな事も分からないなんてやっぱり春蘭は脳筋なのね」
「なんだと、桂花ぁぁっーー!!貴様、そこに直れ!今すぐたた切ってやる!!」
「ふん、アンタみたいな取り敢えず力で抑えればすべて解決だ!……みたいな馬鹿な脳みそをして……あ、間違えたわ。脳筋は一刀様のそばに居るのに相応しくないわよ?」
「わざわざ言い直すなぁぁっーー!!」
(あはは……なんかおかしいな?皆の親睦を深めるための宴だった筈なのにな)
まぁもともと性格上、春蘭と桂花は相容れぬ性格っぽいせいか少し話しただけで、あっと言う間に喧嘩になってしまったのが引きずっているわけなんだが
「ほら、春蘭も桂花もその辺にしておいてくれ。せっかくの宴が台無しになるからな?」
「しかし……!?うぅ……わかった」
「も、申し訳ありません、一刀様……」
しぶしぶといった感じの春蘭と素直に俺の言うことだけは聞く桂花はどこまで両極端な二人だった
「あはは、なんだか春蘭様も桂花も一刀様の猫みたいだね」
「ふふ、季衣もなかなか面白いことを言うな」
「季衣。だ、誰がこいつの猫だ!?//」
「一刀様の猫……えへへ……あぁ、いい///」
(しかし、たまに季衣の発言はとんでもない影響を及ぼすからな……あの時みたいに……)
俺はまだ桂花が従順になる前の遠征の出来事を思い出すと共に季衣の発言を否定した
「いや、誰も猫扱いはしてないって、敢えて言うならみんな俺の大事な人達だよ……」
「「「!!!///」」」
「あにゃ?どうしたの、春蘭様たち、なんか顔が赤いよ?」
「……そうみたいだな」
季衣を除く三人がボッと一気に真っ赤になり、言った俺もあとから恥ずかしくなってしまい、そのまま何とも言えない微妙な空気のまま、親睦会は自然消滅していった