マルメロ家だいすき日記2022〜2023   作:大野 紫咲

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『何度討伐しても退治できない、不気味なタマミツネが村の近くを襲っている』——
そんな依頼を受けたハンターの矢羽は、不思議な友人である三日月宗近と共に狩猟へと赴く。
三話構成の第一話です。

モンハン世界、本丸共に、独自設定やオリキャラが多数登場します。
何でも許せる方はどうぞ!
同じ内容のPixivはこちらから→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=20709999

※一つ訂正というか謝らなければならないことがあるのですが、本作でタマミツネの“耳”と描写されている部位は、おそらく“ヒレ”の間違いです!ごめんなさい!!!←
部位破壊報酬に「泡狐竜の錦ヒレ」っていうのがあるのですが、ヒレなので耳では…ないです…←
頭についてるので耳には見えるんですけど…もう完全に耳の扱いをしてるんですけど...((
スルーしていただくか、うちの子は耳を動かそうとした時に筋肉が付随してヒレも動くタイプの子なんだと思ってください!


タマミツネ・青雨が本丸にやって来るまでのお話
幽霊タマミツネの怪《第一話》


「じーじー! じーじーじー!」

「ははは。ほれ、じいじはこっちだ」

 

 ひらひらと舞う群青色の袖を、よちよち歩きの幼い望寧(もね)が捕まえようと追いかけている。足元がおぼつかないのも構わず、裸足で家の中をどたどた歩き回り、あわや転ぶといったところで、先を歩いていた狩衣姿の若者は、危なげなく手を差し出し、ぽってりした望寧の体を支えた。

 

「はっはっは。よしよし。望寧は今日も元気だなぁ」

「じぃじ! だいちゅき!」

 

 ぺちぺちとはしゃいだ紅葉のような手に頬を触られている若者は、短めの黒髪をさらりと顔の横に流して、屈託なく笑みを浮かべた。この娘の祖父どころか父親と呼ぶにも若すぎる見目をしているが、その佇まいと老成した雰囲気が、爺という呼び名に不思議と違和感を抱かせない。

 そんな青年——三日月宗近(みかづきむねちか)の元へ、望寧の母親たる女性が、家の外から甕を持ちながら入ってきた。小柄な体では、水汲みも一苦労のようだ。

 

「あらあら。望寧ったら。三日月様をお祖父様なんて呼んでは失礼でしょう? こんなにお若くていらっしゃるのに」

「なに、気にすることはない。俺がじじいなのは周知の事実だからなぁ」

「そう言われましても……全然お年を召しておられるように見えませんわ。三日月様が、どのようなご身分の方かは存じませんけれど」

 

 くすりと笑って、台所に甕を置いた母親こと紫苑(しおん)は、こちらに手を伸ばしてきた愛娘を、三日月の腕の中から引き取った。

 嵐の夜、三日月がこの近くの森の中で迷っているのを発見し、夫に連れられて来てから幾ばくか経つ。迷ったとは言っていたものの、彼自身の帰る場所ははっきりしていたようで、時々どこかへ連絡を取っていたり、ふらりと数日〜数週間ほど姿を消してはまた現れたり、とまるで友人のように(かんば)家へ滞在を繰り返していた。

 自身については多くを語らず、狩りに連れて行くと鬼のように強い。不思議な友人ではあるけれど、よからぬ企みや悪人の気配は、紫苑にも夫である矢羽(やはね)にも、何故か感じられない。子供が懐くから悪人ではないとも言い切れないが、人見知りの激しいはずの望寧が、三日月にだけはちっとも物怖じせず、べったり離れないのも、信頼を寄せる要因の一つだった。

 

 そうこうするうちに、ギルドへ行って仕事の依頼を探していた矢羽が戻ってきた。

 狩りの獲物から入手した羽飾りを頭の片側に付けた矢羽は、望寧と同じ褐色の掌に携えていた依頼書の束を机に置き、鞄を下ろしながら肩を回す。華奢な体つきに、きちんと整えた焦茶色の髪を緩いハーフアップにしているので、女と間違えられることも多いが、れっきとした青年だ。

 同じく、こちらは長い髪をハーフアップにして馴染みの蝶結びを飾りにした紫苑が、夫の傍に寄って尋ねる。

 

「矢羽。お仕事はどうでした?」

「うむ……幾つか受けてきたが、ちょっと一件、気になるものがあってなぁ」

「気になる依頼?」

 

 覗きこんだ紫苑の頭上から、自然と三日月も一緒に依頼文を見下ろす。紫苑が元々だいぶ小柄な上に、三日月は背が高い男なので、一緒に物を眺めるには背後に立てば全く支障がないのだった。

 紫苑と望寧の頭を交互に片手で撫でながら、矢羽が紙に目を落とす。

 

「ほら。先日、俺と三日月が追い払ったタマミツネがいたろう」

「ああ……この近くの川辺で、堤防を壊しながら暴れていたのでしたっけ。たしか、三日月様が来られたその日の夜のことでしたわね」

「そうだ。そいつが、ここから十数里離れた村にも現れたらしい。傷跡というか、体表の特徴からして同じ個体なんだと。そいつ、普通のタマミツネよりもやけに体がデカくて赤いんだそうだ。この間闘った時は、夜だったから特段気に留めなかったが……確かに、デカいタマミツネではあったな」

 

 何せ、あの三日月を鼻先に乗せてしまう程度の頭の大きさはあったのだ。

 あの夜は三日月が謎のウインクで追い払ってしまったが、他の里に被害が出ているとなれば、一度狩猟に手を出した者として、何となく放ってはおけない。

 思い出すように遠くを眺めている矢羽を、紫苑が不安そうに見上げた。

 

「亜種や希少種であるということは……?」

「いや……攻撃のパターンからして、闘った感じは普通のタマミツネと変わりなかった。タマミツネの亜種は未だ発見されていないし、体色が赤なら希少種やヌシ個体とも違うだろう。だがどうも気にかかる」

「それで、討伐しに行くのですか?」

「ああ。悪いが、しばらく留守にするから家と望寧を頼む。ここから十里以上離れた村なら、馬に乗ったとしても二、三泊は掛かるだろう」

 

 強情な妻は、毎度矢羽が家を立つその瞬間まで、心配や甘えを顔には出さない。むっつりとした紫苑の表情にふと頬を緩ませた矢羽が、黙ってその頭に手を触れると、後ろにいた三日月がのほほんと言った。

 

「なに。紫苑殿、心配はいらん。俺も夫君に同行するからな」

「えっ、三日月も行くのか?」

「戦力は多いに越したことはないだろう。それとも、組合に正式所属していない者の参加は何か不都合があるか?」

「いや、うちのギルドはそのへん緩いから、何も言われねぇとは思うけど」

 

 確かに、近くの狩場に行く時に三日月を伴って狩猟をしたことも、今までに何度かある。おかげで動きの癖もある程度はわかっているし、その太刀筋も見慣れているが、ここまで遠く離れた地へ獲物を一緒に狩りに行くのは初めてだ。

 ギルドで依頼を受けた時には、一瞬誘おうかという考えが頭を掠めたものの、さすがについては来ないかと思い直したのだが、当の本人はのほほんとしながらも同行する気は満々のようだったので、矢羽は武具や宿泊の準備を済ませてから、紫苑に留守を任せて出立したのだった。

 

***

 

 到着先の村で宿を取り、ついでに依頼主たちから詳細な話を聞く。

 件のタマミツネは、数日前から水の豊かなこの土地に現れて、山の麓に生えている稲を荒らしたり、滝壺の猟場に仕掛けた網を壊したり、氾濫対策に築いた堤防を破壊したりと、好き放題を尽くしているらしい。

 

「何にせよ、あいつは体がでかいものだからさぁ……奴にゃ悪気はないのかもしれないが、移動しただけで辺りは水浸しだし、穀物庫や櫓は壊されるし、被害甚大よ。どうにかならんもんかねぇ」

「まぁねえ……うちの旦那がちょっくら懲らしめようとしようもんなら、岩場まで吹き飛んでえらいことになったわ。最近は、どうもこっちに来る頻度が増えたよねぇ」

「ふむ? ということは、以前にも出たことがあるということか?」

 

 三日月の質問に、顔を見合わせた村人衆は、宿の一階にある囲炉裏端でこくりと頷いた。最初こそ三日月の見慣れぬ衣装を物珍しがっていたが、その物腰の柔らかさと色男ぶりに心を開いてくれたようで、すぐさま色々な事を教えてくれる。

 

「そうよ。多分あいつと同じ奴だと思うんだけど……まるで幽霊みたいよねえ」

「幽霊?」

 

 その手の話が実は苦手な矢羽が、びくっと体を震わせる。

 モンスターならば殺せばいい。だが、幽霊なら話は別だ。武器の通用しない相手にどう手を出せばいいのかと恐々としている間にも、村人達は好き勝手話していた。

 

「おいら達、前にも何回か腕の立つハンターさんに討伐を依頼した事があるんだが、どういうわけか、みんな口を揃えて『殺せねえ』って言うんだよ。確かに討伐したはずなのに、素材を剥ぎ取ろうとするや否や、煙みたいに消えちまうんだと。罠にも掛からねえ」

「ハンターさん達が戻って来てから村は静かになるから、本当に追い払ってくれてるとは思うんだけどねぇ。けど、しばらく間が空くとどこからともなくまた現れる。その度にうちらは色んな人に討伐を依頼してて、その繰り返しなのよ」

「まるでイタチごっこだなぁ」

 

 朗らかに茶を啜りながら言った三日月に、村人がまさしくと言った調子で頷いている。

 

「青い顔して戻ってくるハンターさん達が、揃いも揃って嘘ついてるとも思えねえしなぁ。事実、俺らだって被害を受けてるわけだし。ちょいと不気味な依頼ではあるが、引き受けてもらえるかね?」

 

 ここまで来ておきながら今更嫌だとも言えず、矢羽はせいぜい内心の臆病さを悟られぬように頷いてみせるのが、精一杯であった。

 

***

 

「しかし参ったな。そんな曰く付きのタマミツネだったとは……」

「なに。“剥ぎ取ろうとしたら消えた”ということは、正体が何であれ、そこまでは普段と同じ狩り方で対処ができるということであろう。俺らは普段通りに振る舞えば良いだけだ」

「そうは言っても! その正体って奴が問題なんだろ!?」

 

 移動と聞き込み調査に思いの外時間が掛かってしまい、矢羽と三日月がいざ狩場に出た時には、すっかり日が落ちて月が昇っていた。

 ばしゃばしゃと、水をかき分けて川を渡っていく足音が、いやに大きく響く。両岸に生えた木々も黒々とその影を落とし、ざわざわと風に葉を鳴らしながら、静まり返った夜の森に不気味な雰囲気を演出していた。

 本当はこんな時間に狩りになど来たくなかったが、数日分の宿泊申請しかギルドにしていない事を思えば、おちおち時間を無駄にもしていられない。

 

 不意に、三日月と矢羽は川の中間地点で動きを止めた。

 川辺には小獣の姿もなく、人っこ一人いない丸石の川岸には、薄野原がその影を落とすばかり。今夜は三日月ゆえに光源はやや心許ないが、天気は良く見通しがいい。

 

「ふむ。近いようだな」

「ああ」

 

 獲物の姿はないが、あの独特のピリつくような殺気が、先程からじっとりと体に纏わりついている。どこからともなく、唸り声が微かに聞こえてくるようだ。

 気配を探りながら周囲を警戒し、少し川幅が狭くなったところで、丁度モンスターが隠れるのに良さそうな茂みを、矢羽が警戒しながら岸に上がろうとした時だった。

 

「……!!!」

 

 不意に激しく近づいてくる水音に勘づいて、矢羽は反射的に後方へ跳んだ。続いて危なげなく三日月が回避したその場には、川底に穴が空きそうなほどの衝撃があり、巨大な体躯と鱗がぬめぬめと燃えるように、水飛沫の中で赤く光っている。

 ギロリと、翡翠にも似た冷たく恐ろしい瞳が、縦に長い顔の中で矢羽を射抜いた。

 

「……出やがったな」

 

 即座に抜刀して、旋律を奏でる。矢羽の武器は狩猟笛。一律で笛と呼ばれているが、その形状は弦楽器のようなものから琴のようなものまで様々だ。巨大な楽器でモンスターの体を殴りつけ、尚且つ楽器の旋律で自己と味方の能力強化を行うという、武具としてはかなり使用法が珍しい部類に入る。

 

「それにしても、こいつ……!」

 

 あまりの泳ぎの速さに、三日月と連携を取る暇もない。剣の音からして上手く立ち回ってはいるようだが、練炭が燃え盛るようなどす黒い赤の鱗に包まれた、八岐大蛇(やまたのおろち)さながらの巨躯に遮られ、相手の動きはほとんど見えなかった。これは、複数人で狩りに来ても苦労したはずだ。

 引き絞られた矢のように、身を折り曲げてタマミツネが矢羽に標的を変え、襲いかかって来る。とっさに翔蟲を前方へ放ち、突進してくる相手とすれ違う形で、笛を振り回しながら首筋に打撃を加えた。どすっ、という鈍い音に、やっとタマミツネの悲鳴が上がる。

 

「矢羽。大事ないか」

「俺は大丈夫だ!」

 

 肩を押さえながら、矢羽はその身丈ほどもある笛を抱えて体勢を立て直した。すれ違いざまに幾らか負傷するものの、こちらも蟲の糸に引かれてそれなりの速度で移動しているので、突っ込んでくるモンスターの攻撃をいなしながら、一撃を加えることができる。真正面から突っ込むのは、矢羽の十八番とも言えるやり方だ。

 

「ちっ……小賢しいな」

 

 ここに来て初めて放たれた激しい咆哮に、矢羽は思わず耳を塞ぎながら、川中で大口を開けるタマミツネに呟いていた。

 川幅が狭まってくる箇所まで襲って来なかったのは、ハンターを岸に追い立てるため。茂みや木々が豊富で、モンスターが身を隠すのに最適だと思われる川岸をハンターが警戒している間に、逃げ場を作らぬよう敢えて水の中を突っ切って、川のど真ん中から襲いに掛かる。

 どう考えても、過去の経験からハンターの動きを分析し、読み切って不意を突いているとしか思えない行動だった。

 おまけに、一度己に敵意を向けるハンターを認識した途端、本能的にすぐさま咆哮を上げてくるような大概のモンスターとは違い、ここまで鳴き声一つ上げず、徹頭徹尾闇夜に姿を隠すことに意識を向けていた。

 狡猾だ。その上、その体躯からは信じられないくらいに動きが速い。足腰の筋肉も相当発達しているのだろう。

 油断ならない気持ちで、矢羽は鬼火のような紫炎を上げる相棒を——禍ツ琵琶ノ幽鬼ウラザを構えた。

 

「三日月! 頭の方は俺が引き受ける! あんたは後ろを!」

「あいわかった」

 

 一切の迷いもなく、三日月が走り出す。後ろに回り込もうとする三日月に視線を投げるタマミツネから、矢羽は気を逸らすため、思いっきり肺の中の息を笛に吹き込んだ。

 

「おらおら! お前はこっちだ!」

 

 おどろおどろしい戦慄が流れ、体中に力が漲るのを感じた。

 吹き込んだ息と同時に、振り回した時の反動でも、楽器の胴体に入り込んだ風がその弦を打ち鳴らす。どすっ、と頭蓋を叩き割りそうな衝撃で振り下ろされる狩猟笛を、矢羽はまるで舞踏の供にするようにして、軽々と振り回しながら、ゴンゴンとタマミツネの肢体にぶつけ続けた。

 怒ったタマミツネが、お得意の泡攻撃を次々口から吐き出して浴びせかけてくるが、矢羽は意に介さない。こちらが音で囮になっている間、毛深い尻尾の部位はガラ空きなのだ。

 その隙に、背後から高く跳び上がった三日月が、尾を切り付けようと両腕を振り上げるが、まるでそれをわかっていたかのように、タマミツネはギロリと背後を睨み、振り返りもせずに巨大な尻尾をびしゃんと叩き付けた。岩に当たって砕ける波のような衝撃波を受けた三日月は、もろに背後に吹っ飛ばされたが、水と泡に塗れた体を眺めながら、何事もなかったかのように立ち上がって笑い出す。

 

「はっはっは。読まれてしまったか」

「ギャアアアア!」

「おっと。笑っている場合ではないな」

 

 潤滑液で生成される泡を巧みに利用するタマミツネは、とにかく水の中では移動が速い。四本の脚とくねらせた胴体を使い、吠え立てながら川中を蛇のように泳いで突進してくるタマミツネに、三日月は微笑を浮かべたまま対峙すると、身を翻して叩きつけてくる紫毛の尾を、最低限の動きでひらりと避けた。

 そのまま全身でとぐろを巻いて回転し、泡と水を激しく巻き起こそうとするタマミツネの胴体を、三日月はとっとっと軽く蹴りながら宙へ舞い上がる。ひらりと宙返りした三日月は、瞬間、彼を見失って動きを鈍らせたタマミツネの脳天に、力強い一閃を浴びせかけながら着地した。

 どう、と倒れ伏して、突然の衝撃に目を回しているタマミツネを、矢羽は好機を得たりとばかりに殴りつける。

 

「手加減はできねぇからな?」

 

 ぽそりと呟いて、狩猟笛を勇ましく肩に担ぎ上げると、矢羽は笛の先端に取り付けたクナイを、タマミツネの左耳へ狂いなく叩き付けて打ち込んだ。

 そのまま、クナイから伸びる糸で繋がった琵琶形の笛を、ぶおんと振り回して一回転させ、手元に引き寄せる。琵琶の弦を手で掻き鳴らせば、その体は怪しく煌めき、骨を砕き割るほどの強烈な音撃と旋律が、糸を通してタマミツネの全身に響き渡った。聴覚の優れているタマミツネに、これはかなり効くはずだ。

 どんな形状をしていたとしても、狩猟笛とは「笛」である。故に、息を吹き込むのではなく直接弦に触れて奏でるなど、笛使いとしては邪道だと父親には散々言われたものだが、武の道に厳しいはずの矢羽の祖父だけは、何故か矢羽の我流に対して何も文句を言わなかった。

 『やり方や武具は如何様であってもいい。ただ、どんな道であれ、自分が究めると決めたものは究めなさい。そして、正義と誠のためにその力を使え』と。

 この指先が弦に触れ、初めて己で討伐した怨虎竜の調べを奏でる度、矢羽は頑固者だった祖父の教えを思い出すのだ。

 

「どわっ⁉︎」

 

 しかし、タマミツネもやられっぱなしではない。

 眩暈から目覚めてすぐ身を起こすと、己の耳を傷付けたクナイの糸を容赦なく引き千切り、牙を剥いて後ずさるなり、水鉄砲をこちらに向けて噴射した。

 並の防具では気絶もあわやといった激しい水流に、矢羽が受け身を取って吹っ飛ばされている間に、タマミツネは身を翻して川の上流へと向かって行ったのだった。

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