マルメロ家だいすき日記2022〜2023   作:大野 紫咲

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ついにタマミツネを討伐したものの、煙のように消えてしまった骸の謎は残る。
それを解明すべく、三日月と共に山中にある古い神社へと向かった矢羽。
そこで見たものとは……。

青雨のお話はまだ続きますが、今回の短編としては最終話です!
三話目だけちょっぴりホラー風味!←


幽霊タマミツネの怪《第三話》

***

 

「あった……本当に祠だ」

 

 あれから、麓の村に戻ってこの付近の祠や廟について尋ねてみた。

 依頼されていたタマミツネの狩猟に関しては、亡骸すら残らなかったために何とも歯切れの悪い報告をせざるを得なかったものの、それでも追い払ったというそれだけで、幸い村人たちは大いに助かったらしく喜んでくれた。

 祠に関しては、伝承や伝説に詳しい者が村におらず、情報を得るのに多少難儀したが、ある家にいた長老格の者がうまく捕まり、その場で矢羽達に話を聞かせてくれた。いわく、村を流れる川の水源に当たる部分に、古くから神社があったのだという。

 由緒のある場所のはずだったが、村の居住区が次第に山中から麓へと移り変わり、なおかつその社自体が滝上のかなり険しい場所にあるため、だんだんと人が寄り付かなくなったということだった。今は管理する者もおらず、荒れ放題らしい。

 

 そこで矢羽と三日月は、タマミツネと最後に闘った滝のある場所へ赴くと、麓から翔蟲を駆使して崖を登り、険しい山道を歩いて水源を目指した。たしかに過酷な道で、ここを日常的に通るのはモンスターと修行者くらいだろうというくらい荒れている。恐らくは登山道があったであろう場所は、既にすっかりぼうぼうと生えた草で埋まり、人が作った道も、獣道すら影も形もない。

 それがかえって、矢羽には不気味だった。人間はともかく、モンスターすらもこのあたりには寄りつかないということなのだろうか。登れば登るほど、空気は澄んでいるのに、どこか寒々とした感覚が身を這い上ってくる。

 

 途中で枝を切って作った杖を頼りに、矢羽と三日月が水流の頂点まで登り切ると、不意に目の前が開けた。岩を這う苔と蔦に周囲を囲まれ、こんこんと湧く翠色の水面を湛えた、水源地が現れる。かさりと生い茂る草を掻き分け、一礼を拝すると、三日月は岩の間から落ちて小川を形成する清水の流れに、両手を浸した。

 

「一口頂こう。源流の水は一段と澄んでいるからなぁ。旅に疲れた体には沁みる」

「ああ。美味いな」

 

 元々、この麓の村に住む住民たちは、農業用水や生活用水や飲用にと、この川が齎す恩恵を大いに生かして生活してきた。だからこそ、悪さをしに現れるタマミツネには手を焼いていたのだろう。下流で飲むのと遜色ない味わいだが、確かにここまで登ってくる間に乾き切った喉から腹に滑り落ちる水の冷たさは、矢羽には格段に快く感じられた。

 

「ん……?」

 

 口元を拭った矢羽は、ふと顔を上げ、すぐ傍でかさかさと揺れる蔦の葉に目をやった。

 水源のすぐ横あたり、木々に埋没するような塊が一つ、不自然に盛り上がっている。大きな岩か何かと思ったが、よく目を凝らしてみれば、朽ちたそれは人の手で造られた建物のようだった。

 

「まさか、神社ってこれか? 祀られていたなんて思えないほどボロボロだぞ」

「そのようだなあ」

 

 切なげに目を細めた三日月は、立ち上がって草に覆われた扉をひと撫でする。

 ここまで来る間、鳥居すら見かけなかったのだ。既に風化して、朽ち果ててしまったのかもしれない。回り込んで見れば、この建物も既に屋根や側面は半壊し、扉の部分だけがハリボテのように奇跡的に残っている。

 

「まったく、罰当たりな……」

 

 そう呟いて矢羽が三日月の隣に立ち、同じように傾いだ扉に触れた瞬間。

 周囲の空気が変わった。

 

「んなっ……!?」

 

 清浄な土と水の匂いは消え、変わりに湿った木材とカビの香りが鼻をつく。瞬きを数度とせぬ間に、三日月と矢羽はえも言われぬ空間に迷い込んでいた。目の前には、朽ちたまま寂しく風に揺れるしめ縄飾りと賽銭箱。入った覚えもないのに、朽ちているはずの社の境内にいた。ガァガァと烏が鳴き喚き、赤色と化した空に呆然としながら、矢羽が狼狽えて武器を握りしめる。

 

「こ、これは……? 俺たち、いつの間に」

「ふむ。ここの社の主は、よほど俺たちをここに招きたがっていたようだなぁ」

 

 奇妙な現象にも相変わらず動じることなく、三日月はひとつ顎を撫で、ゆっくりと拝殿から本殿の方へと回り込んだ。一歩進むごとに、足元に纏わりつく空気が重苦しくなり、矢羽は生唾を飲んだ。いる(・・)。この先に、ハンターや人間の力ではどうにもならない何か(・・)が。そのくらいは、霊感など皆無の矢羽にも、野生の勘で何となくはわかるのだ。

 

『俺に……近づくな。ここから、立ち去れ』

 

 果ては、不気味な声までが地を這うように響き渡り、矢羽はひっと悲鳴を上げた。

 

『失せろ……失せろ!!!』

「お……おい。なんかめっちゃ怒られてるみたいだぞ。大丈夫なのか? 三日月」

「なに。案ずることはない。俺は、こやつを迎えに(・・・)ここまでやって来たのだからな」

 

 意味深な呟きと、余裕めいた慈悲深い微笑みに、矢羽は自らの置かれた状況も忘れて三日月の表情に魅入った。

 その時。本殿の扉がガタガタと鳴り、怪しげな黒い靄が社を包み込む。その感覚に、矢羽は覚えがあった。

 

(この煙……あの時のタマミツネの!?)

 

 斬り込んだ時、微かにその体から上がった煙。それの何十倍も強力そうな靄が、扉の前で力を溜めるようにぐるぐる渦巻いている。当たれば即座に気絶してしまいそうだ。そこへ向かって、三日月は袖の下から何かを摘んで取り出すと、軽やかに掛け声を上げながら放った。

 

「はいっ」

 

 黄金の矢のような——三日月が空から舞い降りる時にも似たその螺旋状の煌めきは、花びらのように矢羽には見えた。筋を描いたその光が一直線に社に吸い込まれた途端、衝撃波を放ちながら両開きに本殿の扉が開く。バンッという大きな音と共に、一陣の風が吹き抜け、邪悪な霧を瞬く間に蹴散らして霧消させた。真正面から吹きつけた風の大きさに思わず目を閉じてから、矢羽は上げていた腕を下ろし、幾らか空気の澱みが消えた周囲を見渡す。

 

「こ……れは……?」

「主に頂いた札に、俺の神気を込めて御霊(みたま)を封じた。これで、奴もしばらくは身動きが取れぬだろう」

 

 三日月が剣以外のもので化け物を退けた事にも唖然としてしまったが、この本殿の中に封じられているものとは、一体何なのか。興味と恐ろしさの両方に駆られながら、矢羽は三日月の後ろについて階段を上がり、そろりと扉の中を覗き込んだ。

 四方を壁に囲まれた本殿はしんと静まり返っており、蝋燭の明かりもない。ただ、ところどころ朽ちた木の天井の隙間から、月の明かりが揺れるように入り込んでくる。

 その中を歩み、中央の壁際にある祀り上げられた衣装棚のようなものを、矢羽は三日月と共に見上げた。観音開きの扉の中央に、金色の桜のような花びらが、幾つか貼られている。これが、三日月の先ほど言っていた「札」というものらしい。

 その効力と邪気の薄さに、矢羽がそっと胸を撫で下ろすや否や。どんどんどんっ! と激しく扉を叩く音と激しい鈴の音に、矢羽は再び心臓を縮み上がらせる羽目になった。木の箱を壊しそうな勢いで、中で何かが暴れ回っている。

 その激しさに、流石の三日月でさえ一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐにあの朗らかな笑みを取り戻して、すらりと腰の刀を抜いた。

 

「はっはっは。こいつは、なかなかに威勢が良いなぁ。矢羽。少し下がっていろ」

「え、ええ……いいけどよ、気をつけろよ」

 

 この状況下に笑える三日月の胆力が一番恐ろしいかもしれない、と思いながら、矢羽はじりじりと後ずさる。

 三日月が刀身を構えた瞬間、合図を受けたかのように、はらりと扉を封じていた花びらが外れた。鉄砲玉のようにその中から飛び出してくる黒い影を、三日月はばさりと真っ二つに切る。

 つんざくような生き物の悲鳴が響き渡り、矢羽が思わず耳を塞いだところで、三日月は袖の中からひらりと別な札を数枚出すと、それを空に放ち、風を巻き起こすかのように剣を一閃凪いだ。

 ひゅうっと空を切る音がして、意思を持ったような動きで、札が衣装棚の中へ次々吸い込まれていく。やがて、激しく鳴っていた箱の動きは止まり、矢羽ははっと息を吸い込んだ瞬間に、固唾を飲んで見守っていた自分の目を上げた。

 

「……」

 

 そこは元通りの、寂れた水源の敷地内だった。頭上には、途切れた雲と穏やかな三日月の姿がある。

 深呼吸して周囲を見渡せば、恐ろしげな空間は消え失せ、いつの間にやら朽ちた扉の内側の、既に草がぼうぼうに生えた社の跡地に立っていた矢羽たちの目の前には、扉の壊れた祠があった。縦長に大きく、完全に風化してはいるが、先ほど社の幻の中で見た、あの衣装棚と同じものだ。

 

「これは……」

「矢羽。これが、俺たちの狩っていたタマミツネの正体だ」

 

 ちりん、からん、と寂しげな音がして、壊れた扉から三日月の腕の中に、何かが倒れ込んでくる。封印の札が貼られたそれは、驚くべきことに、矢羽にも見覚えのある物体だった。

 

「これは、コトノハナクテ……? ただの狩猟笛が、どうしてこんなところに」

 

 狐鈴コトノハナクテ。

 和傘のような形の芯に、三段の鈴を取り付けて作られた狩猟笛の一種だ。タマミツネの鱗や爪、体毛などの素材を元に鍛えられている。

 この狩猟笛は随分とボロボロになっていたが、その形からコトノハナクテであることは明らかだった。傘の色は禿げ、柄の皮には水が染み入って変色し、経年の劣化でお世辞にも綺麗なものとは言えない。傘と鈴とを繋ぐ紐は今にもごとりと音を立てて千切れそうなほど古くなっているし、装飾品の傷みも酷いものだったが、それでも尚形を保っているのは、これが丁寧に作られた武器だからだろう。

 よく見ると、鈴の形が矢羽の見知ったコトノハナクテとはいささか異なっていた。異国情緒を感じるそれは、矢羽と同じように、もしかすると別の世界から渡ってきたものなのかもしれない。

 固唾を飲む矢羽の側で、三日月はどこか切なそうに目を細めながら、その得体の知れない笛をそっと撫でた。仄かな月明かりの中で静かに鈴が鳴るが、禍々しい気配は感じられない。今やすっかり大人しくなったその笛を見つめながら、矢羽が躊躇いがちに口を開く。

 

「さっき神社の幻影の中で聞こえた『失せろ』という声は、もしかすると……」

「こやつの声であろうなぁ」

「俺たちの討伐しようとしていたタマミツネは、この狩猟笛なのか?」

「うむ。この笛の元となったタマミツネ……いわば、この武具の付喪神だな。俺と同じように」

 

 そう言って微笑む三日月に、矢羽は思わずはっとして背筋を伸ばす。

 そよそよと草を撫でる風に煽られ、三日月の群青の狩衣の袖が短冊のように揺れた。生命力溢れる荒れた草地を背後に、笑みを浮かべる神々しい佇まいを見つめ、矢羽は問いかける。

 

「三日月宗近……名前を聞いた時から、もしやと思っていた。俺はこの世界に転生して長いが、前世の日本での記憶はうっすらとある。あんたは、俺が前世で若かりし頃にも、その名を耳にしたことがあるくらいの名刀だった。

……どうりで人間離れしているはずだ。あんたは、付喪神だったんだな」

「はっは。何、刀の中でも、とりわけ長い年月を過ごしてきただけのこと。俺は、ただのじじいさ」

 

 とても信じられない話だが、今の矢羽はそれをすんなりと受け入れられてしまうほどに、三日月の並外れた体術や摩訶不思議な力を何度も目にしてしまっている。

 朗らかに肩を反らして笑う三日月の前で、矢羽は小さく肩をすくめた。

 

「それで? そんな付喪神様が、この世界に何の用なんだ。まさか、うちの望寧(もね)を可愛がりに来るのが当初の目的だったなんてことはねぇだろう?」

「はっはっは、孫娘のようで何とも和んだがな。それはさておき、俺があの社で言ったことを覚えているか」

「確か……迎えに来た、と」

「その通りだ。俺の今の主は、少々変わったお人でな。この札には、俺たち刀剣の神気と融合させることで、付喪神の御霊を一時的に封じる力がある。俺は主から、この札を使って荒ぶる御霊を鎮め、こちらの本丸へ連れて来いと仰せつかった。

まあ、本体(・・)がどこにあるのかを突き止めるには手間取ってしまった故、お前の力を借りたがな」

 

 説明されても何とも不思議なことばかりで、矢羽は首を傾げたが、ひとまずタマミツネの一件は、これで本当に片がついたらしい。

 

「まるで、この笛の付喪神が最初から暴走することがわかっていたような言い草だな。あんたの主とは一体」

「何、先ほども言ったであろう、少し不思議なお方なのだ。歴史を守るため、俺たちを束ねて戦っている。……が、そうとも思えぬほど、普段はおっとりと、可愛らしい方でなぁ。心を痛めた者や、助けを求める者をついつい放っておけなくなってしまう。それは、相手が人間であれ付喪神であれ、同じなのだろう。いやはや、何とも困ったお方よ」

 

 そう語る三日月は、これ以上ないほど愛おしげに目元を緩ませ、ちっとも困っていなさそうな口ぶりで、手元の狩猟笛を抱え直した。その仕草だけで、三日月の言う主への忠愛ぶりが窺えるというものだ。

 鈍く光を放つ古い鈴に、三日月は優しく撫でるように触れながら囁きかけた。その瞳に、どことなく悲しげな色が滲む。

 

「おぬしは『失せろ』と言っていたが……それはおぬしの悲鳴のようなものであろう? 泡狐竜よ」

 

 是とも否とも返さずに、ただ鈴が風に鳴り、独特の音色を奏でる。あの黒い邪のようなものを三日月が切り捨てる際、響き渡った恐ろしげな鳴き声を思い出しながら、矢羽はその様をじっと見つめていた。

 

***

 

 下山するには日が暮れすぎてしまったので、その日はそこで簡易的なテントを張り、野宿の支度をすることになった。念の為に笛を背負ったままだが、周辺の草を刈り、焚き火用の枝を集める三日月の所作は軽やかだ。節の多い枝を拾い上げながら、三日月はのんびりと矢羽に説明してくれた。

 

「おそらくは、この笛が神社の御神体であったはずだ。鈴は神楽舞にも使われよう? 誰かが、泡狐竜を龍神に見立てて奉納したのであろうなぁ」

「ああ、なるほど……川沿いの村にとって、治水は死活問題だからな。水域に棲むタマミツネそのものを、水神として祀り上げる習慣があったとしても不思議はない。それでご利益を忘れちまって今に至る……って感じか」

 

 勝手に祀り上げておきながら祠の改修や掃除もせず、放置され忘れ去られていれば、それは怨霊化するほど恨みも買うはずだ。

 過去の世代の話であれば、今住んでいる住民たちに直接の罪はないのかもしれないが、昔は感謝されていた存在が、お役が済んだ途端、今や疎ましがられ追い払われる対象になるとは。矢羽はやや呆れた心持ちで、負の遺産と化してしまったコトノハナクテをするりと褐色の掌で撫でた。

 

「だが、あの黒甲冑の者達は? 村の者と何か関係があるのか?」

「いや……おぬしらの歴史には関わりのないことゆえ、詳しくは話せんが、あやつらは歴史に干渉するために、このような怨念を利用しようとする者達だ。この世界に棲む聡い鳥獣の、積もりに積もった負の感情は、奴らにとって利となり武器となる。それを未然に防ぐために、俺は主からこの世界に派遣された」

「なるほどな……付喪神を操っていたのは、幽霊じゃなくあいつらの仕業だったってわけか。だとしたら、あのタマミツネは暴走を始める前は、大人しい個体だったのかもしんねぇな。狩りの時の言動から、何となく想像がつく」

 

 目を細めていた三日月は、ため息をついて頷いてから、地面の枝を拾い続ける。

 

「村の民達が、『何度討伐を依頼しても、いつの間にか川まで戻って来る』『どんな狩人にも倒すことができない』と言っていただろう」

「あれは、本体じゃなくて実体化した付喪神(モンスター)を叩いていたから……だな? 何度討伐したとしても、コトノハナクテという狩猟笛が存在している限り、怨霊は再び現れる。元々生き物として実体が存在するわけではないから、骸も残らなかった」

「そういうことだ。やはりおぬしは聡いなぁ」

 

 矢羽を見て嬉しそうに微笑んだ三日月は、抱えた枝をキャンプの前に持ってくる。藻草で火種を起こした矢羽が、枯れ草から枝の山に点火すると、闇夜を明るく照らすような炎が燃え上がった。

 舐めるような赤色に頬を照らされる中、焚き火の前に座って手持ちの酒を三日月と酌み交わし、一口煽りながら矢羽が呟く。

 

「しかし……“一時的に”って事は、札の力で抑え込んでいるだけなんだろう、今は。効果が切れれば、またさっきみたいに暴れ出すんじゃねぇのか。大丈夫なのか、あんたの本丸とやらは」

「ふむ……本体の損傷は、御霊の精神や肉体の状態に直接作用する。修理できれば、多少は抑制もしやすいかと思うのだが」

「とは言っても、俺の街じゃ、ここまで錆び付いた笛を修理できるほどの腕前の鍛冶屋は見たことがないぞ。ここの近場にも、一軒とあるかどうか」

「であれば、俺の本丸に持ち帰って修理するとしよう。なに、心配ない、腕の立つ鍛冶屋の伝手はある。そのために、必要な素材を集めてくれる狩人の伝手もな」

 

 意外なことを言い出した三日月に、矢羽は目を丸くした。

 初めから、ハンターやこの世界の武具のことを知っていたのだろうか。けれど、おそらくはそれを追求したところで深くは語らないだろう、と踏んだ矢羽は、ただこう言うに止めておいた。

 

「そうか。タマミツネは、一頭討伐するにも骨が折れる。怪我をしないようにと、そのハンターにはよろしく伝えておいてくれ」

「是非とも伝えよう。おぬしのような有能な狩人に案じてもらえたとなれば、さぞかし喜ぶに違いない」

 

 何故かそう断言した三日月の顔が、いやに嬉しそうなのは気のせいだろうか、と矢羽は思いながら、今や旧友のように親睦を深めた三日月の盃へと、自らの盃の口をぶつけたのだった。

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