スペランカーな天才バッター   作:RUKA1235

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プロローグ

「……だめだーっ!」

 

「……どんな寝言だ。起きろ、涼太」

 

「……おはようございます。クリス先輩」

 

青道高校野球部の2年生、鹿野涼太(しかの りょうた)は、同室の滝川・クリス・優に毎朝のように起こされていた。

 

「……すみません。毎朝起こしてもらって……」

 

「別に構わないさ。お前は起こせばすぐに起きるからな」

 

涼太はどうしても朝が苦手で、一人では起きられなかった。そんな彼を、クリスは毎朝当たり前のように起こしてくれていた。

 

「今日でしたよね? 新入生が来るの」

 

朝食に向かう途中、涼太が尋ねる。

 

「ああ。夕方頃に来るはずだ」

 

「どんな奴らが来るんでしょうね?」

 

「……まあ、初日から“先輩、朝起きれないんで起こしてください”なんて言うやつはいないだろうな」

 

「ですよね……」

 

クリスの言葉に、涼太は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

夕方になり、新入生が寮に入ってくる時間帯になった。

 

コンコンコン――

 

ガチャ。

 

「新入生の金丸信二です! こ、これからお世話になります!」

 

元気よく、しかし少し緊張した様子で金丸が部屋に入ってきた。

 

「俺は2年の鹿野涼太。今はレフトを守ってる。気軽に下の名前で呼んで。で、あそこにいるのが3年のクリス先輩。あんまり喋らないけど、すごく良い人だから」

 

涼太が紹介すると、クリスはちらりと金丸を見て短く返す。

 

「……よろしくな」

 

「基本的にあんな感じだから、気にしなくていいよ。それより荷物重いでしょ? こっちおいで」

 

その後、涼太と金丸はゲームをしながら、少しずつ会話を交わしていた。

 

「金丸ってどこのシニア出身?」

 

「松方シニアです」

 

「へえ、確か全国ベスト4くらいまで行ってたよね?」

 

「そうです。あと、同じチームでエースやってたやつも、ここに来てるんですよ」

 

「そっかー。そりゃ期待だね」

 

「涼太さんは浪速シニアですよね!」

 

「知ってるの?」

 

「はい!ただでさえ浪速シニアは有名だしその中でも中心打者の涼太さんはもちろん知ってますよ!」

 

「そうなんだ」

 

(まぁ確かに中学の時に負けた記憶はあんまり無いんだけど下の子達も知ってるんだ…良く考えれば知ってて当然なんけど)

 

「そういえば涼太さんは関西出身なのに標準語で喋るんですね」

 

「出ないようにしてるんだよね 変に目立つのも嫌だからね」

 

 

翌朝。

 

「あー……眠てー……」

 

涼太は、先にグラウンドに向かったクリスと金丸とは別に、途中で2年のショート・倉持と合流していた。

 

2人で新入生の話をしていると、倉持は自室の新入生が夜遅くまでゲームをして寝坊したことを話し、2人で大笑いしていた。

 

そして、ふと倉持が真剣な顔で口を開く。

 

「足の状態はどうなんだよ?」

 

去年の夏の都大会準決勝。右中間を破るヒットを打ち、二塁を狙う途中で涼太は右足のハムストリングを痛め、途中交代となった。

 

診断結果は軽度の肉離れ。2週間弱で完治したが、それ以降、度々再発しており、完全に癖になっていた。

 

「まぁ、ぼちぼち。春の都大会はスタメンは無理かなってところ」

 

「そうか。昨日見てた感じ、打つのは平気そうだったけどな」

 

「打つだけならね。全力疾走はちょっとヤバい」

 

そんな話をしているうちに、2人はグラウンドへと到着した。

 

しばらくして監督の片岡鉄心がやってきて、ミーティングが始まる。

 

新入生たちが次々に自己紹介していく中――

 

突然、どこか聞き覚えのある声が響いた。

 

「あーっ! こいつ遅刻したくせに列に紛れ込もうとしてるぞー!」

 

その声に一同が視線を向けると、バカそうな奴が中腰の走るフォームで止まっていた。

 

「ヒャハハハ、あいつバカ。おもしれー!」

 

倉持が爆笑する。

 

涼太も笑いながら、倉持に尋ねた。

 

「あいつ、倉持の同室の奴?」

 

「そうだぜ。名前は沢村って言うんだ」

 

そんな話をしていると、監督が沢村に「練習が終わるまで走ってろ」と命じる。

 

涼太たちが笑いながらその様子を見ていると、さらに監督が口を開いた。

 

「それからこの男と同室の上級生、どさくさに紛れてそこに並んでいる大バカ者……」

 

その言葉に、倉持の隣にいた3年の増子、そしていつの間にか紛れ込んでいたキャッチャーの御幸がギクリとする。

 

「お前らもだ」

 

監督の一言に、ショックを受ける3人。その姿を見て、涼太は腹を抱えて大爆笑していた。

 

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