7月23日
3回戦
明川学園 vS青道高校
青道ナインがグラウンドに入ると大きな歓声が上がった。
一方の明川学園側のスタンドは静かだった。
整列の声が掛かる前、ベンチ前で涼太と御幸は話していた
「それにしても暑いな…… 朝でこの気温って……」
「けど、降谷の事を考えたら朝で良かったよ」
降谷の不安材料としてはスタミナ不足、北海道出身の降谷が初めて経験する東京の夏。
ここまでコールド勝ちだが、2試合先発している降谷の体力は消耗していた。
「これならいつも通り投げられんだろ!」
御幸が隣にいた降谷にそう言うと、
「……今日は最後まで投げるつもりですから」
いつも通りにそう答えた。
「整列!」
「「いくぞぉぉ!!」」
「「「おおお!!」」」
審判の掛け声で両チームホームベース付近に近付いて行った。
青道のスタメンは
1番 ショート倉持
2番 セカンド 小湊亮
3番センター 伊佐敷
4番 ファースト 結城
5番 サード 増子
6番 キャッチャー 御幸
7番 ライト 白州
8番 レフト 坂井
9番 ピッチャー 降谷
2回戦同様に涼太はスタメンから外れて、代わりに入ったのは3年の坂井だ。
『1回の表 明川学園の攻撃は 1番センター 二宮君』
左バッターボックスに二宮が入ると、御幸は気になる部分があった。
二宮がバットを短く持っていないのだ。
(前の試合を見てるばすなのに?)
御幸は初球の見送り方で様子を見ることにして、降谷が好きな高めのストレートを要求した。
ドン!
降谷のストレートが唸りを上げて、御幸のキャッチャーミットに収まった。
そのボールにバッターは仰け反り、観客は大いに盛り上がっていた。
そして二宮は2球目を待っているが、バットは長く持ったままだった。
降谷が投げた2球目、3球目、4球目はどれも高めにはずれて、二宮はバットを振らずに四球で出塁した。
2番バッターにも3ボール1ストライクとなっていた。
そこで御幸はスプリットのサインを出した。
そのサインに戸惑いながら降谷が投げると、ホームベースの後ろでワンバウンドをして四球となった。
3番バッターにも初球スプリットを要求した。
降谷が驚いていると、
(いいからサイン通り投げろ)
御幸の脳内には室内練習場で受けていた時の降谷のスプリットを思い出していた。
降谷のスプリットは落ち幅にムラがあり、キャッチャーとしては取りにくいボールだが、降谷はスプリットを投げる時は力が抜けて腕が振れていた。
それを思い出し、投げさせるとストライクゾーンにボールが行き、1ストライク
2球目はど真ん中にストレートを投げさせて、追い込んだ。
そして3球目もストレートを投げさせると、バッター見逃し三振となった。
明川学園はコントロールに不安がある降谷に対して、バット振る気は無く打席に入っていた。
そのまま4番にも初球はスプリットでストライクを取り、最後はストレートで見逃し三振となった。
次に打席に入るのは、
『5番ピッチャー 楊君』
楊はバッターボックスに入ると、
「あえて変化球を多く投げせて、投手の力みを取ったか。投手が無能だとキャッチャーは大変だな」
御幸に対してそう言った。
しかし御幸は
「ははっ 別に? バット降ってこないチームなんて怖くねぇし」
そう言う御幸を見て楊は、青道バッテリーに危険を感じ、本気で打つ気で構えた。
楊はここまでチームのほとんどの得点に絡んできている。
明川学園の中では最も警戒しないといけない打者だ。
降谷が投げる1球目
ドン!
楊は今までチームで初めてスイングした。
しかも高めのボール球をだ。
「ここは警戒しないとだめだぞ……」
ベンチで見ていた涼太も初球から降谷のボールにタイミングを合わせて来ている、楊の危険性を感じていた。
2球目、楊の雰囲気に力みが出て、高めに外れる
3球目 御幸はスプリットを要求した。
まだ落ち幅にムラがあり、決め球では使えない。
なのでこの球で打ち気を逸らして、ストレートで勝負を決めるつもりだ。
そして降谷が投げた3球目、ボールは甘いゾーンに、
(よし! ここから落ちろ!)
御幸はそう思っていたが、ボールは落ちない。
そのボールを楊は逃さずに、レフトに打ち返した
「レフト!」
打球はライナーで飛び、取れるか取れないか、微妙な位置だった。
「無理するなぁ! 確実に体で!」
センターの伊佐敷も無理をしないように坂井に声をかけた。
「坂井さん! 体で!」
ベンチの涼太も声を出す、
だが、坂井は、
(いける!)
そう思い、ダイビングキャッチを試みた。
しかし打球は坂井のグラブに収まる事は無かった……