「ストライクバッターアウト!」
5番バッターをSFFで三振にとり、1回表はなんとか2点に打ち取った。
「打たれたのスプリット?」
ベンチに帰ってきた御幸に涼太が声をかけた。
「落ちなかったけどな。力みが出たな」
「そっか…… まぁ2点なら行けるよ」
『1回の裏 青道高校の攻撃 1番ショート倉持君』
トップバッターの倉持が打席に入ると、青道のスタンドから大きな歓声が上がっていた。
倉持の頭の中には、ミーティングで片岡に言われた言葉が流れていた。
(こういうクレバーな投手を揺さぶるには機動力とバント。お前達の出塁が相手にとってプレッシャーになる事はわかってるな)
(自分の足を生かすためには、まず塁に出ねーとな!)
倉持はそう思っていると、
「サード! セーフティあるぞ!」
明川のベンチがサードに大声を出して注意をして、サードはダッシュで前進してきた。
(バ、バレてる……)
3塁側にセーフティバントをしようとしていたが、警戒されたため、1塁側にバントをした。
しかし楊がダッシュでマウンドから降りてきて、バントを処理をして、倉持をアウトにした。
「さすがに研究してきている…… ここは無理せずに見逃すべきでしたね……」
先程のプレーを見て、クリスは青道の事を研究しているのをよく分かった。
続く、2番の亮介は7球続けてファールを打ち、粘っていた。
楊はキャッチャーにアウトコースのストライクゾーンからボール1個分外したところに構えさせ、そこに投げ込んだ。
(いいボールだけど、ボール1個分外れてるよ……)
亮介もしっかりと見逃して、フルカウントになった。
(凄いな……このピッチャー……)
後ろで見ていた審判は、楊のコントロールに驚いていた。
(さっきからキャッチャーの構えたところにしっかりと投げ込んでいる……)
審判がそう思っていると、楊のサインがキャッチャーに出た。
するとキャッチャーはストライクゾーンから1個外れて構えていたところから、少しだけ内に構えた。
(少し内に構えた…… もしかしてボール1個分の出し入れをするつもりなのか!? 高校生の投手が!?)
楊の投げたボールはキャッチャーの構えたところに来た。
しかし亮介の目線からはボールがベースの上に乗ってはなく、ボールと判断して見逃した。
(よし。これでフォアボー)
「ストライーク! バッターアウト!」
そのジャッジをした審判を亮介は驚き、見ていた。
「……何だね」
「……いえ」
(くさいところに手を出さなかったと言われればそれまで……)
「兄貴が見逃し?」
(ちっ……これでくさいところ見逃せねぇじゃねーか)
選球眼が良い亮介が見逃し三振をした事に驚きと、審判のジャッジに苦い顔をしていた。
(キャッチャーの構えるところに投げ続ける事で、審判のジャッジを味方につけたんだ)
(これが精密機械 楊舜臣のピッチング)
(ちょっとややこしくなるな……)
楊の投球を見て、ベンチで試合を見ていた涼太も不穏な空気を感じていた。
3回表
2アウト1・2塁のピンチを迎えるも、降谷がストレートで三振をとり、イニングを終わらせた。
しかし明川のベンチはチャンスを逃しても声を出して、盛り上がっていた。
降谷も立ち直りつつあるものも、球数は投げさせられている。
明川の勢いがあるのは、初回が理由だ。
亮介が見逃し三振に倒れた後、伊佐敷が体制を崩しながらライト前に運んで、打席には4番の結城が入った。
結城の威圧感を感じて、楊も気合いを入れた。
楊はアウトコースのボールでカウントを稼ぎ、インコースで勝負を決めるつもりだった。
そして狙い通りに、インコースに楊は投げ込んだ。
カキン!
(な…… あのボールを詰まりながら外野に持っていくか……)
その打球は先程、坂井が後ろに逸らした打球と同じような打球だった。
レフトは前身をしてきて、打球を体で止めようとした。
ガッ!
レフトは躓き、そのまま勢いよく海老反りのまま滑り込んで、ダイレクトでボールを捕球した。
同じようなプレーで青道は2点を失い、明川はチームに勢いをつけるファインプレーで無失点。
試合の流れは明川にあった。
「小湊」
「どうしたんですか? 鹿野先輩」
ベンチで静かに試合を見ていた涼太が春市に声をかけた。
「試合が動いたら教えて」
そう言ってベンチの裏に入って行った。
春市は驚いて呆気に取られていたが、ベンチにいた3年生に、
「涼太は準備をしに行ったんだろう。いつも自分のタイミングで行くからな」
そう言われた。
(けど鹿野先輩がここで準備をし始めるって事は……それだけやばいって事だよね……)