「へぇー 沢村君に投げさせるんだー」
涼太は監督が沢村に登板機会を与えた事に驚いていた。
「形はどうあれ、覇気のない1年をやる気にさせたのはコイツだ。チャンスを与えられて当然だよな。監督もただの鬼じゃねーし」
御幸が涼太と降谷に向けてそう言った。
すると、
「コるぅアー! 1年相手になんじゃこの試合はー! 200点取らんかーい!」
「ヒャハハハ。純さん200点は無理っしょー」
グラウンドについて早々に叫び、試合に出ようとする伊佐敷を倉持が笑いながら収めていた。
「黙って見ていろ純……」
それをキャプテンである、結城哲也が止めていた。
その主力チームを見た降谷はオフなのに体を動かしているのに、少し驚いた。
「俺は逃げも隠れもせん、全球ど真ん中だ!」
そう言って笑っている沢村の声がマウンドから聞こえた。
「やっぱりバカだなー」
それを見た涼太はまた笑っていた。
そして沢村が投げた初球、
カキィン!
快音と共にボールは飛んで行く
「いきなり入ったか?」
主力メンバーもホームランかと思ったが…
「おっしゃー レフトフライ!」
打球はフェンスの手前で失速して、レフトフライになった。
そして次のバッターは強烈なライナーだったが、サード正面だった。
(タイミングは合ってるのに、微妙に芯から外れてる……)
涼太の予想通りに、次のバッターもタイミングはピッタリだったが、芯から外されてショートにボテボテの打球になった。
しかしそれをセカンドの春市がショートの前まで動きバックハントで処理して打者をアウトにした。
その結果、沢村は3球で3アウトをとった。
「打者の手元で変化するムービングボールか。やっかいだな」
「やっぱりそうですよね」
沢村の球質は手元で動くムービングボールだ。
それに結城と涼太は気付いていた。
(さすがの2人だな。もう気づいたか)
御幸は3球で気付いた2人に心の中で笑みを浮かべていた。
「けど……まだまだ動きますよ。あいつの球は 」
今度は笑顔で御幸はそう言った。
「さぁ次は増子先輩か」
次のバッターは以前まで一軍のサードのレギュラーで、クリーンナップになをつらめていた増子だ。
沢村が投げた初球、増子はど真ん中のボールを見逃した。
しかし、キャッチャーはボールをこぼしていた。
それを見た増子はバットを少し短く持った。
そしてバッターボックスの1番で構えた。
「気付いてるな、増子先輩」
「ああ。沢村の球質に。スイングをコンパクトにしてボールが動く前に叩く作戦か」
それを見た沢村は笑みを浮かべ、投球した。
ガッン!!
増子が放った強烈な打球はレフトのファールゾーンにあった、ネットに当たった。
しかしそのネットは打球の強さで未だに揺れていた。
その時、増子の頭の中にはレギュラー落ちをしたきっかけのエラーについて思い出していた。
そのミスをもうしない、そう決めて沢村に対して対峙している。
そして沢村はその日の中で1番のボールを投げた。
カキィン!
増子が放った打球は詰まっていたものの、レフトのネットに力で持っていった。
「いい球だったけどな……」
「増子先輩が上手く打ったんだよ。コンパクトにな」