「いいか夏の本戦まで2ヶ月。目標の無い練習は日々ただ喰いつぶすだけだぞ」
片岡は練習を始める前に、選手全員を集めてミーティングをしていた。
「小さな山に登る第1歩…… 富士山に登る第1歩同じ一歩でも覚悟が違う。 俺達の目指す山はどっちだ?」
そう言って、片岡は声のトーンを1つ上げた。
「目標こそがその日その日に命を与える!! 高い志を持って日々の鍛錬を怠るな!!」
「「「「はい!!」」」」
練習が始まり、校長と教頭と話をしていた。
「どうですか? 片岡監督。今年こそは甲子園に手が届きそうですか?」
校長の質問に片岡は、
「我々の目標は常に全国制覇です!」
そう宣言した。
しかし教頭がここ5年、甲子園にすら出れていない現状を話すと、
「選手個々の能力は昨年の都大会ベスト4のチームをはるかに上回ってますから」
「鉄壁の守備を誇る二遊間。1番ショート倉持(2年)2番セカンド小湊(3年)」
「強肩強打吠える3番、センター伊佐敷(3年)」
「勝負感冴える不動の4番、ファースト、キャプテンの結城(3年)」
「当たればボールははるか彼方! レギュラーに復帰した、超重量級サード、五番増子(3年)」
「そしてチームを支える扇の要、六番キャッチャー御幸一也(2年)」
「今のところレフトとライトには固定メンバーはいませんがこれらの選手は全国にも誇れるメンツだと思います」
片岡がそう言うと、教頭は気になる事があった。
「そう言えば、鹿野君はどうなんですか? 彼は去年の夏も秋も試合に出ていましたよね?」
「ええ。本来なら鹿野にはレフトのレギュラーで、打順も7番でチャンスに強い御幸の次のバッターでチャンスメイク、そしてポイントゲッターになってもらうはずでした」
そう言う、片岡の目線には自分の今できる、最速の中でのダッシュをしている涼太が目に入った。
「ですが、現在、鹿野は怪我をしています。さらに腰に爆弾を抱えています。ですので夏の大会でも状態を見ながらの起用になりそうです」
涼太は中学時代に腰を痛め、一時期は歩くのも大変な状態だった。
野球はもちろん、更に酷くなると日常生活もまともに出来なくなり、落ち込んでいる時期もあった。
しかしその腰の痛みは何とか引いていき、野球は出来るほどに回復したが、今も痛みを抱きながらはプレーしているのだ。
「どうだ。体の状態は……」
休憩していた涼太にクリスが声をかけてきた。
「ボチボチですね。足は大分戻ってきましたけど、腰は相変わらずですね」
「そうか……」
「けど、この腰とも数年の付き合いですからね。ある程度の事は分かりますよ」
涼太とクリスはその後も少し体の話をしていた。
「そういえば、クリス先輩って沢村と組んだんですよね? どうですか?」
涼太は御幸から聞いていた事を聞いた。
「ああ。確かにポテンシャルはいい物を持っているかもしれない。だがバカって事は分かった……」
「まぁそうですね。全球ど真ん中勝負ですからね」
その後、クリスは2年時に故障した肩のトレーニングをしに、トレーニングセンターに向かった。
向かっている途中にも、涼太について考えていた。
(あいつの腰は恐らく、休んで治るような物では無い。だがあいつは今のチームの重要なピースだ。無理して壊れて欲しくはな)
その時、クリスの頭には自分の怪我した時の事が蘇っていた。