「朝早いのに出てくれてありがとうな」
『別に大丈夫やで。ななも涼太の声聞きたかったから、嬉しいし』
「それやったら良かったわ」
涼太は雨が降るこの日、大阪に住んでいる彼女に電話をしていた。
『今年の夏は見に行くからな。涼太の試合』
「それは嬉しいわ。それやったら決勝見においで 」
『なんで決勝なん?』
「見に来るんやったら甲子園決める試合見に来た方もななも嬉しいやろ?」
『そうやな 去年みたいに泣きながら電話されんのも嫌やしそうするな!』
「嫌な事思い出さすなよ…」
「それじゃあまた電話するわ」
『うん。絶対決勝まで行ってや! 応援してるからな!』
「分かってるって」
涼太が電話を切って、寮の部屋に帰ろうとした時、
「あれ?クリス先輩何してるんですか?」
クリスが歩いていた。
「ちょっと用事があってな。…涼太も手伝ってくれないか?」
「クリス先輩の頼みやったら聞きますけど」
そう言った涼太を見て、クリスは少し笑っていた。
「ん?どうしたんですか?」
「いや、お前の関西弁を久しぶりに聞いた気がしてな」
それを聞いた涼太は先程まで、地元の子と電話していた事を伝えた。
そしてクリスに連れられて来たのは、室内練習場だった。
「涼太も来たんか?」
そこには前園、春市、そして降谷がいた。
「そこでクリス先輩に誘われてな。それにしてもここで何するんですか?」
そう言ってクリスに聞くと、
「この後、沢村も来る。降谷とセットでチームプレーの練習をするつもりだ。」
「あー なるほど」
その後、御幸が沢村を連れてきて、クリスが降谷と沢村に投手はチームで1番野球を知らないと行けないと言われていた。
そして最近、練習をやりすぎていて、体を休めていない沢村に対してのクリスが、休む事の重要さについて話していた。
カツン!
「相変わらずよく打つなー」
合宿が始まり、メンバー中心の練習が始まった。
涼太はバッティング練習をしていて、強烈な打球を何本も放っていた。
「体の調子はどうだ?」
「大分良くなってきましたね」
涼太はバッティングを終えた後、片岡に声をかけられた。
「足はもう大丈夫ですね。けど・・・」
「腰か」
涼太の腰はココ最近特に痛みが出ることが増えている
「腰についてはこれからも付き合って行くしか無いですから」
「そうか・・・」
そう言って片岡は一瞬喋るのを止めて、また話を始めた。
「夏の大会も、春同様の起用をするつもりだ」
「それは休みながらって事ですか?」
涼太の顔は少し固くなった。
「まだ組み合わせは出ていないが、確実に甲子園に行くためには稲代実業と市大三高を倒さないとダメだ。そしてその2校には絶対的エースがいる」
「そうですね。三高は真中さん。この前打ったと言っても、調子を崩してましたからね。絶好調の真中さんを打つのは難しいですから」
「そして・・・」
「稲代実業のエース 成宮鳴」
片岡がそう言った瞬間、涼太の顔が一段と固くなった。
「・・・成宮を打ち崩さない限り、甲子園には行けない」
「実際、去年もあいつでしたからね」
昨年の夏、稲代実業の投手として上がったのは、当時の1年生、成宮鳴だった。
その成宮に青道打線は抑えられ、青道高校は準決勝敗退となった。
「その二試合の時に、お前がベストコンディションで居てもらわないと困るんだ」
片岡は涼太の目を見てそう言った。
「・・・監督にそう思ってもらってるんなら嬉しいです。けど自分がスタメンじゃなくても、いつでも出れる準備はしておきます」
「よろしく頼むぞ」
そう言う2人の顔には笑みがあった