まじめにby桐生戦兎
沈黙が続く。ネプテューヌの震えが、こっちまで伝わる。そんな重苦しい空気を破ったのは、柱の陰から出て来たイストワールだった。
「ネプギアさん……でよろしいですか?」
「何ですか、いーすんさん」
「あなたはなぜ……このようなことを……」
「決まってますよ、そんなの。ただ一人の女神になって、国を治めた。けど、私はお姉ちゃんのようになれなかった。女神殺しの女神、そんな悪評が広まった。だから、私は自分の居場所を作るために、ここを襲ったんです! 私を認めてくれる人達と暮らすために!」
「それが、あなたの望んだことなのですか!?」
イストワールが声を張り上げた。
「えぇ、そうですよ。だってもう……お姉ちゃんもユニちゃんも、誰もいない。 ……なら、どんな手を使っても私は皆を取り戻す。だから――」
ネプギアの手に握られたゲハバーンが光り輝く。
「私の邪魔をする人は全て排除するのみです」
ネプギアの覚悟の声が、響いた。
「私はあれから他の次元にも手を出しました。神次元、零次元にも。だから、ゲハバーンの中にうずめさん達もいます」
「ネプギア……」
「大人しく殺されて、お姉ちゃん……!」
「くっ……!!」
俺達は武器を構え直し、身構える。
「でも、その前に」
ネプギアは倒れている男達に目をやった。
「使えない駒は、消した方がいいですね」
そう言うと、ネプギアは左手に黒い靄のようなものを溜め始める。
「お、おやめ……やめてくださいネプギア様!」
さっきまで話していた男が急にうろたえ始める。
「死んでください」
「うわあああっ――」
黒い靄がばらまかれると男達は一瞬にして消え去り、後には俺達だけが残った。
「ネプギア……?」
信じられないという様子のネプテューヌ。イストワールも目をパッチリ開いて事の顛末を見ていた。
「人を、消したのか」
俺は少し強めの声でネプギアに問いかけた。
「ええ、そうですよ。殺しました」
その言葉を聞いた途端、ネプテューヌはぺたりと座り込んだ。
「…………ネプギア」
「なに、お姉ちゃん」
数秒の沈黙の後、ネプテューヌは立ち上がった。ネプギアを見据える顔は涙を溜め、怒りの形相をしているのがはっきりわかった。
「ネプギア、わたしの話を聞いて」
「……いいよ。聞いてあげる」
早くして欲しいという顔でネプギアは話を聞く体制を取った。
「わたし、知ってるよ。ネプギアは強い子だってこと。でも、こんなの……私が、皆が望んだことじゃないでしょ! 今のネプギアは間違ってる!!」
「…………」
「ネプギアはそんな悪いことしないから!」
ネプテューヌの悲痛な思いを聞いたネプギアは少し目を逸らす。
「まだ、間に合うよ。だから、戻って来て……ネプギア」
ネプテューヌはネプギアに少しずつ近づいていく。妹を思う姉の気持ち。それは、父さんとの関係に少し似ている気もした。
「…………うる、さい」
ネプテューヌの目線の外でネプギアはゲハバーンを振り上げていた。
「うるさいって、言ってるの!!」
ゲハバーンを振り下ろすネプギア。俺はネプテューヌを押し倒し、ドリルクラッシャーで受け止めた。
「俺は……お前に、会った事はない。でも、お前が苦しんでる姿は……見たく、ないんだよっ!!」
ゲハバーンを振り払い、ネプギアと距離を取る。
「ネプギア、お前は必ず……俺達が救う!」
「救いなんて要らない! 私は、私を認めてくれたあの場所があればいい!!」
再び斬りかかってくるネプギアの攻撃を避けながら叫ぶ。
「それじゃダメなんだ! 誰かに認められるんじゃなくて、自分で自分を認められないと……本当の幸せなんか掴めないんだぞ!!」
「黙れええええっ!!!!」
「ネプギアッ!!!!」
そう叫んで前に飛び出したネプテューヌ。ネプギアの動きが一瞬鈍くなる。
「……今だっ!」
『ローズ!』
「ビルドアップ!」
ラビットボトルを外し、ローズフルボトルを入れてトライアルフォームになる。
花びらで視線を遮り、一気に近づく。
「ああっ!!」
振り下ろされたゲハバーンをギリギリで避け、懐に入り込む。
「!?」
「これで……終わりだッ!!」
ドライバーのレバーを回す。
『Ready Go!! ボルテックアタック!』
左腕、タンクのパンチが決まり仰け反るネプギア。鎧の中心にヒビが入った。
「これで、諦めてくれるよな?」
俺の活躍でネプギアに膝をつかせたけど、一番の立役者はネプテューヌになる。主役の座譲らなきゃダメかなぁ?
「……さすがですね。でも」
ネプギアは即席の魔力弾でタワーの天井を破壊。そのまま上空へ飛んでいく。俺は落ちて来たタワーの塊を掃除機で引き寄せ、足場を作った。
「待て!」
ネプテューヌと共に上り追いかける。
「なんなの、あれ……」
目線の先にはネプギアが、上空には紫とピンクが混ざった色の魔力弾。それは、とんでもない大きさになっていた。
「マジかよ……最悪だ」
「でも、どうする気なの」
「プラネテューヌを滅ぼす気よ!」
ネプテューヌ、イストワールとも違う声が聞こえた。振り返った戦兎達の前に現れたのは、アイエフとコンパだった。
「プラネテューヌを破壊? どういうことだ」
「そのままの意味よ。ネプギアはプラネテューヌを滅ぼす気なの」
「そんな……! なんとかならないんですか!?」
「無理ね。プラネテューヌのシェアはネプギアに吸収されてる。どうにか女神化出来ても、もつかどうか……」
「シェアを取り込んでるの!?」
「はい、アイエフさんの言う通りです」
いつの間にか姿を消していたイストワールが現れた。
「いーすん! どこにいたの?」
「アイエフさんに連絡を取って、ネプギアさんについて調べていたんです。その途中でこのようなことが」
「でも、シェアを奪っているのは本当よ。今は動きが遅いけど、あともう少ししたら速度が上がってこの国が完全に無くなるわ」
女神化……はよくわからないが、俺はネプギアを止めないと危険になると悟った。
「ネプテューヌ、女神化を維持できる時間は?」
「三分……五分なら大丈夫!」
「よし、いくぞ!」
「あいちゃんにコンパ、いーすんはそこで見てて。私がなんとかするよ」
「私達、だろ」
俺もネプテューヌの隣に並ぶ。
『グレート! オールイエイ!』
『ジーニアス!』
ジーニアスフルボトルを起動し、ベルトにセット。レバーを回す。
『イエイ! イエイ! イエイ! イエイ!』
『Are you ready?』
「ビルドアップ!」
『完全無欠のボトルヤロー! ビルドジーニアス! スゲーイ! モノスゲーイ!』
ジーニアスフォームへとチェンジする。
「刮目せよっ!」
ネプテューヌの体が光に包まれ――
「女神の力、見せてあげるわ!」
女神化した。
「なんか……色々変わってんな」
「そうね……お互いに、ね」
互いの変わりように驚きが隠せなかった。知っているのならともかく、互いにこの姿を見せたのは初めてだ。無理もない。アホの子からクールになったネプテューヌ、俺はボトルマン。文面だけではおかしいが、実際そうなんだ。
「まあ……やるぞ!」
「ええ、主人公の本気を見せるわ!」
俺達は目標をネプギアに定めて飛び立った。
中編、終わりました。ようやく登場したネプギアですが、既に闇落ち状態。救う手立てはあるのでしょうか。
次回はいよいよ主役コンビの完結編。最終決戦とその後の二話構成となります。だから実質三話行くかも……?
ジーニアスも大活躍しますよ。それでは。