昼の理事長の娘との昼食時間を終え残った午後の授業も終わり放課後となった。篁はとりあえず何をしようかと考えようとしたとき彼の耳に女子生徒の声が聞こえてきた。
『これから第一体育館で部活動説明会を行います。興味のある方は第一体育館に集まってください』
そんな校内放送が聞こえDクラスの中にいた数人の生徒が教室を出ていった。
(部活か。JCCの時にはそんなものはなかったな・・・)
篁はそんなことを考えて試しに行ってみるのも悪くないと思いつつも別に部活をするわけでもないしとどうしようかと迷っているとそんな彼の左の方から声が聞こえる。
「堀北、一緒に説明会に行かないか?」
「興味ないわ」
そんな声が聞こえる。どうやら奥にいた茶髪の男子が黒髪の女子を説明会に一緒に行かないかと誘っているようだ。篁はそんな声が聞こえてくるが自分には関係ないことだとそのまま立ち上がりせっかくだからと説明会のある第一体育館に行こうとした。その時、そんな彼に声がかかった。
「な、なあ・・・!」
「・・・?」
明らかに自分に向けられて言われた言葉に篁はどうしたのかと振り返る。するとそこには立ち上がり彼に声を掛けている茶髪の男子の姿があった。その後ろにはめんどくさそうな顔をした黒髪の女子もおり茶髪の男子は篁に声を掛けてきていた。
「お前も、その、部活の説明会に行くのか?」
「ああ、そうだが」
「な、なら一緒に行かないか?」
突然そんなことを尋ねられ篁は一瞬呆け固まってしまった。
「なんでだ?」
「い、いやせっかく隣同士になったから仲良くしたいなーって」
「隣になったのはお前じゃなく後ろにいる黒髪だがな」
そんなことを篁が言うと後ろの黒髪の女子が鋭い視線で睨みつけてくるが篁にはそんな視線痛くもかゆくもなかった。
「いや、でも・・・」
「まあ、一緒に行くだけなら別にいいが」
「!?ホントか!」
そうやけにオーバーリアクションで喜んでいる茶髪の少年を見て篁はどこか違和感を覚えた。
(喜んでいるのは本当なんだろうが、なんだこの違和感は?)
「あ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺は綾小路清隆。よろしく」
「篁だ。それで、後ろの彼女は?」
茶髪の男子、綾小路と篁は互いに自己紹介をし篁は先ほどから思っていた疑問の後ろの黒髪の女子に聞いた。
「言う必要がないわね」
「・・・?」
「彼女は堀北だ。正真正銘、篁の隣の席だな」
「何を勝手に人の名前を明かしてるのかしら、綾小路くん?」
そう彼女、堀北は綾小路の方を見た。いや、正確には睨みつけた。
「別にいいだろ?少なくとも一年同じ席なんだろうし隣の席の人と仲良くしよう、堀北」
「私は誰とも仲良くするつもりはないわ」
そんなやり取りが目の前で行われ篁はそんな光景を見て静かに呟いた。
「・・・こういうのを青春というのかもしれないな」
「?何か言ったか、篁?」
「いや、なんでもない。それより行くなら早く行こう」
「ああ、そうだな。堀北も行こう」
「ちょっと待って、彼がいるなら私は別に行かなくても」
そんな堀北の制止の声が聞こえていないのか綾小路と篁は先に廊下に出てしまい堀北はため息をつきながらもその後ろ姿を追いかけた。そして三人は並んで廊下を歩き説明会が行われる第一体育館に向かう。道中歩きながら綾小路が沈黙を破った。
「そ、そういえば二人は入りたい部活はあるのか?」
「いや、別にないな」
綾小路からの質問に篁は正直な回答をした。彼は部活というものがどういったものがあるのか興味があるだけで別に入るつもりはないのだ。
「・・・この学校に空手部はあるのかしら?」
「空手?」
「堀北は空手をやりたいのか?」
「・・・いえ、なんでもないわ」
小さく呟くように声を出した堀北の言葉に二人は反応するが彼女は何でもないと言いそのまま再び沈黙の時間が流れる。そしてしばらく歩いていると並んでいる三人の真ん中を歩いていた堀北が隣を歩いている篁の方へと視線を向けその視線は下に向かい彼が左手に持っている麻袋に向けられた。
「どうした?」
「その手に持っている袋、なんなの?」
「何、とは?」
「貴方はその袋を昨日から持っていたわ。つまりそれを外部から持ってきたってことになる」
「それで?」
篁の興味なさげな返答に堀北は少し睨みつけるように彼を見上げた。女子にしては少しだけ高めの身長の堀北に対し180cm超えの篁を堀北は見上げるような形になっていた。
「この学校は外部からの私物の持ち込みが禁止されているわ。なのに貴方はそれを持ってきた。それは一体どういうことなのかしら?」
「機密事項だ」
「・・・言えないことなのかしら?」
「そういうことだ」
「・・・・・」
堀北の視線が篁に突き刺さるが彼は無関心に歩き続けた。そして彼らは第一体育館にたどり着いた。入り口で部活動のパンフレットを受け取った三人はそのまま体育館の後ろの方へ向かいそこでパンフレットなどを見ていた。
「どうやら空手部は無いようだな」
「残念だったな堀北」
「何でもないと言ったはずよ」
堀北はそう強い口調で言うがその言葉の節にはどこか残念そうな感じが見られた。そして篁は手元のパンフレットを見つめた。
(これが普通の学校の部活、か)
見れば野球部やバスケットボール部といった必ずあるであろう部活にそれ以外にも多数のものがありそのどれもが彼にとっては新鮮なものだった。
(まあ、別に入るわけじゃないがな)
そして少し時間が過ぎると部活動説明会が開始された。体育館の壇上に一人の女子生徒がおりその女子生徒の紹介で次々と各部の部長と数人の部員が登場し部活の説明と軽いデモンストレーションを行いそれにほとんどの生徒が注目する中篁はすでに部活への興味を失い彼の視線は体育館内へと向けられていた。その視線は監視カメラがある上部へ、そして入り口や窓など様々なところへ向けている。
「・・・・・」
そんな体育館内を見ているうちに部活動の説明はほとんど終わったらしく館内は一時生徒たちのざわめきで満ちていると最後に生徒会長からの挨拶があるとのことで全員の視線が壇上に集まった。
壇上に一人の男子生徒が現れる。身長は170位と日本の平均的な高校生男児の身長の生徒がマイクの前に立っていた。シャープな眼鏡をかけその奥鋭い視線は静かに自分を見上げている一年生たちをどこか見定めるように見ていた。
「・・・っ・・・」
「・・・・・?」
ふと篁は隣を見るとそこには先ほどまでの冷たく感じる無表情を一切なくしどこか焦ったような落ち着かないような顔をした堀北の姿がそこにはあり彼だけでなく向かいにいた綾小路も彼女の異変に気付いていた。一年生たちが何も言わない彼に賑やかしの言葉を次々とぶつけていくがそんな声に彼は一切反応せず静かに見回して話し始めた。
「私は、生徒会長を務めている、堀北学と言います」
そう最初に話し始める。その彼の名前に篁はなるほどと合点がいったのと同時にならば何故そんな表情をしているのかと疑問に思った。
「生徒会もまた、上級生の卒業に伴い、一年生から立候補を募ることになっています。特別立候補に資格は必要ありませんが、もしも生徒会への立候補を考えている者が居るのなら、部活への所属は避けて頂くようお願いします。生徒会と部活の掛け持ちは原則受け付けていません」
そんな彼の一挙一動に一年生たちの間に緊張感を現れた。
「それから・・・私たち生徒会は、甘い考えによる立候補を望まない。そのような人間は当選することはおろか、学校に汚点を残すことになるだろう。わが校の生徒会には、規律を変えるだけの権利と使命が、学校側から認められ、期待されている。そのことを理解できる者のみ、歓迎しよう」
そう言い生徒会長は何も言わずそのまま壇上から消えていった。未だに体育館の中の空気はなにも言えず緊張感が残っている中、司会の橘が説明会を終わりにさせその緊張感が次々と霧散していく。
そして篁は未だに茫然としている隣の堀北に目を向けた。
「おい」
「・・・・・」
「・・・はぁ」
彼の呼びかけに答えることなく生徒会長が消えていった壇上をずっと見ていた彼女にため息をつき右手で軽く頭にチョップした。
「っ!」
突然の頭への衝撃に彼女は周りを見回し、自分の頭に軽い一撃を食らわせた篁を軽く睨み見上げた。
「・・・ずいぶんと乱暴的なのね」
「このまま放置してたらずっとここにいそうだったからな」
「・・・そうね」
彼女は自分の状態を理解したのか少し気恥ずかしそうにしながら見るべきものは見たということでそのまま二人と別れ体育館から出ていった。そして体育館に残った篁と綾小路はこれからどうするかと考えていると綾小路は誰かを見つけていた。見るとそこにはクラスの中にいた男子だった。
「悪い、オレちょっと行ってくるな」
「ああ、俺もそろそろ戻る」
「じゃあな、篁」
そう言って綾小路は赤い髪のヤンキーたちのいる場所に向かった。篁はそんな背中を見届けた後に体育館内を見回した。そこには部活説明会を見終えた部活に興味のある生徒たちがそれぞれの部活の先輩たちの元に集まっていた。篁はその中に生徒会の姿が見えず部活の枠に入らないのかと思いながら体育館を出てこれからどうするかを考えた。
「とりあえずやるべきことをやっておくか」
そう言い彼は体育館から出ていきそのまま生徒会室に向かった。
(生徒会にはそれなりの権利があると言っていたな・・・)
そう言っていた生徒会長の言葉を思い出し生徒会室へと足を進めた。そしてたどり着いた扉の目の前にきて扉をノックした。
生徒会長、堀北学は考えていた。彼は部活動説明の最後の挨拶をする前に新入生たちを観察していた。多数の有象無象がいる中に時折まともな生徒もいる中で彼は体育館内の後方にある姿を見つけていた。
「こんなところまで追ってくるとはな」
「会長?」
彼の後ろに控えていた書記の女子生徒、橘の声が聞こえていないのか彼の脳裏には体育館後方にいた彼の妹であり自分への盲目的な尊敬を抱いている堀北鈴音の姿を思い起こしていた。自分への憧れからか孤高と孤独をはき違えた哀れで悲しい妹を彼はため息をつきながら困っていた。
「そういえば・・・」
そういえば彼女の両隣に男子が二人いたなと彼は思い出していた。方や茶髪のパッとしない印象をした男子だったが。
「・・・・・」
彼は生徒会室の自分の席の机から一枚の資料を取り出した。そこにはある生徒の写真と彼に関する他の生徒に比べ明らかに少ない情報をまとめた
「?会長、それは・・・?」
「・・・・・」
そう後ろにいた橘が彼の手元にある資料に目を向けて聞いてきた。彼も彼女にならば知られても問題ないと思い話し出す。
「今年の新入生の中で、いやこの学校創設以来で最も
「・・・?どういう・・・」
そう言う彼の言葉に橘は訳が分からないと首を傾げた。
「名前を篁。下の名前に関する記載は無くただこの苗字のみが記されている」
「下の名前の記載がない、ですか?」
「書かれているのはクラスと学籍番号のみ。彼の誕生日や入学理由、在籍していた中学校やこれまでどういった経緯があったのかも全く書かれていない」
「そんな・・・こと、あるはず・・・・・っ!?」
そんな本来ではありえないことに橘はありえないと思ったが彼の資料にあったほとんどが真っ白な資料に絶句する。
「そしてこの学校で唯一外部からの私物を一つ持ち込みを許可された理事長推薦でこの学校に入学した男だ」
「・・・・・」
「今年のAクラスには理事長の娘がいるようだがその彼女でさえ理事長の推薦は無く自分でこの学校に入学した。この男はそんなありえない前提を覆している」
そんな堀北の言葉に橘は困惑と思想でしばらく無言になってしまった。
(・・・篁。お前は何者だ・・・)
そんなことを考えていると生徒会室の扉がノックされた。そのノックに堀北は資料に向けていた顔を上げ橘は呆けていた顔が気付いたように軽く振り元の表情に戻った。
「生徒会入りの立候補でしょうか?早いですね」
「さてな」
「どうぞ!入ってください!!」
その橘の声にドアノブがガチャっと音を鳴らし扉が開かれていく。そしてその扉の奥から見えた姿に二人の目は見開かれた。
「なっ!」
「・・・・・」
「失礼します」
そこから見えてきたのは真っ黒な髪をした男子生徒でその左手には細長い何かが入った麻袋を握っている。彼は歩きながら堀北たちの少し前まで来るとその深淵のような瞳を二人に向けてきた。
「1年Dクラスの篁です。堀北生徒会長に話があって来ました」
「「・・・・・・」」
「どうしましたか?」
「っ!い、いえなんでもありません。篁くん、でしたね。生徒会長にはどういったご用件で?」
挨拶をした男子生徒、篁は呆けていた二人に対しどうしたのかと聞くと座っている堀北の後ろに控えていた橘が慌てたように対応した。
「生徒会への立候補ですか?」
そう言う橘だったが心の中では彼は生徒会へは入れないだろうと思っていた。彼女は3年生でありこの学校の
「いえ、生徒会に興味はありません」
「・・・は?」
篁のその発言に彼女は耳を疑った。この学校の生徒会とは他の普通の学校と比べても特別な存在でありその特別性は先ほどの部活動説明会でも堀北生徒会長が説明していた。このタイミングで生徒会室を訪れたということは先ほどの説明会にいたのだろうと考えるがそれを知っていて彼は生徒会に興味はないと言った。それが橘を呆然とさせた。
「であれば、何の用できた。篁」
「せ、生徒会長・・・」
「・・・・・・」
呆然としていた橘に堀北生徒会長は目の前にいる異質な存在の生徒である篁に対しそう聞いた。篁はそんな堀北に目を向ける。
「先ほど聞きましたが生徒会は規律を変えるだけの権利と使命が学校側から与えられていると」
「ああ」
「なら、アンタに聞いておきたいことがある」
そう篁は先ほどまでの先輩に対しての敬語をやめ彼と対等の会話を始める。
「この学校に設置されている
「なっ!?」
「・・・・・・・」
その驚愕の言葉に橘は言葉が出なく堀北はその目を細めた。
「い、一体何を言っているのですか!!なんで、そんなことを!?」
「昨日、うちのクラスの担任。茶柱先生が言っていた。
「・・・それで?」
「もしこれが物などの物質を買えるだけなら
「な・・・・・」
「・・・・・」
それはあくまで彼の持論であり推測であった。確証があるわけでもなく彼自身がたどり着いた考えであり
そんな彼の考えに二人は固まってしまう。それは彼の考えがこの学校のSシステムをよく理解している、というよりはそんな考えには自分たちでさえたどり着かなかったからだ。
「た、確かに、この学校の、Sシステム上は可能、だと思いますけど・・・・」
「・・・考えたことはなかったな」
そう、二人には学校の監視カメラを見る権利、という考えにそもそも至らなかったのだ。二人は生徒会長とその書記をしているだけあって真面目が服を着ているような人間だった。だからこそ入学して以来自分たちを見張ってきた監視カメラを見るという考えに至らなかった。それは下手をすれば人のプライベートへの侵害になりかねない。もっともこの学校でそんなプライベートを監視カメラのある場所で見せてしまうような人間はいないが。
だからこそ生真面目な二人にとって監視カメラを閲覧する権利という考えが思いつかなかったのだ。
「・・・少し待て」
堀北はそう言い席を少し経ち窓際に近づいて端末を開く。そしてどこかに連絡を取り始めた。そんな後姿を見ている篁は自分へ少しだけ疑惑の視線を向けている橘の存在に気づいた。
「どうかしましたか、橘先輩」
「・・・何故、監視カメラの閲覧権などが欲しいんですか?」
「言えませんね」
「っ。な、なんでですか・・・?」
「機密事項になります。これ以上は何も言えないし、言うつもりもありません」
そう言い口を閉ざした篁に対し余計に疑惑のまなざしが強くなった。そしてどこかへの連絡が終わったのか堀北が戻ってきて椅子に座りなおした。
「確認をした」
「それで・・・?」
「前代未聞の購入案件だ。慎重に検討したいと言っていたのだが」
そう言うと堀北はテーブルの上に置いてあった篁の資料を手に持ってその目を細める。
「理事長にお前の名前を出した途端、即決した。売ってもいいとな」
「なっ!」
「なんだ、坂柳・・・理事長に連絡していたんですか?」
その衝撃の事実に橘は絶句し篁はどこに連絡をしていたのかと思ったが坂柳理事長のところなのかと納得いった。
「それで、いくらで売ってくれますか?」
「監視カメラ、これはこの学校において非常に重要な役割を担っている。それに加え下手をすればプライベートへの侵害にもなりかねない」
「・・・・・」
「一台、100万ポイントだ。それで手を打とう」
「100万ですか?」
「不服か?」
「いえ、意外と安かったと思いまして」
その驚きの発言に二人は目を見開いた。100万、この金額が安いと発言した目の前の入学して二日目の新入生にどういうことだと驚愕したのだ。篁は懐からあるものを取り出した。それはメモ帳であり彼はそれのあるページを開きテーブルの上に置き二人に見せた。二人がそのメモ帳を見るとそこには数字と文字が羅列していた。
「・・・・・?」
「・・・これは?」
「とりあえず、東の関門と南の関門の全体を見れるのを一つずつ。それとショッピングモールの全体を見回せるここのを一つ、そして寮の出入り口を見れる監視カメラ。この四つの閲覧権を買います」
「よ、四つ!!」
そこの書かれていたのは全て初日に彼が調べたこの学校の敷地内の監視カメラであった。彼はその中から最優先で必要なところをピックアップし堀北にそれらの閲覧権を購入したいと言い出した。監視カメラ四個の閲覧権、合計400万という大金である。
「・・・あるのか?」
「ちょっとした収入が」
「収入・・・?」
「ええ。それで、どうでしょうか・・・?」
そう聞いてくる篁に対し堀北はすでに理事長に確認を取っている以上断る理由はなかった。
「・・・監視カメラを見るためのアプリがあるみたいだがまだ少し時間がかかると理事長が言っていた。だから少しだけ遅くなるがそれでも構わないか?」
「ええ。大丈夫です」
「分かった。では成立だ」
すると篁は堀北の連絡先を聞き端末に登録すると彼は端末を操作していた。そして堀北の端末に何かの通知が届き見てみるとそこには自分の端末400万が追加されていることに気づいた。
「っ!?」
「なっ!!」
「確認いただけましたか?」
「ああ、あとで学校用の口座に移しておこう」
「分かりました」
「篁」
篁はやることを終えそのまま生徒会室を出ようとするとその彼を堀北が声を掛け止めた。
「何か?」
「数か月前からこの学校の敷地内で工事が行われていた」
「ああ、そういえば結構大きめの工事がありましたね。確かその工事で出来たのが・・・」
「一軒家だ。正直言ってこの学校の敷地に必要なものだとは思えない。最初は理事長が自分の家を建てていたと思っていたのだが・・・・・何か知らないか?」
「ああ、あれは俺が理事長に建てるように頼んだ家です」
「ええっ!!」
堀北は少し前から不思議に思っていた。この学校の敷地内にあまり見かけない工事会社が来てなにやら工事を行っていた。そして出来上がったのは一つの一軒家だった。それなりに立派な家でなんとその周辺には監視カメラが一切見られなかった。
「それは、本当か?」
「ええ。俺が入学する前に理事長に建てるように交渉しました」
「あ、あんなに立派な家を、どうやって・・・」
「金は俺が払いました」
「「・・・・・」」
自分のお金であの家を建てたという彼の言葉に二人は絶句してしまった。すると篁の視線が少し鋭くなり二人を見つめた。
「あの家を知っているなら一つ忠告しておきます」
「・・・なんだ?」
「あの家、そして周辺に許可なく近づいないでもらう」
「ど、どうして・・・?」
「あの家には俺以外にもう一人住んでいる。だから許可なく近づくことは許さない」
そう言う篁はとても冷たい圧を出していた。
「・・・もう一人というのは?」
堀北は篁にそう聞くと彼は今までの暗く冷たい圧が霧散しその瞳には影が落ちたように二人には見えた。その瞳を二人に向けた篁は衝撃的な言葉を発した。
「・・・俺の娘だ」