六等分の幸せ   作:アルフレイン

9 / 10
お気に入りが200人を突破しました!

UAも10000突破しました!

皆さん、いつもありがとうございます!

アンケートのご協力もありがとうございます!


第9話 2人の初めて

俺は今、五月以外の4人に呆れられている。

五月は俺にバカと言って、部屋に閉じこもってしまった。

五月にバカと言われるのは心外だが、4人曰く俺に問題があるらしい。

 

「ほんと、フータロー君は勉強以外のことになるとダメになるよね」

 

「忘れがちになるけど、五月は末っ子だし意外と甘えん坊なのよ」

 

「待て、一花の発言はいったん置いておくとして、甘えん坊とか関係あるのか?」

 

「あるから言ってるんじゃない」

 

「さっぱりわからん」

 

「フータローだししょうがない」

 

「まあ、上杉さんですしね」

 

なんでこんなに言われなくちゃならないんだ。

どうにも()せない。

 

だが、まあ、ここでこいつらの相手しながら待っててもしょうがないか。

 

俺は席を立ち、会談の方へ向かう。

 

「フータロー君、なんで五月ちゃん怒らせたのかわかってるの?」

 

「わからん」

 

俺は一花の質問にあっけらかんと答えた。

 

「大体わかるなら、こんなことになってない」

 

「それはそうかもしれないけど……。

 それで大丈夫?

 余計五月ちゃんを怒らせちゃうんじゃない?」

 

一花の心配は(もっと)もだ。

だが、ここは俺が行かないといけないような気がする。

 

「まあ、なんとかなるだろ」

 

「なんとかって」

 

「お前らは今日どこに行くかでも考えててくれ。

 悪いが、俺に頼られても素敵なデートプランなんぞ提供できないからな」

 

俺はそう言うと、足早に階段を昇って行った。

下からはぁ、というため息が4つほど聞こえた気がするが、そんなこといちいち気にしない。

2階、と言っていいのだろうか。

今更だが、なんでマンションの一室に2階とかあるんだよ。

既に30階だろ、ここ。

まあいいか。

とにかく、2階には5つ子それぞれの部屋がある。

階段から遠い部屋から一花、二乃、三玖、四葉、そして今回問題の五月の部屋だ。

 

俺は一番手前の部屋のドアをコンコンとノックした。

 

「五月、俺だ。

 入るぞ」

 

「……どうぞ」

 

少し間をおいて、中から返事が聞こえた。

声色的に機嫌がよくないことはわかる。

俺は五月の部屋に入った。

五月の部屋はかなりきれいに整頓されている。

どこぞの長女とは大違いだ。

そう言えば、あいつの部屋は今、どうなってるのだろうか?

一花は今、ホテル暮らしの生活だ。

荷物をいくらか運んだのは知ってるが、さすがにここに教えに来るときも個人の部屋に入ったりはしない。

引っ越しの準備の時に、少しは片づけたのか?

っと、今は五月のことだ。

 

自分のベッドの隅で体操座りをして枕を抱え込んでいる五月は、心なしかというか明らかに先ほどよりムスーッとしている。

え?なんでだ?

 

「あの、五月、さん?」

 

「今、誰のこと考えてたの?」

 

「は?」

 

「今、誰かほかの人のこと考えてたでしょ。

 誰?教えて?」

 

「えっと、一花のことを」

 

俺は五月の迫力に押されて素直に白状してしまった。

 

「どうして?」

 

「いや、この綺麗に整頓されてる部屋を見たら、一花の部屋とは全然違うな、と」

 

「ふーん」

 

これはまずい。

明らかに機嫌が現在進行形で損なわれている。

なんで五月は機嫌が悪くなってるんだ!

俺の人生経験の中に答えなんてないだろ。

探さなくてもわかる。

これは正直に話してしまおう。

 

「五月。

 俺は生まれてからついさっきまで誰かと交際したことはない」

 

「え?いきなり何の話ですか!?」

 

「いいから聞いてくれ。

 小学校の修学旅行以降、俺は他人との交流は最低限にとどめ、勉強にだけ注力してきた。

 だから、俺はお前が怒っている理由がわからん」

 

「はぁ!?

 怒ってる理由がわからないのに謝りに来たんですか!?」

 

五月が声を荒げる。

 

「そうだ。

 今の俺にはわからない。

 だから、五月。

 お前が怒っている理由を教えてくれ」

 

「普通、そういうの本人に聞きますか?」

 

「本人に聞かないとわからないだろ?」

 

俺と五月はしばしの間見つめあう。

こればかりは俺にはどうしようもない。

怒っている理由がわからないんだから手の打ちようがない。

他のカップルはこういう時どうしてるんだ?

俺が色々と考えていると五月が何かボソッとつぶやいた。

 

「すまん、五月。

 よく聞こえなかった。

 もう1回言ってくれるか?」

 

「…だけ……ス……から」

 

「すまん、所々聞き取れない。

 もう少しはっきり言ってもらえるか?」

 

「私だけまだキスしてないから!!!!!!」

 

五月がその髪と同じ真っ赤な顔をして、叫んだ。

五月は叫ぶとうぅ、と小さな声を上げながら抱えている枕に顔をうずめた。

 

え?は?キス?

確かに五月とはしたことがない。

 

「いや、四葉ともしたことないはずだが」

 

「ほんとですか?

 そこはちゃんと思い出してあげないと四葉がかわいそうです」

 

こういうときでも姉の心配はするんだから本当にこいつらは仲が良いな。

……じゃなくて、俺と四葉がキス?

そんなことあったか……。

あ。

 

「もしかして、あの時の五月……か?」

 

「そう言われると変な感じがするけどそうだよ。

 あの鐘のところでキスをしたのは四葉だよ」

 

「マジか」

 

「小学生の時のはわかったのに去年のことがわからないの?」

 

「あの時は、一瞬だったのと衝撃的だったので正直顔をはっきりと見れてなかったんだ」

 

「へぇ。

 で、もう1回」

 

「もう1回!?

 四葉とか?嘘だろ?

 あとキスしたのは……」

 

一花、二乃、三玖にはそれぞれ文化祭期間中に不意を突かれてキスをされた。

だが、四葉だと?

俺は記憶を漁りまくるが、やはり四葉とのキスなど他には見当たらない。

一体いつ……。

そこで俺はふと思い出した。

文化祭期間中に零奈と会ったような気がした。

あの時、疲れてうつらうつらしてたから夢だと思っていたが。

 

「もしかして、文化祭の時の零奈か?

 てっきり夢だとばかり」

 

「やっとわかったみたいだね。

 でも四葉のことは今回は後回し。

 今、上杉君にわかってほしいのは君が私以外の4人とキスをしたことがあるという事実」

 

「それはわかった。

 というかいつそんな情報交換したんだ?」

 

「昨日の夜だよ。

 もうこうなったんだから全部話そうってなって」

 

「なんでそうなるんだよ……」

 

というかキスのことなんて俺も恥ずかしくなるだろ!

本人のいないところでそういうこと話すなよ!

 

「なのに上杉君は、そんな私の前でキスを見せつけ、挙句の果てに私がおなかすいてると勘違いするなんて……!!!!!」

 

それを聞いてると確かに俺が悪い気がしてくる。

そもそも5股してる時点でかなり悪いやつではあるのだが。

少なくとも堂々と胸は張れないし、らいはにも話せない。

 

「というかそれは二乃も悪いんじゃ……?」

 

「二乃はいいんです!

 気持ちはわかりますから……。

 それなのに上杉君ときたら!!!!!」

 

そう言って、五月は俺に抱えていた枕を投げつけてきた。

しまった。

火に油を注いでしまったらしい。

ここはとりあえず話を進めてしまうとするか。

 

「それで五月は結局俺にどうしてほしいんだ?」

 

俺の発言に五月がフリーズした。

ん?俺は何かおかしなことを言っただろうか?

 

「まさか、ここまで話してわからないなんて……」

 

え?もうわかるようなことなのか!?

 

「本当に勉強以外はダメなんだから……」

 

五月はため息をついた。

そして、すぐに顔を真っ赤に染めた。

顔を真っ赤に染めた五月はどこか覚悟を決めたような表情でベッドから出て、俺に近づいてきた。

 

「キ、キキキキ、キ、キス、してほしい、な?」

 

俺のすぐ真正面に立った五月は首をわずかに傾け、上目遣いでそう言った。

俺は思わず、額に手を当て、天を仰ぐ。

こういうのを確かあざといと言うんだったか。

 

「う、上杉君?」

 

天井の方を見つめる俺に心配そうな声をかけた。

 

「五月、すまなかったな。

 まさか、お前がそんなにキスしたいと思っていたとは」

 

俺は五月を見下ろし、声をかけた。

五月は真っ赤な顔をさらに紅潮させ、俺に言いかかる。

 

「ななな、なんでそんな言い方するんですか!

 まるで私が、ち、ち、痴女みたいじゃないですか!

 断固撤回を求めます!」

 

女心って言うのは本当に難解だ。

この難問、俺に解ける日が来るとは到底思えないな。

 

「わかった。さっきの言葉は撤回する。

 えっと、五月」

 

「はい」

 

俺は五月の顔に自分の顔を近づける。

五月は何をされるか理解したのか、俺の顔を見上げ、目を閉じ、わずかに唇を突き出す。

だんだんと顔を近づけていく。

こうしてみると、まつ毛長いな。

顔だちも結構整っている。

鼻もスーッと通っていてきれいな形をしている。

 

そう言えば、こうやってこいつらの顔をまじまじと近距離で見るのは初めてだな。

 

俺は唇を寸前まで近づけ、目を閉じる。

そして、そのまま唇を重ねた。

 

思えば、俺からキスをしたのはこれが初めてだ。

 

一花にも二乃にも三玖にも四葉にもキスは()()()

 

俺は五月の唇からゆっくりと自分の唇を離す。

五月があっ、と口にしたのはまだ俺としていたかったということなのだろうか。

実際、少し物足りなそうな顔をしている。

 

「俺からキスをしたのはお前が初めてだ、五月」

 

五月が大きく目を見開いた。

 

「ズルいよ。そんなこと言われたら、私……。

 上杉君、もう一回……」

 

五月がまたも潤む瞳で上目遣いでねだってくる。

こいつは多分こういうの理解せずにやってるんだろうな……。

 

「なんだ、やっぱりキスしたかったんじゃないか」

 

俺はニヤッとしてそう言ってやる。

 

「別にそういう意味じゃ、んっ!」

 

俺は五月の言葉を最後まで待たずに2度目の口づけをした。

するとすぐに、五月の舌が俺の口の中に入ってきた。

 

こいつ!舌入れてきやがった!

 

俺は五月の突然の行動に驚きはしたが、拒絶することなく受け止める。

そして、五月の舌に自分の舌を絡ませる。

俺たちは2人で夢中になり、絡め合わせる。

息苦しくなってきた俺たちは示し合わせたわけではないが、同時に唇を離す。

俺と五月の口からは涎でできた橋ができていた。

 

俺の目の前にいる五月は今まで見たこともないような恍惚とした表情を浮かべていた。

その表情を見た俺の心臓はドキッと跳ねた。

鼓動が速くなっていくのを感じる。

俺と五月は三度顔を近づけ……。

 

「ストーーップ!!!!!

 2人ともいつまでそ、そんな(いや)らしいことやってんのよ!」

 

「「へ?」」

 

部屋の入口には姉4人が真っ赤な顔をして、こっちを見ていた。

 

 




yuuco様
最高評価ありがとうございます。

ジンベエザメ様、クロジャ/時々シロジャ様
高評価ありがとうございます。

あなたの推しは誰?

  • 一花
  • 二乃
  • 三玖
  • 四葉
  • 五月

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。