無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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初めての方は、はじめまして。

前作をお読みの方は、お久しぶりです。

今回からまた、数日おきに投稿していきます。


温かい目で楽しんでいただければ幸いです。


新たな脅威

ルーデウス・グレイラットの戦いは、ひとまず終わった。

 

ビヘイリル王国での決戦からしばらく。

ヒトガミからの接触は今のところ無い。平和そのものである。

しかし、休んでばかりではない。

いずれ復活する魔神ラプラスを倒し、ヒトガミの世界へオルステッドを行かせる為の準備に奔走していた。

 

多くの仲間を得て、ルーデウスは今日も任務に励む。

 

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魔法都市シャリーア郊外

 

オルステッドコーポレーション事務所、社長室

 

そこでルーデウスとオルステッドは打ち合わせをしていた。

内容は今後の方針。他の七大列強を仲間に引き入れ、各国にコネクションを作る。

そうすることで、ラプラスが復活した時、迅速に行動を起こすことが出来る。

 

「では、今後もそのように進めます」

「ああ、任せる」

打ち合わせを終えてルーデウスは立ち上がる。

「俺はこの後、ザノバと魔導鎧の調整をして帰ります」

「ああ。ご苦労だった」

「では、失礼します」

一礼して社長室を後にした。

事務所を通り抜けて外に出る。

事務所から出ると、1人の少年が座っていた。

北神カールマン三世、アレクサンダー・ライバック。

黒髪にやや幼さを残した少年だ。

元七大列強の七位。ビヘイリル王国での決戦でルーデウスに破れ、その後、オルステッドと戦うが惨敗し軍門に下った。

現在、七大列強の七位はルーデウスである。が、アレクサンダーの強さは圧倒的だ。

「おや、ルーデウス様。打ち合わせは終わったのですか?」

「うん、これから魔導鎧の調整をして帰るよ」

「分かりました。お気をつけて」

そう言うとペコリとアレクは頭を下げる。

「それじゃあ、また明日」

「はい、また明日!」

そうしてルーデウスは事務所を後にした。

 

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シャリーア住宅区の端、グレイラット邸

 

シルフィエット・グレイラットは厨房でリーリャと夕食の準備をしていた。

「ルーシー、もうすぐご飯だからみんなを呼んできて」

「はーい」

シルフィは料理をしながら、リビングにいる長女のルーシー・グレイラットを呼んだ。

ルーシーはシルフィとルーデウスの子供だ。

子供たちの中では一番年上のお姉さんだ。

「みんなに手を洗うように言うんだよー」

「わかったー」

ルーシーは玄関へと走っていった。

庭ではエリス・グレイラットが長男のアルス・グレイラットに剣技を教えていた。

アルスはエリスとルーデウスの子供だ。

母親であるエリスゆずりの赤髪を揺らしながら、石剣を振っている。

「腰が引けてるわ。もっと腰を落として、重心を意識しなさい!」

「はい!」

エリスに指摘されながら特訓に励むアルス。

それを遠巻きに見ている1人と1匹。

ララ・グレイラットと聖獣レオだ。

ララはロキシー・Ⅿ・グレイラットとルーデウスの子供だ。

ロキシーと同じ青髪で、普段は何を考えているのか分からない表情をしている。目元は母親ゆずりである。

そのララが跨っているのは聖獣レオ。

ルーデウスが家族を守るために召喚した守護魔獣である。大きさは2メートル程で、銀の毛並みを持つ犬のような姿をしている。

パートナー兼救世主のララによく懐いている。

「あらルーシー、どうしたの?」

エリスが玄関先に出てきたルーシーに気付く。

「白ママがもうすぐご飯だって」

「そう、分かったわ。アルス、今日はここまで。手を洗ってきなさい」

「はい!」

アルスは姿勢を正すと一礼して石剣を片付けに行った。

「ララも、もうすぐご飯だよ。手を洗ってきて」

「んっ」

ルーシーに言われ、小さく頷くララ。レオに跨ったまま家の中に入ると、洗面所に向かった。

「ルーデウス、遅いわね」

エリスは腕を組んで仁王立ちをして、家の外の道の先を見ていた。

「ルディでしたら、魔導鎧の調整をして帰るそうですよ。遅くなると行っていました」

帰宅したロキシーがエリスに声をかける。

「それにしても遅いわね。…もしかして」

「なんです?」

「前みたいに、異世界に行ったとか?」

「でしたら、私たちも行くのでは?」

「必ずしも一緒に行くとは限らないわ」

「考えすぎですよ。そのうち『疲れたー』なんて言いながら帰ってきますよ」

「…そうね、嫌なことばかり考えても仕方ないわ!」

そう言うとエリスは踵を返し、ロキシーと共に家の中に入っていった。

それから数分後、無事にルーデウスは帰ってきた。

その日も、何事もなく平和な食卓を囲むのだった。

 

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翌日、オルステッドコーポレーション事務所。

 

ルーデウスはその日、ルード傭兵団の規模拡大の相談の為、妹のアイシャ・グレイラットと共に来ていた。

ルード傭兵団はルーデウスを会長とした傭兵組織だ、護衛任務などを主としている。立ち上げて間もないが、王国騎士団や魔術ギルドといった大組織からも依頼が来るまでに成長した。

アイシャはそこで『顧問』の役職に身を置いており、傭兵団の舵取りなどをしている。

ルード傭兵団は未来において、魔神ラプラスと戦う為の戦力として拡大している。

それには目的がある。

 

オルステッドは魔力が回復しない。

いや、厳密にいえば回復はする。しかし、常人の1,000倍遅い為、回復しないのと大差ないのだ。

魔神ラプラスとの戦いでオルステッドを消耗させることなくヒトガミの元へ行かせるには、魔神ラプラス及びその軍勢をオルステッド以外で倒す必要がある。

その為にルーデウスはオルステッドの名代として各国を巡り、協力者を増やしていた。

 

今後の方針が決まり、ルーデウスとアイシャは帰路に就いていた。

「お兄ちゃん、私は傭兵団に顔を出してから帰るね」

並んで歩いていたアイシャがクルリとルーデウスの前にでて振り向く。

「ああ。夕飯までには帰ってくるんだよ」

「わかった」

そう言うとアイシャは手を振りながら傭兵団の事務所へ向かっていった。

「さて、俺も帰るか」

アイシャの姿が見えなくなると、ルーデウスは再び帰路に就いた。

「また忙しくなるな」

そう独り言を言いながら、家路を進むのだった。

 

 

 

 

――――――その日、アイシャは帰ってこなかった。

 

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翌日、早朝。

 

ルーデウスはルード傭兵団の事務所に来ていた。

目的はアイシャの行方だ。

 

事務所に入ると団員達が頭を下げて迎えた。

その中に良く知る2人がいた。

「あ、ボスニャ!」

「ボス、おはようなの」

語尾に『ニャ』と付くのは獣族のリニアーナ・デドルディア。かつて魔法大学でルーデウスの先輩だった女性だ。

ネコミミをピコピコさせている。

その隣には同じく獣族のプルセナ・アドルディア。垂れた犬耳の女性だ。リニアの幼馴染であり、同じく魔法大学でルーデウスの先輩だった。

現在2人はそれぞれ役職に就いている。ちなみにリニアはルード傭兵団の代表取締役。プルセナは副所長だ。

ルーデウスは2人の元へ歩いていく。

ルーデウスの様子から何かを察した2人は身構える。

「ボス、どうしたのニャ?」

「昨日からアイシャが帰ってないんだ。2人は何か知らないか?」

「顧問が帰ってニャい?」

「本当なの?」

「ロキシーとエリスも探してるけど見つからないんだ」

「おーい、お前ら。昨日顧問を見たかニャ?」

リニアが事務所内の団員に聞こえるように大声で訊く。

「いえ、昨日は見ていません」

「自分もです」

「私も」

その場にいる団員はアイシャの所在を知らなかった。

「ボス。昨日、顧問は事務所に来てないと思うニャ」

「私とリニアは昨日、昼から晩まで事務所にいたの。でも顧問は昨日は来なかったの」

「昨日、オルステッド様の事務所からの帰宅途中で分かれてそれっきりなんだ」

「傭兵団全員で捜索するニャ」

「私たちも探すの」

「いや、2人は事務所に居てくれ。もしアイシャが来たら家まで送ってほしい」

「分かったニャ」

「了解なの」

 

ルーデウスはルード傭兵団の事務所を後にした。

 

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エリスは町の裏通りを捜索していた。

この町で人攫い。ましてやルード傭兵団顧問のアイシャを攫うということが何を意味するか、分からない裏の者はいない。

だからこそ、エリスは不思議でならなかった。

アイシャは賢い、何の痕跡も残さず失踪するとは思えなかった。

 

ちなみにシルフィは入れ違いでアイシャが帰ってきた時の為に家で待機している。

 

しばらく裏通りを進んでいくと、異様な光景が広がっていた。

人が数名倒れていた。

しかもルード傭兵団の団員だった。

腕を、足を、頭を消し飛ばされたような殺され方だ。もはや原形を留めているとは言えない状態だった。

唯一分かるのは、ルード傭兵団の制服を着用しているということだ。

その場に、あるモノが落ちていた。

髪留めだ、かつてルーデウスがエリス達と魔大陸を旅していた時にアイシャにあげた鉢金を加工して作られたものだ。

無論、持ち主はアイシャ。

「ここで攫われたのね…」

エリスは髪留めを拾い上げると、周囲を見渡す。

アイシャの髪留めが落ちているところにルード傭兵団の団員の死体。

「もしかして…」

既に死体の団員達は、攫われそうなアイシャを助けようとして返り討ちにあったのではないか?

エリスはそう結論を出した。

(この団員の殺され方、普通じゃないわね)

改めて死体を見ると、それこそ疑問が尽きない。

体を抉り取られるように殺されている。どの流派の剣技でもない、まして魔法とも思えない。

 

そこで気が付く。

静かだ、異様に。

おかしいとエリスは直感する。狂剣王の異名で呼ばれるエリスに喧嘩を売るバカは少ない。しかし、今エリスのいる場所はそもそも〝人の気配〟が無いのだ。

「一度、ルーデウスに相談し―――」

「だぁれだ、女ぁ?」

突如背後に気配を感じて飛び退く。

しかし誰もいない。いや、背後に気配を感じる。

「逃げぇるなよぉ、オイラと遊ぼぉうぜぇ」

また背後から気配を感じる。エリスは剣を抜き放ち背後を振り向きざまに一閃した。

しかし、剣は折られた。

いや、正確に言えば〝抉り取られた〟のだ。

(どうやって!?)

影が架かって姿がよく見えないが、確かにいる。

 

「―――もういいぃかなぁ」

 

次の瞬間、エリスの腹部に穴が空いていた。

「…え、…うそ?」

手から剣が滑り落ち、カシャンと音を立てて地面で跳ねた。

そしてエリスも、膝から崩れ落ちる。

口から鮮血が吹き出し。眼光が光を失っていく。両腕はダラリと垂れ下がった。

「もぉお死ぬなぁあ、まぁずは1人めぇ」

声の主は、エリスがもう立ち上がれないと判断して姿を現した。

エリスの眼前の空間が歪み、ボロボロな布を縫い合わせたコートを羽織った骸骨が現れた。

「こぉいつの剣はぁ置いておぉこうぅ。いいぃ餌ぁになぁるだろぉう」

地面に落ちているエリスの剣を一瞥し、エリスに向き直る。

「おぉまえはぁ、オイラの〝世界〟につれてぇいくぜぇ」

骸骨の腕がエリスの髪に伸ばされる。エリスに抵抗する体力も気力も残されていない。

薄汚れた白骨の手が、エリスの深紅の髪を掴んだ。

 

 

 

 

「―――そこまでにしておけ」

声がして骸骨は振り返る。

振り返った先に1人の少年が立っていた。

黒髪に純白の制服を靡かせている。

「その手をどけろ」

「なぁんだおまぁえ。だぁれだぁ?」

「たかが骨に名乗る名はないな」

「なぁんだとぉ!?」

「そいつは知り合いでな、手出しはせぬことだ」

「うぅるさぁい! 名乗らぁないなぁらぁあ、死ぃねぇぇ!」

そう言うと骸骨はエリスから手を離し、少年へ襲い掛かった。

「ふむ、そこまで名乗ってほしいならしてやろう」

少年は指先を漆黒に染めると、地を蹴って迎え撃つ。

 

 

 

 

「暴虐の魔王、アノス・ヴォルディゴードだ」

アノスの右手が、骸骨の頭蓋を掴んでいた。




お読みいただきありがとうございました。

こんな調子で今後も投稿していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。
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