無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部 作:かまぼこポテト
六面世界での話はもう少し続きます。
今後もお付き合いいただければ幸いです。
最前線にて、リヒトーは太刀を抜刀して斬り込んだ。
斬り込んだといっても、その姿を視認できた敵はいなかった。敵は、自身が斬られたと認識する前に絶命していたのだ。
『閃撃』と呼ばれるリヒトーの斬撃は音速を超える速度で繰り出され、敵を斬り倒していく。
そのリヒトーから少し距離を置いた所で、ジェイル達も戦っている。
アレクサンダーは父であるアレックス・ライバックの担当するエリアに降り立ち、敵と交戦している。
各々がそれぞれの戦場に降り立ち戦っていた。
「あれがルーデウス様が言っていた異世界の方達ですか。話にいなかった方達もいるようですが、ルークは知っていますか?」
アリエルが戦闘の様子を見守りながらルークに訊ねると、ルークは首を横に振った。
「もしかしたら、新たに仲間のなったのでしょう」
「それは心強いですね。この戦いが終わったら、盛大におもてなししなければ」
「―――そんな時間の余裕は無いだろうな」
声がして、アリエルとルークは振り向く。声がした方からオルステッドが近づいてきた。
「これはオルステッド様。戻って来られていたのですね」
「先程戻ったばかりだ」
「ルーデウス様は、どちらに?」
「シャリーアの家にいる家族を守るため、エリス・グレイラットと共に降りた」
「左様ですか。あの空を飛ぶ城は、味方ですか?」
「そうだ、異世界の魔王の配下が操縦している。向こうで仲間となった者達が戦場に降り立って戦闘を開始した」
「この戦いの後は、また異世界に向かわれるのですか?」
「ああ、その事で話がある」
「…なんでしょうか?」
アリエルの表情が変わった。
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シンエイの『アンダーテイカー』が地面を滑るように走る。
5機のレギンレイヴは減速することなく敵機工隊群へと突撃していく。
『アンダーテイカー』『ヴェアヴォルフ』『ラフィングフォックス』の3機が敵に迫るのを確認して、『スノウウィッチ』がミサイルランチャーの照準を敵機工隊群に定めて発射する。
無数のミサイルが敵に降り注ぎ、スクラップと屍を築く。異世界にて交戦した敵機工隊よりも強力な戦力を投入してきていることはシンエイ達皆が理解している。異世界で交戦したのはアーマースーツのような装備である巨神外骨格であった。しかし、現在各機のコンソールに映る敵影は戦車のような外見をした機動兵器なのである。
ミサイルランチャーの斉射で崩れた敵戦線に3機が飛び込んだ。
『アンダーテイカー』はコックピットがあるメインユニットの先端に2刀の高周波ブレードを装備している。
本体との接続にアームユニットを使用している為、フレキシブルな可動が可能だ。シンエイは接近戦に特化したプロセッサーである。故に高周波ブレードを装備した機体はシンエイのみである。
敵機の横をすり抜け、『アンダーテイカー』は高周波ブレードによる斬撃で敵機を両断していく。
後背に控える『ヴェアヴォルフ』と『ラフィングフォックス』が銃火器による支援を行い、『スノウウィッチ』によるミサイルランチャーと『ガンスリンガー』による狙撃で敵軍を次々に撃破していった。
「『斥候型―アーマイゼ―』みたいなのばかりだな」
ライデンが『ヴェアヴォルフ』の背部固定武装の40mm機関砲を斉射しながら口を開く。それにセオやアンジュが反応する。
「形も似てるし、やりやすいよね」
「どちらかと言えばヴァナルガンドに近いかしら?」
「ノロいことに変わりないね」
そう言うとセオは建物に屋上にワイヤーアンカーを掛け、『ラフィングフォックス』を跳躍させた。
建物の上に乗った『ラフィングフォックス』の背部固定武装である88mm滑空砲が火を吹き、敵機工隊機を吹き飛ばした。
戦線に投入された機工隊の2割以上が既に撃破されていた。
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リムル達が降り立った戦場は酷い有様だった。
敵の侵攻が開始された時点でアリエルは避難指示を出していた。市民を王城に近い城壁や居住区付近へと避難させたのだ。
おかげで迅速に避難が完了した。
しかし、それでも犠牲は出た。
逃げ遅れた者が僅かにいたのだ。その者達を惨殺する敵魔王軍とそれを阻止せんとする兵士達の戦闘が繰り広げられた。
しかし兵士隊は壊滅敵打撃を受けた。原因は敵が使用する魔法だ。
自分達の使うどの魔法とも違う〝異質な〟魔法に兵士達は苦戦を強いられたのだ。
残った兵士達がどうにか持ちこたえているが、長くは保たないだろう。
故に、2人は降り立った。
最も被害が深刻なエリアに。
「これは酷いな…」
惨殺された市民や兵士の亡骸を見下ろしながらリムルは言う。アノスは近くに倒れる兵士の傍に膝を着くと、絶命して見開かれている兵士の目にそっと手を載せて、ゆっくり鼻先まで下ろし、瞼を閉じてやる。
その兵士の傍らには安らかな表情の女性の亡骸もあった。
おそらく守ろうとしたのだろう。もしかしたら恋人か夫婦だったのかもしれない。
アノスにはどちらかは分からないが、この兵士が市民を守るべく戦い抜いた事だけは分かった。
「安らかに眠れ。異世界の戦士よ」
そう言うとアノスは立ち上がり、眼前の敵を視る。
「俺はちょっと腹が立ってる。本気でやるかな~」
リムルが伸びをしながら隣に並ぶ。アノスは一息吐くと、敵群へと歩き出した。
一歩遅れてリムルが続き、敵との交戦が開始された。
敵兵士はリムルとアノスの存在に気付き、攻撃を開始した。
魔法による攻撃が飛来し、周囲を炎が包む。アノスはお構いなく敵群に突っ込むと、ベブズドによって漆黒に染まった指を敵兵の1人の腹に抉り込ませた。
しかし敵兵士は腹に刺さったアノスの腕を掴むと、もう片方の腕を振り下ろした。振り下ろされた腕は金色に輝いている。敵魔王軍が使用する『闘技』の『金剛』だ。
アノスは振り下ろされた腕を掴むと、ベブズドを使用している手を引き抜いた。そのまま相手の腹を蹴り飛ばすと、敵兵士は後方へ吹き飛んだ。
「おかしいものだ…」
「どうした、アノス?」
「これまではベブズドで腹を貫けば、一撃で絶命していた」
「でも、死んでないな」
「ああ。ルーデウス達の世界に来たことで、敵になにか変化が起こったのだろうな」
アノスの言葉を聞き、リムルは考えた。
(ルーデウス達の世界に侵攻したことが原因か? それだけで強くなるのか?)
そこで思い出す。敵の目的を。
ローズバルトの目的は各世界を征服することだ。そうすることで何を得るのか、答えが分かった気がした。
「…敵は、俺達の世界に侵攻してその世界の人を殺すことで強くなるんじゃないか?」
リムルはぽつりと漏らした。現にこのエリアだけでも死者が出ている、この仮説が正しいなら、この惨状は都合が悪い。
先程アノスが蹴り飛ばした兵士が再び起き上がり、リムル達へと襲い掛かってきた。今度は、周囲にいた他の兵士と一緒にである。
「それならば、他のエリアにも伝える必要があるな」
アノスが襲い掛かる敵兵士目掛けてジオ・グレイズを放つ。漆黒の太陽が敵兵士を包み燃やし尽くす。
他のエリアでも味方兵士が戦闘で死んでいる、現在進行形でだ。アノスの言葉を聞いたリムルはアノスを向く。
「アノス、ここは任せていいか?」
「かまわんぞ」
アノスの返事を聞いたリムルは一度頷くと、翼を展開して空中へと上昇して王城に向かった。
「さて…」
リムルを視線で見送ると、アノスは残敵に向き直る。
「少しは強くなったようだが、どこまでやれるかな?」
敵兵士達が一斉にアノスに襲い掛かった。
「この世界の兵士も無念だろうからな。欠片も残さず消滅させてやる」
アノスの魔眼が妖艶に輝いた。
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「オルステッドさん!」
王城に辿り着いたリムルは、オルステッドの姿を視認すると窓から王城内に降り立った。
すぐさま警備の兵士がリムルを囲むが、アリエルがそれを制した。
「そちらがアリエル王女様?」
「お初にお目にかかります。私はアリエル・アネモイ・アスラと申します」
「リムル=テンペストだ。よろしく」
「リムル様はルーデウス様のお仲間ですか?」
「そうだな。オルステッドさんに話があって寄ったんだ」
「…なんだ?」
オルステッドが訊ねると、リムルは神妙な面持ちになって口を開いた。
「敵がこの世界にくる前より強くなっている。おそらくこの世界の人間を殺したことで力を得たんだ」
「根拠はあるのか?」
「アノスの魔法でも一撃で倒せなかった。こんなことはこれまで無かった」
その事を聞いたオルステッドは僅かに驚愕の表情を浮かべた。
アノスの強さはこの世界の七大列強上位、もしかしたらそれ以上だとオルステッドは考えていた。
そのアノスの魔法に耐える敵、少なくともこれまでの戦いではいなかった。
「アリエル。兵士を王城周囲の城壁内に退避できるか?」
「それは可能ですが。どうなさるおつもりですか?」
「これ以上死者を出せんからな。敵を城壁外に釘付けにして、一気に殲滅する」
「わかりました」
アリエルは頷くと、ルークに指令を出した。
「オルステッド様、リムル様やリヒトー様以外の方達の退避は可能ですか?」
オルステッドに向き直ったアリエルが訊ねる。
「簡単にやられる者達ではないが、伝えて回る必要があるな」
「俺はシオンやアノスに伝えてくる。一輝やハルト達への連絡は任せていいか?」
「わかった」
オルステッドの返事を聞くと、リムルは来た方角へ飛んで行った。
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「ハルトさん、城壁内への退避命令が出ました」
アレクサンダーと同じエリアで戦闘をしていた一輝がハルトに退避命令を伝える。
ハルトは敵兵士と斬り合いの最中だったが、一輝の言葉を聞き、退避を開始した。
「レナ、ムラサキ。城壁内に後退だ!」
ハルトは近くで戦闘していた2人に声をかけると、後退を開始した。しかし、敵兵はハルトと一輝を追撃する。
ハルトは振り返りざまに刀を一閃する。刀は敵兵の横腹に斬り込んだが、敵兵が絶命することはなかった。敵兵は持っていた剣を振り下ろすが、一輝がそれをいなして、ハルトが敵兵の首を落とした。
「助かりました」
後退しつつハルトが一輝に礼を言うと、一輝は走りながら頷いた。
「ハルト。トーカとクリスに後退命令は伝えたのかい?」
ハルトと併走しながらムラサキが訊ねる。ハルトは頷くと口を開く。
「トーカとクリスは城壁付近にいたから、もう退避してるだろうね」
「ならいいんだけど。あと、敵が強くなってる気がするのは気のせいだろうか?」
「多分、その通りだと思う。リムルさん達と対策を考えないといけないな」
そう言いながらハルト達は城壁内に後退した。城壁内にはすでにアレクサンダー達がいた。アレクサンダーがハルト達を見つけて近づいて来た。
「アレクサンダーさん、この後の作戦は知っていますか?」
一輝がアレクサンダーに訊ねるが、アレクサンダーは首を横に振った。
「いえ、なにも聞いていません。オルステッド様が何か作戦を考えていると思いますが…」
「アレク君、そちらが異世界の方達ですか?」
アレクサンダーに1人の男が近づいてくる。男を視界に収めると、アレクサンダーは首を縦に振った。
「はい、父さん」
アレクサンダーの隣に並んだ男は北神カールマン二世、アレックス・ライバックだった。
「はじめまして。シャンドル・フォン・グランドールと言います」
そう言うとアレックス―――もといシャンドルは右手を差し出した。
「黒鉄一輝です。先程の戦いを見ていました、随分お強いんですね?」
「これでも以前は『北神』を名乗ってた身ですので」
その回答と、先程のアレクサンダーの「父さん」発言で納得がいった。
(現北神のアレクサンダーさんがあれほど強いんだ、先代が強いのも納得だな)
一輝はシャンドルの手を握った。
その後、シャンドルはハルトとも握手を交わすと、周囲の兵士に指示を出しに向かった。
後退が完了した後の作戦がまだ発表されていない為、混乱を避けるための指示だ。
ハルトは城壁や王城を眺めながら言葉を漏らした。
「こんな世界もあるんだな」
戦いはまだ続く。
お読みいただきありがとうございました。
それでは次回でお会いしましょう。