無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部 作:かまぼこポテト
段々サブタイトルが意味不明になりつつあるのはご了承ください。
シンエイ達スピアヘッド戦隊の面々も後退を完了し、城壁内で機体から降りた。
そんなシンエイ達を味方兵士達は距離を置いて物珍しそうに見ている。
「なんか気まずいな」
「まぁ、こっちの世界じゃフェルドレスは未知の技術だろうしね」
シンエイの後ろでライデンとセオが話している。すると、人混みをわけてリヒトーがやって来た。その後ろにはジェイル達もいる。
「ノウゼン大尉。この後の作戦は聞いた?」
「いえ。〝城壁内に後退しろ〟としか聞いていません」
世界が違えど自身より階級が上であるリヒトーに対してはシンエイも敬語だった。
「オルステッドさんとアリエル王女が作戦を考えた。リムルさんの魔法で城壁外の敵を殲滅するそうだ」
「魔法。1人で、ですか?」
魔法というものをシンエイ達は知らない。以前読んだファンタジー小説で似たような文言を見た気がするが。イマイチ想像出来なかった。
「以前の戦いではリムルさん1人で敵魔王軍を壊滅させたそうだから、問題ないんじゃないかな」
「それまで、各人は待機ということですか?」
「そうなるね。アノスさんが、今のうちに休息を取っておけだってさ」
「了解」
スピアヘッド戦隊の5人が敬礼すると、リヒトーも返礼してその場を後にした。
「ということだから、各員休息を取ろう」
シンエイがライデン達を振り返ると、4人が頷いた。
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全員が城壁内に後退したことを確認したリムルは、王城の真上に滞空していた。
目的は前回の戦いでローズバルトの軍勢を壊滅させた魔法『神ノ怒―メギド―』を発動するためだ。
ローズバルトの軍勢は城壁外周を取り囲むように展開している。
(敵は前回より強くなっている。侵攻し、その世界の人間を殺す度に強くなるなら厄介だ。このまま他の世界にも攻め込まれたら、勝つことは難しくなるかもしれない)
リムルは魔法の術式を展開していく。
なるべく数を減らしておきたいと、リムルは思った。
全滅まではいかないにしても、敵が撤退するほどの打撃を与えれば、この戦いで死んだこの世界の人たちも少しは報われるだろうと考えたからだ。
術式が展開され、リムルが魔法を発動する。
「メギ―――」
「させんっ!」
地上から弾丸のように跳躍した〝何か〟が、リムルに攻撃をしかけた。
咄嗟にリムルは魔法の発動を解除し、防御態勢をとる。
「お前か!」
「させんぞ。リムル=テンペスト!」
ナニかの正体はローズバルトだった。ローズバルトはオーラを纏わせた拳をリムルへと突き出した。
リムルは両腕でガードするが、態勢を崩されて地面に落下した。
追撃をするためローズバルトはリムル目掛けて急降下しようとする。
「お前の相手は俺だ」
ローズバルトを制止したのはアノスだ。アノスに続くように各人が城壁外に躍り出た。
ハルトや一輝、スピアヘッド達が城壁外に待機している敵軍との戦闘を再開した。
アノスは漆黒に染めた指先をローズバルトの胸元へと突き出した。
しかし、その腕をローズバルトに掴まれ、阻止される。
しかしアノスは構わず『殲黒雷滅牙―ジ・ノアヴス―』を放つ。
「その魔法はもう効かぬ」
ローズバルトはアノスの腕を離すと、拳を握り絞めてジ・ノアヴスを払い除けた。
「前回から随分と強くなったようだな」
「もう貴様らに邪魔はさせん!」
ローズバルトが拳を繰り出すが、アノスは回避して距離をとる。
距離をとったまま、アノスはジオ・グレイズを放つ。漆黒の太陽がローズバルト目掛けて直進する。しかしローズバルトは両手を前に突き出してそれを受け止めた。
「この程度か、暴虐の魔王!」
ローズバルトは受け止めたジオ・グレイズを彼方に投げ飛ばすとアノスに肉薄する。
そのままアノスの腕を掴み、リムルの元へと投げ飛ばそうとする。
しかし、割って入る者が2人いた。
リヒトーと百代だ。
リヒトーが神速の斬撃を放つと、アノスを掴んでいた腕に一筋の傷ができる。
すかさず百代がローズバルトに接近しながら拳を構える。
「川神流、無双正拳突き!」
百代の渾身の拳はローズバルトの頭を捉えた、ローズバルトはアノスを掴んでいた手を離すと防御姿勢をとる。
それによって自由の身となったアノスは漆黒に染めた指先を突き出した。
狙うはローズバルトの心臓があると思われる左胸。
それを援護するように飛翔してきたリムルが刀を振り下ろす。
「うぉぉぉぉ!!」
ローズバルトは体から魔力を放出する。
放たれた魔力は強き波動となって大気を揺らし、衝撃波となって4人を吹き飛ばした。
「おいおい、冗談だろ?」
百代は冷や汗を拭いながら言葉を紡ぐ。近くの建物の屋根に着地したリヒトーも口には出さなかったが、額には脂汗が滲んでいた。
『魔法』という概念が存在しない世界から来たリヒトーと百代は、今、はじめて魔法を、それを構成する魔力をその身に受けた。
拳でも、斬撃でも、銃弾でもないその〝波動〟は、これまで2人が感じたことがない〝攻撃〟だったのだ。
しかし、それで戦意を喪失する2人ではない。
「倒し甲斐があるな…」
リヒトーと百代の瞳には、闘志が燃えていた。
そして、それはもう2人も例外ではなかった。
アノスとリムルはそれぞれローズバルトとの間合いを詰める。
ローズバルトを左右から挟撃するように同時攻撃をする。リムルは刀を振るい。アノスは雷撃を放つ。
雷撃を警戒したローズバルトは、リムルの斬撃を防ぎきることが出来なかった。
咄嗟に構えた腕が斬れて、鮮血を散らす。しかし構わず拳に風を纏わせて薙ぎ払った。
大気が渦巻き、烈風となってリムルを襲う。リムルは態勢を崩さないように耐えている。
アノスが『焦死焼滅燦火焚炎―アヴィアスタン・ジアラ―』によって炎を纏わせた拳で殴りかかった。
それにリヒトーと百代が続く。
ローズバルトはアノスの拳を片手で受け止めると、拳を強く握り絞める。
「力比べというわけか、いいだろう」
アノスも掴まれた拳が潰されないように力を籠める。
「その手、この場にてもらい受ける!」
ローズバルトがさらに力を籠めるとミシミシと音が鳴った。
「こっちも見ろよ!」
百代がローズバルトの頭に拳を叩き込んだ。
続いてリヒトーが真正面から斬撃を放つと。ローズバルトの胸元に僅かに血が滲んだ。
百代は続けざまに無数の拳を打ち込むが、全く微動だにしないローズバルトを見て戦慄する。元の世界では『武神』と呼ばれた彼女でさえ、今のローズバルトからすれば赤子同然であった。
しかし、それに続くように放たれたリムルとリヒトーの斬撃は、ローズバルトを僅かに怯ませた。
アノスは掴まれた拳にアヴィアスタン・ジアラで炎を纏わせる。
炎はアノスの拳を掴んでいるローズバルトの手を伝い、ローズバルトを包む。
「どこまで我慢できるか、見届けてやる」
ローズバルトに拳を握られながらも、アノスの口元には笑みが浮かんでいた。
炎に包まれたローズバルトの表情が険しくなり、ついにはアノスの拳を離して距離を取った。
「まだか、まだ足りないのか…」
ローズバルトは唸る。それは己の力が未だに足りていないことへの悔しさからくるものだった。
「分かったのならおとなしく自分の世界に帰り、未来永劫引き籠ることだ」
アノスはローズバルトに言い放つ。
「…このままでは終わらせぬ」
そう言うとローズバルトは姿を消した。
それに続くように敵軍の姿も消えていった。
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「敵は後退した、ということで良いのでしょうか?」
王城で戦闘の様子を見ていたアリエルが隣のオルステッドに訊ねる。
「あの様子なら、そうだろうな」
オルステッドはアリエルの問いを肯定した。
「ではルーク、兵士に休息を。それと、異世界の皆様をここへ呼んでください」
「かしこまりました、アリエル様」
ルークは一礼すると、伝令を出しに向かった。
それを見送ると、アリエルはオルステッドに向き直った。
「それでオルステッド様、すぐに異世界に向かわれるのですか?」
「いや、予定を変更した方が良いだろうな」
オルステッドはアリエルの問いを否定した。
しばらくすると、アノスやリムル達が王城に集合した。
アリエルは全員を前にして、最初に頭を下げた。
「アスラ王国国王、アリエル・アネモイ・アスラと申します。この度は、この国を救っていただき、感謝の言葉もありません」
それを聞いたアノスが口を開いた。
「俺達は仲間を助けただけだ。礼には及ばぬ」
「ルーデウス様から伺っていた通りの方がたのようですね」
「ルーデウスから聞いているなら話は早いな。アリエル陛下、俺達は魔王ローズバルトの侵攻を防ぎ、倒さないといけない。アリエル陛下にも、助力をお願いしたい」
リムルの嘆願をアリエルは頷いて答えた。
「喜んでご助力させていただきます。具体的には、何をすればよいのでしょうか?」
「まずは、敵の再侵攻に備えての準備。それと――――――」
リムルが今後の方針を話すと、アリエルは驚きの表情を浮かべる。
「そのようなことが可能なのですか?」
「俺達も出来たんだ。大丈夫だよ」
「…わかりました。準備を進めておきます」
「ありがとうございます」
そしてリムルと握手を交わしたアリエルは、全員を見渡して口を開いた。
「ところで皆様、この後すぐ異世界に向かわれますか?」
その問いを受け、各々が顔を見合わせる。
各々、「どうする?」といった問答を小声で繰り返していると、リムルが口を開いた。
「この世界に来てすぐに戦闘だったから、みんな疲れてると思うし。数日、休ませてもらっていいかな?」
「それは構いませんが。敵は放っておいて大丈夫なのですか? 私達の世界に来たように、皆様の世界に向かったのでは?」
アリエルの問いを受け。アノスが答える。
「ローズバルトの様子では、一度異世界に退却して態勢を整えるだろうな。今回の戦闘で少なくない被害を向こうも受けた、続けて他の世界を攻めようともしないだろう」
「わかりました。この世界での滞在中は、この王城の客間を用意します。ゆっくりとお寛ぎください」
「お言葉に甘えさせてもらおう」
口元に笑みを浮かべたままアノスは頷いた。
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それからしばらくして、ミサの操艦する飛空城艦がルーデウス達を連れてきた。
現在、大部屋を借りての作戦会議を行っていた。
参加者はリムル、シオン、アノス、シン、ルーデウス、オルステッド、リヒトー、ジェイル、レーナ、シンエイ、百代、大和、ハルト、クリス、一輝、刀華の16人とアリエルとルークを合わせた18人だ。
他の面々はそれぞれ観光や休息などで羽を伸ばしている。
「それじゃあ、今後の方針だけど。次にローズバルトが攻めるのは、ここ以外の世界だと俺は思うんだけど、みんなはどう思う?」
リムルが議題を切り出すと、各々顔を見合わせて話し合う。
「質問いいですか?」
ルーデウスが挙手する。
「なんだ、ルーデウス?」
「〝ここ以外の世界〟といった根拠はなんですか? 再襲来の可能性もあると思いますが?」
「いくつか理由はあるけど、あえて言うなら〝目的を果たした〟からだと俺は考えている」
「〝目的をはたした〟ですか…。征服は完了していませんが?」
ルーデウスは首を傾げて頭上に?マークを浮かべる。そんなルーデウスをニコニコと見ながらリムルは説明を開始した。
「ローズバルトはこの世界に来る直前〝我は貴様達の世界に侵攻し、力を得る〟って言ってた、征服はそのついでなんじゃないかと思うんだ」
「敵は〝侵攻すること〟が優先目的であって〝征服すること〟まではそこまで本気じゃないと?」
問いを口にしたのはハルトだ。そのハルトにリムルは頷くと説明を再開した。
「現に、先程の戦いではあっさり撤退した。この世界に〝来た〟時点で敵の目的は完了したのかもしれない。あるいは、それぞれの世界の住人を一定数殺害した時点で」
リムルの考察を聞き、多くの者が戦慄した。リムルやアノスといった『魔法』を使用できる者達の世界なら、侵攻されても持ち堪えることが出来るかもしれない。だが、ハルトや百代達の世界には『魔法』というものが存在しない。
もしローズバルトの軍勢が攻めてきた時のことを考えると、ハルトや百代達の心境は穏やかではなかった。
「世界を渡る手段が確立した今、各々の世界を巡って危機を伝えるべきではないでしょうか?」
姿勢よく挙手をして発言したのは刀華だ。刀華の言葉を受けてリムルは一同を見渡して言った。
「確かにその通りかもしれないな。俺とアノスと、ここの世界は前回の事を踏まえて準備をしているが、ハルトや一輝達の世界はそうはいかないだろうし」
「では、いくつかにチームを分けて手分けして各世界を巡る方が良いだろうな」
アノスが賛成の姿勢を見せると、一同もそれに呼応するように頷いた。
結果、チームを3つに分けて行動することになった。
リムル達と一輝達ブレイザーの面々とハルト達SORDの面々のAチーム
アノス達とシンエイ達ギアーデ連邦組とエルネスティのBチーム
ルーデウス達と百代達川神学園生徒とリヒトー達のCチーム
この構成で各世界を周り、警戒を喚起していくのだ。
出発日前日。
ルーデウスとエリスは久しぶりに家族との食事を楽しんだ。
シルフィとロキシー、それに子供達もルーデウスとエリスの帰宅を心から喜んだ。
「では、明日には出発するのですか?」
食事を終えて夫婦4人で寛いでいるとロキシーが問うてきた。ルーデウスは頷き、安心させるように答える。
「ええ、明日の朝にはアノスさんが創った飛空城艦で出発します」
「危険は無いの?」
シルフィが不安そうな声で訊ねるとエリスが胸を張って答えた。
「ルーデウスは私が守るから心配いらないわ!」
「お願いねエリス」
「ルディを頼みました」
シルフィとロキシーからルーデウスを任されたエリスは誇らしげに口元を緩ませた。
「ところで、今回はリムルさんやアノスさん達以外の方も多いようですね」
ロキシーは先程の食事中にルーデウスが話していた他の世界の戦士達のことが気になっていた。
「はい、今回は俺達だけではなく様々な世界から戦士が来ています。必ずアイシャを助け出して帰ってきます」
「気をつけてくださいね」
「シルフィとロキシーともしばらく会えませんが、体に気をつけてください」
そのルーデウスの言葉を受けたシルフィとロキシーは笑顔を浮かべる。
「じゃあさ、ルディ。今夜は…、するの?」
少しモジモジしながらシルフィが訊ねる。
やや上目遣いのシルフィの姿にルーデウスは固唾を飲む。
「そ、そうだね。今夜は3人でシようか」
出発前夜。
その夜はルーデウスにとって〝アツい〟夜となった。
お読みいただきありがとうございました。
次回からまた別の世界に舞台が移ります。
今回冒頭、シンエイがリヒトーに敬語を使っていた理由を『階級が上』と書きました。
これは原作でシンエイは『大尉』、リヒトーは『上級大将』だからです。
アニメ勢の方はネタバレすいません…。
今後もお付き合いいただければ幸いです。
それでは次回でお会いしましょう。