無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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閲覧いただきありがとうございます。

今回から異世界漫遊の旅が始まります。

今後もお付き合いいただければ幸いです。


死神の世界へ

出発日当日。

 

アスラ王国の外れの平原に3隻の飛空城艦が鎮座していた。

 

リムルとルーデウスはそれぞれの飛空城艦の艦橋で操艦のレクチャーを受けていた。

その間にシンエイ達の搭乗するレギンレイヴやレーナの搭乗する装甲指揮者が格納されていく。エルネスティのイカルガも例に漏れず格納された。

「やれそうか。ルーデウス?」

艦橋にてミサからレクチャーを受けていたルーデウスのもとにオルステッドがやってきた。

「初めての経験ですが、何とかなると思います」

「そうか。任せたぞ」

そう短く言うとオルステッドは艦橋を後にした。

居住スペースにはリヒトーとジェイル、そしてアレクサンダーとシャンドルがいた。

シャンドルは今回の遠征にアリエルへの報告役も兼ねて同行することとなった。

4人は何やら話しているようだった。オルステッドが近づくとリヒトーが気配に気づき顔を向けてきた。

「オルステッドさん。ルーデウスの方は大丈夫ですか?」

「ああ、あの様子では問題ないだろう。ところで、何を話していたんだ?」

オルステッドが訊ねるとアレクサンダーが目を輝かせた。

「リヒトー様達の世界にいる『撃墜王』という強者の話を聞いていたところです!」

「撃墜王、とはリヒトー達もそうだったか?」

「はい、ボク達4人も撃墜王です。他の3人と合わせて撃墜王は7人います」

「〝七大列強〟のようなものか…」

「〝七大列強〟とは、オルステッドさん達の世界の方達ですか?」

「そうだ。俺は第二位で〝龍神〟と名乗っている」

「龍の神、ですか。ではルーデウスは第三位とかなんですか?」

「いや、ルーデウスは七位だ。七大列強は空席もあるからな、7人全員いるわけではない」

「なるほど」

「それで、リヒトー達が使う技はどんなものだ?」

「ボクは〝凄く速く動く〟ことが出来るので、『閃撃』と呼ばれています。道安は〝重力を操る〟ので『重撃』。園原は〝放った弾丸が敵を追尾し続ける〟ので『追撃』と呼ばれています」

「園原が使用していた武器はSORDの面々が使っていた物と似ていたが同じものか?」

「構造原理は同じだと思いますが、〝全く同じ〟物ではないと思います」

「そうか。先にリヒトー達の世界に向かう。現地での案内を頼むぞ」

「わかりました」

 

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「では向かうとするか」

3隻の飛空城艦の発進準備が完了すると、アノスは操舵を担当するミサに目配せする。ミサはアノスの視線を受けると頷き、飛空城艦を離陸させた。それにリムルとルーデウスの飛空城艦も続くように離陸すると上昇して、世界の向こう側へと旅立った。

 

ルーデウス達の世界を出た一行は世界の奔流を進む。

そして、目的の世界にそれぞれ向かっていった。

 

アノス達が最初に向かうのはシンエイ達のいた世界。

 

リムル達が最初に向かうのは一輝達の世界。

 

ルーデウス達が最初に向かうのはリヒトー達の世界だ。

 

 

「ミリーゼ」

アノスは艦橋で待機しているレーナに声をかける。声をかけられたレーナはアノスを振り返る。

「なんでしょうか、アノス陛下?」

「ミリーゼ達の世界の情勢は先程聞いたが、世界に入った後のことは聞いていなかったな。どうするつもりだ?」

「まずは、我々が所属する共和制ギアーデ連邦に向かいます。上層部に今回の件の報告をする必要がありますから」

「その後、敵魔王軍の存在を話して迎撃の準備をさせる、という事か?」

「そうです。ですが、簡単に信じて貰えないでしょう…」

「俺達も行くのだ、嫌でも信じるのではないか?」

「そう思いたいです。ギアーデ連邦の上層部はまだいいと思いますが…」

そう言うレーナの表情は曇っていた。

「何か問題があるのか?」

「いえ、問題という程ではないと思いますが…」

歯切れ悪く答えるレーナ。アノスは察して言葉を紡ぐ。

「信じて貰えない。いや、信じようと、理解しようとしない者達がいる。といったところか?」

「…そうです」

「それは、ギアーデ連邦の上層部の者達ではないな?」

そうアノスが問うと、レーナは俯き気味に答えた。過去の汚点を、思い出したくないものを思い出すかのように。

「私たちの世界には4つの国家が存在することは、お話ししたと思います…」

「確かに聞いたな」

「その国家の内の一つである『サンマグノリア共和国』。私やノウゼン大尉達がかつて所属していた国ですが、そこは信じないでしょう」

「ノウゼン達や同胞を最前線で使い潰してきた国、だったか」

「そうです。おそらく彼等は、私やノウゼン大尉達の言葉を聞かないでしょう」

「その結果、自分達が滅びたとしてもか?」

「おそらくは…」

「救いようが無いな。だが、それでも行かなければなるまい」

「ありがとうございます…」

「礼など不要だ」

そう話している内にレーナ達の世界が見えて来た。白濁とした水晶のような球体状の形をしており、近づくにつれて大きくなってくる。

そこで疑問が生じた。

「以前この空間を渡った時よりも形がハッキリしていますね」

そう言ったのはシンだ。〝以前〟というのは刺客たちを追いこの奔流を渡った時のことだ。その時はシャボン玉のように揺れて、近づけば弾けそうな程であったが、今はしっかりと球体を形成している。

アノスはその様子を観察すると、口を開いた。

「ローズバルトが世界を渡ったことで、何らかの影響が生じたのだろうな。ミサ、そのままミリーゼ達の世界に入れ」

「そのまま入って大丈夫でしょうか?」

「問題あるまい。いいか、ミリーゼ?」

「はい、お願いします」

レーナの返答を受け、アノス達の乗る飛空城艦は世界の1つへと足を踏み入れた。

 

 

 

レーナ達を乗せた飛空城艦が進入した先は共和制ギアーデ連邦遠方のレギオン支配域だった。

「この付近はレギオンの支配域です、警戒して進みましょう」

レーナが周囲を見渡しながら言う。

「レギオン。ミリーゼ達が戦っている無人機械だったな」

「はい。かつてギアーデ帝国が起動したレギオンは独自生産を行い、勢力を拡大してきました」

「しかし、戦線を大分押し返したと言っていなかったか?」

「それでもレギオンの支配域はいまだ存在します。いま私達が飛んでいるこの場所も、安全ではありません」

そう言っていると艦橋にシンエイが上がってきた。

「レギオンが来ます」

「なぜ分かるのだ、ノウゼン?」

シンエイの言葉の真意をアノスが訊ねる。シンエイはアノスの方を向くと口を開いた。

「俺はレギオンの〝声〟を聞くことが出来ます。この先にレギオンの部隊が展開しています、迎撃か迂回を進言します」

「ノウゼン達が戦っている敵に興味があるな。ミサ、このまま前進だ」

「前進ですか…? 安全に迂回した方がいいんじゃ?」

「異世界の無人機械に臆する俺ではないぞ。立ち塞がるなら突破するだけだ」

「わかりましたぁ~」

ミサは不安そうだが、自分達の魔王が〝前進〟と言っている以上、選択肢は前進しかなかった。

しばらくすると飛空城艦の進路上に青銀の機械兵器の一団が確認出来た。レギオンだ。

「あれがレギオンか。見たところ様々な形状があるようだが?」

艦長席から立ちあがり、窓からレギオンを観察するアノスの問いにレーナが答える。

「レギオンはその形状によって種別を分けます。種別ごとに役割があり、それらが群を形成したのがあのような一団です」

「あれは戦力としては脅威になるのか?」

「ノウゼン大尉達であれば問題無いと思います」

「なら、俺も出るとしよう」

アノスは艦橋からドックに続くタラップへと向かう。そのアノスをレーナが呼び止める。

「本気ですか、アノス陛下?」

「本気だ。俺の実力がこの世界で通用するか試してみたい」

「わかりました。ですが念のため、ノウゼン大尉達を護衛につかせます」

「かまわんぞ。シン、ここは任せる」

「御意」

シンの返事を聞くとアノスは艦橋から降りて行った。残されたレーナはシンエイに目配せすると、シンエイは頷き、アノスの後を追った。

 

 

飛空城艦の底部がハッチのように開くと、そこにはアノスとスピアヘッド戦隊の面々が駆るレギンレイヴの姿があった。

飛空城艦がレギオン群の上空に差し掛かると、アノスはハッチから飛び降りる。

それに続くようにスピアヘッド戦隊の面々も降下していく。

レギオン群の中央に降り立ったアノスは、自身を取り囲むレギオンを見渡す。

未知の存在に最初は戸惑う様子を示したレギオンだったが、近くにいた『斥候型―アーマイゼ―』がアノス目掛けて機関銃を連射した。

アノスは機関銃の掃射を軽やかに飛び退いて躱すと、ジオ・グレイズを放つ。

漆黒の太陽がレギオンを飲み込み、スクラップに変える。

しかし大型個体である『重戦車型―ディノザウリア―』に対してはジオ・グレイズも有効打にはならず、装甲の表面を僅かに焦がす程度であった。

「図体は伊達ではないようだな」

アノスは魔法陣を展開し、エギル・グローネ・アングドロアの魔法陣を展開するとディノザウリアへと放つ。

大気を、世界を揺らしながら終末の火がディノザウリアを包み、今度こそスクラップに変える。

 

「滅茶苦茶だね」

「〝魔法〟ってのがあればフェルドレスいらねぇじゃんか」

アノスから少し離れた場所で戦闘していたスピアヘッド戦隊の面々は、アノスの戦いぶりを見て感嘆した。

現在スピアヘッド戦隊はシンエイの〝アンダーテイカー〟を前衛として戦闘を継続中である。

シンエイはアンダーテイカーの機体前部に装備された左右の高周波ブレードを巧みに操り、レギオンを片付けていく。

その背後を守るようにライデンの〝ヴェアヴォルフ〟が火力支援を行い、セオの〝ラフィングフォックス〟はシンエイの狩り損ねたレギオンを掃討していく。

アンジュの〝スノウウィッチ〟とクレナの〝ガンスリンガー〟は後方支援だが、アノスに当る可能性を懸念して攻撃範囲を狭めての支援を行っていた。

「戦隊各位。こちらに注意を向けているレギオンを掃討後、アノス陛下の支援に向かう」

シンエイが各員に通信を送る。各々の返事が返ってくる中、ライデンは苦笑気味だった。

「だがシン。陛下のアノ様子じゃあ、支援は必要無いんじゃないか?」

ライデンの言葉を聞いてシンエイは『確かに』と思った。

現在アノスの表情は余裕そのもので、とてもじゃないが支援が必要そうには見えなかった。

シンエイと同じスピード、あるいは僅かに早くレギオンを片付けている。

対レギオン戦の〝スペシャリスト〟であるシンエイに対して、である。

気が付けばアノスの周囲にあるのはレギオンのスクラップだけだった。その姿にスピアヘッド戦隊の面々は僅かに戦慄した。

フェルドレスを使用せず。〝魔法が使えること以外は生身〟の存在と認識していた存在の強さを再認識した瞬間だった。

そして、その事実はシンエイ達に1つの不安を覚えさせた。

レギオンをものともしないアノスが倒しきれない存在、ローズバルト。

もしローズバルト率いる魔王軍が自分達の世界に侵攻してきたらどうなるだろうか? と。

答えは簡単だ、敗けるだろう。

侵攻初期の頃は物量差で拮抗するかもしれないが、それも時間の経過によって状況が変わるだろう。

こちらの人間を殺して力を強化する敵。戦況が不利になれば戦死者は少なからず出るだろう。

 

 

 

そうなれば、結末は。

 

そう考えていたのはシンエイだけではなかった。

レーナも少なからず、シンエイが感じた不安と同じものを感じていた。それと同時に決意した。

「必ず、ローズバルトを倒しましょう…」

飛空城艦の艦橋でレーナはそう呟いた。

「無論じゃ」

隣にいたフレデリカが大きく頷いたのだった。




お読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみいただければ幸いです。

それでは次回でお会いしましょう。
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