無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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会合

ギアーデ連邦に近くなるにつれてレギオンの姿は見られなくなった。ギアーデ連邦の街並みが艦橋から見えてきたところでサーシャがレーナに訊ねた。

「レーナ達の国に向かうのはいいとして、向こうは私達のことを知らないのよね?」

「はい。〝魔法〟という概念も、この空を飛ぶ城のことも未知の存在だと思います」

「いきなり撃ってきたりしないわよね…?」

「飛空城艦の真下をノウゼン大尉達が行軍していますから、それは無いと思いますが…」

現在アノスは艦橋に戻り、シンエイ達スピアヘッド戦隊が飛空城艦の真下を行軍する形でギアーデ連邦へ向かっていた。

シンエイ達が真下を進むことで、その上空の飛空城艦が敵ではないというアピールをする為である。

そしてその目論見通り、飛空城艦はギアーデ連邦国内に入国することが出来た。

 

 

 

そして現在、レーナとシンエイ、アノスの3人はギアーデ連邦暫定大統領であるエルンスト・ツィマーマンと対面していた。

現在応接室にはレーナとアノスがソファに座り。レーナの背後にシンエイが控えている。

それに向かい合う形でエルンストがソファに座り、背後にはヴィレム・エーレンフリート准将とリヒャルト・アルトナー少将が控えている。

最初に口を開いたのはリヒャルトだ。

「それで、ミリーゼ大佐。貴官らが姿を消していた数日間、貴官らは別の世界に行っていたと?」

「はい」

「俄かには信じられないが、大佐の横にいるアノス陛下の存在がその証拠になるか…」

「我々がいる世界は、数ある世界の一つに過ぎません。そして、その世界全てを巻き込んだ戦いが起こっています」

「すこしいいかな?」

そこでエルンストが口を挟む。眼鏡の奥の瞳を細めてレーナを見る。

「敵は我々に対して必ず敵対するのかい? ミリーゼ大佐」

「はい。敵は我々を〝適応者〟と呼び、我々の世界に侵攻することを目的にしています。征服までは目的ではないと思いますが、侵攻してくる可能性は非常に高いと考えられます」

「敵はそれほどまでに脅威なのかい?」

「はい」

「しかし、こちらの戦力で対応出来るのではないか?」

そう言うヴィレムを見てレーナは首を横に振った。

「こちらにおられますアノス陛下は、生身でレギオンを殲滅出来ます。それも、ディノザウリアなども含めたレギオン群をです」

そう聞いてエルンスト達の顔色が変わった。驚愕に、だ。

基本人間は生身でレギオンには勝てない。ライフルなどで武装したとしても限界がある。例外としてヴィレムは白兵戦に長けており、『近接猟兵型―グラウヴォルフ―』程度なら相手を出来る。

しかしディノザウリアを相手に出来、かつ撃破出来るとなれば驚く他なかった。

「しかし、敵の大将であるローズバルトはアノス陛下やそれに並ぶ強さの方達で挑んでも倒しきれませんでした」

レーナの発言を聞いてエルンスト達は黙る。

「しかし、レギオンの相手をしつつ異世界の敵に対処するのは難しいな」

リヒャルトの言葉にヴィレムも同意するように頷く。

「レギオンとローズバルト軍が戦闘して、潰し合う可能性は?」

エルンストがレーナに訊ねるが、レーナは答えることが出来ず黙る。代わりに口を開いたのはアノスだった。

「割り込んで悪いが、そうなったとしても意味がない」

「どういう事でしょうか、アノス陛下?」

「ローズバルトにとってレギオンは脅威ではないからだ。レギオンを撃破しながらでも、この国や周囲の国を襲撃するだろう」

「そうなれば、この国だけの問題ではなくなりますな。閣下、周辺国家にも知らせるべきでは?」

リヒャルトの提案を聞いたエルンストは、しばし俯き考えた。

そして顔を上げてアノスを見る。

「アノス陛下。敵が侵攻してくる時期はわかりますか?」

「現在は戦力を整えている頃だろう。もう少しは猶予があるだろう」

「そうですか―――――」

 

「―――――ただ。すぐにこの世界に侵攻してくるかは分からぬ」

「と、言いますと?」

「先程ミリーゼ大佐からも話があったが、世界は無数に存在する。この世界がどのタイミングで攻撃を受けるかは分からぬのが現状だ」

「それでは我々は、いつ襲ってくるか分からない敵に対して準備する必要があるということでしょうか?」

そう言ったのはヴィレムだ。

「それを伝える為に来たのだ。それと、ミリーゼ大佐とノウゼン大尉達を借りたい」

アノスの申し出を受け、リヒャルトとヴィレムは苦い顔をする。

理由はレーナとシンエイにすぐわかった。レーナとシンエイ達はギアーデ連邦の精鋭戦力。未知の脅威が迫る中、彼女らが欠けることはギアーデ連邦にとって痛手だ。

しかし、1人だけ、それに賛同した者がいた。エルンストだ。

「分かりました。ですが条件があります、アノス陛下」

「なんだ?」

「ミリーゼ大佐達を無事に帰すこと。これだけは守っていただきたい」

強い視線でエルンストはアノスを見る。

「わかった。元よりそのつもりだしな」

エルンストの目をしっかりと見てアノスは返答した。

「ありがとうございます…」

「礼を言うのはこちらだ」

そう言ってアノスは右手を差し出した。エルンストはそれを強く握った。

握手の後、エルンストはシンエイに訊ねた。

「ところでシン。フレデリカは連れて行くのかい?」

その質問を受けたシンエイはいつもの愛想の無い表情のまま答えた。

「〝ここに残れ〟と言ったところで大人しく残るとは思いませんが?」

「それもそうだね、わかった。頼んだよ、〝お兄ちゃん〟」

そう言われ、少し嫌そうな顔をするシンエイであった。

 

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一方、サーシャ達は飛空城艦が停泊している基地にいた。

ミーシャ、レイ、ミサ、シンに加えてセオ、アンジュとクレナ。それとフレデリカもいた。

ライデンはレギンレイヴの整備の打ち合わせの為ここにはいない。整備クルーとドックに行ってしまった。

それとエルネスティはライデンに頼み込んでついていった。レギンレイヴをはじめとするフェルドレスを生で見る為である。

「シンとレーナ、遅いね」

セオが頭の後ろで腕を組みながら溢す。

「アノスが余計なことを言ってなければいいけど…」

横でサーシャが溜め息を吐く。

そう言っているとシンエイとレーナとアノスが戻ってきた。

「おかえり。随分長かったけど、何かあったの?」

アンジュがシンエイに訊ねる。

「状況を理解してもらうのに時間がかかった」

「まぁ、突飛な話だもんね…」

そう言うクレナはシンエイが戻って嬉しそうだった。シンエイは周囲を見渡しセオに訊ねる。

「ライデンは? それとエルネスティも」

「整備長と打ち合わせ中。大分酷使したから整備に出した方がいいってさ。エルは、フェルドレスを見る為について行ったよ」

「そうか。だが、整備が終わり次第また出発することになった」

シンエイの発言を聞いてスピアヘッド戦隊の面々が表情を変える。

「もう行くの? 早くない?」

「ていうか、よく上が許可したね?」

クレナとセオにシンエイは神妙な表情で返す。

「お前たちを借りたいと言ったのは俺だ」

そこでアノスが口を挟んできた。セオがアノスに訊ねる。

「でも、僕たちが戦力として必要?」

「未踏大陸で合流前に敵魔王軍を幾度となく撃退、撃破したとミリーゼからは聞いている。ともに戦って欲しいものだがな」

「わかったよ。ところでレーナ、行くメンバーは変わらないの? シデン達も連れて行く?」

セオの問いにレーナは数秒考えた後、答えた。

「いえ、多くの戦力を連れて行く許可は出ませんでした。参加するのは我々7人です」

「7人…、てことはフレデリカも?」

「ええ」

「まぁ、行くなと言っても聞かないだろうしね」

そう言うセオを見ながらレーナは少し笑った。

「シンと同じことをいいますね」

「簡単に考え付くと思うけど。ところでシン、ファイドはどうするの。連れて行く?」

「ああ」

シンは頷くと、ドックの方を見る。その視線の先にはこちらに近づいてくるオレンジ色の〝スカベンジャー〟がいた。

それと、一緒にこちらに来るライデンとエルネスティも。

 

「整備と持参するパーツの準備にもうしばらく掛かるらしい。それまで待機だな」

戻ってきたライデンが整備長との打ち合わせの内容を報告する。

「それと、ファイドを連れて行くだろうと思ってコンテナの準備は頼んでおいたぜ」

「ありがとう、ライデン」

『ピ、ピピピ、ピ』

シンエイの隣でファイドが電子音を鳴らす。しかし、何を言っているかは全く分からなかった。

ただ一人を除いて。

「一緒に来てくれるか?」

『ピピ、ピ、ピピピ』

「そうか」

シンエイが訊ねるとファイドは電子音で答えた。シンエイはファイドが何を喋ったか分かるかのように答えた。

「え? シンエイさんには何を言ったか分かったんですか?」

ミサが訊ねるとライデンが答える。

「ファイドが何を言っているかはシンにだけ分かるんだよ。俺達は何のことかさっぱりだけどな」

「何かしらの特殊技能なのかい?」

訊ねたのはレイだ。ライデンは少し考えると問いに答えた。

「俺達もよく分かってねぇんだ。だが〝特殊能力〟みたいなのはシンにはある」

「どんなものだい?」

「シンはレギオンの〝声〟を聞くことが出来るんだ。それでレギオンの大体の位置が分かる」

「じゃあ、対レギオンに於いてはノウゼン大尉は重要な戦力ってことだね?」

「最初は気味悪がった奴もいたけどな…」

「でも僕達自身、シンに助けられてきたからね」

とセオ。その横ではアンジュとクレナが笑っている。

「…いいチームなんだね」

「付き合いが長いだけだ」

レイの言葉をライデンは否定したが、その表情は満更でもない様子だった。

 

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レギンレイヴの整備と補給が完了した。ついでとばかりに機体の修理パーツなどが満載のコンテナも準備された。

それらの飛空城艦への格納が完了すると、アノスの号令のもと飛空城艦は離陸した。

次の世界。エルネスティがいた世界に向かうために。

基地の滑走路から離陸する飛空城艦をレーナ指揮下の隊員達やエルンスト達が見送る。

フレデリカは艦橋から大きく手を振っていた。

「もう見えてないだろう」

フレデリカの背後に足音一つ立てずにシンエイは立っていた。フレデリカはもう慣れたのか、驚く様子は無かった。

手を振るのを止めて、シンエイに向き合う。

「それでも、〝行ってくる〟と伝えることは大事なことじゃ。お主たちこそ少しは手を振れば良かったものを」

「別に戻って来るつもりだし。そんなことをしなくてもいいだろう」

「良くないわたわけ。ミリーゼはシデン達に手を振っておったぞ。お主も少しは見習うべきじゃな」

「必要ない」

「…まぁよい。次はエルネスティの世界じゃったな」

「ああ」

「すぐに着くのじゃろうな。この魔法とやらで動く城は」

「使ってみたいのか、魔法を?」

そう訊かれたフレデリカは少し考えると頭を振った。横に。

「べつにそうは思わぬ。わらわは自分に不満を抱いてはおらぬ、このままでよいのじゃ。それに…」

そこでフレデリカは言葉を切って、シンエイの顔を正面から見る。

「わらわ達が持つ〝血の力〟も、考え方によっては魔法じゃろうからな」

「…そうだな」

シンエイは頷くと、格納庫へと降りて行った。

「〝血の力〟とはなんだ、ローゼンフォルト?」

艦橋の玉座に座ったままのアノスがフレデリカに訊ねる。フレデリカはアノスに向くと、その瞳を深紅に染める。

「わらわ達の世界では稀に〝異能〟と呼ばれる特殊能力を持って生まれる者がいる。シンエイの〝死者の声が聞こえる〟というもののように、わらわにも〝見知った者の過去と現在を見る〟力がある」

「ノウゼンは〝レギオンの声が聞こえる〟のではなかったか?」

「そうじゃ。レギオンは人間の脳を取り込んでおる。シンエイが聞いているのは〝生きていた者〟の声じゃ」

「気分のいい話ではないな。ではお前達は〝同胞だったナニか〟と戦っているというのだな?」

「…そうじゃ」

フレデリカは表情を険しくして頷いた。アノスはそれ以上この話題に触れなかった

 

「それでアノス陛下。次は僕のいた世界に向かうということでよろしかったでしょうか?」

艦橋に上がってきたエルネスティがアノスに確認する。

「ああ、エルネスティの世界にも知らせておくべきだろうからな」

「ご厚意感謝します」

「1つ聞くが。お前とローズバルトが戦った場合、勝てるか?」

アノスに訊かれたエルネスティは考え込むと、しばらくして口を開いた。

「実際に戦ったことがないので分かりません。こちらからすれば相手は小さすぎますから、捕捉に手間取ると思います」

「そうか。ではもしローズバルトがいたのなら、俺が相手をしよう」

「お願いします」

エルネスティは頭を下げた。

そうしている内に飛空城艦は世界の壁を越えて〝世界の奔流〟へと飛び出した。

アノスが玉座から立ち上がり、艦橋前方の窓へと近寄った。

窓から見える青白い世界。川の流れを彷彿とさせるその奔流の中に、いくつもの世界が漂っている。

その中には数日前まで滞在していたルーデウス達の世界もある。

「エルネスティ。お前の世界はどれだ?」

揺蕩う無数の世界を見比べながらアノスは訊ねる。エルネスティはシャボン玉のように揺蕩う無数の世界を見ていく。

「見当たりません。どれも知らない世界です」

「もう少し先に進むか。ミサ、前進だ」

アノスの指示を受けたミサは飛空城艦を前進させる。世界の奔流を進む飛空城艦の艦橋の両脇を世界を形成するシャボン玉が過ぎていく。

「この無数の世界の中に、いまだ未知の世界があるのでしょうか?」

通り過ぎていくシャボン玉を艦橋から眺めながらレーナは言う。

「その可能性はあるだろうな。ざっと見る限り、俺達の世界よりも多くの世界がこの空間には存在している」

そう、アノス達はそれぞれ9つの世界から集まった者達だ。

しかし現在アノス達がいる空間には9つどころではない数の世界が存在している。

 

軍服に身を包んだ幼女が銃を手に戦場を闊歩している世界。

 

黒髪の男が勇者のような鎧を纏う男と殺し合いをしている世界。

 

髑髏顔のアンデットが配下を従えて覇道を歩む世界、など様々な世界が流れていく。

 

「ありました。あそこです!」

エルネスティが指さした方向にはシャボン玉が浮かんでいる。

「あれで合っているのだな、エルネスティ?」

「間違いありません。あそこに向かってください」

「わかった。ミサ!」

「わかりましたアノス様。正面の世界に向かいます」

そう言うとミサは飛空城艦の進路をエルネスティが差した方向にある世界へと変える。

「エルさんの世界、私達のとは違う技術体系を持つ世界ですね」

「楽しみじゃの!」

飛空城艦の進行方向を見ながらレーナとフレデリカも期待の声を漏らす。

一同を乗せた飛空城艦は、エルネスティの世界の壁に触れた。




お読みいただきありがとうございました。

次回の投稿ですが、出張の為少し遅れるかもしれません。

叶うなら、次回もお楽しみいただければ幸いです。

それでは次回でお会いしましょう。
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