無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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閲覧いただきありがとうございます。


大分駆け足で話が展開していますが、ご了承ください。


世界を超えて

「なぁあにぃ!?」

骸骨は、頭蓋を掴まれた事実を理解できずにいた。

「ようやく離したか。どうする、このまま続けるか?」

「暴虐の魔王ってぇ言ったかぁ?」

「ああ」

「なぁぜ、おまぁえがぁこの世ぇ界にぃ?」

「お前たちの仲間を追って来たら辿り着いたのだ」

「あぁいつらぁ、無ぅ能ぅめぇぇ」

「お前たちには聞きたい事がある。このまま来てもらうぞ」

アノスは頭蓋を持ち上げると『魔黒雷帝―ジラスド―』を骸骨に浴びせる。

黒き雷撃が骸骨を包む。

「ぐぅ、ごぉお!」

骸骨は苦悶の表情を浮かべながらも耐える。

「おぉまえぇのぉ、思いぃ通りにぃはぁさせぇん!」

骸骨の体が歪み、消えていった。

「別の次元に住む異形、といったところか」

アノスはエリスに向き直る、既にエリスの体力は限界に近い。

「効くかは分からぬが」

アノスはエリスに掌を向けて魔法陣を展開する。

「『治癒―エント―』」

エリスに治癒魔法を掛けると、みるみる傷が治っていく。空いた腹部も塞がって元通りになった。

傷が回復すると、エリスが立ち上がる。

「ありがとう、アノス」

「なに、礼には及ばぬ。それより、あの骸骨はなんだ?」

「わからないわ。あんな種族はこの世界にはいないし」

「この世界の者でないとするなら、異世界の敵と見るべきだろう」

「一度、家に来て。ルーデウス達も交えて話しましょう」

「そうだな。案内してくれ」

エリスに案内され、アノスはグレイラット邸へ向かった。

 

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ルーデウス邸、リビング。

 

「アノスさん、エリスを助けてくれてありがとうございました」

食卓に手をついてルーデウスが頭を下げる。向かいにはアノスが座っている。

「共に戦った仲だ、礼には及ばぬ。それに俺も奴らには少々因縁があったからな」

「アノスは連中を知ってる様子だったけど、何かあったの?」

エリスがアノスに訊ねる。アノスは出されたお茶を一口飲むとエリスに向き直る。

「こちらの世界にも来てな。追い返して付いて来た」

「アノスさん。敵はもしかして…」

「ああ。おそらく〝異世界〟の者で間違いないだろう」

「魔王ローズバルト、ですか?」

「間違いないだろうな。奴は前の戦いで『決着の時はいずれ来る』と言っていた。その時が来たのだろう」

「今度は攻めてきた、ってことでしょうか?」

「まだ偵察の段階だろうが、今後大軍で来る可能性はあるだろうな」

アノスの言葉を聞き、ルーデウスの表情が曇る。

前回の戦いでは『魔力が無限』という恩恵がある状況での戦いだった。

故にルーデウスも、オルステッドも魔力切れを気にせず戦うことが出来た。

しかしルーデウスの世界に侵攻して来るとなれば、こちらが不利になる。

ビヘイリル王国での決戦でオルステッドは魔力を消耗した。

ヒトガミとの最終決戦の為に魔力を温存しなければいけない状況では、オルステッドを戦力としてカウント出来ない。オルステッドを戦闘に参加させる訳にはいかないからだ。

それと、攫われたアイシャの安否も気になる。

「アノスさん。明日、オルステッド様も交えて話し合いましょう」

「かまわんぞ」

「明日の早朝に出ますので、今夜は我が家で休んでください」

「世話をかけるな」

「気にしないでください」

そう言うルーデウスの表情は曇ったままだった。

 

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翌日、ルーデウスとアノスはオルステッドコーポレーション事務所に向かっていた。

エリス達はアイシャの捜索を続けている。

『アイシャのことは心配いらないわ』と言ってルーデウスを送り出した。

「アノスさん、もう少しです」

「ああ」

 

しばらく歩いていると事務所に着いた。

事務所の入口前にアレクサンダーが座っているが、ルーデウスの姿を見て立ち上がる。

「おはようございます、ルーデウス様」

「おはよう、アレク」

「そちらの方は?」

アレクサンダーはルーデウスの隣のアノスを見る。

「味方だよ。オルステッド様も知っている人だ。別の世界の魔王様だな」

「異世界で共に戦ったという方ですか?」

「そうだ」

「わかりました。オルステッド様は社長室におられます」

「わかった」

そう言うと2人は事務所に入っていった。

 

 

「オルステッド様、入ります」

「ああ」

社長室の扉の向こうから返事を受け、ルーデウスは扉を開ける。室内には机に向かって書類を整理しているオルステッドがいた。

室内に入ると、オルステッドが顔を上げる。相変わらず眼光は鋭いが、アノスに気づくと驚きに変わる。

「久しぶりだな、オルステッド」

「どうやってこっちに来た?」

「まず、現状の報告からさせてください」

ルーデウスが割って入り、昨日あったことの説明をはじめた。

 

 

「―――異世界からの刺客か」

「はい、アイシャもその刺客に攫われたとみて間違いないかと」

「遂に来たか…」

「と、言いますと。オルステッド様は敵の侵攻を予見していたということですか?」

ルーデウスが昨日の事を書類にまとめながら訊ねる。オルステッドは少し考える素振りを見せてから口を開いた。

「…前の戦いで決着がついていない以上、その可能性も考えていた。今回のループはイレギュラーばかりだからな」

そう、オルステッドは世界をループしている。ヒトガミを倒すまで終わらないループ、それがオルステッドに掛けられた龍神の秘術なのだ。

しかし、今回のループではルーデウスがいる。本来の歴史では存在しないはずのルーデウスの存在によって多くのイレギュラーが発生している。

故に、可能性として、魔王ローズバルト軍が侵攻して来る可能性も考えていた。

「しかし、オルステッド様はビヘイリル王国での戦いで魔力を消耗しています。前回のような異世界での戦いなら、問題無いでしょうが。こちらの世界での戦闘となると、今以上の消耗は抑えるべきです」

「だが、こちらから異世界に行く手段が無いとなると、迎え撃つしか無いだろう」

その言葉でルーデウスは黙る。前回は偶然拾った石が原因で異世界に飛ばされた。

今回も同じ状況が起こるとは思えない。

すると、それまで黙っていたアノスが口を開いた。

「敵はこちらの世界に来ることが出来る。なら、こちらが行けない道理は無いのではないか?」

「しかし、方法が思いつきません。移動手段が無いとなると、こちらも打つ手はありません」

「方法が無いのなら、作り出せばいい」

「どうやって?」

オルステッドが問う。

「昨日エリスと戦った敵は、存在が歪むように撤退していった。俺たちの世界に来た刺客も同じように撤退した。おそらく、何かしらの別世界、別次元から来ているのであろう」

アノスは説明しながら、ルーデウスから紙を1枚貰って書き記していく。

「なら、こちらも敵と同じ次元に行けばいいだけだ。その手段だが、1つ心当たりがある」

「なんです?」

「俺たちの世界に、『転移―ガトム―』という魔法がある。それを応用する」

「敵の懐に飛び込む、ということですか?」

「そうだ、しかし3人だけという訳にもいくまい。一度、俺たちの世界にも寄る必要があるな」

「その魔法は、いつ使えるようになる?」

オルステッドが立ち上がり、アノスの魔眼を真っすぐ見据える。

「大体は完成している。3日もあれば完成するだろう」

「では、3日後に出発する方向で。俺は各国に万が一の為の準備をするように伝えます」

「では3日後の早朝、この場所に集合だ」

「分かりました」

「ああ」

ルーデウスとアノスは頷くと、社長室を後にした。

 

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3日後、早朝

 

オルステッドコーポレーション事務所、入口前。

 

そこにルーデウスとアノス、それとエリスが到着する。

エリスは刺客に敗けたことが悔しく、今回の遠征に同行すると言い張って聞かなかった。

ルーデウスは悩んだが、『自分の命を最優先にする』という約束で同行を許可したのだ。

ロキシーとシルフィは家に残った。

ローズバルト軍が侵攻して来る可能性がある以上、家を空ける訳にはいかなかった。

知り合いにも家族を任せて来たので、問題は無いだろうと自分に言い聞かせた。

事務所には既に、オルステッドとアレクサンダーがいた。

アレクサンダーを連れて行くべきか悩んだが、先日の3人の会話をコッソリ聞いていたアレクサンダーは断固として『行く』と言って聞かなかったのだ。

他にも連れて行こうか悩んだ人物はいたが、敵の侵攻に備えてなるべく戦力は残す方向になった。

各国に戦闘準備と警戒態勢を敷くように話し済みだ

 

ルーデウス、オルステッド、エリス、アレクサンダー。

 

ルーデウスの世界からは4人が行くことになった。

 

 

「では、出発だ」

アノスが魔法陣を展開する。

地面に円状の魔法陣が出現し、5人がその枠内に入る。

「まずは俺たちの世界に行く」

「わかりました」

ルーデウスは頷くと、エリスの手を強く握った。

そして魔法陣が光を放ち、5人の姿が搔き消えた。

 

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魔族の国ディルへイド

 

首都ミッドヘイズ、魔王学院デルゾゲード。

 

魔王学園の正門付近に魔法陣が展開し、そこからアノス達が現れた。

「さて、まずは教室に行くとしよう。サーシャたちもいるだろうからな」

「アノスさん、俺たち部外者が入って大丈夫なんですか?」

「別に構わぬ、『短期留学生』とでも名乗ればいい」

「はぁ…、わかりました」

アノスを戦闘に一行は魔王学院に入っていった。

 

教室に入ると、クラスメートがざわついた。

それもそのはずだ、見慣れない服装の人物が4人も入ってきたのだから。

クラスメート達の中に、〝別の意味で〟驚いている者が数人いた。

サーシャ、ミーシャ、レイ、ミサ。

4人は『なんで!?』みたいな驚愕の表情をしている。

空いた席にルーデウス達を座らせると、アノスも自分の席に着く。すかさずサーシャが食い気味に訊いてくる。

「なんでルーデウス達がいるのよ!? というか、どこ行ってたのよ!?」

「先日、襲撃してきた敵を追っていたらルーデウス達の世界に辿り着いてな。今度はルーデウス達を連れて戻ってきた」

「別の世界に行ったって事かい? 世界同士が繋がったってこと?」

元勇者のレイ・グランズドリィが振り返って問う。

「敵はルーデウス達の世界にも侵攻してきた。恐らくはリムル達の世界も襲撃されているだろう」

「どうするんですか?」

レイの隣に座っている偽の魔王であるミサ・レグリアはルーデウス達を見ながら訊ねる。

「行くしかあるまい、その為の魔法は完成した」

「いつ行く?」

左隣のミーシャが覗き込んでくる。

「各方面に警戒態勢を伝える。出発は明日だな」

「そんな急で大丈夫ですか?」

振り返るとルーデウス達が立っていた。話を聞いていたのだ。

「問題あるまい。それに、急いだ方が良さそうだ」

 

その後、エールドメードが来てからルーデウス達の自己紹介をすると、いつも通りに授業を受けた。

 

 

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翌日、アノスは両親に見送られて家を出発した。

 

今回のメンバーはアノス、ミーシャ、サーシャ、レイ、ミサ、シンの6人だ。

前回の戦いを経験しているエールドメードは残って警戒に任たることとなった。

 

魔王学園正門前。

早朝の為、生徒はまだ登校していない。

 

「『創造建築―アイビス―』」

アノスが魔法陣を展開する。瞬く間に横長の家のような城艦が現れる。

「これで行くの?」

サーシャが見渡しながら問う。

「ああ、全員乗っても余裕があるぞ」

乗り込みながらアノスは振り返って言う。

「家、ですよね?」

「家だね」

ミサとレイも苦笑しながら乗り込む。それにシン、サーシャとミーシャも続き、ルーデウス達も乗り込もうとする。

 

「―――俺、邪魔、する。行かせない」

声が響き、ルーデウスは声の方に顔を向ける。そこには、2メートルはあろう巨体の男が立っていた。

頬はパンパンに膨れ、腹ははち切れんばかりに出っ張っている。

しかし、服装は異様だった。上半身は裸だが、下半身は。

「―――ブーメラン、パンツ?」

ルーデウスは意味が分からず疑問形で声を出した。そう、漆黒のブーメランパンツだった。

「ふむ、何者だ?」

アノスが城艦から出てくる。

男はアノスを見ると、思いっきり鼻から息を出す。

「俺、ブギョル。お前たち、邪魔、する」

「ローズバルトの手の者か?」

今度はオルステッドが問う。眼光鋭いオルステッドに睨まれても、ブギョルは怯まない。

「そうだ。魔王様、お前たち、殺す、命令した」

「なら敵ってことですよね?」

アレクサンダーが両手剣を構えて前に出る。

エリスもルーデウスの前に出るように剣を抜刀姿勢で構える。

「俺、斬れない。俺、硬い、強い」

「なら試してあげるわ!」

エリスが斬りかかる。

しかし、ブギョルは両掌を自身の顔の前でパンッと音が出るように合わせる。

お構いなしにエリスは斬撃を繰り出すが、その剣先は弾かれる。

 

―――まるで、〝見えない壁〟に阻まれるように。

 

エリスは飛び退いて距離を離す。

入れ替わるようにアレクサンダーが斬りかかったが、先程と同じように弾かれた。

 

「―――何ぃを、してぇいるぅ?」

また声が響く。

エリスが眼光を光らせて身構える。

ブギョルの横に骸骨が現れた。ルーデウス達の世界でエリスを襲撃した敵だ。

「俺、こいつら、殺す」

「まぁ待てぇ、一時ぃ撤退だぁ」

骸骨がブギョルの肩をポンポンと叩く。

「何故だ。まだ、殺す、出来てない」

「イレェギュゥラァーがぁ発生ぃぃしたぁ。帰ぇるぞぉお。命ぃ令だぁ!」

「…俺、分かった」

そう言いブギョルと骸骨は踵を返し、異次元に消えようとする。

「させると思ったか?」

アノスが右手を蒼白く輝かせて空を掴んでいる。

いや、正確には骸骨の頭蓋を掴んでいる。『森羅万掌―イ・グネアス―』によって空間を超えて骸骨を掴んでいる。

骸骨はブギョルと供に異次元に逃げようとするが、アノスは逃がすまいと右手に力を込める。

骸骨はそのまま異次元に入っていった。アノス達を乗せた城艦と供に。




お読みいただきありがとうございました。

仕事が忙しくなってきた為、次回の投稿まで少しかかりそうです。

次回も楽しんでいただければ幸いです。
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