無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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閲覧いただきありがとうございます。

今回から敵陣営の掘り下げも多くなってきますが、お付き合い頂ければ嬉しいです。


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真・魔王城 円卓の間

 

ローズバルトの御前を後にした12人は別室の円卓の間に集まった。

今後の方針、詳しくは各世界に向かう戦力の割り振りを決める為である。先程ローズバルトから見せられた世界を映す球体をロマールが借りてきての会議である。

「では、それぞれの世界に関して報告してくれ。シティック」

ロマールから話を振られた者。幹部12柱の1人であるシティックは椅子から立ち上がると他の幹部を見渡して話し始めた。

「それでは、偵察結果の報告を始めますわ。よ~く、お聞きになること。よろしくて?」

金髪の縦ロールを右手でかき上げながら少女―――シティックは話し始める。

シティックはまず円卓の中心に浮かぶ球体の一つを指さす。

「この世界は、今回この世界に来訪した適応者の1人、『武神』のいる世界ですわ」

「変わった街並みの世界だな。楽に征服出来そうだ!」

ロンゴドルが肘を突きながら余裕を感じさせる発言をするが。シティックはそのまま話を続けた。

「街並みは確かに違いますわ。しかしこの世界には『武神』をはじめ多くの猛者が存在しますわ。ロンゴドル、油断は禁物ですわよ」

「例えばどんな猛者がいるんだよ?」

「先の魔国連邦侵攻時に東側を攻撃していた隊の大半を倒した『項羽』。他にもこの世界に存在した〝過去の猛者〟を復活させているそうですわ」

「この世界には俺が行こう。いいか、エンリクス、ヴォイド?」

名乗り出たのはグワッツェだ。確認されたエンリクスとヴォイドも「かまいませんよ」と同意した。

「次の世界は…、これですわ」

次にシティックが指した世界はシンエイ達の世界だった。

「この世界は適応者の一角『死神』達の世界ですわ。この世界には『レギオン』と呼ばれる機械が存在しており、死神達はそのレギオン討伐のスペシャリスト。とのことですわよ」

「常に機械を相手に戦ってきたからこそのアノ強さということか。この世界には俺とガモッサ達で行くぜ!」

ロンゴドルが立候補する。隣のガモッサも異論は無いのか黙って頷いた。

これで2つの侵攻目標の割り当てが決まった。

続いてシティックが指した世界は他の幹部の誰もが知らない世界だった。

世界の様相を映し出す球体の内部には、現代日本のような街並みが映されている。幹部たちは揃って『武神の世界にとても似ている』と感じた。

「この世界の適応者は、既に俺達と戦っているのか?」

ロンゴドルが訊ねると、シティックは首を横に振った。どうやら未開の世界だということだとロンゴドルは理解した。

「この尖った建造物はなんだ? 隣の建造物は反対に壊れているが、これは〝塔〟か?」

グワッツェが球体を覗き込み、その内部に映った〝並び立つ塔〟を見る。

シティックも球体を覗き込み、グワッツェが指摘したものを確認すると口を開いた。

「〝エンクウボク〟というそうですわよ。この世界は『SORDの世界』と同じく〝銃〟が存在しますわ、この武器は実に脅威と考えますわ」

そう言うとシティックはエンリクスを見る。

エンリクスは『銃』という単語を聞いてから表情を曇らせている。

「数での不利と奇襲があったとはいえ、エンリクスは先の侵攻でその脅威を身をもって体感したはずですわね?」

「ええ。敵の数を見誤ったということもありますが、なかなかに脅威でした」

エンリクスの言葉に頷くと、シティックはカシュロント、続いてヴォイドを見る。

「この世界にはワタクシとカシュロントとヴォイドで向かいますわ。よろしくって、カシュロント、ヴォイド?」

「異論は、無い!」

カシュロントは独特な活舌で同意の意思を示した。シュトライドも「問題ない」と短く同意した。

2人の返事を受けたシティックは再び全員を見渡す。

「それと、ワタクシが偵察した残り2つの世界について報告しますわ」

「先程ローズバルト様が仰っていた世界か。どうだった?」

ガモッサの問いにシティックは一度頷くと、手に1枚のスクロールを持ち報告を開始した。

「前提として、2つとも魔法が存在する世界ですわ。それを理解したうえで聞いてくださいな」

「分かった」

「では、1つ目の世界は。国同士が戦争している世界でしたわ。それも、終わりの見えない」

「魔法でか?」

「そうですわ。順番に説明しますから、静かに聞いてくださいな、ロンゴドル」

「わかったよ…」

「…続けますわ。その世界では魔法で空を飛びながら、銃を使用した戦闘方法が確立されていましたわ。かなり面倒ですわね」

魔法に対しての対策は行ってきた魔王軍であったが、銃に関しての対策はいまだ十分とは言えなかった。

 

それには理由がある。

『魔法』と一括りに言ってもそれぞれの世界で違いがある。故に魔王軍はその対策に着手してきた。それこそ、リムルやアノス達と全面衝突する以前からである。

その結果、魔王軍の兵士、幹部、ローズバルトに至るまで魔法に対しての知識と耐性を備えることが出来た。

しかし銃への対策は十分とは言えない為、幹部たちも警戒していた。

そこで一度話を切り、息を吸うと再びシティックは説明を開始した。

「続けますわよ。2つ目は、面白い支配体制をとる国が存在する世界ですわ。よりによって〝アンデット〟が国を統率しておりましたわ」

「その世界にも適応者が?」

「いましたわよ? まだ接触はしていませんけれど、敵に回る前に潰しておくべきと思いますわ」

「ならば、ここは―――」

会議はさらに続いた。

 

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真・魔王城

 

魔王の間。最奥の玉座に肘をついて座ったままローズバルトは瞳を閉じて瞑想していた。

 

頭に浮かんだのは、父の顔だった。

父は幼かったローズバルトに戦いを教えた。

敵を殺し、自身が生き残る術をローズバルトに教え続けた。

当時、ウロナ大陸の魔道はアノス達が訪れた時以上に荒んでいた。

大地は枯れ、生き物のほとんどは息絶え、異形な魔物が闊歩する場所であった。

そんな魔道の一角の集落で生まれたローズバルトに父は生きる術を叩き込んだ。

 

しかし、父はローズバルトが少年の時に死んだ。

いや、死んだと形容するには語弊がある。

〝消えた〟のである。それは突然のことだった。

父が消えた日を境に、ローズバルトは知識を求めた。貪欲に。集落に僅かにあった古代文献を読み漁り、知識を吸収していった。

全ての文献を見終わると、ローズバルトは隣の集落に向かった。まだ見ぬ知識を求めて。

ローズバルトはとり憑かれたように文献を読み漁り、体を鍛えた。睡眠時間と食事時間を削りながら。

そんな生活の中でふと手に取った文献に書かれていたものを見たローズバルトは、すべてに合点がいったように不敵に笑ったという。

その文献にはローズバルトが生まれた世界の真実に迫る文言が書かれていた。

 

〝この世界は数ある可能性の一つに過ぎない。この世界の外に広がる世界の波を超えた先に別の世界がある〟

 

〝この世界のモノは他の世界のリソースに過ぎず、数多の世界が存在する限りこの現実は変わらない〟

 

〝世界の未来と存続はさらなる可能性を掴むことから始まるであろう〟と。

 

 

ローズバルトは愕然とした。自分達が他の世界の〝養分〟でしかないことに。

それから成長したローズバルトは魔王となり。自身の計画を開始した。

 

〝自身の存在の確立〟

 

それが目的だった。

 

そして現在、自分達以外の世界に侵攻したことで「様々な世界に〝存在した〟痕跡を残すこと」が出来た。

痕跡を残すことによって自分達の存在を確立する。可能性の奔流を揺蕩う可能性の一つに過ぎないローズバルト達にとって、自分達の存在の確立は悲願であった。

リムル達『適応者』はその類ではないが、ローズバルトにとっては『大人しく可能性のまま消える』か『自分達が存在した爪痕を残すことでその存在を確立するか』の選択が迫られた。

 

結果としてローズバルトは後者を選んだ。

自分の存在の確立の為にその他の世界を巻き込む。

巻き込まれた世界にとっては迷惑極まりないだろうが。そんなことはローズバルトも承知だ。

承知の上でもあるし、手段を選んでいられないことも事実。そうして行動してきた結果。

 

 

 

ローズバルトの欲は増大した。

 

元から知識欲が旺盛だった少年時代を経て、魔王として君臨してきた今日までの歩みがローズバルトの〝欲〟をより強いものへと変えてしまった。

〝自身が存在した痕跡を残す〟という目的はいつしか〝世界を我が手に収める〟という目的に変わってしまったのだ。

ローズバルトはそれが間違っているとは考えていない。

だからこそ願い、欲するのだ。

 

「全て手に入れる…」と。

 

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魔国連邦

 

リムル達は休息をとりながら次の目的の為の準備をしていた。

豪華な旅館を貸し切っての食事会が催された。先の戦闘で負傷したガビルは命に別状は無いものの、翼を失ったショックで寝込んでいた。

しかしアノスが『敵の武器に秘密があるかもしれん』と推測し、それをリムルが破壊するとガビルに約束したこともあり僅かに元気を取り戻していた。

アノスが敵の武器に目をつけたのには秘密がある。

異世界にて敵幹部のエンリクスに足止めをくらった時、エンリクスは魔法発動のキーとして武器を使用していた。

そのことからアノスは、異世界の敵にとって武器は〝ただの武器ではない〟と推察したのだ。

そんなこんなで、一同は食事会を楽しんでいた。

「ねぇマキ。ハンバーグがあるよ! それにこっちはラーメンだよ!」

レナがマキの袖を引っ張りながら料理を食べている。自分達の世界で食べ慣れた料理が振る舞われたことに感動と興奮を覚えながら舌鼓を打っていた。

各人がそれぞれ食事を摂る一方、上座に位置する奥にはリムル達がコの字に囲むように食事を摂っていた。

「今回の戦闘に於いての魔国連邦側の負傷者は多いのですか、ベニマルさん?」

レーナが料理を口に運びながら訪ねる。箸を使うことが出来ない為、フォークを使用しての食事だ。その為か、レーナ達のように箸を使えない者達の食事はレナ達と少し違うのだ。フォークを使う前提での献立に変わっている。

「負傷者は多いが、死者はゼロです。皆さんが加勢してくれたおかげですね」

ベニマルも食事を摂りながら答える。無論、咀嚼しながらという行儀の悪いことはしていない。

「それは何よりです。ところで、敵が再度この世界に侵攻する可能性は考えられるのでしょうか?」

「可能性はゼロではないと思うけど、低いかもしれないな」

答えたのはリムルだ。

レーナ達の視線がリムルに集まる。リムルは数秒考えると再び口を開いた。

「敵の目的が『侵攻』ならもう侵攻する必要はないだろう。けどもし、目的を『征服』に切り替えたのなら…」

「再びこの世界、この国が戦場になる、ということか?」

リムルの言葉をアノスが継ぐ。

リムルは「ああ」と頷くと、持っていた箸を強く握った。

「たしかに可能性はあるだろうが、それを考え出してはキリが無いのではないか?」

それまで料理を楽しんでいたジェイルが言葉を挟んだ。ジェイルの発言にリムルは表情を険しくする。

ジェイルの言う事にも一理あることはリムルも理解している。しかし、それでも楽観的なジェイルの考えが腑に落ちず、苛立つのだ。

そんな空気を察してか、リヒトーがフォローする。

「ジェイルの言うことも正しいけど、言い方があるんじゃない? 多くの可能性は考慮すべきだよ」

「しかしだな、それではこちらの行動に支障が出るだろう。後手に回れば、同じことが繰り返されるぞ?」

「そうならない為に、他の異世界を巡って敵の脅威を知らせて仲間を募るんじゃないか」

「ジェイルの言うことも分かるよ。切り替えて臨まないとな、引きずってたら失敗するかもしれない」

リムルがジェイルとリヒトーを交互に見て言う。その様子を見ていたオルステッドが口を開いた、

「先の戦いで死者がゼロだったことは不幸中の幸いだった。〝敵の武器の破壊〟も優先事項に加えるべきだろうな」

「今後、脅威になるでしょうから、敵の武器の警戒および破壊を念頭に戦闘すべきですね」

ルーデウスが捕捉し、各人がそれぞれ頷いた。

 

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翌朝。

 

魔国連邦のはずれにある平原に停泊させていた飛空城艦にリムル達は乗艦していた。

 

遠征の目的は『共に戦ってくれる仲間を探しつつ、各世界に敵の存在を知らせる』ことである。

各自、魔国連邦に集結する前と同じ編成で飛空城艦に乗り込んで出発の準備に取り掛かる。

「ベニマル、あとは頼む」

タラップに足を掛けたリムルは、見送りに来ていたベニマル達を振り向く。

「お任せください、リムル様」

ベニマルが力強く頷く。隣のシュナは「どうかご無事で」と微笑む。

「一緒に行くのはシオンとランガだけで良いのですか? 敵は強くなり続けています。追加で誰かが行った方がよいのでは?」

「戦力は残しておきたい。それと準備を進めておいてほしい事もあるからな」

「〝例の〟ですね? わかりました」

「じゃあ、行ってくる」

「「「お気を付けて!」」」

仲間の声を受けたリムルはタラップを上がり、飛空城艦に乗り込んだ。




お読みいただきありがとうございました。

次回も楽しんで頂ければ幸いです。


それでは、また次回でお会いしましょう。
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