無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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閲覧いただきありがとうございます。

今回から新しい舞台での物語になります。
今後、戦闘描写を増やしていこうと考え、ラノベを読み漁る毎日を送っております。

今後もお付き合い頂ければ嬉しいです。




彼岸花

可能性の奔流に揺蕩う無数の世界の中に、その世界は存在する。

東京の地にそびえたつ二柱の塔。

 

一つは崩壊し、中心塔から外装が花開くように広がっている。

 

もう一つは出来たばかりの真新しい塔。下部に4本の支柱を持つその塔は、カラーリングも相まってSF映画のロケットのようにそびえたつ。

 

そんな世界の平和を維持するために、少女達は駆ける。

 

 

 

「実際に見てみると、SORDや武神の世界に似ているな」

「文化レベルは近いと思いますわよ。この世界にも銃は存在しますわ、気を付けて臨みますわよ!」

「俺は、大丈夫だ!」

奔流からその世界を覗きながらシュトライド達は話している。

現在、異世界を出発した12柱達は各世界に向かっていた。目的は『レーナ達の世界』と『百代達の世界』と、シュトライド達の眼前にある『未知の世界』への侵攻の為である。

今回は侵攻だけでなく征服して構わないというローズバルトからの指示も出ている為、12柱達は意気込んで出発した。

先の『六面世界』への侵攻時に使った大規模魔法ではなく、今回シュトライド達は可能性の奔流を渡る『次元船』を用いて出発した。

見た目はザ・海賊船のような作りだが、シュトライド達の他に百人からなる魔王軍戦士達と3体の魔獣を連れてきている。

前回の侵攻時は次元船を管理しているシティックが遠征中だったため、大規模魔法で世界を渡ったのだった。

「見事この世界を征服して、留守番をしているミニッサ達にドヤ顔をしてやりますわよ。前進!」

シティックの号令のもと、次元船が前進していく。

 

そこに一筋の閃光が走る。

その閃光は雷、―――雷撃だった。

雷撃が次元船の左舷に直撃して船全体を包む。甲板にいたシティック達も雷撃を受ける。

痺れた体に鞭打って立ち上がると、部下に状況確認をする。

「どうなっていますの!?」

「左舷方向の船からの攻撃です。おそらく、適応者の船かと」

シティックの部下が左舷方向に並ぶ飛空城艦を指す。次元船と併進しながら雷撃を叩き込んでくる飛空城艦。

いや、正確には雷撃を放っているのは飛空城艦ではない。飛空城艦の甲板に立つ少女から放たれたものだ。

「あの適応者は、『雷切』!」

そう、雷撃を次元船に叩き込んでいるのは『雷切』こと東堂刀華であった。

刀華は眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせ、刀を抜き放つ。刀が抜き放たれた刹那、一筋の雷光が走ると、それは雷撃となって次元船に襲い掛かった。

しかし、シティック達もただやられてばかりではない。左舷に兵士を集中させて火球にて応戦する。

火球が刀華に迫るが、突如刀華の足元から壁のように水が噴き出した。撃ち続ける火球が悉く防がれる。

「水!? いったいなんですの!?」

シティックは水の壁を凝視する。するとその向こうに2つの人影が見えた。

(1つは雷切。ではもう1つはなんですの?)

火球を放ち続けたために一時的に魔力切れを起こした部下を一時後退させてシティックは左舷の端へと歩いていく。

すると水の壁が消失して、もう1人の姿を確認できた。

「『深海の魔女(ローレライ)』、やはりあなたでしたの!」

歯軋りし、拳を握り絞めるシティック。さながら「キー、悔しい!」とハンカチを咥えるお嬢様のようである。

シティックの視線の先。水の壁を出現させたのは刀華達と同じ世界の住人である黒鉄珠雫(くろがね しずく)であった。

水と氷を操る戦闘スタイルの珠雫の技『障波水蓮』によってシティックの部下は火球を無駄撃ちし、魔力切れを起こした。

それによってシティック達は遠距離での攻撃手段を失った。

「カシュロント、適応者の船を斬れませんの!?」

振り返りながらシティックは訊ねるが、カシュロントは首を横に振った。

「距離が離れすぎているから、無理だな!」

「ではこのまま突入しますわよ。前進!」

シティックの号令で次元船は加速すると、そのまま世界の壁に接触する。

世界の壁は異物を拒むように次元船を押し戻そうとする。

しかし、次元船はさらに加速して徐々に世界の壁にめり込んでいく。

「あともう少しですわ!」

次元船全長の3分の1が世界へと進入した。

 

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「リムルさん、敵船が進入します。俺達も行きましょう!」

艦橋で敵船の様子を伺っていた一輝が操舵席に就いているリムルを見る。しかしリムルは別の案を提示した。

「この船をぶつけて、敵船を押し出す」

リムルは併進していた飛空城艦を右に90°回頭させると、敵船の左舷目掛けて前進した。

飛空城艦が加速し、敵船の左舷を捉える。

「全員、衝撃に備えるんだ!」

リムルの号令を受けて、各員は近くのものに掴まった次の瞬間。

爆音と煙を上げて飛空城艦の艦首が敵左舷に食い込み、そしてめり込んだ。

艦全体に衝撃が走り、一部の者は掴まっていたものから手を離してしまい転倒した。

しかしリムルは操舵輪から手を離すことなく、さらに飛空城艦を加速させる。

飛空城艦はさらに加速すると敵船を左舷から押し始める。敵船の進行方向の垂直に、だ。

世界は水晶玉のように球体形状である。よって押し続ければ世界から押し出せると考えたのだ。

しかし、シティック達も易々と押されない。

真っ直ぐ進入していた次元船の進路を、突如左に向けたのだ。それによって飛空城艦はバランスを崩し、左舷中央にめり込んでいた艦首がズルズルと敵船の船尾方向に向かって流れていく。

「マズい、態勢が崩れた!」

リムルは飛空城艦の進路を修正するが、敵船はリムル達が態勢を崩した隙に世界に進入した。

「このまま突入する! 刀華達は?」

「艦内に退避しています!」

一輝からの報告を受けたリムルは一度頷くと飛空城艦を世界に進入させた。

世界の壁を越えた先に広がる風景は、まさにリムルの生前いた世界にそっくりだった。

しかし、見たことの無い塔など細かい違いはあった。

(そんなことを考えてる場合じゃないよな。敵は!?)

リムルは操舵をしながら敵を探す。

「リムルさん、敵船です!」

艦橋に上がってきた刀華が指した方向に確かに敵船がいた。

敵船からはすでに兵士の降下を開始していた。完全に後手に回ってしまった。

(この世界がハルトや百代達の世界に近い文明レベルの世界なら、『魔法』は間違いなく存在しない。確実に被害が出る)

被害が出る前に敵を退けるつもりでいた一行の計画は頓挫。残す手段は自分達も降下して敵を撃退する他ない。

しかし、この中で間違いなく最強であるリムルは操舵席から動けない。

飛空城艦を動かすためには魔力―――それに近いものを扱える者でなくてはならない。

「シオン、ランガ。ハルト達と先に降下して、敵を迎え撃ってくれ」

「リムル様はどうされるのですか?」

「飛空城艦を着陸させてから合流する」

「わかりました。お気をつけて」

そう言うとシオンとランガは艦橋から底部格納庫へと向かう。

「ハルト。俺は飛空城艦を東京湾に着水させたらそっちに向かう。それまで指揮を執ってくれ」

意外な指名にハルトは一瞬面食らったような表情を浮かべるが、すぐに表情を引き締めて頷いた。

「分かりました。合流をお待ちしていますよ、リムルさん」

「ああ、また後でな」

リムルの言葉に笑顔で頷くと、ハルトはレナ達を連れて艦橋を後にした。

「リムルさん。私達が降下したら、この艦への敵の攻撃を迎撃する者がいません。リムルさんは操舵に掛かりっきりになるでしょうから、なお危険です。私達が降下したら速やかに離脱してください」

艦橋から底部格納庫へのタラップを降りていく一輝達ブレイザー組。その中の1人、刀華は一輝達より最後に艦橋を後にしながら声を掛ける。

「分かってる。なるべく早く降下してくれると助かる」

「わかりました。どうか気を付けて」

そう言うと刀華はリムルに右手を差し出す。

リムルはすかさずその手を握った。

 

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飛空城艦が敵軍が降下した地点付近の上空に進路をとる。底部ハッチが解放され、リムルを除く全員が姿を現す。

「すでに戦闘は始まってる。急ごう」

ハルトの視線の先、東京の高層ビル群の足元では敵軍が一般人を襲っている。

「ハルトさん、あのビルの屋上に降りましょう」

クリスが近くの高層ビルの一つを指す。

『右斜め前方のビルでいいのか?』

艦橋のリムルから確認が入る。ハルトが「お願いします」と答えると飛空城艦が高層ビルへと近づいていく。

底部ハッチが高層ビルの屋上に重なろうとした、次の瞬間。

飛空城艦に衝撃が走る。大きく揺さぶられる飛空城艦。咄嗟のことで数人は転倒してしまう。

ハルトと一輝が顔を上げた視線の先、そこには飛空城艦に砲撃を加える次元船があった。

可能性の奔流での戦いの時とは違い。鉄の砲弾のような球体をこちらに向けて発射している。

魔法を使用できる兵士を降下させた次元船にはシティックが1人残り、砲台を展開しての攻撃を敢行していた。

多くの世界を偵察してきたシティックだからこその発想。

自分達魔王軍は魔法に対しての知識はあるが、銃などの物理的な飛び道具に対しての知識はいまだ乏しい。そこでシティックは考えた、自分達で使用して弱点を探ればいい、と。

次元船から砲弾が放たれる。砲弾は若干の放物線を描き、飛空城艦に直撃する。

飛空城艦は揺れ、底部ハッチに集まっているハルト達の足元はおぼつかない。

「このままでは…!」

刀華とステラが動いた。2人は底部ハッチから飛空城艦の船体を駆け上がり甲板に躍り出る。

すかさず2人は得物を構えると、迫りくる砲弾を迎撃する。

刀華の放つ雷撃が、ステラの放つ火炎が、砲弾を迎撃していく。それによって一時的に飛空城艦の態勢が安定する。

その隙を狙い、刀華とステラとリムル以外の全員が高層ビルの屋上に降り立った。

『2人も降りてくれ。もう大丈夫だ!』

リムルの声を受けて刀華とステラも屋上に降下する。

受け身を取りつつ着地する刀華とステラを確認すると、リムルは飛空城艦を離れさせる。

しかし、次元船は飛空城艦を追撃する。

放たれた砲弾を回避するために、後方を次元船に向けて退避するように加速する。

それを追撃する次元船。無数に放たれた砲弾の半分は飛空城艦に直撃する。砲弾が艦の装甲を貫通することは無い。

まがりなりにもこれはアノスが創った飛空城艦。かつてアノスが搭乗した飛空城艦ゼリドへヴヌスを小型化したものだ。

しかし砲撃装備等を搭載していないこの艦では敵船を沈めることは出来ない。

「逃げるが勝ちだな!」

リムルは飛空城艦を加速させる。シティックも逃がすまいと次元船を加速させるが、距離が離れていく。

リムルは自分達がいるこの地が『東京』であると考え、ある場所を目指していた。

 

 

東京湾である。

そこに飛空城艦を着水させて戦闘に参加するつもりだ。

相変わらず後方の次元船は砲撃を続けているが、距離が離れ続けているために当たらない。

(いけるぞ。このまま直進だ)

飛空城艦がさらに加速し―――

 

 

 

 

―――しなかった。

 

上空から放たれた一筋の光が、飛空城艦に直撃する。

閃光は銃弾のように飛空城艦を貫いた。

強烈な衝撃に揺れる艦橋でそれでもリムルは操舵を続ける。東京湾を目指しながら先程の閃光を識別するため周囲に目を向ける。

そしていた。艦橋の目の前に1人の少年が。

『お主達は何者だ?』

リムルの頭の中に声が響く。その声が目の前の少年から発せられていることを一拍遅れて理解した。

黒と赤のオッドアイがリムルを見据えている。

「…魔国連邦盟主、リムル=テンペストだ。お前は?」

先程の攻撃によって高度を下げ続ける飛空城艦の艦橋に少年が降り立つ。

リムルは操舵を中断して少年と向き合う。どのみち東京湾までは保ちそうにないからだ。

『お主達は可能性世界の一つから来たのか?』

「可能性世界とはなんだ? 初めて聞くんだがっ―――!」

リムルは突如、言い終える前に後方に吹き飛んだ。まるで〝見えない手〟によって押し飛ばされたように。

『何処かの可能性世界で聞いたことがあるな。「質問を質問で返すな」と。可能性世界は可能性世界、それ以上でも以下でもない』

話が通じない。とリムルは思ったが、体を起こして立ち上がり、少年の目の前に立つ。

「俺がいる世界が可能性世界の一つであるなら、回答は〝イエス〟だ」

『何故、可能性世界同士で争う?』

リムルは少年の問いの意味を最初理解できず、一瞬ポカンとした。

(こいつは、今この世界で起きていることが理解できないのか?)

リムルには目の前の少年の思考が分からなかった。今、少年の周りで起きている惨状。

魔王ローズバルト軍による異世界への侵攻。自分達はそれを止める為に戦っているのだ。

しかし目の前のこの少年はそんな現状は知ったことかと言わんばかりの態度だ。

「ローズバルトの暴挙を止めるためだ」

だからこそリムルは本心で答えた。この回答こそ、リムルの本心であり。今は別行動をしている仲間達との共通の目的だからだ。

『何故争うのだ。大人しくローズバルトに降伏すればいいだろう?』

「こちらにも理由があるんだよ。ところでお前はローズバルトのなんだ?」

リムルの問いを受けた少年は首を傾げると。ケロッとした表情で話し始めた。

『逆だ。ローズバルトは我等の傀儡でしかない』

リムルの時間が止まった。いや、正確にはそう感じたと言った方が正しいだろう。

今、この少年はなんと言った?

 

―――ローズバルトは我の傀儡でしかない。要するにローズバルトはこの少年の手駒だと言ったのか?

 

リムルには疑問だけが残った。




お読みいただきありがとうございます。

今回から新しい敵も出ました。自分の中で完結のイメージが沸かないまま執筆しております。

楽しみにしていただいてる皆様に納得して頂き、満足していただけるように今後も活動していきますので温かい目で見守っていただければ幸いです。

それでは次回でお会いしましょう。





補足:今回、奔流内で戦闘がありましたが。これまで書いていなかっただけで奔流内での戦闘は出来ます。説明不足でしたので、この場で補足させていただきます。
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