無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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仕事の関係で投稿ペースが落ちており焦っております。

なるべく期間を開けない投稿を目指してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。


傲慢なる敵

「傀儡…。ローズバルトはお前達の〝手駒〟なのか? 仲間ではなく?」

降下し続ける飛空城艦の艦橋にてリムルと少年は向かい合っていた。

『仲間ではない、あの程度の小物が我等と並び立てるわけもない。ローズバルトはただの手駒でしかないのだ』

少年は無表情のまま答える。飛空城艦が軋みをあげて揺れる中、2人は向かい合ったまま動かない。

「〝我等〟と言うからにはお前に仲間はいるのか?」

『いる』

「そいつらは何処にいる?」

『他の可能性世界を見ている。お主達は我等に常に見られているということだ』

そこでさらに飛空城艦の揺れが大きくなった次の瞬間。

先程の揺れはどこへやら。一転して揺れと降下が止まったのだ。

 

 

まるで〝何者かの力で浮かんでいる〟ような。

 

『また別の可能性か。乱戦は好かんな』

少年が天を仰ぐ。リムルは少年の言葉が理解できずその場で警戒している。

次の瞬間。

 

白く光を放つ雷撃が飛空城艦の真下から昇ってきた。雷撃は飛空城艦を突き破り少年を足元から飲み込んだ。

そのまま雷撃は龍のように天へと昇って行った。

しかし少年は変わらぬ姿のままで立っていた。

少年はリムルから視線を外し、足元に空いた穴を見る。

いや、正確には足元に空いた穴〝の向こう〟を、だ。

少年の体は浮いていた。足元は雷撃によって崩れたが、それでも姿勢正しくその場にいる。

『可能性を乱すつもりか? ならば―――』

 

 

 

「―――どうするというのかね?」

 

飛空城艦のはるか下、そこから〝ナニか〟が上昇してくる。

ナニかは飛空城艦よりも高度を取ると、リムルの背後に降り立った。

リムルが振り返った先、その視線の先にナニかはいた。

 

金色の杖を携えた一体のアンデットが。

 

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「リムルさんは大丈夫でしょうか?」

地上にて敵の迎撃にあたっていた刀華が抜刀姿勢のまま上空を見上げる。視線の先にはその場で停止している飛空城艦があった。

「さっきの雷撃が気になりますね。援護に向かうべきでは?」

一輝が刀華に並び立ち、同じように飛空城艦を見上げる。

現在一輝達をはじめとした降下組は侵攻を開始した敵軍との戦闘を継続中だった。

現地の戦力『DA』と共に敵の迎撃を続けている。

降下した一輝達が現地戦力から攻撃されなかったのは、魔王軍に対して敵対行動をとったからであった。

その様子を見たDA東京支部司令官の楠木は、現場戦力の『リコリス』達に一輝達への攻撃禁止を命令していた。

少なくとも、一輝達が敵ではないと判断したのだ。

敵群に向かってハルトが駆ける。腰に帯びた二振りの刀を抜き放ち、二刀流で斬り込んでいく。

敵兵士が火球を放つが、ハルトにとってはお構いなし。自前の動体視力で火球の軌道を読み、身を捩って回避する。最小限の動作で回避した為、大きな失速は無く敵兵士に肉薄出来た。

火球を放った兵士はまさか回避されるとは考えておらず、次の行動が遅れることとなった。

ハルトは刀を横薙ぎにはらう。敵兵士は鎧を着ていたが、脇腹はガードされておらずガラ空きだった。

刀は敵兵士の脇腹の衣服に食い込んだかと思うと、そのまま衣服を横一文字に破り、敵の体を滑るように一閃した。

敵兵士の脇腹から刀を振り抜くと鮮血が飛び散る。

「これでは倒せないか」

鮮血を垂れ流しながらもハルトに攻撃しようとする敵兵士に感嘆の言葉を送りながらも、ハルトは追撃を行った。

先程斬り裂いた脇腹に刀を二振りとも突き刺して両手首を捻ったのだ。

内臓をグチャグチャにされた敵兵士は今度こそ息絶えた。

そんなハルトの戦い方に僅かに戦慄した敵軍だったが、恐怖を払拭して斬りかかってきた。

臆することなくハルトは迎え撃った。

一撃くらわせるだけでは敵を無力化出来ない以上。徹底的にやる必要があると判断したハルトの戦いぶりはまさに悪魔、鬼と形容してよいものだった。

そんな様子をDA指令室で見ていた楠木がいた。

「あの者達は何者だ?」

そう独り言をこぼしても誰も答えない。

その場に誰もいない訳でも、楠木が嫌われている訳でもない。

皆、ハルト達の正体がさっぱりわからないのだ。当たり前と言われればそこまでだが、自分達と同じ形をしている人間が別の世界から来たことへの戸惑いが勝ったのだ。

「ミカに連絡を」

楠木は近くにいた副官に指示を出した。

 

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「Enjoy !」

少女がテイクアウト用カップに入ったコーヒーを客に渡す。

客は笑顔で手を振りその場を去っていく。次いで並んでいた客が一歩前に出る。

大型のバンを改造した移動コーヒーショップ『カフェ・リコリコ』には現地、観光問わず多くの客が並んでいる。

バンの側面のカウンターで笑顔で少女が接客している。

その隣で黙々とコーヒーを淹れている黒人男性。彼は淹れたばかりのコーヒーに飲み口も兼ねるフタを被せると、カウンターの少女に渡す。

「エスプレッソ出来たぞ」

「はい。追加でカフェオレをお願いします」

少女はカップを受け取りながら客をさばいていく。

「アローハァ~。アローハ~」

バンの周囲を小柄なデコ出し少女がメニューが掲載された看板を背負って歩いている。

少女は運転席を周る様に歩き、その途中で運転席に座ってサボっている女性と言い合いをしていた。

そんな賑やかな移動カフェの電話が唐突に鳴り響く。

その電話をバニラ色の髪をした少女がとる。

「あ~い、カフェリコリコ~」

『楠木だ』

「おや~、どうも、どうも~」

少女は意外な人物からの電話に少し驚きながら挨拶を返す。

電話の相手―――楠木は少女の気楽な挨拶に少しイラっとしたが、平静を保ち話を続けた。

『緊急の仕事の話だ、ミカはいるか?』

「ですから日本での仕事は受けられませんって~」

『〝緊急〟と言っただろう。早く代われ』

「む~。分かりましたよ」

唇を尖らせながらも少女は従った。

受話器を耳から離してマイク部分を手で覆うと、コーヒーを淹れている黒人男性―――ミカを振り返る。

「センセ~、楠木さんから電話~」

少女に呼ばれたミカは途中まで淹れていたコーヒーを淹れ終わると、少女の元へ若干の違和感のある様子で歩いていった。

少女から受話器を受け取ったミカは一度頷くと口を開いた。

「なんだ? 仕事か?」

『日本のニュースを見ることは出来るか? あるいはラジオでもいい』

「少し待て。…おーい、クルミ~」

一旦受話器を離したミカは看板少女―――クルミを呼ぶ。

「なんだ?」

クルミは眠たそうな目で訊ねる。

「日本のニュースを調べてくれ。大至急だ」

「わかった」

クルミは返事をすると、ノートPCを立ち上げて日本国内のニュースの情報収集に入った。

そしてしばらくして見つかったニュースサイトには日本国内の現状が掲載されていた。

ミカは受話器を再び耳元にあてて話しはじめた。

「敵襲、ということか。真島か?」

『今回は別だろう。敵はゲームやマンガであるような攻撃をしてくる。2人にも戦場に立ってもらう』

そう言われたミカは受話器を耳にあてたまま振り返る。その視線の先にはバニラ色の髪色の少女と、カウンターで接客をしている黒髪の少女がいた。

「それで、どうすればいい?」

電話機の方へ振り返ると、ミカは再び口を開いた。

『間に合うかはこちら次第だが、とにかく向かって来てくれ』

「…わかった。すぐ準備しよう」

そう言うとミカは受話器を電話機に戻して店内を振り返る。

「楠木さん。何だって、先生?」

バニラ色の髪色の少女―――千束が訊ねてくる。ミカは腕を組んで少し唸ると、口を開いた。

「あっちに謎の敵が現れたそうだ。2人に召集指令が出た」

ミカの言葉を聞いた千束は接客中の黒髪の少女を見る。黒髪の少女―――たきなは接客を終えると千束とミカを振り返った。

「すぐに準備します」

「臨時休業だな。千里、ミズキを呼んできてくれ。店仕舞いだ」

「わかった~」

千里の返事を受けたミカはバンの接客用窓を閉じると『CLOSED』の看板を掲げた。

 

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「それで、どうするというのかね?」

場所は変わって日本。飛空城艦の艦橋に降り立ったアンデットが謎の少年に問いかける。

アンデットはリムルの背後の立ち、少年と対峙している。

『お主は何故この可能性世界に介入した? お主達にはこの可能性世界で起こることは関係無いはずだが?』

アンデットの問いを無視して少年は話し始めた。その少年の様子を見たアンデットの瞳の奥に揺らめく深紅の光が一際強くなる。

「質問に質問で返すなとそちらが言っていたはずだが。まぁいい、そちらの質問に答えよう。私は〝アレ〟を追ってきたのだよ」

そう言ってアンデットが指さした先にはローズバルト軍がいた。

「アレが私の配下に戦闘を仕掛けてきたその〝お礼〟をするためにわざわざ追ってきたのだよ」

『それはご苦労なことだ。ではアレと思う存分戦えばいい』

「しかし今回の一連の黒幕の1人がお前ならば、私が倒す相手はお前ということになる」

『お主達がどのように解釈するかなぞ知ったことではない。それと、我を〝お前〟と呼ぶな。失礼な奴め』

少年の言葉を聞いたアンデットは肩を竦めてみせる。その態度が気に入らなかったのか、少年は表情を険しくする。

『おい、お主に言って―――』

 

「―――私の名前は〝お主〟ではない。お前も同じことをしているではないか」

まさにそのとおりだな、とリムルは心の中で同意した。

アンデットは金色の杖を持ったまま両手を左右に広げると、高らかに話し始めた。

「私はナザリック地下大墳墓の主、アインズ・ウール・ゴウン魔導王である。…さて、私は名乗ったぞ。次はそちらだな?」

アインズの言葉を受けた少年は興味なさそうな表情を作り、一向に名乗ろうとしない。

そんな少年の態度に対してアインズがとった行動は―――

 

 

 

「さもアレの上位存在感を出しているが、所詮名乗りも出来ない小物だったか…。すまないな、気付いてやれなくて」

 

煽りだった。

 

 

『身の程を知れよ。雑魚どもがぁぁぁ!』

少年の額に青筋が浮かび、表情筋がピクピクと揺れる。完全に怒らせてしまった。いや、アインズの目的はそれだったのだが。

「『心臓掌握―グラスプ・ハート―』」

アインズが右手を翳して握り絞める。本来アインズのいた世界では心臓を握りつぶす即死魔法であるが、少年には効果が見られなかった。

(即死が無効化されたとしても朦朧状態になるはずだが…。即死魔法がそもそも通じないのか、それとも第九位階魔法自体が通じないのか)

アインズは金色の杖を異空間に仕舞うと、その中から一本の杖を取り出した。

杖は僅かに湾曲しており、先端が殴打武器のようになっている。いわゆるT字である。

少年が地面を蹴って跳躍し、アインズへと蹴りかかる。アインズはリムルの前に出るように構えて迎え撃つ姿勢をとる。

繰り出された少年の脚目掛けてアインズは杖を振るう。

(杖で殴るのか!? 受け止め切れるとは思えないけど)

リムルはアインズの杖が折れるのではないかと考えた。しかし、その考えは外れた。

少年の脚が杖に触れた次の瞬間、少年の体は少年が元々立っていた場所よりも後方に吹き飛ばされた。

少年は何が起こったか理解できず、ただ疑問と憎悪と屈辱が混ざった表情を浮かべるだけだった。

「この杖には〝ノックバック〟の効果があるのだよ。これで近接攻撃が私に通じない事が理解できたかね?」

アインズは余裕を思わせる声音で語り掛ける。

少年は立ち上がり、両拳を深紅に染める。それは少年の怒りを表すように、燃え上がるように赤く染まった。

「それで、名乗る気になったかね?」

アインズの言葉を受けて少年は瞳を閉じる。

『アインズ、と言ったな。いいだろう名乗ってやる、しかし後悔せぬことだ』

そして少年が眼を開くと、そこには―――

 

 

『我はスぺビア、可能性世界の管理者の1人。お主達を管理する者だ』

 

 

瞳は赤く、妖艶に煌めき。口角が上がり、不吉な笑みを浮かべてケタケタと笑う少年がいた。




お読みいただきありがとうございました。

それでは次回でお会いしましょう。
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