無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部 作:かまぼこポテト
かなり投稿が遅れてしまいました。
まさか4回目のワクチン接種の副反応で丸二日頭痛に悩まされるとは思いませんでした。
今回も楽しんで頂ければ幸いです。
時は少し遡る。
ハワイで千束達の前に現れたターニャ達。
結果としてターニャの申し出をミカは受けた。それが最速で東京に行く方法であったからだ。
ターニャ達は魔法を戦争における戦闘手段に用いる世界から来た。それも、魔法を使用した飛行技術がある世界からである。
ターニャ達は千束達が乗ってきたバンを持ち上げて東京まで運んだ。
(私がいた世界の東京とは違うようだな)
東京に着いたターニャが感じた違和感、その答えはすぐにわかった。元現代人でサラリーマンであったターニャには、だ。
崩壊した塔と真新しい塔。例えるなら東京タワーが壊れかけのモニュメントとして残り、その隣に真新しい東京スカイツリーが並んでいるような光景だ。
そして、千束達が所属する組織の本部付近にバンを着地させると、ターニャは部下達に現地勢力への加勢を命じて飛び立った。
進路の先、そこには破壊されながらも滞空している飛空城艦があった。
(あきらかにこの世界のモノではない。アレも我々と〝同じ〟か?)
ターニャの瞳に映る飛空城艦。それはあきらかにこの世界に不釣り合いなものだ。
飛空城艦より高度をとったターニャの視界に入ったのは。坊主頭の青年―――ピギュティアだった。
そして、それと相対している人物も。
視線を向けた先で一輝がピギュティアに吹き飛ばされ戦闘不能になる。
(どんな状況だ? どちらが敵だ。ん、あれは?)
落とした視線の先にソレはいた。
ソレは知った顔だった。世界は違えど、かつて同じ学び舎で学び、そして共に異世界で戦った者。
出会った当初は神―――もとい『存在X』と勘違いして突っかかったが、それも過去の話だ。
「私は友人を助けない薄情者ではないからな…」
ターニャはライフルの照準をピギュティアに定めると、爆裂術式を展開した。
「主よ、友の危機を退ける術を授け給え。願わくば、我等を脅かす脅威を排除する力を与え給え」
ターニャの祈りに呼応するかのように、胸元に下げられた演算宝珠エレ二ウム九五式から虹色の光が漏れだす。
光が広がり、ライフルの弾丸へと魔力が込められていく。
ターニャはピギュティアを照準器に捉えたまま。
―――引き金を引いた。
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『ラインの悪魔、なんの用なのだ? 邪魔なのだ、おとなしくしておくのだ』
ピギュティアは標的をターニャ変更する。ターニャ目掛けて跳躍し、握った拳の手首を引くようにして突き出す。
ターニャは後退して回避すると、構えたライフルを連射する。次々に発射されて打ち込まれていく弾丸は両拳によって打ち払われていく。
「器用なものだな。…ならば!」
ターニャは射撃を続行しながら上昇する。自身の高度がどんどん上がっていく様子を五感で感じながらもピギュティアへの警戒を解くことは無く。ただひたすら上昇し続けた。
『逃がさないのだ』
ピギュティアは本格的にターニャを標的に定めた。
ピギュティアは腰を落として跳躍する。跳躍によって衝撃波が生じ、ピギュティアの体を包みながら上昇させる。
飛来する弾丸をものともせず空を突き抜けるとターニャを追い抜き、頭上をとる。
「何!?」
ターニャは軌道修正をすると、飛空城艦から距離を取るように飛行する。
(判断を誤るなよ、アインズ)
ピギュティアを牽引しながら飛行するターニャに並ぶようにピギュティアは飛行する。
『逃げ切れるはずがないのだ。ここまでなのだ』
ターニャは気にせず飛び続ける。徐々に、徐々に速度を落としながら。決してそれを悟らせないように。
「前線で死ぬなど御免だな。夢の後方勤務の為にも生きて帰らせてもらう」
先程ピギュティアが見せた加速をターニャは警戒していた。その加速が跳躍による一瞬のものなのか、それとも、持続出来るものなのかが分からない以上。相手の虚を突き、機先を制する必要があると考えた。
(そろそろだな…)
ターニャの飛行速度はトップスピードの7割近くまで落ちていた。ピギュティアがそれに気づいた様子は無い。
『そろそろ追いかけっこも飽きたのだ。このあたりでお終いに―――』
(―――今だ!)
ターニャが一気に加速する。進行方向を間下に変更し急降下する。突然のことに事態が飲み込めないピギュティア。
『なんの真似なのだ? 逃がさないのだ』
ピギュティアはターニャを追いかけようと減速する。が、自身が先程まで体を向けていた進行方向の先にいる者達の存在に気付く。
ターニャと同じ戦闘服を着用している者が5人。全員がライフルの銃口をこちらに向けている。
次の瞬間、ピギュティアの体を爆発が包んでいた。
ターニャが一気に加速し急降下したのは、部下達の射程内に入ったからだ。
ピギュティアはそれに気づかずに、5人が放った爆裂術式を一度に食らうこととなった。
急降下したターニャは部下達に指示を飛ばす。
「各員、散開しつつ警戒せよ!」
先程までピギュティアがいた空間は爆煙が上がっている。
「…多少は効いたか?」
ターニャはライフルの銃口を降ろすことなく独り言ちる。
爆裂術式が炸裂してから数十秒が経とうとしているが、いまだにピギュティアの姿は爆煙の中にある。
「…各員、他敵勢力の掃討にあた―――」
『―――今のはビックリしたのだ』
声がしたのと同時にターニャの体は吹き飛ばされていた。
吹き飛ばされる直前、ニマァと気味の悪い笑みを浮かべたピギュティアをターニャは確かに見た。
吹き飛ばされた先のビルに体を打ち付けてターニャは止まった。
「ターニャ!」
遠くでアインズの叫びが聞こえた気がした。衝突したことで舞い上がった土煙に咳き込みながら視界を上げると、部下たちがこちらに向かってきていた。
しかし、それを追い抜くようにピギュティアがターニャに迫る。先程と同じ薄気味悪い笑みを浮かべてである。
「ク、ッ…クソッ!」
どうにかビルから脱出しようと試みるが、体が深くめり込んでいるため脱出は困難だった。
体を捻ってみるもののビクともしない。そうしている内にもピギュティアはこちらに向かってきている。
こちらが動けないことを知っているのか速度を抑えて徐々に迫ってきている。
『おしまいなのだ』
ピギュティアが両手を広げて打ち合わせようとする。ピギュティアはこれまでにないほど息を吸い込み。そして―――
―――広げられた手が、閉じた。
周囲に衝撃波が拡散する。それは離れた位置にいるリムル達にも届いた。
飛空城艦が軋みを上げて揺れる。先程とは違う攻撃手段をとったピギュティアにリムルは僅かに戦慄する。
現在、リムル達がいる飛空城艦から見えるピギュティアはまさに〝点〟である。目視で認識出来はするが正確な動きは分からない程の距離だ。
リムルは隣のアインズを向く。アインズの表情は骸骨である為に分からないが、恐らくリムルと同じ気持ちだろう。
衝撃波によってターニャがめり込んでいるビルからガラス片等が飛び散り、コンクリなどが粉砕されて土煙が上がっている。
そしてしばらくして土煙が晴れていく。
『何故なのだ。なぜ効かないのだ?』
ピギュティアの声が脳に響く。しかし、何か違和感がある言葉だった。
ターニャが倒されたなら『これで1人倒したのだ』などの言葉を言うはずだ。しかし先程ピギュティアが発した言葉の内容がそういった内容ではなかったことにリムルは疑問を感じた。
〝何が起こった?〟と疑問が膨らんでいくリムルの隣でアインズが僅かに笑い声を漏らす。
「間に合ったか」
一度アインズに視線を向けたリムルはすぐさま視線をピギュティアのいる方角に戻した。
《個体名ピギュティアと個体名ターニャの間に何者かがいます》
珍しく曖昧なことを言う智慧之王にリムルは半笑いを浮かべる。
《正体は分からないのか?》
《分かりません。ですが、その何者かが個体名ピギュティアの攻撃から個体名ターニャを守ったと考えられます》
「安心するがいい」
声を掛けられたリムルはアインズを向く。アインズは視線をピギュティアのいる方向へ向けたまま話す。
「あれは私の配下だ。心配はない」
そう言われて視線を戻した先には漆黒の鎧で身を固め、鎧と同じ漆黒の翼で滞空する何者かがいた。
「助かったぞ。アルベド」
ターニャは自身の前に立ちはだかり、ピギュティアの攻撃から自分を守った知己に礼を述べる。
「礼には及ばないわ。アインズ様の命令ですもの」
そう言うと、アルベドと言われた女性はピギュティアに得物を向ける。
アルベドが扱う得物はハルバード。そして装備は顔面を含む体全体を包む鎧で固めている。
『何故防ぐことが出来たのだ? ありえないのだ』
ピギュティアは気味悪い笑みのまま首を傾げる。アルベドは内心舌打ちしながらピギュティアを警戒し、後ろのターニャに声を掛ける。
「脱出は出来る?」
「ああ、先程の衝撃波で亀裂が入ったからな。大丈夫だ」
そう言うとターニャは立ち上がり、服や顔に付着した砂を払うとアルベドに並び立つ。
「コイツはやばいぞ。次も防ぐことが出来るか?」
「愚問ね」
アルベドの返事を聞いたターニャは口角をつり上げて笑みを浮かべる。
ピギュティアの後方からはターニャの部下達が来ている。
「一度アインズと合流した方がよさそうだな」
「至高の御方であるアインズ様の元に敵を誘うと言うの?」
ターニャの提案にアルベドは難色を示したが、続くターニャの発言によって頷くしかなかった。
「この場の戦力だけでどうこうできる相手ではない。一度集結する必要がある」
「…、わかったわ」
アルベドもピギュティアの強さは別の次元だと感じていた。自分とターニャ達だけでは倒せない、と。
ターニャはピギュティアと睨み合っている。ピギュティアが仕掛けてくる様子は今のところ無いが、どこかのタイミングでこの場から脱出してアインズ達と合流する必要があった。
「各員、一斉射!」
ターニャの号令を受けた部下達が一斉にピギュティアへ発砲する。
ピギュティアは銃弾を打ち払うが四方八方からの銃撃でその場に釘付けになった。
(両掌を合わせる隙を与えなければ、先程の大技は来ないはずだ)
ターニャは隙を与えぬように撃ち続けた。そして。
「『時間停止―タイム・ストップ―』!」
こちらに向かっていたリムルとアインズ。そのアインズの詠唱と共に、周囲一帯が〝停止〟した。
宙を浮遊しピギュティアに近づくアインズは、ふとターニャを見る。
「時間停止は通じるようだな…。ありがとう、ターニャ。おかげで準備の時間を得ることが出来た」
タイム・ストップの効果で体内時間さえも停止している仲間に声を掛けると、ピギュティアへと向き直る。
「『魔法最強化―マキシマイズマジック―』『魔法抵抗難度強化―ペネトレートマジック―』『魔法遅延化―ディレイマジック―』『魔法三重化―トリプレットマジック―』」
バフ効果のある魔法を重ね掛けしていく。
1つは、これから放つ魔法の威力を最大に引き上げ。
1つは、これから放つ魔法に対してのピギュティアの耐性を下げ。
1つは、放つ魔法の発動を遅らせる。これは、時間停止中は攻撃魔法が発動できない為である。
1つは、これから放つ魔法を三重にして放つ魔法。
そして、これから放つ魔法こそ真打。
「『現断―リアリティ・スラッシュ―』!」
先程スぺビアにダメージを与えた魔法。スぺビアに効いたのならピギュティアにも効くとアインズは考えたのだ。
そして時間停止の効果が切れる。
時が再び動き出した刹那。ピギュティアの胸元から鮮血が散り、そして右腕と左足が切断された。
『!? なん、なのだ!?』
突然の事に困惑しているピギュティアであったが。すぐに事態を把握し、表情を引き締める。
『時間停止を使えるものが他にもいるとは驚きなのだ。まだまだ情報不足なのだ』
そう言うとピギュティアは飛空城艦へと弾丸のように飛来し、スぺビアを回収するとリムル達を見る。
『この場は退くとするのだ。また会うか分からないが、さらばなのだ』
そう言って次元に消えるように消失した。
「引いたか…」
「アレはなんだ、アインズ?」
先程までピギュティアがいた場所を見ていたアインズにターニャが訊ねる。
アインズは顎に手を当てて考えを巡らせる。しばし考えた後、並んで立つターニャを見下ろして答えた。
「〝私達がいる無数の世界を管理する者〟といったところか…」
「自身を上位者と名乗る存在…。まさに『存在X』だな…!」
ターニャは幼い見た目に反して、憎悪一色の表情を浮かべる。
「まぁ何より…」
そう言ってターニャに向き直ったアインズは右手を差し出す。
「久しぶりだな。また会えてうれしいよ、ターニャ」
ターニャは先程から一変、笑顔を浮かべる。
「ああ、こちらこそ。アインズ」
そして、差し出された手をしっかりと握ったのだった。
お読みいただきありがとうございました。
年末の帰省の為、次回投稿は年明けになるかもしれません。
今後もお付き合い頂ければ嬉しいです。
それでは次回でお会いしましょう。