無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部   作:かまぼこポテト

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今回から『真剣で私に恋しなさい!』の世界が舞台の話になります。


川神学園防衛戦

リムル達と別行動をとっていたルーデウスチームは戦闘の只中にあった。

 

 

 

場所は百代達の世界。

 

川神市。武道の総本山である『川神院』を囲むようにローズバルト軍が布陣している。

「ストリウムファイヤー!」

川神院師範代ルー・イーが熱波を放ち、押し寄せる敵軍を食い止めている。ストリウムファイヤーによって怯んだ敵軍へ川神院の修行僧が突撃する。

ルーの横を抜けるように1人の老人が歩み出る。

髪は無いが豊かな髭を揺らすその老人は川神院『総代』であり、百代と一子の祖父である川神鉄心である。

「ルー、下がっておれ」

そう言い、修行僧も下がらせた鉄心へ敵兵士が何人も襲い掛かる。

しかし、鉄心は涼しい表情をしたまま視線を前に向けている。

「顕現の参―――」

 

 

 

敵兵士が武器の届く間合いまで接近する。

そして手にした剣を振りかぶる。

 

 

 

「―――毘沙門天」

 

一瞬の出来事であった。

鉄心に襲い掛かった敵兵士が一瞬で地面に倒れた。

いや、正確には鉄心の闘気により具現化された巨大な足によって踏みつぶされたのだ。

 

 

 

「あれが武神の祖父ですか。強いな…、これなら少しは楽しめそうですね」

ローズバルト軍・川神院包囲分隊の指揮官であるヴォイドは感嘆の声を漏らす。

ルーの技『バーストハリケーン』によって発生した竜巻に兵士が巻き上げられ、落下していく。旋風がヴォイドの短く切り揃えられた黒髪を揺らす。

何人かは後方のヴォイドの近くに降ってくる。

「少しは働かないとエンリクスに怒られますし、そろそろ行きますか」

頭をボリボリと掻きながら立ち上がると、右手の篭手を振りかぶり。

「潰れろ。ドゴス・アドラ!」

振り下ろした。

しかし、その場で何かが起こるわけではなかった。何かが起こったのは視線の遥か先、僅かに視界に捉えていた鉄心が地面に倒れ伏したのだ。

先程鉄心がローズバルト軍の兵士に放った技『顕現の参・毘沙門天』に似た攻撃をヴォイドは放ったのだ。

鉄心は上から襲い掛かる力によって身動きが取れないでいる。

「暴風竜に対してはそこまで効果がありませんでしたが、人間サイズなら問題なく潰すことができるようですね。…しかし―――」

ヴォイドは百代達が通う『川神学園』の方角に視線を向ける。

「グワッツェ、遅いですね。まだ制圧出来ないんでしょうか…」

別の場所で戦っている仲間の事を考えながらヴォイドは歩き出す。

視線の先には、地面に押さえつけられている鉄心と、こちらに気付いて戦闘態勢をとるルー。それと川神院の修行僧達がいた。

ヴォイドが連れて来ていた兵士は先程のルーと鉄心の攻撃で戦闘不能となっていた。

現在、まともに戦えるローズバルト軍・川神院包囲分隊の面子はヴォイド1人だ。

しかし、ヴォイドは笑顔を湛えたままだ。〝敗ける方が難しい〟と本気で考えているのだ。

「お前達は、ワタシが相手するヨ!」

ルーがヴォイドの前に立ち塞がり、構える。

「あなたは武神や、その祖父より強いのですか?」

歩みを止めたヴォイドは笑顔のまま訊ねる。その問いにルーは絶句し、答えられなかった。

ルーの反応に落胆したヴォイドの顔から笑顔が消える。

「なら、これから私が行うのは〝戦闘〟ではありません。〝作業〟です」

ヴォイドの言葉にルーは表情を険しくする。暗に「お前など敵にも数えられない」と言われたのだ。この世界で武道を極めた者の一人としての誇りに賭けてヴォイドを通すわけにはいかないと心に決めたルーは腰を少し落とし、攻撃姿勢をとる。

「舐めてもらっちゃ困るヨ!」

勢いよく踏み込んだルーがヴォイドに肉薄する。その速度は音速を越えるかの如くだった。

 

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場所は変わって川神学園。

 

ここにもローズバルト軍の軍勢が侵攻している。川神学園包囲分隊を指揮するのはグワッツェである。

川神学園を東西南北から包囲した後、雪崩れ込むように一斉に攻め入った。

グワッツェが相手をするのは〝この世界で最強〟である百代だ。

拳による格闘戦を得意とする者同士がお互いの拳を繰り出し、ぶつかり合う。

その周囲では戦闘可能な生徒による防衛戦が展開されていた。

一子がポニーテールを揺らしながら薙刀を振りかぶり跳躍する。そのまま敵兵士の1人目掛けて振り下ろすが敵兵士が構えた大盾によって防がれる。

弾かれた薙刀を構え直して横薙ぎに振るうが、それも防がれる。

敵兵士が大盾を突き出すように突進してくる。一子は飛び退くが、左右から他の兵士が斬りかかる。

しかし、一子の背後から飛び出した2人によって防がれる。由紀恵と、一子のクラスメートであるクリスティアーネである。

由紀恵の剣とクリスティアーネのレイピアが一子に斬りかかった敵兵士の攻撃を防ぐと一閃と一突きを見舞う。

首元に斬撃を受けた敵兵士はその場に崩れ落ちた。

「助かったわ。まゆっち、クリ!」

一子が左右の由紀恵とクリスティアーネに礼を送る。

「このぐらい、お安い御用です」

「無事で、後で会おう!」

そう言うと3人は正面と左右にに散り散りに駆けだした。

 

学園校舎内にも敵兵士が入り込んでいた。

いくら百代達手練れが居ようと物量による一斉侵攻を完全に防ぐことは出来なかった。

校舎の中央付近から侵入された為、校舎の両端に分けるように戦えない生徒達は避難していた。

ルーデウスは1番端から何室かの教室の壁を土魔法で補強すると、そこに生徒を誘導するように教師陣にお願いした。

鉄心から事前に教師陣には通達があったため、ルーデウスのお願いはすんなり聞き入れてもらうことが出来た。

これから行うことをルーデウスから聞いた教師陣は「共に戦う」と願い出たが、「万が一突破された時の為」とルーデウスはこれを拒んだ。

確認できる限りの生徒を端の教室に避難させると、その教室へと続く廊下を土魔法で塞ぐ。

「魔力の心配はしなくて良さそうだな」

自身に疲れや消耗感が無いことを確認したルーデウスはスクロールを起動する。

展開された魔法陣から魔道鎧が現れると、これを着用する。

ガントレットに内蔵されたショットガンを迫る敵兵士に向けると―――

 

「ショットガン・トリガー!」

―――10発もの岩砲弾が打ち出され、敵兵士を肉塊へと変える。

廊下という狭い空間だからこそ、ショットガンによる広範囲制圧が可能なのであった。

敵の中に自力で飛べる者がいない事が幸いした。現在ルーデウスが戦っているのは校舎の3階である、よって到達手段は階段で上がる他ないのだ。

なお、アレクサンダーとシャンドルは2階の反対側を、エリスはルーデウスのいる戦場の真下で戦っている。

そして、ルーデウスの反対側の校舎ではオルステッドが生徒の防衛を行っていた。

オルステッドは迫る敵兵士を迎え撃つ為に腰を落として踏み込むと、一気に距離を詰める為に地面を蹴る。

突き出された手刀が兵士の1人の腹部を抉り、引き抜くと同時に左拳で殴り飛ばす。

殴り飛ばされた敵兵士は後続の敵兵士を巻き込み、そのまま壁に激突する。殴り飛ばされた同僚の有様に気を取られた別の兵士にオルステッドは襲い掛かった。

手刀から放たれた『光の太刀』を受けて崩れ落ちるように膝を落とす敵兵士、その傍らにズチャリとネバついた音を立てて上半身が横たわった。

敵兵士達は完全にオルステッドの殺気とその強さに恐怖し、その場から動けずにいた。

そこに、降り立つ者がいた。

割れた廊下の窓枠に着地して、顔を覗かせたのはリヒトーだ。

「オルステッドさん。助けは………、いらないですね」

オルステッドの様子から状況を察したリヒトーは、加勢の申し出を取り下げる。

「ああ、問題ない。『九鬼』とかいう建物の方はどうだ?」

オルステッドは眼前の敵に注意を向けたまま訊ねる。

リヒトー達撃墜王組はこの世界における重要な組織である『九鬼財閥』の極東本部の防衛に参加していた。

ここにリヒトーが来た意味を察したオルステッドは窓から校庭の様子を見る。

「下が苦戦しているようだ。そちらに向かってくれ」

「分かりました」

一言返すとリヒトーは窓から垂直に校庭に飛び降りた。

「さて…。早く終わらせてルーデウスの援護に向かうか」

オルステッドは眼前の敵兵士を再び標的に定めると、一気に肉薄する。

突き出された手刀が敵兵士の心臓を捉えた。

 

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校庭に降り立ったリヒトーはグワッツェと交戦中の百代のもとに向かう。

ジェイル達も川神学園に合流して戦闘を開始していた。

「手を借そうか?」

グワッツェを百代と挟み撃ちにするように立つ。腰の大太刀に手を添えて臨戦態勢をとる。

「いや、ここはいい。オルステッドさん達もいるし大丈夫だ」

言い終えると百代は再びグワッツェに正拳突きを放つ。グワッツェも迎え撃つように正拳突きを放つ。

両者の拳がぶつかり、それによって周囲に衝撃が走る。

「ジジイ達の援護に行ってくれるか?」

突き出した拳を押し込みながら百代はリヒトーに視線を送る。リヒトーは「わかった」と頷くと、道安を伴って川神院に向かった。

「『閃撃』の助けを借りなくてよかったのか?」

百代と拳を合わせたままグワッツェが不敵な笑みで訊ねる。

「私1人で余裕だからな」

百代もまた、口角を上げて不敵な笑みで返す。お互いが拳を離して一時距離を取ると。

「大きく出たな『武神』。貴様ではローズバルト様はおろか俺にさえも勝てんぞ」

挑発するように肩を竦める、しかし百代は先程から表情変えずに聞いている。

「そう言うお前だって、私を倒せていないじゃないか。特大ブーメランだな」

挑発に挑発で返すと、グワッツェはハッと短く笑う。そして、拳を振り上げ―――

「これまでが小手調べだと分からんとは、貴様それでも『神』と言われる存在か? 自称ではないの、かッ!」

―――振り下ろした拳が地面を抉り、周囲を揺らす。

地面と拳が激突したことによって生じた衝撃が百代を含む川神学園生達を吹き飛ばした。

「川神流、畳返し!」

百代は吹き飛ばされながらも地面を捲り壁にして衝撃を防ぐと川神流の技『致死蛍』を放つ。

『致死蛍』は闘気を弾丸のように放つ技である。

グワッツェは気弾を掴むと、そのまま握りつぶすように拳を閉じる。『致死蛍』は呆気なく防がれたが、百代は捲りあがった地面から飛び上がるとグワッツェへと拳を突き出す。

「『川神流、炙り肉』!」

闘気によって紅蓮の変化した腕から放たれた炎がグワッツェを包む。

炎はグワッツェを取り囲み、うねる様に燃え上がる。

「振り解けんだと!? 小癪なことをする!」

グワッツェは自身に纏わりつく炎を振り解こうと身じろぎするが、炎をグワッツェを逃がさない。

百代は好機を逃すまいと突撃する。拳を振りかぶり、『無双正拳突き』の構えをとる。

「『川神流、無双正け』―――」

 

 

 

―――拳を突き出した刹那、拳とグワッツェの間に一筋の光が走った。

いや、それは一瞬よりも速かった。言うならば光速だっただろう。光は百代を含む辺り一帯を白く染める。

そこに遅れて轟音が轟く。光よりも僅かに遅い速度で。

 

ドゴォォオン!

 

轟音と共に、百代の体に焼けるような激痛と強烈な痺れが走る。

それは雷撃であった。

完全に不意を突かれたことで百代は直撃を受けた。肩にかけた川神学園の制服が焦げている。

頭上からの攻撃であったあった為、その場に膝を着くこととなった。

「私の最大攻撃である『ロドア・ギオ・グネェル・デロウィン』。お気に召したかな?」

グワッツェの背後の人影から声がする。

百代は直接相対したことはないが、リムルから話は聞いていた。

「手伝いましょうか? グワッツェ」

声の主―――エンリクスは、グワッツェと共に百代の前に立ち塞がった。




お読みいただきありがとうございました。

次回も楽しんで頂ければ嬉しいです。

それでは、また次回でお会いしましょう
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