無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部 作:かまぼこポテト
少し間隔が空いてしまいましたが、第三話になります。
リムル達は魔国連邦を出発して異次元を進んでいた。
アノス達の世界と同様にリムルの世界も襲撃を受けた。幸いなことに死傷者は出なかったが、リムルは反撃を決意した。
リムルのアルティメットスキル『智慧之王―ラファエル―』が敵が撤退する時の移動手段を解析し、少数精鋭で乗り込もうというのだ。
ちなみにリムルの他に、シオンとランガも来ている。
魔国連邦の軍事を統括するベニマルや最高戦力の1人であるディアブロ達は防衛の為に残っている。
青く、白く輝く空間を飛ぶように移動していく。
周囲に目をやると、白濁としたシャボン玉が無数に浮いている。
そのシャボン玉1つ1つに、その世界のものと思われる風景が映っている。
1つには、転生前の日本のような街。そこを駆ける銃を持った少女。
1つには、荒廃した戦場で銀色の機械を駆逐する白き四足の機械。
1つには、戦場で、閃光の如き速度で敵を惨殺する仮面の男。
1つには、拳1つで挑戦者を倒す女子高生の登校風景。
それ以外にも、いろいろな風景を内包したシャボン玉がリムル達をすり抜けていく。
「リムル様、あれは何でしょう?」
シオンが前方を指さす。前方には長い家のような物体があった。
「家、だよな?」
「家、ですね」
リムル達は静かに近づく。
家のような物体には窓があった。その窓から中を覗くと、見知った顔ぶれがあった。
すると側面のドアらしきものが開き、1人の男が顔を出す。
「リムルさん? リムルさんですよね!?」
鼠色のローブを羽織った青年、ルーデウス・グレイラットだった。
「やっぱりルーデウスか!? なんでここにいるんだ?」
「多分リムルさん達と同じですよ。まずは入ってください、みんないますよ」
ルーデウスに導かれ、リムル達は城艦に乗り込む。
「久しぶりだな、リムル」
「よおアノス。久しぶり~」
ハイタッチを交わし、リムル達は握手をする。
「どうやってこの次元に入ったんだ?」
「俺の世界に来た敵に〝案内〟してもらった。まあ、先程はぐれたがな」
「アノス達の世界にも来たのか?」
「ああ、はっきりローズバルトの名を出していた。そちらもか?」
「ああ、敵の移動手段を解析して異次元に飛び込んだ。だけど、敵には逃げられてしまった」
「おそらく敵がいるのは前回と同じ世界だろう。周りに浮かぶ世界から、その世界を見つけ出せばよいだけだ」
「そうだな。ところでルーデウス」
リムルがルーデウスとアレクサンダーを交互に見る。
「何でしょう?」
「前回いなかった人もいるけど、ルーデウスの仲間か?」
「ああ、アレクのことですか? ええ、俺たちの仲間です」
「アレクっていうのか、よろしく。俺はリムル=テンペスト」
リムルが右手をアレクサンダーに差し出すが、アレクサンダーの右手を見て、左手に変える。
「北神カールマン三世、アレクサンダー・ライバックです。お話はオルステッド様とルーデウス様からお聞きしています、こちらこそよろしくお願いします」
そう言うとアレクサンダーはリムルの手を両手でしっかり握った。
「北神ってことは、七大列強なのか?」
握手を解きながらリムルが訊ねる。するとアレクサンダーは苦笑しながら口を開く。
「いえ、元です。僕は戦いでルーデウス様に敗れました。現在はルーデウス様が七大列強の第七位です」
「そうなのか?」
リムルがルーデウスを見る。ルーデウスも苦笑している。
「いろいろありまして」
「でも強いんだよな? 頼りにさせてもらうよ!」
「はい! よろしくお願いします」
アレクサンダーの表情が明るく晴れたのだった。
「あれじゃない?」
窓の外を見ていたエリスがシャボン玉の1つを指さす。
そのシャボン玉には、以前と同じように荒廃した大陸『魔道』が映っていた。
「間違いあるまい」
アノスも確認して、城艦を操作する。
アノスはイ・グネアスで異世界を引き寄せ、無理やり城艦ごと侵入するのだった。
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異世界、未踏大陸。
真・魔王城、魔王の間。
魔王ローズバルトは玉座に座り、頬杖を突いて目の前の配下を見下ろしていた。
眼下には骸骨とブギョル、それと漆黒のローブとヘルメットを身に着けた女性が跪いている。
「…偵察の報告は分かった。それで、敵の可能性の奔流への侵入を許したと?」
「…申し訳ありません」
女性が頭を下げる。それに合わせて骸骨とブギョルも頭を下げた。
ローズバルトは視線を鋭くして3人を見る。
「奴らは必ず、無数の可能世界の中から我等の世界を見つけ出す。そうなれば、侵攻どころでは無くなるぞ?」
「だから、俺、殺す、する」
「ブギョル、お前は強い。それは間違いない。だが奴らをこのままにしておけば、戦力を削られることは必至」
そう言うとローズバルトは立ち上がり、3人を見渡して命じる。
「こちらに呼び寄せた〝適応者〟もろとも奴らを殺せ!」
「「「必ずや」」」
3人は跪いたまま、各々の能力で退室した。
「―――ここまで来たのだ。ようやく、ここまで」
ローズバルトは右手を天にかざす。すると、頭上に無数の色とりどりの水晶玉が現れた。
「ここは取った、ここも取った。ここと、ここも―――」
ローズバルトは水晶玉を1つずつ指さしていく。
そう、その水晶玉はローズバルトが征服してきた世界のなれの果てだった。
「すべて手に入れる!」
ローズバルトは右手を天に翳し、強く握った。
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「ここは、どこでしょうか?」
ルーデウス達は港にいた。
といっても、何処かさっぱりわからない。
「ここはおそらく『クーマン港』だ」
オルステッドが周囲を見渡しながら言う。
「私も前回ここに来ています。間違いないでしょう」
シンも同意する。
「じゃあ、他の大陸に行く船に乗ろうぜ」
リムルが船着き場に向けて歩き出す。一行もそれに続く。
「ここから出る船に乗りたいんだけど、どうやったら乗れるんだ?」
リムルが船着き場で、受付の女性に渡航方法を確認している間に、一同は地図や食料といった物資を準備していた。
自分たちの世界の通貨が使用できることは前回で分かっている。
その為にルーデウスはオルステッドに相談して多めにアスラ金貨を持ってきていた。
それはアノス達も同様であった。
「行先はどちらまで?」
受付嬢が訊いてくる。
「未踏大陸に行きたいんだけど、船って出てるの?」
「未踏大陸までは行けません。この先の『ヨクゼン大陸』と、さらに先の『ガジーエー大陸』までは渡航船が出ています」
「わかった。じゃあ、ガジーエー大陸まで乗せてほしい」
「では1人30パシルです」
「これで足りるかな?」
そう言ってリムルは自分の世界の金貨を1枚出す。
「…何人分、必要でしょうか?」
「俺を入れて12人かな」
「か、かしこまりました…」
受付嬢は金貨を受け取るとこの世界の通貨を数枚お釣りとして返してきた。
ちなみにリムルが出した金貨は10万円の価値がある。
この世界の1プシルはリムルの世界での100円に相当する。つまり30プシルは3,000円、12人でも36,000円なのだ。
渡航費用に大金を出されて受付嬢は引きつった表情を浮かべてしまった。
「ではこちらが12人分の渡航札です」
そうして12枚を2種類。合計24枚の札を渡された。
「こちらの赤い札はヨクゼン大陸までの渡航札となります。青い札はガジーエー大陸までの渡航札です。間違えないようにお願いします」
「これは乗るときに見せるのか?」
「そうです」
「わかった、ありがとう」
「渡航戦は30分後から搭乗出来ます。それまでお待ちください」
「わかった。ゆっくり待たせてもらうよ」
「よい旅を」
受付嬢に見送られて、リムルはアノス達の元へ戻っていった。
「どうでした?」
食料をバックパックに詰め込みながらルーデウスが訊ねる。
「30分後から搭乗出来るってさ。赤いのがヨクゼン大陸までで、青いのがガジーエー大陸まで行くチケットだそうだ」
「まだ戻ってない方達もいますから、しばらくゆっくりしましょうか?」
「そうだな」
現在この場にいるのはリムル、シオン、ルーデウス、オルステッド、アノスの5人だった。
他の者たちは、それぞれ買出しに出ている。
「多めに金貨を持ってきてよかったな、シオン」
「仰る通りですね、前回の経験が役に立ちました」
「敵は、俺たちが来ていることを把握しているだろうな」
アノスが地図を見ながら口を開く。
「ああ、間違いないだろうな。前回は居なかった敵ばかりだし、各大陸で情報収集をすべきじゃないか?」
リムルは近くの売店でルーデウスが買ってきた飲み物を飲みながら言う。
「俺たちが来ている隙に侵攻してくる可能性もありますよね?」
ルーデウスがスクロールを確認しながら訊く。
「今のところは大丈夫だろう」
口を開いたのはオルステッドだ。
「こちらの世界すべてを侵攻する余裕は無いだろう。前回の戦いで戦力は削っている、こちらが来た以上は戦力を外に向ける余裕は無いだろう」
「オルステッドさんの言う通りだと思う」
リムルが同意する。アノスは何も言わず、姿勢で同意を示す。
「それにしてもエリス達遅いですね、探して来ましょうか」
「そのうち戻って来るって。入れ違いになってもいけないし、おとなしく待ってようぜ」
立ち上がろうとするルーデウスをリムルが止める。
それからしばらくして全員が戻ってきて、無事に渡航船に乗ることが出来た。
「うぅ~、ぎもちわるい…」
船の甲板でグロッキーになっているのはエリスだ。渡航船は思いのほか揺れた。
ルーデウスが介抱したおかげで、なんとかエリスは吐くことなくヨクゼン大陸の土を踏むことが出来た。
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ヨクゼン大陸、カラワヤ港。
渡航船から降り立ったルーデウス達の視界に入ったのは金の装飾で彩られた建物が並ぶ街だった。
「綺麗な建物ばかりですねー」
ミサが街並みを見ながら感嘆の声を漏らす。
「では、情報収集をしましょう。2時間後にココに集合で」
ルーデウスとエリス、オルステッドとアレクサンダー、アノスとサーシャとミーシャ、シンとミサとレイ、リムルとシオンとランガの5チームに分かれて解散した。
ルーデウスとエリスは街の市場に向かった、多くの人が出入りする市場でなら情報が得られると思ったからだ。
「ねぇルーデウス。あれ美味しそうよ、食べましょう!」
エリスが屋台を指さす。その屋台では、一口サイズの肉を油で揚げて、カップに数個入れて販売されていた。
(青いコンビニで売られているヤツに似てるような…?)
「ね、ね! 食べましょう!」
「そうだね。あの、1つください」
「あいよ!」
気前よく返事をすると、店主は揚げ肉が数個入ったカップの1つを手渡してきた。
見れば見るほど青いコンビニのアレに見える。
「いただきます!」
エリスが待ちきれず1つ食べる。
「おいしい!」
「嬢ちゃん、ありがとよ。品物を変えてみて良かったぜ!」
「以前は違う料理だったんですか?」
1つ口に頬張りながらルーデウスが訊ねる。やはり青いコンビニのアレだった。
「この前、変わった服装の嬢ちゃんが教えてくれたんだ。なんでも、その嬢ちゃんの仲間の好物とかでよ。試しに作ってみたら美味いのなんの、そんで売ってみたら売れるのなんのってな!」
「その方達は今どちらに?」
「南東の『カトルツ共和国』に行くって言ってたな、情報が欲しいからって」
「わかりました、ありがとうございます」
「いいってことよ!」
「ところで」
「ん?」
「もう3個、いただけますか?」
そう言ったルーデウスの手にあるカップはとうに空だった。
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路地裏でアノス達は情報収集をしていた。
ローズバルトの軍勢に関しての情報で特に新しい情報は無かった。
『魔王ローズバルトが南の未踏大陸を征服した』とか。
『魔王ローズバルトは軍勢をもって各国に圧力を掛けている』など、既に判明している情報ばかりだった。
だが1つ、気になる情報があった。
「―――拳1つで敵を薙ぎ倒す少女?」
サーシャが路地裏で座り込んでいる浮浪者から話を聞いていた。
なんでもこの浮浪者は、その少女に戦いを挑んだが瞬殺されて、金品を根こそぎ持っていかれたそうだ。
哀れでならなかった。
「変わった服装の少女だった。オレは力には多少自身があったが、全く歯が立たなかった…」
「変わった服装ってのが気になるわね…」
「俺たちと同じ境遇の者が他にもいるのかもしれんな」
アノスは金貨を1枚、浮浪者の足元に置いた。
「情報料だ」
「い、いいのかい!?」
「構わぬ」
そう言うとアノスは立ち上がり、その場を離れた。
「その少女を探す?」
横からサーシャが覗き込んでくる。
「情報収集を続けていれば会えるだろう」
「このまま?」
ミーシャが首を傾げる。アノスは口元に笑みを浮かべて答える。
「会えぬなら、そういう運命なのだろう。その時がくれば自然と会えるだろう」
「―――ちょっといいか?」
声を掛けられてアノスは振り向く。
視線の先には1人の少女が立っていた。長い黒髪を靡かせ、前髪は×の字にクロスしている。
「何の用だ?」
「『魔王』を探してるんだが、知らないか?」
「どの魔王を指すかによると思うが、魔王という括りで見るなら俺は魔王だ」
「お前、強いよな?」
「少なくとも弱くはないぞ?」
「ならお前かもな、覚悟しろよ!」
そう言うと少女は拳を振りかぶり突撃してきた。
アノスは繰り出された拳を躱すが、2撃目、3撃目と拳が繰り出される。
「初対面で随分な挨拶だな」
「おとなしく私達を元の世界に戻せ!」
「ほぅ、お前たちも飛ばされて来たクチか」
その一言で少女が攻撃を止める。
「…どういうことだ?」
「なに、こちらも似たような境遇だというだけだ」
「魔王は別にいるのか?」
「先程言っただろう。俺達もその魔王に用がある。どうだ、一緒に来るか?」
アノスの言葉を受け、少女は少し思案する。
「いや、遠慮するよ。私達の軍司に確認しないといけないし」
「軍司?」
「ああ。もし供に戦うなら、また会えるだろう。じゃあな!」
そう言うと少女は地面を蹴って飛び立った。
「騒がしい奴だったな」
「でも、わたし達以外にもこの世界に転移してる人がいるってことよね?」
「一度戻る?」
アノスは思案すると口を開いた。
「そうだな。そろそろ時間だ、一度合流しよう」
アノス達は来た道を戻っていった。
全員合流して今後の会議をすることになった。
アノスからは謎の少女に襲撃されたが、誤解だったという話。
ルーデウスからは異世界人と思われる一団が、南東のカトルツ共和国に向かったという情報が発表された。
他の者達からも情報が上がった。
魔王ローズバルトは復活しており、軍備を増強しているとのこと。
「まずは、カトルツ共和国に向かおうと思う。俺達と同じ境遇の者がいるなら、味方にした方がいいと思う」
リムルが全員を見渡して言う。それに真っ先に賛同したのはルーデウスだ。
「賛成です。戦力は大いに越したことはないと思います」
「ルーデウスの言う通り、カトルツ共和国に向かうべきじゃないかな?」
新たにレイが賛同し、反対意見は出なかった。
「決まりだ。明日の早朝、出発しよう」
一行の行先は、カトルツ共和国に決まった。
お読みいただきありがとうございました。
今回から新キャラが登場しました。わかる方には分かると思います。
それでは次回もお楽しみください。