無職転移 ー魔王も一緒に転移しちゃった件ー 第二部 作:かまぼこポテト
投稿遅くなりました。大変お待たせいたしました。
空が揺れた、その原因はリムル達の乗る飛空城艦が敵の次元船ともつれるように百代達の世界に接触したからであった。
そのまま世界の壁を越えた一同は百代達の世界へ足を踏み入れた。
戦闘の気配を察した一同。川神学園での戦闘に加勢するべく急行したのだ。
近づくにつれてハッキリと視認することが出来たエンリクスの雷撃。ハルトはリムルに底部ハッチ開放を要請するとともに、トーカとグミに狙撃指令を出したのだ。
狙撃手〈スナイパー〉をグミが担当し、観測手〈スポッター〉をトーカが担当した。
グミの『ブレイザーR93』から放たれた銃弾は真っすぐな軌道を描いてエンリクスを撃ち抜いたのだった。
そして現在。ターニャとその部下達は飛空城艦から飛び立ち、ともにこの世界に進入した次元船への攻撃に向かった。
飛空城艦は川神学園の上空に辿り着くと、底部ハッチを開く。
高度を下げたところでハルト達が一斉に降下していく。
川神学園の屋上に降り立った一同は高度を上げて離れていく飛空城艦とリムル達を視線で見送ると、校舎と校庭と学園周辺に分かれて戦闘を開始した。
リムルは飛空城艦を着水させる為、多摩川を目指す。艦橋にはシオンとランガ、それにアインズとアルベドもいる。
途中、川神院が視界に入る。瓦礫の廃墟と化した川神院が気になったリムルは、飛空城艦を着水させた後にシオンとランガを伴って川神院へと向かった。
「『管理者』とやらはいないようだな。警戒を怠るなよ、アルベド」
「承知いたしました、アインズ様」
アインズとアルベドは川神学園へ向けて歩いている。しかし、リムル達のように急ぐ様子は無い。
アインズが用があるのはあくまでスぺビアやピギュティアといった『管理者』を名乗る者達であって、ローズバルト軍に用は無いのだ。
「共に戦う」といった手前、力を貸さない訳にはいかず、こうして戦闘に参加しようとしている。
それはターニャも一緒であるが、表立って口にはしない。
「しかし、学生生活よりは遥かにマシだな」
「仰る通りかと…」
かつてターニャ達と過ごした異世界の出来事を思い出しながら歩いていると川神学園が見えてきた。
近づくにつれて戦闘の喧騒も大きくなる。
「ここにもリムルの仲間がいるということだったな…。先に降下した者達が伝えているだろうが慎重にな、アルベド」
「かしこまりました。アインズ様もお気をつけて」
そう言うとアルベドは漆黒の翼を広げて飛び立つと、空中に展開している敵兵士へと攻撃を開始する。
それを見送ったアインズは視線を戻すと、自信に魔法をかけていく。
「『光輝緑の体―ボディ・オブ・イファルジェントベリル―』『不死者の接触―タッチ・オブ・アンデス―』。これだけでいいだろう」
準備を終えたアインズは川神学園の校庭に足を踏み入れた。
そこではいまだ戦闘が繰り広げられており、百代もグワッツェと戦闘を継続中であった。
しかしエンリクスはと言うと、グミに狙撃された銃傷と清楚によって掌を串刺しにされたことによって戦闘継続が困難になり清楚によって捕縛されていた。
「ん? お前は誰だ?」
エンリクスを縛り上げた清楚がアインズに訊ねる。
「なに、敵ではないよ。私はナザリック地下大墳墓の主、アインズ・ウール・ゴウン魔導王だ。アインズと呼んでくれ」
アインズは清楚に歩み寄りながら名乗ると、捕縛されたエンリクスを見下ろす。
「ハルト達と来たようだが、味方ということでいいんだな?」
「構わないとも。私はコイツらと、その背後にいる存在に用があるのだ。君達と目的は同じだよ」
「そうか。だが、百代があのハゲを倒せば敵軍は崩れる。お前の出番は今回無いかもな」
「それは残念だ。だが、水を差すのも野暮だろうから、おとなしく雑魚の相手をすることにしよう」
そう言うとアインズは清楚に背を向ける。
清楚は捕縛したエンリクスを学園生に任せると、「お手並み拝見」とばかりに見物を決め込む。
「貴様はシティックの報告にあった魔導王! なぜ貴様達がこの世界に来ている!?」
無理やり立ち上がらされたエンリクスがアインズを見て訊ねてくる。それを首だけでアインズは振り返る。
「それにあの赤と紺の服装の2人はシティック達が向かった世界の者だ。シティック達はどうした!?」
そんなエンリクスから「答える気は無い」と言わんばかりに顔を逸らすアインズ。
その態度に舌打ちをするが、自信の無力さを噛み締めるように学園生に連行されていく。
「…お前達の仲間を2人捕らえた。お前で3人目だ」
連行されていくエンリクスの背に、顔を向けることなく答えた。一瞬エンリクスは立ち止まるが、唇を噛んだまま再び歩き出した。
「さて…。味方を巻き込まないようにしないとな。『上位転移―グレーター・テレポーテーション―』!」
アインズは川神学園生が敵軍を1点に集中するように迎撃している中心に転移する。
ちょうど、川神学園生と敵軍の一部集団との間に現れる。正体不明の存在が現れたことに動揺する川神学園生に首だけで振り返ると「敵ではない」と一言言う。
そして正面の敵軍に顔を向けたアインズは魔法を放つ。
「『連鎖する龍雷―チェイン・ドラゴン・ライトニング―』」
龍の如くうねる雷撃が敵集団に襲い掛かる。雷撃は敵兵士を1人、また1人と飲み込み、そして蹂躙した。
川神学園生達は目の前で起こる一方的な殲滅に戦慄していた。
一帯の敵兵士を無力化すると、アインズは再び『上位転移―グレーター・テレポーテーション―』で校庭の中心に戻ってきた。
「お前、強いな。リムルやアノスにも負けないんじゃないか?」
清楚が拍手を送りながら近づいてくる。
「アノスというのは知らないが…、そうだな。試してみないことには分からないな」
アインズは肩を竦めながら答えた。
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場所は変わって川神院。
ヴォイドが放った爆発を受けたリヒトー達はその場から消えていた。
その場にいるのはヴォイドただ一人。そこにリムルがシオンとランガを伴って到着する。
瓦礫に腰を下ろし、ぐったりと項垂れるヴォイドの出で立ちを一言で言い表すなら『破れたボロ雑巾』だろう。
しかし、その瞳は光を失ってはおらず、焦点はまっすぐリムル達を捉えていた。
「撃墜王の次はあなたですか、スライム」
うんざりとばかりの溜め息交じりで言葉を発するヴォイド。リムルはヴォイドの言った言葉で疑問に思ったことを訊ねた。
「撃墜王………? リヒトー達はどうした?」
訊ねられたヴォイドが体に鞭打つようにゆっくりと立ち上がる。
「ここではない次元に飛んでもらいました。さすがのあなたでも、自力で行くことは出来ませんよ」
「異次元ってことか。お前を倒せばリヒトー達は戻って来るのか?」
リムルの問いを受けたヴォイドは少し思案した後、ゆっくりと話し始めた。
「それは…、わかりませんね。なにせ敗けたことが無いものでして」
ヴォイドが瓦礫の山から下りてくる。リムルと同じ高さに立ち、戦う姿勢を示す。
「3人で来ますか? それとも1人ずつで?」
篭手を鈍く光らせながらヴォイドはリムル達を順番に見る。体や服装はボロボロであるが、その瞳に宿る闘志は霞んでいない。
リムルは背後のシオンとランガを交互に見る。
シオンもランガも頷くことで返す。リムルはヴォイドに向き直ると刀を抜き放つ。
リムルとヴォイドの視線が交錯する。お互いが腰を落とし、戦闘態勢を取る。静寂を破るように音を立てて風が両者の間を抜けていく。
篭手から放たれる光が少しずつ強くなっていく。
金色の光は徐々に篭手全体に及び、そのままヴォイドの体を包み始める。
先にリムルが動いた。タンッ、と地面を蹴る音と共にヴォイドに肉薄すると刀を片手で振り上げ、そのまま振り下ろす。
キィン、と甲高い音を立てて刀と篭手が接触する。刀を受け止めた態勢のままヴォイドは笑みを浮かべる。
「『ドゴス・アドラ』!」
篭手と鍔迫り合いをするように押し込んでいた刀が篭手から引き剥がされるように押し返される。
リムルは負けじと刀を両手で握り、振り下ろす力を強める。しかし刀は篭手から引き剥がされていく、まるで磁石の同極同士のように、まるで〝反発〟するかのように。
ランガがリムルの背後から躍り出ると、ヴォイド目掛けて体当たりをする。人一人より少し大きいランガの体躯でもってのタックルを受けたヴォイドは吹き飛ばされる。
「獣風情が、邪魔ですね! 『ドゴス・アドラ』!」
吹き飛ばされながらも受け身を取ると、篭手を地面に向ける。詠唱の直後、ヴォイドの体は宙へと浮かぶ。というよりも跳躍した。
宙で体を捻って、直立姿勢をとるとリムル達を見下ろす。
篭手が先程から金色の光を放ち続けていることにリムルは気付いた。
(あの篭手が光っているあいだは何らかの能力を発動している、ということか?)
《解。個体名『ヴォイド』が詠唱した直後から篭手に何らかのエネルギーが検出されています》
リムルの疑問に対して智慧之王が解析結果を告げる。
《今もエネルギーは検出されているか?》
《解、検出されています。詠唱後に篭手が発光している間は何らかのスキルが発動しているものと考えられます》
(宙に浮くのが能力なのか、それとも他の能力があるのか。さっきの反発力の正体はなんだ?)
疑問に思考を巡らせていると、ヴォイドは篭手の甲を地上にいるリムル達に向ける。
「『ガル・ドゴス・アドラ』!」
ヴォイドが宙を蹴るようにして地面にいるリムル達目掛けて突撃する。
「リムル様!」
弾丸のように飛来するヴォイドの射線上にシオンが剛力丸を構えて立ち塞がる。剛力丸をフルスイングするように振り上げると剛力丸と篭手が激しい音を立てて激突する。
衝撃波が周囲を揺らし、お互いの得物がぶつかる轟音が辺りを包む。
しばし耐えていたシオンであったが、徐々に押され始めた。剛力丸を振るう両腕は徐々に後退し、自身の体も後方にジリジリと押されている。
シオンが驚愕の表情を浮かべた次の瞬間であった。
ヴォイドの体はシオンの振るう剛力丸を押しのけるように弾き飛ばすと、シオンの体を後方に吹き飛ばした。
受け身を取れなかったシオンは瓦礫に激突すると短い悲鳴を上げて動かなくなる。
「シオンッ!?」
振り返るリムルにヴォイドが襲い掛かった。
《告。個体名シオンの生命反応を感知、許容範囲を超える衝撃によって気絶しているだけです》
智慧之王からの声を聞いたリムルは安堵で胸を撫でおろすが、ヴォイドの猛攻が迫る。
ランガはヴォイドの追撃を阻止しようと割って入るものの、ヴォイドの能力によって何度も弾き飛ばされる。
「喰らい尽くせ、『暴食之王―ベルゼビュート―』!」
リムルが右掌をヴォイドに翳すと、漆黒の闇がヴォイドを飲み込む。
前回の戦いでは魔王軍四天王オウェルポスにトドメを刺したこの力であるが、それがヴォイドに通用するかは賭けであった。
前回戦った四天王よりも遥かに強いヴォイド達を相手に、敗けはしないが、勝利の筋道を見出せないでいるのも事実であったのだ。
故に暴食之王でヴォイドの肉体、あるいは魂を捕食できるかは未知数である。しかし、リムルが暴食之王を使用した意図はもう一つあった。
「なんですか、これは!? 纏わりついて…」
ヴォイドは暴食之王を振り払うことが出来ずにリムルとの距離を離す。
しかし暴食之王にて追撃すると、再びヴォイドの体に暴食之王が纏わり付く。だが暴食之王に本来無い異変が見られた。
篭手の部分だけ。暴食之王が接触していないのだ。
それによってリムルの〝疑問〟は〝確信〟に変わった。ヴォイドの能力は『反発』であり、その特性を持つ魔法を行使するのだとリムルは結論付けた。
(だとすれば厄介だな…)
暴食之王でさえ弾く『反発』能力を突破するには篭手以外の部位に攻撃する他ない。
簡単に見えて難しい。ヴォイドが正面からの攻撃を篭手で防ぐ以上、死角を狙う必要がある。
だが現状、3人で向かっても悉くの攻撃を防がれて決定打を与えることは出来ていないのが現状なのだ。
リムルの額を一筋の汗がつたう。
「ランガ、仕掛けるぞ!」
「仰せのままに、我が主!」
リムルの攻撃に続くようにランガも仕掛けると、挟撃の態勢が出来上がる。
正面から仕掛けたリムルが刀を振り下ろす、しかし篭手によって防がれる。
だがこれはリムルの予想通りだった。リムルが刀を振り下ろしたのと同時にランガが仕掛ける。完全に背後を狙った体当たりを受けたヴォイドだったが。少し体を揺さぶられた程度で、その表情は余裕の笑みを浮かべている。
ヴォイドが空いている左手でランガの角を掴むと、右足の踵で蹴り上げた。
左手で抑えられたまま顎に蹴り上げを食らったランガは一瞬怯むが、再び体当たりを敢行した。
「何度やっても無駄ですよ」
ヴォイドは篭手の向きを僅かに地面へと向けると、弾かれるように上空に飛び上がる。リムルは跳躍によって生じた反発力によって後退する。
攻撃目標を射線上からロストしたランガは追撃の為に跳躍姿勢をとる。
しかし、ヴォイドが仕掛ける方が僅かであるが早かった。
頭上に向けて放たれた反発力によって急降下すると、先程のように地面目掛けて突撃する。
その射線上にはランガ。
ヴォイドはランガに狙いを定め、加速する。
閃光となって襲い掛かるヴォイドに対して回避行動を取れなかったランガは、その突進の直撃を受けることとなった。
「ランガッ!」
リムルの叫びを爆音が掻き消す。
土煙が上がり、そして収まった。
土煙が収まるのを見守っていたいたリムルの脳内に智慧之王の声が響く。
《告。個体名『ランガ』、戦闘不能。個体名『ヴォイド』健在》
お読みいただきありがとうございました。
次回も楽しんで頂ければ幸いです。
それでは次回でお会いしましょう。